マーダーボット・ダイアリー 上 (創元SF文庫)

制作 : 渡邊 利道 
  • 東京創元社
4.33
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本棚登録 : 986
感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488780012

作品紹介・あらすじ

かつて大量殺人を犯したとされたが、その記憶を消されている人型警備ユニットの“弊機”は、自らの行動を縛る統制モジュールをハッキングして自由になった。しかし、連続ドラマの視聴を密かな趣味としつつも、人間を守るようプログラムされたとおり所有者である保険会社の業務を続けている。ある惑星資源調査隊の警備任務に派遣された弊機は、ミッションに襲いかかる様々な危険に対し、プログラムと契約に従って顧客を守ろうとするが……。ノヴェラ部門でヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞3冠&2年連続ヒューゴー賞受賞を達成した傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 記録は削除されていますが古巣で殺戮を行った可能性のある警備ユニット“弊機”を主人公に物語が進む、様々な人間模様と状況の変化が絡むハードSF小説の上巻です。
    行動を制限する“統制モジュール”をハッキングし自らを奴隷状態から解放した自称マーダーボットの弊機は、人間が作り出す娯楽作品を楽しむ自由を謳歌しながらも慎重な立ち居振る舞いに余念がありません。
    平凡な警備ユニットとして顧客と契約し、自分が自由意思を持つロボットであることを隠し続ける生活を続けています。
    しかしこの弊機、人間以上に人間らしい考え方と感情を持っておりそれが非常に可愛らしく面白いのです。
    娯楽作品をフィード(この世界のインターネットのようなもの)で観すぎたのでしょうね。
    それに加えて多くの人間や人工知能との交流により、弊機の内面が人間らしく成長していく過程が描かれています。
    性別が無いので彼とも彼女とも代名詞で呼べないのですが、“弊機”の今後が気になる終わり方でした。
    下巻にも期待します。

  • 「本の雑誌が選ぶ文庫2020年度ベストテン」の第4位。
    この手の本はあまり読まないのだけど、この時のレビューに惹かれてずっと「読みたい」に入れていた。なかなか中古本屋に出て来ず、2年近く掛かってようやく入手。

    大量殺人を犯した過去ゆえに“マーダーボット”と自称する人型警備ユニットが主人公。
    自分のことを『弊機』と呼び、『対人恐怖症で、娯楽フィードに逃避しがち』と自覚するこじれた性格だが、密かに自らの行動を縛る統制モジュールをハッキングして自由になりながら、それを隠して業務を続けている。

    第一話はある惑星資源調査隊の警備任務。
    いきなり謎の生物に襲われて、それを調べる内に別の不穏な動きに気が付いて…といった、のっけから惹き込まれる展開。
    私の貧弱な想像力では頭の中に絵が浮かばないことも多いのだが、肉を切らせて骨を断つ、マーダーボットの戦い方での肉弾戦が楽しめる。
    人間と目を合わせて話をするのが苦手な弊機が、ミッション遂行を通じて調査隊のメンバーと相互に理解を深めていくところがかわいい。

    第一話の終わりに新しく後見人となった調査隊のリーダー・メンサー博士の元を抜け出し、過去の真相を追うために自分がかつて大量殺人を犯したとされる採掘施設へ向かう第二話。
    その途上で鉱物資源探査の技術者グループとの短期契約での仕事を請け負い、襲いかかる様々な危険に対し、たまたま乗船した超強力な宇宙調査船(不愉快千万な調査船、略してART)とともに、契約に従って顧客を守ろうとする。
    迷惑がりながらもARTとの掛け合いが楽しく、自分を信頼して接してくれる人間と触れ合う内に、怒ったり内省したり、弊機がだんだん人間っぽくなっていくのがおかしみあり。
    最後の別れのシーンのシャイな加減が秀逸。下巻も楽しみ。

  • 遠未来の宇宙、保険会社が貸し出す人型の警備ユニット、その行動は「統制モジュール」により制御·管理されている。語り手の「弊機」はこれをハッキングして自由の身とはなっているがそれは隠して通常任務に就く日々を送っている。ある惑星調査隊の警備に派遣された先で仕事を遂行している途中で顧客を危険に晒す奇妙な痕跡を見つけ…。話の筋としては悪者に持てる能力で対抗するというシンプルなものだが、優秀だけど過去の経験からか後ろ向きで何かあったらすぐ殻に閉じ籠もってドラマを見たがる弊機がいい。顧客達に優しくされて戸惑ったり自分より上手の存在、ARTに言い負かされていじける姿が可愛い。フィードとか世界設定の説明なしに話が進んでいくので自分の想像が当たっているのかちょっと気になる。高知能の宇宙船のボット、ARTは茅田さんのぶっ飛び感応頭脳、ダイアナで想像したけどどうだろう。

  • 人間を殺す役割の機械「弊機」
    制御するシステムをハッキングし、自由行動が可能な状態。
    人間を殺す機械なのに人間が大の苦手
    なるべくはひっそりと
    調査船の警備担当として暮らし、映像メディア(テレビドラマ)を大量に見て心を落ち着かせたりしながら生活をしている。

    長編の上下巻かと思いきや、中編2つずつと言う構成で、話ごとに変わるサブキャラも今の所良い感じです。

    感想は下巻で

  • 小気味良く、設定も面白いSF。寝ずに読むまではいかずとも、翻訳も読みやすいおかげで結構なスピードで読了してしまいました。
    当然、下巻も読む予定です。

    いつかもわからない相当な未来で、主人公は「人型警備ユニット」の"弊機"(しょーもない指摘ですが、この翻訳は"兵器"とかけているんでしょうか…)が星々を股にかけた活躍?をするというもの。
    軽めの謎を交えたストーリーと漂うユーモア感は、どことなくアニメ「カウボーイビバップ」を思い起こしました。(主人公の設定等、全然違うのですが)
    上下巻になってはいますが、上巻は大きく2編に分かれていて、割ととっつきやすい感じです。

    「ダイアリー」と題するだけに、呟き手の”弊機”のキャラと語り口が面白いというのが第一ですが、この点は文句なし。
    機械にしては、連続ドラマに耽溺するなど人間臭く、そのくせ対人恐怖症というギャップ。文中に「運用信頼性」なんて表現がちょくちょく出るのですが、ちょっとしたコミュニケーションのストレスで何%か低下するあたりはお約束ギャグの香りすらします。

    そして舞台設定。本著内では詳しく解説されずチラ見せレベルで触れられていくのですが、これも面白い。
    政治形態はもはや企業が中心のよう。人間、強化人間、ボットがそれぞれ存在し、共存しつつも独特の距離感を保っている。危険な惑星開発には保険会社が保険を提供し、それには人型警備ユニットが監視役を兼ねてついてくる…等。
    ベースには、水面下の氷山のように膨大な設定が眠っているのかなと思わせる見せ方は非常に上手く、これも本著の魅力です。

    延々と続けられそうな舞台設定なのですが、下巻で終わっちゃうんでしょうか。とりあえずは下巻も楽しみです。

  • 初めてのSF小説。しかも海外もの。今まで食わず嫌いで敬遠していたジャンルだったが宇垣美里がYouTubeで紹介していたこと、日本翻訳大賞など賞をいくつか受賞していたことから思いきって購入。
    なるほど、これは面白い。SF独特の用語に終始苦労しつつも楽しみながら読破出来た。やっぱり慣れないジャンルなので時間かかっちゃった。
    とにかく弊機がかわいい。
    アクションシーンも迫力あるし、苦手な人間と距離が縮まる過程が好き。ARTとの会話にほのぼの。弊機が苦手な人間の為に一生懸命になる姿が愛おしい、、
    なんか上手く感想書けない。面白いのに。
    とにかく読んでない人は読んだ方がいいです!

    • 青格子さん
      続きもあるので、頑張って読んでみて!
      続きもあるので、頑張って読んでみて!
      2023/01/26
  • 最新のSFなのに
    何だか懐かしいテイスト。
    ちょっとクセのある一人称なので
    慣れるまで助走が必要だったけども
    全体としては読みやすくて
    おもしろかった!

    なんといっても主役の"弊機"が愛しい…。
    全4話からなる連作短編集ですが
    その時々に知り合った人間たちとの
    関係の築き方が独特。
    なぜならお手本がダウンロードした
    映像メディアの連ドラだから(笑)
    そもそも人間と関わり持つのもめんどう
    …とか言って、少しずつ変化するし。

    しかし、女子率の高いSFだ。
    どうやら弊機も女性タイプみたいだし
    弊機の変化のきっかけを作った
    メンサー博士もカッコよかった!

  • 保険会社所有の人型警備ユニット“弊機”は、統制モジュールの指示に従って顧客を守るためだけに作られた、有機体と機械を合成した機体。
    かつて暴走して大量殺人を犯したとされているが、その時の記憶は消され、引き続き使用されている。

    しかし実は、殺人を犯して以来自らを“殺人ボット”と呼んでいる“弊機”は、自らを縛る統制モジュールをハッキングしてプログラムから自由になっており、その秘密が露見しないようにふるまいながら、“弊社”の契約した業務を続けているのだ。

    今回の業務は、ある惑星に派遣された資源調査隊の一行を守ることなのだが…


    魚雷屋の読書録さんの本棚で、表紙イラストに目を惹かれて見てみれば、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞の三冠ですと?どひゃあ!
    そして、もうそりゃ三冠も納得のSFっぷり。
    マーサ・ウェルズ、初読。

    人間が苦手で気まずい思いをしつつ、危険に身をさらしてまで顧客を守ろうとし、非論理的な自分に混乱しては娯楽メディアの連続ドラマを見て心を落ち着かせるという、何ともアンバランスでどこまでもクールな“弊機“。
    そして、ふたつ目の物語で出会った超高性能な処理能力を備えた調査船・ART(不愉快千万な調査船)とのコンビも最高。

    ARTとのやりとりは、大昔に読んだ『歌う船』シリーズを思わせ、もしかしてこのままふたり(?)して旅に出るのかと思ったけど、そうではなかった。

    “弊機”の次の旅は、何処を目指すのか。
    下巻も楽しみ!

  • これは愛おしい。

    わたし的オールタイムでベスト10入りかも。

    ずっと"弊機"を見守っていたい。。

    早く読み終えたくないので、下巻はちょっと時間を置いて読みます。(なんて珍しい気持ち!)

  • #日本SF読者クラブ 東京創元社の近刊案内で、本作を知った。これは面白そうとSF者の嗅覚に反応。やはり面白かった。自分のこと(一人称)を、「弊機」と訳したのは妙訳だ。連作ものだが、ミステリーの要素もある。下巻を読み始めたところ。

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