チャリオンの影 上 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488587024

作品紹介・あらすじ

戦の末に敵国の奴隷となり、身も心もぼろぼろになって故国に戻ってきたカザリル。運良く少年の頃に仕えたバオシア藩で、国主の妹イセーレの教育係兼家令に任ぜられた。だが、イセーレが弟と共に宮廷に出仕することになったため、カザリルも否応なしに陰謀の渦に巻き込まれることに…。五柱の神々を崇める国チャリオンを舞台にした、ビジョルドの異世界ファンタジー三部作開幕。

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻ともに読了。楽しかったですー。

    主人公の造形からはじまって、話の形が型にはまりにくいものだったので、次の展開がどう動くか予想がつかずにあたふた。
    この人ここで退場? この人有力味方キャラじゃないの!? この人が出ばってくるのかー! 的な意外性があって、それが全く不自然でない展開の中で繰り広げられるので、いい感じに振り回されました。
    この、ポンポンと話が展開して新しい局面が次々と見えていく造りはよいですのう。

    でもカザリル……あなたはそっちとくっつくのか……。
    年齢を気にしながらも、きっちり恋愛アンテナ張って、本人が言うほど枯れていない主人公カザリルはなかなかお気に入りキャラです。
    ウメガトの造形も好きー。

    キャラ1人1人も非常にいい感じで、しかもわかりやすい。真面目な人だと思っていた衛兵の人が、不似合いなぎらっぎらの宝石つき指輪をつけていたり、ああ買収されたんだなー、的な描写が好きです。直接的な言い回しではないけれど、あからさまな間接表現で話が彩られていくのは心地良い。

    ラストのびっくりもきっちり用意されていて、 最後まで飽きずに楽しめました。上下巻できれいにまとめられておりました。

  • 読み応えのあるSFファンタジー。
    35歳の主人公は、おどろくほど過酷な目にあい、もがきながら進んでいく。
    先が読めないピンチもあり、読む手が止まらなかった。
    何気ないエピソードがつながってきたり、上下巻だけれど最後まで引き込まれる。
    若く聡明で活動的な女性たちと、カザリルは対照的で、いいバランス。
    地に足の着いた世界の描写。
    地理や風土、人種や宗教がリアルだからこそ、宗教由来のできごとが、真に迫ってきた。
    五神教シリーズ3部作の第1弾。
    ミソピーイク賞受賞作。

  • 騎士が裏切りにあい、命からがら国に帰り着いた所から話が始まる。皇女に仕え、裏切り者に立ち向かい、不思議な力を身に付け、とSFアドベンチャーである。
    手に汗を握るとまではいかないが、ついつい先が気になってしまい、下巻は一気読みだった。

  • (上下巻を読んだレビュー)

    五神教の設定や中世的世界観が導入から匂い立ち、引き込まれる。政治的駆け引きを中心とする宮廷劇を主軸に、派手ではない宗教的要素で構築されたファンタジー要素が添えられ、大人が読むに足る物語に仕上がっている。ストーリーも、適度に広げたり閉じたり、伏線と回収も滞りなく、感動的な演出ありと隙がない。イブラ国太子のくだりが好例。

    本小説の舞台装置は年代を異にしてトリロジー全体を貫く他、魔術師ペンリックシリーズにも採用されている。「ペンリック」のライト短編の様相とは異なり、「チャリオンの影」は出来栄えが本格的であり、スピード感のある展開と重厚さが両立した、他人に自信を持って推奨できる作品。

  • ビジョルドが本格的にSFからファンタジーへと舵を切った記念碑的作品。非常に作り込まれていながらストーリー展開にスピード感があり、世界観に馴染んだ下巻に入るとあっという間に読めること間違いなし。
    ここまで10年以上書かれてきたSFシリーズとの共通点は大きく二つある。一つ目は、主人公をとにかく叩き落とし続ける点であろう。境遇的に精神的に、そしてもちろん肉体的にとことん痛めつけられ続ける。なにしろ三度死ななければならないのだからなまじっかな苦痛ではなく、一回で楽に死ねるほうがまだしもと思われるほど大変そうである。この作者のお気に入りの表現「温め直した死人のような顔」が面白いほどに頻出である。そしてもちろん最後は突き落とされた分すくい上げられるのである。若い女の子ともいちゃつけるのである。ああカタルシス。
    二つ目は、「伏線回収」という言葉がチャチに思えるほどに作り込まれた緻密なストーリー。ヴォルコシガン・サーガの方はシリーズ後半だいぶ叙情的なストーリーが多くなっていて少し物足りない感があったのだが、舞台を変えたこちらでは壮麗な大伽藍を思わせるようなストーリーの組み立てっぷりで、ああビジョルドやっぱり面白い、の感を新たにしました。何一つ無駄な描写のないエピソード群が素晴らしい。
    「スピリット・リング」では成せなかったファンタジー世界への移行を本作で無事果たした「五神教シリーズ」であるが、実はシリーズ自作が最も評価が高いとのこと。なのに我が家では10年以上前に買って積読のままである。そろそろ読むかー。

  • 常に物語が動いていて飽きさせないので、1ページごとの文字数多いし結構長いし登場人物たちもみんな古くさい割にはすんなり読めたし面白かった。

  • ダグ&フォーンシリーズの方が好き

  • ファンタジー形式ゆえ登場役数限られて主人公の正義が神の下に顕かだが
    構成良く軽快に読める
    でも祈りのことばはAMENでいいのか

  • とても「かっちり」とした作品でした。
    なんというか、全体的に硬質な雰囲気が漂っている感じ。
    凄いのは、その堅さにも関わらず、スイスイと読み進められるということ。
    息苦しさなんて微塵も感じさせない、卓越した文章力の賜物だと思います。

    個人的に、「硬い」物語というのは、本来あまり好きではないのです。
    物語に没頭しにくいというか、集中力が途切れがちになってしまう。
    fantasyにとって、それは致命的と言ってもいいと思います。

    けれど、「硬い」物語というのは、世界観が魅力的であることも多いです。
    巧くコツを掴んで入り込めれば、その果汁を余すことなく味わえるのです。
    本作は、その入り口が分かり易く、サッと物語へと誘ってくれます。
    まさに至福のひとときを堪能させて貰いました。

    まず、世界観が素晴らしいです。
    ほんとに何処かに在りそうな、血肉を備えた世界観だと思います。
    細かい描写は少ないにも関わらず、その「風景」が感じられるのです。
    街並み、服装、空気感、表情。その匂いすらも感じられそうなほどです。
    そして、その世界に生きる登場人物たち。
    これまた活き活きとしていて、息吹を感じられるようです。

    主人公のカザリルなんて、あまりに格好良すぎて惚れ惚れしちゃいます。
    35歳という年齢のせいもあり、派手な活躍は殆どありません。
    むしろ、どことなく哀愁漂うような、そんな人物だったりします。
    けれど物語が進むにつれ、どんどん好感度が増し、格好良くなっていくのです。
    演出の巧みさが際だっているところだと思います。

    そして、その脇を固める人物たちも、これまた魅力的な人達ばかり。
    悲劇も多く、華麗なラヴロマンスなんて殆どありません。
    あるのは、儚くて美しい思いの片鱗が垣間見える程度。
    でも、その煌めきが、これまたとても良い感じにくすぐってくれるのです。
    気持ちの良いこそばゆさが、物語の香辛料として良い役割を担っています。

    本当に面白い作品でした。
    余韻に浸りながら訳者あとがきを読み始めて、思わず声が出てしまいました。
    気付くのが遅すぎでしたが、作者は『<a href=http://www.amazon.co.jp/gp/product/4488587011?ie=UTF8&tag=daysofzephyr-22&linkCode=xm2&camp=247&creativeASIN=4488587011>スピリット・リング</a>』の人なのですね。
    確かに、それを知って思い返せば、あーなるほどなー、って感じで一杯です。
    特に、女性たちの描き方なんて、まさにそうです。当たり前なんですが。

    そして、本作は3部作の第1作目、とのこと。
    2作目は、ヒューゴー、ネビュラ、そしてローカスのトリプルクラウンを受賞したそうです。
    これ以上の面白さが待っているのかと思うと、もう、楽しみで仕方ありません。
    創元さんは、良い仕事しますねー。

  • 半端なく面白い。

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