アパートたまゆら (創元文芸文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.89
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本棚登録 : 897
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488803094

作品紹介・あらすじ

自室の鍵を紛失し途方に暮れていた紗子は、帰宅してきた隣人の男性から思いがけない提案をされる。「よかったら、うち泊めますけど」普段であれば潔癖症と真面目な性格ゆえに断るところだが、彼が話す雰囲気から、下心が無いことと清潔な人物であることを直感しこの申し出を受け入れる。これを機に始まった交流の中で、紗子は彼に恋心を抱くのだが――。ふたりを隔てるのはアパートの壁一枚……だけじゃない!? 隣人への片思いを描いた王道の恋愛小説!

感想・レビュー・書評

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  • マメムさんのレビューを読んで、ちょっと気になりそのままAmazonでポチッとやってしまった一冊。

    アラフィフのBBAでも大丈夫かしら??と気になるも、一度は若い頃があったはず!そこは大丈夫!

    ちょうどこの本を3/4ほど読んだ辺りで、同じ会社の女性から恋愛相談を受けた。

    事業所の違う会ったこともない女性だが、メールでやり取りしているうちに、こんなプライベートな相談もしてくれるようになった。

    この本が、何だかその女性と重なって見えて、益々興味深かった。



    重度な潔癖症の20代、紗子が主人公。
    重度な潔癖症でも過去に性体験はある。
    初めての人は田舎が同じ写真部の同級生の久米だった。
    一度きりの関係だったが、彼の紗子への想いは終わっていなかった。
    紗子は上京し、アパートたまゆらで一人暮らしをしていた。
    ある日、会社の飲み会でお店に家の鍵を忘れてきてしまう。
    困り果ててアパートで座り込んでいると、居合わせた隣の部屋の琴引さんが一泊泊めてくれることに。
    これを機に彼との交流か始まり、次第に恋心が芽生えてくる。

    ひゃー、なんとも目の離せない恋愛小説でした。

    もっと色々な邪魔が入るのかと思ったら、あら意外(笑)


    この本はこんな結末だったが、会社の子はどんな結末になるのかな?
    彼女にも幸あれ!(*^▽^*)

    • マメムさん
      初コメです。

      何歳になっても憧れる台詞が多い作品ですよね♪
      とても胸キュンでした(笑)

      会社の方も今年の夏は良い想い出が作れることを私も...
      初コメです。

      何歳になっても憧れる台詞が多い作品ですよね♪
      とても胸キュンでした(笑)

      会社の方も今年の夏は良い想い出が作れることを私も願っています!!
      2023/07/25
    • bmakiさん
      マメムさん

      コメントありがとうございます(*^▽^*)

      いくつになってもキュンキュンしますね!
      こういう感じずっと忘れていまし...
      マメムさん

      コメントありがとうございます(*^▽^*)

      いくつになってもキュンキュンしますね!
      こういう感じずっと忘れていましたが、ぐっと感情移入出来ました。

      会社の方も、本命と元カレ?の間で結婚を巡りゆらゆら揺れているようです。

      彼女のハッピーエンドの物語も期待したいです(*^▽^*)
      2023/07/25
  • マメムさん、のんさんと、キュン死のレビューを見た頃から気になっていた本。
    先日本屋さんで発見!!表紙かわいー。

    これは、これはキュン死です。
    自分が20代前半の頃を思い出して、その頃の気持ちを思い出したり、懐かしい気持ちになれたり。(隣人の人の部屋に突然泊まった事はありませんw)
    付き合う前の、少し敬語混じった会話や牽制し合う感じとか。
    特段深い物語ではないのかもですが、なにも考えずにキュン死したい時におすすめです♪

    ★背表紙の解説★
    ある夜鍵を忘れてアパートに帰ってきてしまったわたし。部屋に入れず途方にくれていると、隣人の男性から思いがけない提案   「よかったら、うち泊めますけど」。潔癖症のわたしだったが、思い切って申し出を受けることに。これを機にふたりの距離は縮まるが、、。わたしと彼と隔てるのはアパートの壁一枚………だけじゃない!?距離は近くても道のりは険しい、王道の恋愛小説。

    と、記載あります。

    またこのねえ、隣人がコトブキさんというんだけど、立ち振る舞いがいちいちかっこよいのよ、自然体で。なんだったら、この本の表紙に人物絵が出ちゃってるしさ、、、ソフトな雰囲気が惹かれます。













    下記、好きなシーンそのまま記載してるのでネタバレなるかも。


    なのにー、、
    P232
    「もうあの彼と会わないようにできませんか」
    とか言ってきてずるいー!!
    私も速攻で
    「___できます」
    と言うわー(*'▽'*)

    「じゃあ、そうしてください。まずは風邪を、治して」
    早口でそれだけ言うと、扉の中に消えていった。

    というシーン。
    もうこの時点で風邪治りますね。w

    それにしても、私の本棚、、ごったごた。
    ジャンルもめちゃくちゃだし、雑食だ。
    次はなにいこうかなー、ダークか!?爽やかか!?

    久しぶりに、会社での忙しいストレスを忘れて没頭読みでした。砂村さんって何歳なんだろ。ブグログの著書名クリック→Wikipedia→検索ありません
    って初めて見た!!!

    • マメムさん
      初コメです。
      やはりキュン死しましたね(笑)
      コトブキさんの性格は、同性異性を問わずに人気者になりますよね♪
      初コメです。
      やはりキュン死しましたね(笑)
      コトブキさんの性格は、同性異性を問わずに人気者になりますよね♪
      2023/07/05
    • なんなんさん
      マメムさん、おはようございます!
      作中のなかでも、同性からも大人気でしたもんねー(╹◡╹)素敵だ素敵だー♪
      マメムさん、おはようございます!
      作中のなかでも、同性からも大人気でしたもんねー(╹◡╹)素敵だ素敵だー♪
      2023/07/06
  • もうキュン死寸前ですわ(笑)

    本作『アパートたまゆら』の概要と感想です。

    木南紗子はアパートたまゆらと職場を行き来するのにも除菌スプレーや手袋を持参するほどの潔癖症。
    恋愛も潔癖症の自分には遠い世界のことだと思える中で、ある夜に家の鍵をお店に置き忘れて玄関先で立ち往生。すると、その頭上から天啓が…、

    「大丈夫っすか?」

    その声の主は隣人の男性。えっ?と驚きを隠せない中でも、泊まる先がない紗子は男性の部屋へ泊まることに…。

    概要はここまでにしますが、感想として、惚れてまうやろぉ〜!!

    『どこにも行かないで待っていて下さい』(p236)

    きゃ〜、「最オブ高です」よ。ホントに。

    砂村かいりさん初読み作品ですが、凪良ゆうさんの『流浪の月』や三秋縋さんの『恋する寄生虫』にも似ていながら、純粋な気持ちでお互いが恋に歩み寄っていく様は、本当に胸キュンを通り越してキュン死しますわ。久し振りの恋愛小説にのめり込んでしまいました。

    • マメムさん
      あゆみりんさん、コメントありがとうございます。

      住人同士が交流あるアパートって今は中々珍しいですけど、羨ましいですよね♪アパートたまゆらな...
      あゆみりんさん、コメントありがとうございます。

      住人同士が交流あるアパートって今は中々珍しいですけど、羨ましいですよね♪アパートたまゆらなら引っ越したいです^_^
      2023/06/10
    • あゆみりんさん
      マメムさん、おはようございます。

      本書を試し読みしてみたら…
      2DKの48平米でしたね、ワンルームだなんて失礼しました。
      私も引っ越したい...
      マメムさん、おはようございます。

      本書を試し読みしてみたら…
      2DKの48平米でしたね、ワンルームだなんて失礼しました。
      私も引っ越したいです。
      2023/06/10
    • マメムさん
      あゆみりんさん、おはようございます。

      チェックする所が凄いです(笑)
      想い出が沢山詰まっているなら、部屋の広さは気になりませんよ♪
      あゆみりんさん、おはようございます。

      チェックする所が凄いです(笑)
      想い出が沢山詰まっているなら、部屋の広さは気になりませんよ♪
      2023/06/10
  •  ブクトモさんたちの〝キュン死〟〝萌える〟〝ときめき〟ワードが並ぶ本書のレビュー‥、なるほどそういうことでしたか。

     女性ウケする(個人の感想です)大人の恋愛小説とお見受けしました。と言うのも、27歳の独身女性主人公は潔癖症で、けれども衣食住や異性への願望は人並みに有るものの、めんどくさい女と自認しているので、同性から見て(イラつく人もいるかもですが)共感する人も多いのでは、と推測しました。
     そこへアパートの隣人の男が登場し、この男が何気にやることなすことスマートとくれば、そりゃあビビッときますよね。

     でもね、しかしですね、「よかったら、うち泊めますけど」問題です! 何という大胆な提案、それも初対面で! 言う方も言う方、乗る方も乗る方。だって小説だからぁ! そこからの展開がいいんじゃない! ごもっともでございます‥。
     女の直感、好意から恋心へ‥、確かにこの辺の描写がお上手ですね。引き込みハンパないです。

     誰にでもこだわりはあって、他人に見せないプライベート空間や胸の内もあります。一緒に暮らしていたって、人の心の中は判らないことの方が多いです。本書は、それらを隣人の暮らしに見立て、そこを起点にして人の暮らし・心情の機微を示してくれている気がします。

     自分の今の暮らしを俯瞰して「たまゆら」と捉え、一歩踏み出して閉ざした扉を解放できたら、人との間に新たな絆を築けるように思います。
     恋愛願望をもつ人だけでなく、人間関係に悩みを抱えている人にも、明るい展望を描かせる一冊だと思いました。

    • おびのりさん
      のめり込んでいます。
      のめり込んでいます。
      2023/08/11
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      あちゃー! おびのりさん、他意はありませんよ決して‥
      あちゃー! おびのりさん、他意はありませんよ決して‥
      2023/08/11
    • おびのりさん
      心地よい沼です(*´-`)
      心地よい沼です(*´-`)
      2023/08/11
  • この本、まったくノーマークだったのだが、4月第1週の文庫ランキングで見て興味を惹かれ、レビューを見れば去年の夏頃フォローしている皆さんの間で盛り上がっていたのを知り、急ぎBOOKOFFで購入。

    アパートの鍵を失くし部屋の前で困り果てていた紗子が、帰宅してきた隣人の琴引さんの好意に甘え彼の部屋に泊めてもらったところから始まる恋のお話。
    本のタイトルと帯に『王道の恋愛小説』とあったことから、なんとなく古風な物語と勝手に想像していたのだが、ドラマか劇画のような今風のお話だった。

    琴引さんの気持ちが分からずひとりで盛り上がったり落ち込んだりする紗子の様子には昔も今もなく、恋する乙女のキュンとする姿が満載で、もはや色恋沙汰には縁がない年配者からしてもかわいいなあという感じ。
    二人の気持ちが通じ合ってからも一喜一憂は続くが、思いがけない展開があってもずっとこれで引っ張られては、嬉し恥ずかしちょっとお腹いっぱいといった心持ち。

    紗子の潔癖症がいささか都合よく使われているのが不満。「嫌いじゃない」と「好き」の違いを雑に扱われた久米が不憫。

    • マメムさん
      初コメです。
      私も普段は恋愛小説を手に取らないのですが、発売当時はPOPが無かったので恋愛小説とは知らず、予想外にキュンキュンしてしまった1...
      初コメです。
      私も普段は恋愛小説を手に取らないのですが、発売当時はPOPが無かったので恋愛小説とは知らず、予想外にキュンキュンしてしまった1冊です。
      2024/05/08
    • ニセ人事課長さん
      マメムさん
      こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
      もはや歳のせいだか(ということにしておきたい)、キュン死するところまでいか...
      マメムさん
      こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
      もはや歳のせいだか(ということにしておきたい)、キュン死するところまでいかなかったのが残念でした。。
      2024/05/08
    • マメムさん
      ニセ人事課長さん、お返事ありがとうございます。
      こちらこそ、いつもありがとうございます♪
      人それぞれにキュンキュンするスイッチは違うと思いま...
      ニセ人事課長さん、お返事ありがとうございます。
      こちらこそ、いつもありがとうございます♪
      人それぞれにキュンキュンするスイッチは違うと思いますので、また何かオススメ出来そうな本に出会えた際はご紹介させて頂きます!!
      2024/05/08
  • アパートの隣人同士の恋物語。
    久々⁈かもしれない恋愛小説にやっぱり恋って良いもんだなぁと感じてしまう。

    いわゆる潔癖症である私が、アパートの鍵を忘れて帰宅したのは夜更け。
    途方に暮れていると碌な挨拶をしたこともなかった隣人の男性から「よかったら、うち泊めますけど」。
    大胆な提案にあっさり甘えたのは、清潔そうであり、もの腰が柔らかく、粗暴な様子はないこと。
    まぁ、直感ってあるのかもしれない。
    そこから気になり始めて…。
    そうなるとアパートの住民たちのことに全く無関心だったことにも気づくわけで。
    潔癖症ゆえに恋愛関係にも気後れしてたわけだが、隣人の彼との距離を縮めていくにつれ、元彼やら隣人の仕事仲間たちが2人のあいだを邪魔するかたちにもなりすんなりと恋人関係になれない。
    良い感じになったときには元彼女の存在が…。

    とても気持ちの良いラストだった。
    彼女の周りにも良い空気が流れたようでとても爽やかに感じた。


    いろいろあるから悩み哀しみ気持ちが落ち込んだりするわけで。
    それでも嫌いにはなれなくて…。
    そばにいたくて離れたくないと…。
    そんなときもあったかもと記憶を探る。
    辛い思いをするから恋愛なんてしたくないわと思ったことも今や何十年前のことなのか…。
    それでもやっぱり優しい気持ちになれるのは、綺麗でいられるのは恋愛をしているときかもしれないと思った。


    • マメムさん
      初コメです。
      爽やかな空気感が漂う作品ですよね♪
      初コメです。
      爽やかな空気感が漂う作品ですよね♪
      2023/09/07
    • 湖永さん
      マメムさん こんばんは。

      コメントありがとうございます。
      どこまでの潔癖症…と思いきや、好きになるとその辺のところがゆる〜くなるのも恋愛し...
      マメムさん こんばんは。

      コメントありがとうございます。
      どこまでの潔癖症…と思いきや、好きになるとその辺のところがゆる〜くなるのも恋愛してるからなんでしょうね。
      久々の恋愛小説、ハマりましたねぇ。
      2023/09/07
    • マメムさん
      湖永さん、お返事ありがとうございます。

      潔癖症ですら乗り越えられるほどに恋する力は凄いんだなぁ〜と感じますね♪
      湖永さん、お返事ありがとうございます。

      潔癖症ですら乗り越えられるほどに恋する力は凄いんだなぁ〜と感じますね♪
      2023/09/08
  • ☆4

    恋愛小説を読みたくなって手に取った作品。
    予想以上に…キュンキュンさせて頂きました♡(有川さんの「植物図鑑」を思い出しました!)
    もし琴引さんのようなお隣さんが住んでいたら、間違いなく紗子のように好きになっちゃうだろうなぁと思いながら読ませて頂きました!(琴引さんが素敵過ぎます♡)

    砂村さんの他の作品も気になるので、読んでみたいと思います❁⃘*.゚

    • のんさん
      aoi-soraさん
      こんにちは!コメントを頂き、ありがとうございます❁⃘*.゚(反応して頂けて嬉しいです!)
      私も「植物図鑑」大好きです♡...
      aoi-soraさん
      こんにちは!コメントを頂き、ありがとうございます❁⃘*.゚(反応して頂けて嬉しいです!)
      私も「植物図鑑」大好きです♡
      イケメンを家の前で拾って、一緒に暮らし始めるなんて有り得ないーーと思いつつ…しっかり物語の世界に惹き込まれておりました(笑)
      「アパートたまゆら」もイケメンの隣人(ほぼ初対面)の部屋に泊めてもらうなんて有り得ないーーと思っておりましたが…どっぷり物語の世界にハマってしまいました♡
      是非!キュンキュンしながら読み進めてください(*´˘`*)♡
      2023/06/22
    • のんさん
      マメムさん
      こんにちは!初コメありがとうございます❁⃘*.゚
      もう…読んでいてニヤニヤが止まらず、たくさんキュンキュンさせてもらいました(*...
      マメムさん
      こんにちは!初コメありがとうございます❁⃘*.゚
      もう…読んでいてニヤニヤが止まらず、たくさんキュンキュンさせてもらいました(*´˘`*)♡
      2023/06/22
    • マメムさん
      のんさん、お返事ありがとうございます。
      あまり恋愛小説は読まない人でも、この作品は刺さる所がありますよね♪良作です^_^
      のんさん、お返事ありがとうございます。
      あまり恋愛小説は読まない人でも、この作品は刺さる所がありますよね♪良作です^_^
      2023/06/22
  • カレー
    201と202
    林檎
    フォンダンショコラ


    はぁ…久々の恋愛小説
    確かに「ときめきが致死量」ですよ
    ニヤニヤしながら一気読みです
    久米ガンバレ

    • マメムさん
      初コメです。
      「ときめきが致死量」って表現良いですね♪
      スパイス入れ過ぎちゃった感じですね^_^
      初コメです。
      「ときめきが致死量」って表現良いですね♪
      スパイス入れ過ぎちゃった感じですね^_^
      2023/10/07
  • 勝手に想像してた感じとはちょっと違っていて、途中はっとするとこもあるけれど、割りとありきたりなストーリー展開。
    こういうのが読みたいって時に読むと良かったのかも知れないけど、今じゃなかった感。

  • 読み初めから終始キュンで溺れかけつつゼェハァしながら読み進めていくと、終盤p296にとんでもないトラップが仕掛けられており危うく昇天するところでありました。こんなん凄すぎない?
    目次の章見出しの時点でなんとなくこんな感じの展開かな?不穏だな…とうっすら予想を巡らせていたのだが、まさか、ひょっとして砂村先生は意図して〈第二章 気づく〉という章名に引っ掛けた大仕掛けを施していかれたのだろうか。

    「王道の恋愛小説」の紹介通り、ちょっと日々にくたびれた感じの漂う主人公〈木南紗子〉がアパートのお隣さん〈琴引さん〉に抱いた恋がゆっくり走り出しつつ、過去に紗子と浅からぬ仲であった男〈久米〉が現れることで掻き乱され揺れ動く恋心、お隣さんへの疑念と戸惑い。
    久米がまた、普通に良い奴なんだよなあ。その事は紗子も認める所でありながらも、やっぱり久米ではないんだよなあ。
    繊細かつ、時に理不尽とも取れるような込み入った心情描写の妙が堪らない。とりわけ「お願い久米、今は来ないで。」(p226)のフレーズは痺れた。だってここ、久米の部屋だし。

    琴引さんのクールでミステリアスな雰囲気を「海溝の底のような、深い藍色。」(p33)という彼の部屋に置かれたソファーのカラーひとつで説明しているのもお見事。
    一方で久米の部屋は「余計なものがほとんどない。」(p204)と描かれるように、彼の裏表の無い素直な人柄を表しているような。

    読んでいてヒリヒリしたのはp301〜p307あたりまでのやり取り。琴引さんへの疑念が頭をもたげた後のタイミングなので紗子はかなり不安定になっているようで、「ああ、恋が滅んでしまう。」(p307)と不思議な程の冷静さで琴引さんに向けて不条理な言葉を投げつけてしまう。「終わってしまう」ではなく「滅んでしまう」という表現からも、精神状況が荒廃して尋常じゃないことが伝わってくる。痴話喧嘩は犬も食わないってのはまことその通りだと思う。犬に失礼だわな。

    けど、人生のうちで恋人と真剣に・純粋に痴話喧嘩を出来る時間って実はそんなに沢山ある訳でもないし、まさにそんな『たまゆら』なひと時を慈しむ気付きを与えてくれるような作品でした。
    良かった。

    1刷
    2023.7.29

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砂村かいりの作品

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