「帝国」ロシアの地政学 (「勢力圏」で読むユーラシア戦略)

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  • 東京堂出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784490210132

作品紹介・あらすじ

ロシアの対外政策を分析し、その野望と戦略を読み解く。旧ソ連諸国、中東、東アジア、そして北極圏へと張り巡らされるロシアの新勢力圏を丹念に分析。国際社会の新秩序を理解するのに最適の書。北方領土の軍事的価値にも言及。

感想・レビュー・書評

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  • 【まとめ】
    1 ロシアの国境はどこまで伸びるのか
    ロシア周辺における国境問題には、ある種の特殊性が認められる。つまり、国家の境界というものがひとつながりの閉じた線としてではなく、より曖昧なグラデーション状にイメージされているのではないかと疑わざるを得ないような事例がしばしば見られるのである。
    ロシアの国家観においてイメージされる境界とは、浸透膜のようなものだ。内部の液体(主権)は一定の凝集性を持つが、目に見えない微細な穴から外に向かって染み出してもいく。仮に浸透膜内部の「主権」が着色されていれば、染み出していくそれは浸透膜に近いと ころほど色濃く、遠くなるほどに薄いというグラデーションを描くことになるだろう。一方、浸透膜は外部の液体を内部に通す働きもする。もしも外部の液体の方が浸透圧が高い場合、膜の内部には他国の「主権」がグラデーションを描きながら染み込んでくる。
    ロシアの主権は国境を超えて及ぶのだ。


    2 ロシアのあいまいなアイデンティティ
    ソ連崩壊によって「ロシア的なるもの」は国境で分断され、新たに出現したロシアの国境内には、他民族や多宗教といった「非ロシア的なもの」が抱え込まれることになった。つまり、民族の分布と国境線が一致しなくなったわけで、こうなると「ロシア」とは一体どこまでを指すのか(国際的に承認された国境とは別に)という問題が生じてくる。これは地政学(ロシアの範囲)をめぐる問題であると同時に、アイデンティティ(ロシアとは何なのか)の問題でもあった。つまり、「ロシア」の範囲を「ロシア的なるもの」の広がりに重ね合わせるのか、「非ロシア的なもの」をも含むのかという問題が生じてくる。

    プーチンはロシアの地政学思想として「大国志向」を有しているとされる。大国志向的国家観においては、ロシアが旧ソ連諸国を帝国的秩序の下に直接統治することまでは想定しない。その一方で、旧ソ連圏で生起する事象に関してロシアが強い影響力を発揮できる地位を持つべきであると考える。したがって、旧ソ連諸国はロシアにとっての勢力圏であり、NATOのような外部勢力が旧ソ連諸国に拡大してくることも阻止されなければならない、ということに なる。


    3 主権と勢力圏
    ロシアの軍事的介入の積極性は、旧ソ連諸国以外と旧ソ連諸国で違う。ロシアは、主権とはごく一部の大国のみが保持しうるものだという考えを持っている。この主権国の定義は、強大な軍事力(核)を有しているか、軍事同盟関係にある他国との間で優位にあるか、というものが含まれる。このような能力を持たない旧ソ連諸国は真の「主権国家」ではなく、したがって「上位の存在」であるロシアの影響下に置かれるのは当然だ、というのがロシアの論理であろう。

    ある大国が周辺の国々に対して権力関係を行使しうるとき、そのエリアは「勢力圏」と呼ばれることが多い。現在のロシアが目指すのは、他国との間に消極的勢力圏――積極的に何らかの振る舞いを強制しうるような関係でなく、「主権国家」 にとって不都合な振る舞いを手控えるよう圧力をかける関係――を維持することだ。この「消極的」の定義には、ロシアから距離を置く国の引き止めや、NATOやEUへの加盟を目指す国々への圧力も加わる。

    ロシアの理解によれば、ロシアは、より弱体な国々の主権を制限しうる「主権国家」=大国であり、その「歴史的主権」が及ぶ範囲は概ね旧ソ連の版図と重なる。その内部において、ロシアはエスニックなつながりを根拠とするR2P(保護する責任)を主張し、介入を正当化してきた。
    一方、ロシアの「歴史的主権」が及ばない旧ソ連圏外においては、ロシアはウェストファリア的な古典的国家主権の擁護者を以て自らを任じてきた。それゆえに、ロシアは旧ソ連圏外でのR2Pの行使に対して極めて否定的な態度を示すとともに、米国の介入を厳しく非難してきた。

    1999年のインタビューでは、プーチンは「彼らは国連憲章を変えようとするか、NATOの決定をその代わりにしようとしている。我々は断固としてそれに反対する」と述べ、西側が国連をバイパスして独自の軍事力行使を行う傾向に強く反発していた。国連安全保障理事会の承認なしでNATOが軍事力行使に踏み切ったことについて、ロシアは、グローバルな安全保障問題に関する意思決定プロセスから自国が排除されたとの認識を強く持った。


    4 ウクライナと勢力圏
    ブレジンスキー元米大統領補佐官は、ウクライナを勢力圏内に留めておけるかどうかは、ロシアがアジアから欧州にまたがる「ユーラシア帝国」でいられるのか、それとも「アジアの帝国」になってしまうかの分水嶺であると主張した。
    ウクライナ人とベラルーシ人は民族的にも、言語・宗教・文化などの面からも、ロシア人との共通性が高く、時に「ほとんど我々」と呼ばれる。この3つの民族は一つの国家のもとに留まらなければならないという認識がロシアにあった。

    ソ連崩壊後、新生ウクライナはロシアの勢力圏からの脱出を目指したが、これは簡単なことではなかった。国際価格の数分の一という安価で供給されるロシア産天然ガスなくしては、ウクライナ経済は立ち行かないためである。自国を通過するロシアの天然ガスパイプラインから多額の通行料収入を得てもいること、多くの工業製品や農産物がロシアに輸出されていること、ヒト・モノ・カネの往来が活発なことなどを考えても、ロシアとの関係を簡単に絶つわけにはいかなかった。したがって、ウクライナは当初、ロシアとの関係も悪化させないよう配慮しつつ、西側との関係深化もめざすという多角的な対外政策をとった。

    ロシアにとってのウクライナは自力で独立を全うできない「半主権国家」であり、「上位者」であるロシアの影響下にあるものとみなされている。つまり、ウクライナはロシアの一部またはそれに準ずる領域ということになる。
    このような観点からすれば、クリミアはたしかにウクライナ人だけのものではなく、ロシア人にとっても「共有財産」であろうし、「ロシアの一部であるところのウクライナ」をNATOに加盟させかねない暫定政権は、領土的一体性を損なおうとする勢力と言えなくもない。そしてロシアは、自らの勢力圏であるウクライナが西側によって侵食されるのを防ぐため、戦略的地であるクリミアを急遽押さえた。これはロシアにとっても、「ロシアの一部であるところのウクライナ」にとってもNATOから身を守るための防衛的行動である――このように、プーチン演説では、「ウクライナはロシアの一部である」がゆえに、「ロシアにとってよいことはウクライナにとってもよいことだ」というロジックが貫かれている。

  • 三浦瑠麗氏が読むロシアの地政学 瓦解する「帝国」とあいまいな国境:日経ビジネス電子版
    https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/031700281/

    『「帝国」ロシアの地政学』書評 特殊な「主権」観で動くプーチン|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12689936

    小泉 悠『「帝国」ロシアの地政学―「勢力圏」で読むユーラシア戦略』 受賞者一覧・選評 サントリー学芸賞 サントリー文化財団
    https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/detail/201905.html

    「帝国」ロシアの地政学  - 株式会社 東京堂出版 限りなく広がる知識の世界 ―創業130年―
    http://www.tokyodoshuppan.com/book/b456763.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「最も陰惨なシナリオは核使用」小泉悠が警鐘を鳴らすロシアの“お粗末さ”と“エスカレーション抑止” | 文春オンライン
      https://bu...
      「最も陰惨なシナリオは核使用」小泉悠が警鐘を鳴らすロシアの“お粗末さ”と“エスカレーション抑止” | 文春オンライン
      https://bunshun.jp/articles/-/53515
      2022/05/06
  • 初版がウクライナ侵攻の2年7カ月前。よもやこんな現実に、と思うところだが、ロシアが何を考えているのか、ロシアの考えるところの、国境線、秩序観、占領・侵攻の理由、北方領土などについて述べた。多くの資料に裏打ちされた論考と実際に現地に行っての空気感が伝わる。難しいだろうと構えて読み始めたが、けっこうすとんと入ってきた。

    テーマは一言でいうならロシアの「境界」をめぐる物語。国家は境界、主権、国民、が三要件。古典的な国家観では境界はフラスコのようなもので、他の液体につけても中身は混じり合わないが、ロシアの国家観ではフラスコは浸透膜によって外からも、内部からも、浸み出す。
     また「国民」は民族的なロシア人と読みかえられ、政治的・軍事的介入の根拠とされる。

    テレビでの、筋道立った解説、落ち着きを感じる容貌などなにか小泉氏のファンになってしまっている。氏はロシア語でいうところの「ドマセート」、家にいることが好きなのだという。ネットでロシアの核ミサイル基地を覗き、クレムリンの会議室を垣間見る「旅」をし、また現実に研究でロシアやバルト三国やグルジアなど旧ソ連の国々へと行く。この本はこの二種類の旅から成ると言う。

    メモ
    第1章 「ロシア」とはどこまでか ~ソ連崩壊後のロシアをめぐる地政学
     ・ソ連時代は共産主義という(一応の)理想に向かって、ルーシ民族を中心に諸民族(+宗教、文化)が団結した同盟だった。
     ・現在のロシアは(共産主義の)理念が無くなった。それに代わるものとしてナチスドイツを撃退した、というのが自負になっている。→「敵」との関係で国家が語られる。
     ・ソ連が崩壊したことで、新たに画定された国境の外部に、2600万人ともいわれるロシア人がいることになった。プーチンはソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と言い次に「数千万人の我が国民と同胞が、ロシアの領域がいに居ることになってしまった」と言った。・・これが「在住ロシア人が虐待されているのを救う」という言葉でのウクライナ、ジョージア、モルドバ侵攻の源泉か・・
     ○民族の分布と国境線が一致しなくなった。冷戦後のロシアでは地政学とアイデンティティがほとんど判別不能な形で癒着するようになった。周辺諸国との関係にも直接影響することだ。「周辺諸国」なるものが独立した主体として存在するのか否か。

     研究者トールの国家像。
     「西欧志向」西側に協調する。新たな国境線を尊重。→早々に放棄した。
     「帝国志向」旧ソ連空間がロシアのものでなくなるのが気に入らない(ソルジェニーツィンもこの志向)
     「大国志向」帝国志向の現実的な変種。旧ソ連諸国を直接統治することはないが、影響力を発揮できる地位を保つ。

    第2章 「主権」と「勢力圏 」~ロシアの秩序観
     ・ロシアの理解によれば、ロシアはより弱体な国々の主権を制限しうる「主権国家」=大国であり、その「歴史的主権」が及ぶ範囲は概ね旧ソ連圏である。
     ・一方ロシアの「歴史的主権」が及ばない範囲はウェストファリア的な国境線を認める。現在の国境線の秩序が維持される方が大国としての地位を保持できる。

    第3章 「占領」の風景 ~グルジアとバルト三国
     ・グルジアに2018年9月に行く。トリビシ国立博物館の展示ではソ連時代は「OCUPATION(占領)」とのプレート。旧ソ連諸国間ではソ連への加入は自発的なものではなく、ソ連は自国への「侵入者」であったという認識。

     ・エストニアとラトヴィアにも2018年12月に行った。この2国はロシアと国境を接している。両国とも25%前後のロシア人がいる(第二次大戦後ロシア系住民の植民を進めたため)。ここでは1944.9.22にソ連軍が進駐するとドイツ軍は戦うことなく撤退した。なので両国人はソ連は「解放者」などではなく、その時の独立運動を阻止し「占領」してしまった、という認識。ソ連末期以降排他的な民族政策をとる(エストニア語やラトヴィア語を話せないロシア系住民には国籍を与えない)
     ・リトアニアはロシアと国境を接さず農業が中心の国であった(ロシア系は主に工業地帯に多い)のでロシア系は6%。

    第4章 ロシアの「勢力圏」とウクライナ危機
     ・ウクライナ、ベラルーシは時にロシアに「ほとんど我々」とも呼ばれる。「ほとんど我々」=「ロシアの民}である両国はロシアの勢力圏の核をなすもの。
     ・ロシアにとってもウクライナは自力で独立を全うできない「半主権国家」であり、「上位者」であるロシアの影響下にあるものと理解される。

     ・「凍結された紛争」 分離独立状態が膠着化。アルメニアとアゼルバイジャンが領有を争うナゴルノ・カラバフ、モルドヴァの沿ドニエストル、グルジアの南オセチアとアブハジア 未承認国家を出現させそこに軍事援助をする。

    第5章 砂漠の赤い星 ~中東におけるロシアの復活
     ・西欧諸国の中東に対する関心は、主として植民地時代の利権維持と地理的に接近しているゆえの脅威。米国は石油等のエネルギー資源の安定確保とこれを脅かす敵対勢力の排除。
     ・ロシアのシリア介入は、対米関係と、ロシア経済を支える原油価格の維持、ロシア製武器や原発の売り込み、欧州での孤立化を相対化するための友好国の拡大、などの実利が交錯した。

    第6章 北方領土をめぐる日米中露の四角形
     ・(日米安保で)「半主権国家」である日本がロシアと何を約束しようと、米国に強く言われれば北方領土に米軍基地や戦闘部隊が展開する可能性は排除できない、というのがロシアの日本観。
     ・北方領土問題は時間を味方につけるロシア。島生まれの人がいなくなるのを待つ。

     ・2018年7月、交流事業で国後島に行く。「北方領土でロシア化が進んでいる」というが「完了した」という印象だ。施設には大きく「クリル諸島はロシアの領土」と書かれている写真が載っている。択捉島では民家に招待されるコースになっており、一家の主は択捉島生まれで、生まれ育ったこの島を離れるつもりはないと話す。がその当日、択捉空港には最新鋭の3Su-35S戦闘機が3機配備されていたのであった。

    第7章 新たな地勢的正面 北極

    おわりに ソ連崩壊後、「ロシア」の範囲をめぐって試行錯誤をくりかえした後にロシアが見出したのは、旧ソ連諸国を消極的にではあっても「勢力圏」として影響下に留めることだった。このような論理の帰結が2014年のウクライナへの介入であり、それに続く西側との対立の再燃であったといえる。・・これはロシアの論理。

    カナダはアメリカに対して「ゾウの隣で眠るようなもの」と表現。旧ソ連諸国からみたロシアも実は巨象なのではないか。

    最新の「ロシア点描」ではここで述べられていることが、もっと分かりやすい形で述べられていた。

    2019.7.10初版 2022.4.20第8版 図書館

  • ジョージアが「ロシアとの紛争を抱えている限り、集団防衛機構であるNATOはロシアとの戦争を避けるために加盟を認めることはできない」
    ウクライナが「ロシアとの終わらない紛争を抱えているということは、当面はNATO加盟が不可能になる」
    「戦争状況を継続させることそのものがロシアの目標であると考えられよう」
    「ロシアにとって重要なのは、旧ソ連諸国に対して介入を行う際、西側がそこに横槍を入れてこないよう抑止しておくことである」

  • 再び小泉悠氏の著作を読んだ。本書は、北方領土、ロシアの考える「主権」・「勢力圏」、シリア、北極について、ロシアの地政学という観点で記述されている。

    ソ連崩壊は、ロシアにとって「ロシア」とはどこまでなのかを考えさせ、アイデンティティを揺るがす「地政学的悲劇」であり、ソ連崩壊後のロシアは、アイデンティティと地政学の癒着により、「大国志向」へ転じた。ロシアは、旧ソ連地域を「勢力圏」とみなし、この「勢力圏」を維持するために実施したのが、2008年のグルジア紛争、2014年のウクライナ危機である。この箇所の説明はとても説得力があり、非常に参考になった。

    その他、シリアでの「限定行動戦略」、新たな地政的正面である北極、日本と深く関わる北方領土問題など、ロシアの対外政策を知る上で、とても有益な情報がそろっている。

  • 丁度、読んでいる瞬間にロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ウクライナとロシアの関係についても言及されており、侵攻にいたった経緯を理解できた。ロシアが北方領土問題を抱える我々日本の隣国であることについても記述されており、筆者の旅の感想がリアリティーがあり、興味深い。

  • 小泉悠さんの著作。ストーリーとしてよく組み立てられていて、北方領土訪問の導入は成功だと思う。読み始める前はやや警戒していたがどんどん読み進めてしまった。
    西欧近代がいわゆる「モダン」であり、国民国家をベースとして組み立てられてられているのに対し、ロシアは融通無碍でロシア人がいるところが「ロシア」であるといういわゆる「帝国」概念に基づいている。その中でも、ウクライナ、ベラルーシ、ジョージア(著者はグルジアと呼ぶ)は特に重要な国=地域でその国々が独立して西欧的な国民国家になるのは「帝国」を脅かす脅威と認識される。
    ただこの考え方はあくまで権力者目線だと思うわけで、結局モスクワ、サンクトペテルブルクの市民もマクドナルドやコカコーラに代表される西欧文化を満喫していたことからも分かるように、別にロシアなるものは鬱屈した権力者や弱者のアイデンティティを慰める概念でしかないんだと思う。そんなことより、ロシアは地方に目を向けて全国民的に真の意味で豊かになれば、別にウクライナだって反発はしないだろうし、日本だってそこまで警戒はしない。要はそういうことなんだと思うので、プーチンには仮想現実的世界にでも引きこもっていただいて、その世界で自由にやってもらいたい。その意味でメタバースの発展は世界を救うかもしれず、一刻も早い進化が待ち望まれる。

  • 受け入れられるかどうかは別として、ソ連時代を含めたロシアのイデオロギーや周辺諸国に対する考え方、そして西側諸国に対する見方など理解することが出来た。
    それと同時に、個人的なレベルは別として、ロシアをはじめとする権威主義的な国家と国同士で分かり合える事は無いのだろうと、絶望的になった。
    今起きているウクライナ侵攻はロシアにとって必然であり、さらには日本にとって懸案事項である北方領土返還など、実現する事はないだろうと思わされた。

  • 大国ロシアを取り囲む極東(および中国)、北極、西方(=西側諸国との境界となるNATOおよび旧ソ連邦)と中東に関し、とりわけ軍事的観点に軸を置いた政治的状況を概観する。
    ストーリー的というよりは現状分析的内容(歴史から読み解くというよりは軍事的重要性の読み解きや目下軍事行動などからロシアの現状の考え方を整頓する内容)。
    誤解を恐れずに表せば、架空戦争モノの漫画やアニメのようなクリアな整理がどんどん出てくるエンターテインメントとして読める。他方、ニュース解説を聞いているような感じで、ロシアをわかったという気にはあまりならないと感じた。

  • 各メディアのプーチン批判はもっぱら西側視点だが、ロシア観点からの諸外国の見方や基準、彼らが定義する正義を知ると、その論理や戦略に納得(同意と納得は別として)、勉強になる一冊だった。

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著者プロフィール

小泉 悠(こいずみ・ゆう):1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。専門はロシアの軍事・安全保障。著書に『「帝国」ロシアの地政学──「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)、『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書、2021年)、『ロシア点描』(PHP研究所、2022年)、『ウクライナ戦争の200日』(文春新書、2022年)等。

「2022年 『ウクライナ戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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