イスラーム基礎講座

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  • 東京堂出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784490209129

作品紹介・あらすじ

イスラームを歴史、宗教、生活、しきたり等多彩な視点から詳説。圧倒的な情報量とわかりやすい解説で、学生から愛好家、専門家まで幅広いニーズに応える。過激派組織ISをはじめ国際情勢の最新の分析も。国際情勢・歴史を理解するための必読書!(本書は、1999年刊行の『イスラーム教を知る事典』を、現代の国際情勢に合わせ、新たな項目を加筆したものです。)

感想・レビュー・書評

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  • イスラーム教について、その思想から歴史、現代のイスラム案件(原理主義、テロ、アラブの春など)まで、網羅的に解説したイスラーム「総合」講座。

  • イスラーム教とは何か。イスラームの世界とはどのようなものか。日本人として生きてきた自分には想像できない内容だった。現代の知識として必要だと思う。

  • >小さなイスラーム教集団が、非イスラーム教の世界で生活の場を設営した場合でも、この集団はできるかぎりイスラーム教による法治国家を作り上げます。すなわち、いかなる国家のなかにあろうとも、イスラーム教集団は国家としての法体制を作ります。まさに国境のない国家であるといえます。

  • イスラムの歴史を学ぶには良い本。ただ中東地域を中心に解説がされているので日本人に近しく、全体総数も多い東南アジア系イスラム教徒については一切語られないと言っても過言ではない。また総じて同じことが繰り返し述べられるのは著者の年齢によるものなのか、それとも長年のイスラム教典研究の影響なのかは謎。いずれにしても一冊でイスラム教の流れや構造を知るには良い本。

  • [大海への初めの一歩]世界の全人口のおよそ4分の1が信仰しているにもかかわらず、多くの日本人にとってはなかなか理解が難しいイスラーム。その歴史や信仰の体系、さらには政治や生活との関わりに至るまで、幅広く説明してくれる一冊です。著者は、アズハル大学に留学経験を持ち、アラブ政治情勢の分析を専門とされる渥美堅持。


    タイトルの「基礎」という用語が指し示すとおり、イスラムームを勉強したいけどどこから手をつければ良いかわからないという方にぜひオススメしたい作品。日本人の思考法や宗教観との対比の中でイスラームを解説してくれるため、理解が格段にしやすいのではないかと思います。ちなみに、下記の注は自分が最近特に痺れたものの中の一つです。

    〜なぜ、アラブ人の行動様式を知るために、イスラーム教を学ぶことが必要なのでしょうか。それは、彼らが、イスラーム教すなわち「アッラーの律法」が降りたとき、それを容易に理解できたという点に注目したからです。七世紀の無学無筆のアラブ人が、イスラーム教に関する知識がなかったにもかかわらず、ごくすなおに理解できたという歴史的事実に注目したわけです。すなわち、アラブ人の潜在意識とイスラーム教との間に、共通の思考性が存在していると判断したからです。説明を変えれば、彼らは新しい知識としてイスラーム教を勉強し、その結果イスラーム教徒になったのではなく、感覚的に受け入れる潜在意識を持ちあわせていただから、イスラーム教徒となったと推理したのです。〜

    知らないことってまだまだたくさんあるなと☆5つ

  • ・なぜ、アラブ人の行動様式を知るために、イスラーム教を学ぶことが必要なのでしょうか。それは、彼らが、イスラーム教すなわち「アッラーの律法」が降りたとき、それを容易に理解できたという点に注目したからです。
    七世紀の無学無筆のアラブ人が、イスラーム教に関する知識がなかったにもかかわらず、ごくすなおに理解できたという歴史的事実に注目したわけです。

    ・アラブのイスラーム教徒は、アラブ人なるものを破壊、是正するために降ろされたアッラーの律法であると理解しています。イスラーム教にとって最大のターゲットは、アラブ的理論であると理解しています。イスラーム教にとって最大のターゲットは、アラブ的論理であると認識しています。それは現在も変わりません。彼らはイスラーム以前のアラブ世界を「ジャーヒリーヤ時代」すなわち「無明の時代」と呼称し、イスラーム教はこの世界を破壊し、新たな秩序を与えるために降ろされたのだと解釈しているのです。

    ・砂漠世界とは反対に、日本は世界のなかでもまれにみるほど明確な四季を有する国です。アジア・モンスーン地帯を襲う想像を超える災害や、それを克服する気力も失わせるような天災にも無縁な国です。日本人が経験する自然災害は、人間の努力と知恵で十分に克服することのできるものです。
    そればかりか、日本人は災害と四季の変化に対応する努力と知恵により、多くの富を得ることができることを実感してきました。今日、世界は日本人の勤勉と英知を称賛しますが、このような日本人の性格は、日本の自然すなわち風土が作り上げたものといえましょう。

    ・砂漠を考えるに先立って、砂漠世界の実際をご披露しましょう。砂漠は暑く広大です。空間なるものが形を見せるならば、それは砂漠です。しかし、それは同時に死を予告する灼熱の空間です。
    近年、中東世界と日本との関係が深くなるにつれて日本人のなかにも、本当の砂漠を目の当たりにしたり、都市に居住しながら窓越しに砂漠を見た人もいるでしょう。実際に砂漠のなかで生活を経験した人もいると思います。
    しかし、いずれも日本と言う世界を引きずり、砂漠世界を眺めたにすぎません。砂漠の民のように生活した人は数少ないでしょう。私自身も砂漠のベドウィンのような生活をしたことはありません。

    ・しかしそれでも酷暑の日中、その反対の寒い夜、死を感じる昼間、生き返る夕刻、何よりも美しい日没後の一刻と、恐怖を感じる日の出のとき、乾き切った喉とそれを潤す甘い紅茶、単調な生活と気の張る生活。水のない砂漠と水のありあまるオアシス。温度差が50度以上もある8月の日中と、12月の砂漠の夜。1日の温度差が50度以上も開く世界。このように、一見何もない砂漠が、最も鮮明に正反対の世界を演出してくれたことだけを覚えています。またあくまでも直線的世界、遠くまで見渡せる俯瞰的世界、すべてが視野におさまる世界。それが砂漠というものでした。
    水と食料に心配のない恵まれた砂漠の生活だけでは、砂漠を語ることができませんが、砂漠での生活は、一つの空間のなかに夜と昼、酷暑と寒暑、天と地という正反対の世界が演出されるなかでの営みであったことだけは印象に残りました。また砂漠はすべてを視界におさめることのできる世界、目的地に向けて直線的に線の引ける世界であり、俯瞰的な世界であることをも重ねて教えてくれたことを覚えています。

    ・砂漠世界を特徴づけているものは、砂粒・両極性・俯瞰性にくわえて、当然のことながら酷暑と酷寒があります。砂漠の気温は、人間の思考性を破壊するほど苛酷なものです。それは生と死が隣り合わせの世界であり、常に死神のささやきが聞こえる世界です。しかし、日本の自然のように、砂漠が人間を襲うということはありません。脅威は常に人間側のミスにより生まれるのです。そこが日本の自然と異なるところです。
    自然災害という現象はこの世界ではごく少ないものです。火山があるわけではないし、水害が襲うわけでもない。熱さは決まっており、寒さも決まっています。夏の昼間に戦車で砂漠を散歩したり、金の鞍や銀の鞍をつけたラクダで散歩しなければ問題はないのです。熱いからといって半袖・半ズボンで砂漠に入らなければ、また防寒服が必要であることを理解していれば問題はありません。

    ・砂漠それ自体は、それほど恐ろしい世界ではありません。だから、砂漠世界の住民は自然への恐怖心を日本人ほど持ってはいません。その結果、恐れがもたらす自然への崇拝が生まれませんでした。
    また、生命を維持する水も食料も得ることができない世界、すなわち自然な恵みがないことから、自然に対する感謝の気持ちも生まれません。
    自然の恐怖と恩恵が得られない砂漠世界では、自然崇拝は当然のことながら生まれないでしょう。すなわちアニミズムの世界とは程遠い世界なのです。その意味でも、自然崇拝信仰を持ったナイル河畔の住民、ティグリス・ユーフラテス河畔の住民とはおおいに異なる世界といえましょう。

    ・砂粒という砂漠を構成している土壌は、この民族に非連続的世界観を与えました。それは因果律の否定という形で表現される思考です。原因と結果がばらばらに位置づけられているという考え方です。
    この思考的特徴が、イスラーム教のなかで最も簡単に表現されている言葉があります。それはアラビア世界でイスラーム教徒が日常多用する有名な「イン・シャ・アッラー」という言葉です。このアラビア語の意味は「もしアッラーがそれを認めたならば」という意味で、ふだんよく使われる言葉です。

    ・この北アラブ族すなわちアドナーン族は、定着民としての生活パターンをいち早くとったことから「定着アラブ」とも呼ばれ、アラビア語で「ハダラ(定着)」といいます。一方、後に砂漠での生活に入ったカハターン族は、遊牧の生活を余儀なくされたため「バドウ(砂漠・遊牧)」と呼ばれました。
    古来、アラブ人は自分の血統に高い関心を持ちます。それがさまざまある名誉のなかで最も重要な名誉として彼らは感じています。これは現在でも変わりません。彼らにとって「バドウ」の出なのか、「ハダラ」の出なのかは重要な問題なのです。ちなみに「ハダラ」という言葉は「文明、ハダーラ」の語源でもあります。「文明は定着により生まれる」という意味です。「バドウ」は「野蛮」とも訳され、イスラーム教最大のターゲットとなり、アル・クラーンのなかでも「アラブ」という名で不信心者の代表のように述べられております。

    ・カーバ神殿。イスラーム教以前からメッカにある神殿で、その名は「四角形」に由来します。黒い石がその呪物の対象として置かれ聖域が周りをかこみ犠牲が捧げられ、年々巡礼が行われました。この黒い石は隕石ともいわれています。

  • 1938年北海道生まれ,拓大政経卒後エジプト・アズハル大学官費留学。中東問題の権威?~序イスラーム教理解のために-アッサラーム・アライコム0プロローグ1本書は専門書にあらず2イスラーム教の理解は日常語で十分3イスラーム教理解のために・「預言者」は「予言者」ではない・混乱をもたらしたヨーロッパからの知識・単純な疑問からの出発・イスラーム教徒としての視点から見る・宗教の日本的共存スタイルを認識・日本的宗教感覚を捨てること4本書の内容構成・ファジルの章・ズフルの章・アスリの章・マグリブの章・アシャーアの章Ⅰアラブ人の思考と行動様式-ファジルの章1風土が生み出したアラビア民族の思考性・アッラーがアラブ人を選んだ・強力な選民思想・疑問の発生・なぜアッラーはアラブ人を選んだのか・嘉義はアラビア語,アラブ人にあり・平和と秩序を求める人々・受領者としての条件・整っていた啓示への理解・なぜアラブ人はイスラーム教を理解できたのか・知識がなくともイスラーム教を理解できたアラブ人・思考と行動様式の源泉-風土と歴史・アラブ人の思考の源泉-沙漠・預言者モーゼに見る風土・異質なアラブ人と日本人・沙漠的環境で育まれたアッラーと人間の関係・「出エジプト記」に見る律法の民・沙漠に一神教思想の源泉あり2日本人と沙漠・一神教と無縁な世界-日本・日本人を作った日本の自然・人間中心の世界-日本・理解できなくても当たり前,日本とアラビア・日本人の沙漠観・「沙漠」と「砂漠」・湾岸戦争に見る日本人らしい誤解・私の見た沙漠世界・イスラーム教は沙漠の民に降りた宗教ではない3沙漠が与えた思考と行動様式・沙漠の砂と日本人の土がもたらす世界観・砂粒がもたらす非連続的世界観・両極的にして直線的景観を見せる沙漠・アラビア語にも見られる両極性の具体例・目線で見る日本人,俯瞰的に見るアラブ人・人間臭さを生む酷暑・酷寒と乾燥・酷暑と乾燥を利したアラブ人の戦法・沙漠で生き抜く方法・人間くさい世界-沙漠・サダム・フセインの行動は沙漠的常識・沙漠は強い忍従性と巧妙な交渉能力を育む・アラビアのローレンスに見る沙漠人の美学・自然崇拝とは無縁な不毛の世界-沙漠4イスラーム教に見る沙漠的思考性・イスラーム教に見る両極的思考性・現実的思考で解釈するアラブ・イスラーム教徒・イスラーム教に見る直線的思考-現世と来世・イスラーム教に見る非連続的思考-断続的歴史観・イスラーム教に見る俯瞰的思考性Ⅱイスラーム教の降誕と預言者時代-ズフルの章1アラビア民族の登場・現代のアラビア・そもそもアラブ人とは誰のことか・アラブ人にとってアラブとは・アラブ人の二大潮流・アラブ人はどこから来たか・歴史に登場するアラビア民族・アラブ人の歴史伝説は伝える・対立する二つの部族2闘争のアラビア・沙漠で生きていくための必要不可欠な能力・埋められた女児達・アラビア的部族社会・沙漠で生まれたアラビア的民主主義3イスラーム以前のアラビア世界・アイヤーム・ル・アラブ・部族的秩序と英雄の時代・訪れた繁栄の時代・堕落をもたらした繁栄・メッカの支配者-クライシュ族・ジャーヒリーヤ時代・腐敗は崩壊をまねき滅亡をもたらす・セム族的危機意識の芽生え4ムハンマドとイスラーム教の誕生・クライシュの子-ムハンマドの家系・貧しき名門の子-ムハンマドの誕生・孤児となるムハンマド・有能な商人ムハンマド・知的にして豪商の寡婦ハディージャとの結婚・ムハンマドという人・危機感を深めるムハンマド・苦悩するムハンマド・ヒーラーの洞窟にこもる・イスラーム降誕・アッラーの郵便配達人ムハンマドの誕生・ムハンマドは単なる人間で単なる使徒・なぜ,人はそれをアッラーの言葉であると信じたのか・至上の音楽-アル・クラーン5原イスラーム教世界の誕生・イスラームへの誘いのはじまり・最初の入信者・ジャヒリーヤへの挑戦・硬軟政策をもって臨んだクライシュ部族・クライシュ部族の有力者が入信・エルサレムへの夜の旅「アル・イスラーゥ」・ムハンマド,アッラーに会う「アル・ミアラージュ」・アッラーがムハンマドに語ったこと・イスラーム教の聖地となったエルサレム・本拠地の移転・移住「ヒジュラ」への旅・湾岸戦争を正当化した移住への旅・ヤスリブでの生活・最初の「アザーン」が響き渡った・ヒジュラ暦の始まり・イスラーム革命の成立・部族意識からイスラーム意識の定着・新たな連帯意識の登場・原イスラーム教国の出現・イスラーム的平和郷(ダール・サラーム)の出現・最高統治者アッラーの君臨する世界・預言者ムハンマドの死・イスラーム世界崩壊の危機・アル・マディーナの誕生6カリフ時代の幕開け・預言者の代理人の選択・預言者の代理人カリフとは・カリフの選出はアラブ式方法で・アラブ社会における指導者の条件・アラブ的色彩の濃い初期イスラーム教世界7正統カリフ時代-拡張と分裂へ・正統カリフ時代とは・第一代カリフ-アブー・バクル・第二代カリフ-ウマル・第三代カリフ-ウスマーン・第四代カリフ-アリー・事態を複雑にした預言者の寡婦アイーシャの存在・イスラーム教最初の分派ハワーリジュ派の誕生・アラビア語世界への逆走・誕生した抗争の二大勢力Ⅲ多様化し拡散するイスラーム世界-アスリの章1歴史の登場・沙漠からの脱出・土地を開拓するという感覚のないアラブ人・いよいよ中東の檜舞台へ・アラビア半島の支配と支配体制のシステム・庇護民(ジンミー)の誕生・二大帝国への挑戦・攻略の戦術-辺境のアラブ人国との協調・生きるための征服の開始・新連帯意識の勝利-三日月地帯の新支配者へ・征服はなぜ成功したのか・勝利の秘密兵器-イスラーム教による連帯意識と背水の陣・点と線で支配せよ・徴税こそ大いなる目的・新社会構造の誕生・偉大なる文明との出合い・異文化化するアラビア・アラビア化する先住民・新たな顔-アラビア語世界の出現・アラビア離れするアラビアの子孫達・新アラブ人の誕生2拡張,定着,そして分裂するアラブ・イスラーム世界・布教とアラビア民族・自発的なイスラーム教への改宗・非アラブ系イスラーム教徒の誕生・新アラブ人のもとで多様化するイスラーム教世界・原イスラーム教から離脱するイスラーム世界・連帯意識を低下させたイスラーム教世界・連帯意識の崩壊が招いたアラビア民族の終焉・危機意識の誕生・回帰運動の発生・試みられたイスラーム教正常化への道・閉ざされたイジュテハードの門・私が経験したイジュテハードの門3イスラーム教は律法なり・教徒だけを対象にする世界・教徒にとって法とは何か・イスラーム教は法なり 法こそ不可欠なり・法の源-アル・クラーン・盲目的に従う者-教徒・法源としてのアル・クラーン・第二の法源-ハディース・第三の法源-イジュマー・第四の法源-キヤース・現実的解釈を優先させた法解釈・イスラーム世界は一つではない・預言者のように-スンニー派・四大法学の成立・ハナフィー学派・マーリキ学派・シャーフィ学派・ハンバル学派・四つの世界を示した「マディーナ・トル・サラームの門」4礼拝所に見る小さなイスラーム教世界・アラブ・イスラーム教における礼拝所とは・礼拝所での一日・いろいろある礼拝所・ジャーミウに見る一法学の世界・大学は金曜礼拝所に付属する機関・マドラサに見る四大法学共存の世界・金曜礼拝は連帯意識の認識Ⅳ雑学イスラーム教案内-マグリブの章1アッラーの支配する世界・ユダヤ教,キリスト教,イスラム教は同根の宗教・中東世界の中における宗教の共存・宗教の共存とお汁粉談義・「ホリデイ」を休日と訳した働き蜂日本人・「干渉されず,干渉せず」の世界・田舎汁粉の世界-中東・都汁粉の世界-日本・日本にしか見られない宗教トラブル・独特な日本的信仰の自由・国家と宗教についての考え方の違い・イスラーム教世界をまもる連帯意識・一神教におけるイスラーム教の位置・地上に誕生したイスラーム教の世界・アッラーの僕としての教徒・断食の行に見られる実例・礼拝所(モスク)は神社や寺院ではない・カーバ神殿は聖なる場所で俗なる場所・アッラーは近くて遠い存在・イスラーム教の目的とは何か・その答えは初めにありき・閉鎖的環境による汚染からの防衛・戒律より体制を守り滅亡から逃れること・労働法はイスラーム教に反するのか・必要ならモスクの破壊,巡礼の中止も許される・臨機応変に守られるイスラーム教の体制・アッラーとの契約不履行は地獄への道・中東では社会主義国でもイスラーム教が国教・ユダヤ教世界も律法の世界・土曜礼拝の朝に学ぶユダヤ教の世界・イスラーム教徒はイスラーム法の中で生活するイスラーム教徒の生活〔誕生と幼児期〕・子供はアッラーからの授かり物・命名式・七日,一四日,二一日のお祝い・幼きムスリム・連帯意識の核-親子〔割礼〕・イスラーム教以前からある割礼の風習・割礼に関するイスラーム教的解釈はスンニー派法学より・割礼をめぐる医学的見解・割礼は合法か否か〔イスラーム世界の教育〕・強い連帯意識を持つムスリムになるために・タウヒードの信仰を身につけること・正解はアッラーが決める・暗記こそ学ぶ心得・宗教を学ぶということは・比較宗教学という講座のない世界・礼拝所も学校になる・至るところが学びの園となる・時・場所・人を選ばないイスラーム教の教育・「マーシャ・アッラー」にもとづく基本理念〔イスラーム教徒の男女交際と結婚〕・イスラーム教世界における男女関係の基本・血の純潔に気を使う男女交際・親が子を殺した悲劇と名誉・親が大きな権限を持つ婚約者の選択・男女関係をチェックするイスラーム警察・結婚に関するアル・クラーンの規定・禁じられている結婚・許される他の経典の民との結婚・結婚は公表して成立する・夫が妻に贈る結婚の贈り物-マハル〔イスラーム教の葬儀〕・死もまたアッラーのなせること・イスラーム教の葬儀・埋葬を見るとイスラーム教以前がわかる2イスラーム教の祭日・メッカからの集団的緊急脱出-ヒジュラ・イスラーム暦の制定・三つの時計を使うイスラーム教世界・きわめて少ないイスラーム教の祭日・断食明けの祭り-エィード・ル・フィトゥル・犠牲祭-エィード・ル・アドハ・個人的に祝うその他の祭り3六つの信仰が育む連帯意識・単純のイスラーム教の信仰・イスラーム教信仰の基本-タウヒード信仰・イスラーム教徒の六つの信仰・六つの信仰-イマーン・①アッラーを信じること・②アッラーの天使を信じること・③アッラーの経典を信じること・④アッラーの預言者を信じること・⑤審判の日を信じること・⑥天命-カダルを信じること4イスラム教徒の連帯意識を育む五つの行・①信仰の告白-シャハーダ・②礼拝-サラート・③喜捨-ザカートまたはサダカ・④断食-サウムまたはスィヤーム・⑤巡礼-ハッジ5連帯意識の結集-ジハード・ジハードの意味-「アッラーの道のために奮闘努力すること」・イスラーム教徒に課せられた最も基本的な心構え・防衛のための戦い・イスラーム教世界は閉鎖的にならざるを得ない・キタールとジハード・連帯意識の結集-ジハードⅤ今日の中東世界とイスラーム教-アシャーアの章1イスラーム脅威論のはじまり-ウサマ・ビンラーデンと九・一一事件・恐怖の中で迎えた二一世紀・過激派を作り上げたアメリカのアフガニスタン攻撃・管理する者のいないイスラーム世界・イスラーム帝国とカリフ制の消滅・「カリフ制」消滅がもたらしたもの・分割されたオスマン・トルコ帝国,新中東世界の誕生・三種のアイデンティティーが並立する世界の出現2「アラブの春」は民主化運動か・アラブの春が示す政教分離の姿・シリア,イエメン,リビアの騒乱が示す部族世界の存在・近代を彩ったアラブ・ナショナリズムとパン・イスラミズム3近代国家の概念との対立に直面する中東世界・近代イスラーム運動の芽生え・近代国家を否定するイスラーム4イラン・イスラーム革命の衝撃・イランに誕生した指導的イスラーム世界・聖典に見る国家否定の神託5イスラーム運動のはじまり・正統カリフ時代に生まれた最初のイスラーム運動・ハワーリジュ派に見るイスラーム運動・イスラーム降誕五一年目で発生したイスラーム運動6イスラーム過激は運動の要因とは・過激的イスラーム運動とは・内部の矛盾により発生するイスラーム運動・外部からの刺激により発生するイスラーム運動・それはナポレオンのエジプト征服から始まった・イスラーム過激派を生み出した紛争7バグダーディ,ウサマ・ビン・ラーデンらの位置づけとは・「イスラム国」の樹立宣言・九・一一事件がもたらしたイスラームへのテロ疑惑・イスラーム・テロ以前のアラブのテロ・イスラーム過激派について8イスラーム過激派の特徴・過激派の第一の特徴・過激派の第二の特徴・過激派の第三の特徴・さまざまなイスラーム運動・穏健的イスラーム運動・社会的イスラーム環境への回帰・イスラーム国家建設を目指す地域限定的な過激運動・イスラーム世界の防衛を目指す国際的過激派9指導的イスラーム運動の実例・イブン・サウドによる統一サウジアラビア王国の建国・ホメイニー師によるイラン・イスラーム世界の再建・アフガニスタン・タリバンに課せられてきた責務10「イスラム国」を読み解く・突然の「カリフ国家成立」宣言・「イスラム国」出現の過程・アル・カイーダとの関係は・八年前に出されていたスウェーデン人風刺画家暗殺指令・なぜ「イスラム国」には若者が集まるのか11過激派組織を支えるもの・イスラムの運動,組織とその資金 エピローグ~目次を書き出しても解答に繋がらないのが本書の特徴…問い続けて問い続けて…答えはそう難しくない。アラブという言葉は,南の都市に住む者(バドゥ:定着)が北の沙漠に居住する人々(ベドウィン:ハダラ:遊牧)をヤーラブと呼んだことから来たらしい。奴隷の如く盲目的に従うことにより得られた平和をサラームという。ムハンマドは文字を知らず,美しい文章を口にすることもなかったから信頼された。エルサレムへの夜の旅で出会った預言者は,アダム・イーサ(キリスト)・ヤーヒア(バプテスマのヨハネ)・ユーセフ(ヨセフ)・イスハーク(イサク)・ハールーン(アロン)・ムーサ(モーゼ)・イブラヒーム(アブラハム)で,ノアには会っていないのが不思議。「ハリーファ」(代理人)を日本語で「カリフ」というが,2~4代は暗殺されている。アリーはウマイヤによって殺されたと思っていたが,カリフに叛旗を翻したウマイヤとの戦いを止めたことを違法だとしたハワーリジュ派によってであった。「シーア」とは「党」「派」という意味で,シーア・アリーとかシーア・ウマイヤというべきだ。尤もウマイヤ党はスンニー(預言者の言動)と名乗るけど。礼拝所には膝を屈する場所という意味のマスジットと人の集まるところと云うジャーミウがあるが,ジャーミウは一学派の礼拝所で法律相談所のような場所で,昼間に大勢で行われる金曜礼拝を行う。イスラム教徒の日常生活は他人が介入しない平穏な世界で,イスラム教徒には自分の意志が存在せず,すべてがアッラーの意向によって決定されていると説明する…それを信じる者がイスラム教徒。イスラム教はアラブという孤立していた部族的アイデンティティをイスラム教としての連帯性を持つ超部族アイデンティティに置き換え,アラビア半島に居住する部族を一つの意志のもとに統一し,顆粒化状態にあった世界を一枚の板のように変化させ,民族の安定を目的として登場してきた宗教である。アラーはイスラム教徒を奴隷として平等に扱い,直接的に命令する。アラーの前の奴隷としての平等。近代国家の条件は「主権在民」であり「自由なる国民の存在」であり「人権の確立と独立」であるが,イスラムをアイデンティティとする世界では「主権在神」であり教徒と呼ばれる住民は「アラーの奴隷」であるため,近代国家への流れに対して抵抗が生まれ,混乱が起こる。中東に住む住民の大部分は基本的に未だ国家意識がなくて,その心の拠り所は宗教である。イスラム教徒は政教分離という潮流に反発している。大陸世界では未来永劫に維持される国境はない・下段の補足解説目次…1・アラビア語の音・アラビア語の文字表記・母音は三つ,意味がわかって初めて音が出る・アラビア語はなぞ解きに似ている・辞書を使えれば初級卒業・アラビア語は音楽です・二つあるアラビア語・十戒・律法と法律・へジャーズ地方・メッカ・アル・マディーナ・沙漠・沙漠での服装・沙漠と水・沙漠の脅威・アラビア半島・オアシス・ワディ・幸福なアラビア・ナツメヤシ・ラクダ・アラビア馬・イスラーム教と動物・セム族及びセム語・アラビア民族の才能・「マー・シャ・アッラー」・日本人とアラブ人の思考の違い・2・現代のアラブ人・北アラブ族と南アラブ族・マーリブのダム・「ハダラ」と「バドゥ」・遊牧民・アラブ人の名前・部族社会・アイヤーム・ル・アラブ・族長会議(マジリス)・クライシュ族・アラブ的指導者・シャーム地方・連帯意識(アサビーヤ)・イスラーム教と偶像・ライラ・トル・カドルと三日月の国旗・「敵が襲来した」という逸話・天使ジブリエール・最初の男子入信者は誰か・カーバ神殿・エルサレムへの夜の旅・ムハンマドが会った八人の預言者・ユダヤ教・キリスト教徒の関係・ヒジュラ(移住)・マディーナという町・バドルの戦い・ウフドの戦い・ハンダクの戦い・フダイビアの盟約・メッカ開城・ユダヤ教徒との戦い・原イスラーム世界・預言者の妻たち・預言者の子供たち・預言者の孫・分裂と繁栄,暗殺と謀略の時代の幕開け・アラブ世界のシーア派・3・イスラーム教と布教・布教よりも税収を,それを証明したマワ-リ制度・アラブ・イスラームより滅亡した二大帝国(1)ペルシャ帝国(2)ビザンチン帝国・三日月地帯征服の二人の猛将(1)シリアの征服者ハーリド・イブン・ワリード(2)エジプトの征服者アムル・イブン・アース・主なイスラーム教国(1)ウマイヤ朝(2)アッバース朝(3)後期ウマイヤ朝・モンゴルにより断ち切られたアラブ人の歴史・百花繚乱のエジプト・イスラーム世界(1)トゥールーン朝(2)イフシード朝(3)ファーティマ朝(4)アユーブ朝(5)マムルーク朝・主なシーア派諸派(1)一二イマーム派(2)ザイド派(3)ドルーズ派(4)アラウィ派(5)イバーディア派・4・新聞記事を読んで・礼拝のはじまり,アザーン・ウドウ(お清め)の作法・ウドウの順序・礼拝について・礼拝の単位-ラカー・各礼拝の回数・エジプト・アラブ共和国憲法・金曜日の特別な礼拝・礼拝のしかた・礼拝の次第・義務の礼拝と任意の礼拝・結婚に関するアル・クラーンの一節・離婚に関するアル・クラーンの一節・結婚契約金「マハル」・離婚・イスラーム教の墓・ヒジュラ暦(イスラーム暦)・預言者の生誕祭・アラブ・イスラーム教世界の祭り・みいつの夜・「アル・クラーン」について・イスラーム教にとって最も大事な「タウヒード」・天使・いろいろあるアッラーの名前・イスラーム教と刑罰・礼拝の方向「キブラ」・ジハード・5・アメリカ同時多発テロ事件・ウサマ・ビン・ラーデン・ボコ・ハラム・アッ・シャバーブ・イジュテハードの門・アラブの春・シリア動乱・アヤトラ・ホメイニー師・イスラーム教は世界の脅威か・サヌーシ教団・マハディー教団・ムスリム同胞団(イフワーン・ムスリミーン)・イラン・イラク戦争・湾岸戦争・イラク戦争・預言者時代を彷彿させるワッハーブ運動・パレスチナ問題・アラブの中のパレスチナ問題・レバノン内戦・ハマス・中東諸国の人口と宗教の構成比…実際には補足がないと話が繋がらない部分もある

  • 正直に書こう。読了できていない。
    内容が今まで自分の知っているものや常識と乖離が大きく、ついて行けなかった。これで基礎なのだ。恐れ入る。
    しかし何より理解できなかったのは、民族的基盤の全く異なる層にこの宗教が広まる理由だ。女性が自発的に入信する理由があるのだろうか。
    本書は佐藤優が、「イスラームについて知るには、この本を超えるものはない」と書いていることから内容の正確性は高い物なのだろう。
    これから本書を手に取る方へ申し上げたい。
    日本でステレオタイプに言われるイスラム教と本書の内容にはかなりの乖離があり、理解に苦しむ物も多い。それについては宗教だからと思うしかないだろう。
    異文化への理解が間違いなく進む書籍であるからして、正しい知識の取得のため、より多くの方に読んでいただくべきと考える。

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著者プロフィール

1938年、北海道に生まれる。1964年、拓殖大学政経学部卒業。卒業後エジプト共和国開催の世界青少年会議に参加のため渡航、アズハル大学に政府官費留学生として滞在。1971年帰国。1975年、国際商科大学に奉職と同時に財団法人昭和経済研究所内にアラブ調査室を開設、室長としてアラブ政治情勢分析を関係各位に提供、中東季報の刊行を開始し、財団法人中東協力センターニュースに毎月アラブ政治情勢分析を25 年にわたり発表。情勢分析報告会を開催、情勢分析活動を展開。陸・海・空自衛隊幹部学校、警察大学校、関東管区警察学校、筑波大学大学院、拓殖大学大学院、千葉商科大学等で講義。アジア親善交流協会企画委員、エネルギー情勢調査会研究員、拓殖大学海外事情研究所客員教授、拓殖大学イスラーム研究所客員教授。2008 年、東京国際大学を定年退職。現在は財団法人昭和経済研究所アラブ調査室室長、東京国際大学名誉教授、田中塾塾長、扶桑塾塾長、アラブ戦略問題懇話会代表世話人。専門はアラブ政治情勢分析。主な著書に『イスラーム教を知る事典』、『イスラーム過激運動』(いずれも東京堂出版)ほか。

「2015年 『イスラーム基礎講座』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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