黄金の狩人1 (道化の使命) (創元推理文庫) (創元推理文庫 F ホ 8-7 道化の使命)
- 東京創元社 (2010年1月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488562076
作品紹介・あらすじ
六公国を危機に陥れた"赤い船団"が撃退されて十五年。王ヴェリティ亡き後、王妃がなんとか平穏に国を治めてきた。一方、王族の庶子にして暗殺者の弟子、今や一族の"技"を継承する唯一の生き残りとなったフィッツは隠遁生活を送っていた。だが、かつての師の来訪が、彼を運命の渦に放り込むことに。圧倒的なスケールの異世界ファンタジー"ファーシーアの一族"待望の続編登場。
感想・レビュー・書評
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表紙はフィッツとスターリング
フィッツは名前を変えた。
道化もゴールデン卿になった。
隠遁生活からバックキープに戻るまで。
前振りが長い。これだけで一冊である。シェイドとの対面は緊張感がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『ファーシーアの一族』の続編らしい。15年後という設定。
わたしはこの前作は未読なので、そのうち手にとってみようか。前作を知らないけれど、この「道化の使命」三部作の幕開けは面白かったです。
隠遁生活をしていたフィッツだが、王子が行方不明。かつての王の道化とともに、王子を探して連れ戻す。それに「古き血族」や〈気〉と〈技〉が絡んでくるという、簡単にいえばそんな話。
途中に出てくる猫が、膝にあがるぞ、とか言ってるのがいいね。
実際にそんなこと言ってるのかな~なんて。
狼であるナイトアイズの話し方もいいな。 -
「ファーシーアの一族」から続く、「道化の使命」三部作の第一部。
すっかり隠遁者を気取った主人公(フィッツ)が
お決まりどおりに陰謀と過酷な運命に巻き込まれてゆきます。
少年時代から続く人間関係も変わり、
フィッツの陰鬱な独白も少し淡白になり、
多少読みやすくなったのかもしれません。
狼が好きだった方は、是非読んでください。
私は道化に惚れました。 -
復興書店にて購入。
訳者さんのサインと手書きメッセージカード付き。 -
ファーシーアの一族の続編。
30代半ばになったフィッツ。
静かに隠遁生活を送っていました。
が…恩師シェイドが訪ねてきて?
六公国を襲った外島人の「赤い船団」が撃退されて15年。
王ヴェリティが去った後、王妃が一粒種の王子を育てながら、六公国を統治していた。
ヴェリティの兄の庶子であるフィッツは、陰の存在としてシェイドに教育され、時には暗殺者として働いた過去が。
シェイドは今や王妃ケトリッケンの顧問として、表に出ている立場。
王子デューティフルの教育をフィッツに依頼に来る。
だがフィッツは表向きは処刑されているのだ。<気>をあやつった咎で。
この15年の間に、<気>はいちだんと疎まれ、リンチで八つ裂きにされるという事件さえ起きていた。
動物と絆を結ぶことが、一歩間違えば獣同然になってしまう可能性もあったのだ。
フィッツは狼のナイトアイズと絆を結び、時には共に狩りをし、共感する部分を持っている。
吟遊詩人の奔放な女性スターリングが気まぐれに訪れ、愛人となっていたが、実は都で結婚していたと知り、別れを決意するフィッツ。
養い子のハップの行く末も考える時期が来ていた。
そして、さらに訪問者が…? -
35歳の、もはや自分が自分をどのように考えているかすらわからない、若者でも年寄りでもない年齢の主人公によるファンタジー。静かで落ち着いた文体もいい。機智に富んだ老狼との会話もいい。架空の話になぜこれほど感動するのかと思えるほど魅了されてしまう。お勧めです。
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2010年7月15日ごろ読了。
大好きだった「ファーシーア一族」シリーズの続編。
まさか翻訳してもらえるとは思ってなかった。
前作のラストは、納得できるもののあまりの主人公の待遇に、不満が残る内容だった・・・その主人公がその後どうなったんだろう?って気になってました。
すっかりおじさんになったフィッツです。
道化も立派な貴族になっちゃって。
時々出てくるヴェリティの名前が物悲しいです。
まだまだ序章で、物語はこれからですが、読み進めるのが楽しみです。 -
傷ついた者にとって、癒しの時間を持つ事は必要だ。けれど過去を封印したままでは、何も始まらない。逃げる事も必要だけど、逃げ続ける事はできない。
触媒が存在する事により、その周りではさまざまな変化が起こる。本人に自覚は無いかもしれないけれど、その一言が、その行動が、大きな影響を与える事がある。
それぞれの人間が影響を与え合い、新しい物語が紡がれてゆく。
続編としての導入。前作の後の時間と、新たな問題提起。2巻をすぐに読みたくなる。 -
15年後。フィッツ・シヴァルリ・ファーシーアは、貧しい農民トム・バジャロックとして、年老いた狼のナイトアイズ、もらわれ子のハップとともに暮らしていた。怒濤の前3部作に比べてずっと平和で穏やかな導入部。フィッツはすっかり大人というより爺さん化してきてるし、ナイトアイズは相変わらず。ただしこちらは本当に老いているようだ。
小屋には入れ代わり立ち代わり様々な客人が訪ねてくるが、フィッツの反応や感想が違うのがなかなか面白い。まったく歓迎されないシェイドは不憫だ。そしてスターリングの、どこか影のあるしたたかさは変わってない。
その間、前作では語られなかった空白部分が明かされる。
フィッツは今の穏やかな暮らしを手放すつもりはさらさらなく、ハップが一人前になれるよう、手助けしてやりたいと願っているから、物語は大きくは動かない。しかし、巻の最後に話が、フィッツがいよいよ動き出す。
この巻に限らないが、人間同士の関わりの描写がリアルだ。相手と意見が食い違い衝突したり、助けられたり、時には些細なことで腹をたてたり。100%の関係は存在せず、絆を結んだナイトアイズとの間にさえ、すれ違いが生じる。もどかしさややるせなさ。日常、他人に対してとりとめもなく抱く感情を思いおこすほど、リアル。