- Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488539023
作品紹介・あらすじ
モリーは14歳、思いのままに物語を紡ぐ天性の語り手だ。弟のキップとふたり、アイルランドから海を渡って命からがらイングランドに辿り着き、ようやく雇ってくれる屋敷をみつけたものの、そこで彼らを待っていたのは巨木に取り込まれたかのような奇怪な屋敷と、青白い顔をした主人一家、そして夜中に屋敷を歩き回る不気味な男の影……夜の庭師だった。カナダ図書館協会児童図書賞受賞。ディズニー映画化の傑作ゴーストストーリー。訳者あとがき=山田順子
感想・レビュー・書評
-
ディズニー映画化が決まっているそうですが、いつでしょうね(2016年の初版の帯に記載)。
カナダ図書館協会児童図書賞・TDカナダ児童書賞受賞作。416頁なので、児童書としては長め。
ゴーストストーリーですが、ゴーストは子供たちの成長を描く道具立てとしては恐ろしすぎて、ハラハラドキドキしましたが、ラストはいい終わり方でした。登場人物が少なく、キャラの個性がわかりやすくて読みやすいです。大人が読んでも楽しめる名作だと思います。
巻末の「著者ノート」に、最大のインスピレーションを与えてくれたのは、レイ・ブラッドベリ『何かが道をやってくる』を父が声を出して読んでくれて、心底震えあがって悪夢を見たと書いてありました(未読なので、この後に読んでみます)。この『夜の庭師』も、親に読んでもらったら同じような感想を持つ子供がいるかも知れないですね。
あとは、これ以上書くとネタバレになるので、ざっくりとしたあらすじだけ以下に。
海を越え、イングランドにやってきたアイルランドの姉弟。嵐で親と離ればなれになり、生きるために都会で仕事を探すも見つからず、ようやく見つけた仕事は田舎の屋敷での使用人。14歳の姉は、物語を語る才能があり、11歳の弟は生まれつき左足が不自由でしたが、庭仕事が得意でした。
その二人が手に入れた馬車で屋敷に向かう途中、道を訪ねた人々は口々に不吉なことを言ったあとに口をつぐみ、何も教えてくれません。そんな中、道中で出会った語り部の老婆が、噂話とともに道を教えてくれます。しかし、たどり着いたのは、不気味な巨木がめりこんだ古ぼけた屋敷。
そこに住んでいたのは、青白い顔をした夫婦と子供ふたりのウィンザー一家。この屋敷には恐ろしい秘密が隠されており、次第にふたりは翻弄されていきます…
※読むに当たって、アイルランドの「ジャガイモ飢饉」について調べておくと物語に入りやすいかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ゴシックホラー風味の児童文学。
健気な姉弟が働くことになったお屋敷では‥?
19世紀アイルランドでは飢饉が起こり、食べるにも困った国民は、生き延びるために、多くが移住するしかなくなります。
船で親とはぐれた14歳のモリーは弟キップと共に、命からがらイングランドにたどり着きました。
やっと見つけた仕事は、町外れのお屋敷のメイドと庭師。
出会う人はみな止めたのですが。
そこには異様な巨木が家を取り込むかのようにそびえ、夜には庭を動く何者かの気配が‥
奥様と子どもたちは青白く、留守がちな旦那様はなにかのトラブルを抱えている様子。
キップに言えない秘密を抱えたモリーは、お屋敷の謎に関わり、思わぬことに。
弟思いでしっかり者の姉と、ぼんやりしているようでいろいろなことをちゃんと見ている幼い弟。
二人の成長譚でもあります。
ホラーっぽいので夏向きかと。
本当に怖いのは苦手ですが、児童文学風味のこれぐらいなら大丈夫(笑)
子どもたちの生命力に救われます☆ -
カナダで児童書賞を受賞している作品。
ディズニーで映画化されることも既に決定しているそうですね。
児童書と言い切るにはボリュームがありすぎる印象。
少年少女の成長譚プラス、大人も楽しめるゴシックファンタジーといったところ。
ダークな雰囲気のアニメ映画になるのかしら。それともアダムスファミリーみたいな感じになるのかな^_^ -
灰色の風が吹く。
いや、確かに空は晴れているのに、おかしなことだがこの姉弟のいく先は鈍色に染められているのだ。
そのお屋敷は草に覆われ、蔦が這い、屋根はたわみ、苔がはびこっていた。
そして一本の古い木が、主人のように植わっている。
たいていの場合、大きな古い木は優しさを湛え、見守るように聳えているものだが、この期に限ってはそうではない。
その幹に、枝に、根に、すべてに邪悪な雰囲気をまとっているのだ。
なぜか。
それはその木が、人の欲しいと願うものをどこからか出すからだ。
そのどこが悪いのか、って?
本当にそう思うかい?
ものを与える行為は決して一方的な愛の行為ではない。
必ずその代償がある。
モリーとキップ、姉と弟は懸命に働いた。
そして彼らが一番願うもの、心から望むものを得た。
しかし、それは、「希望」ではない。
ひたひたと音を立て迫ってくる「夜の庭師」。
どこでその男は間違ってしまったんだろう、その疑問にキップは後にこう答えを出す。
守ってくれる姉、モリーがいなかったからだ、と。
支えてくれる人がいるから、助けてくれる人がいるから、信じてくれる人がいるから、人は間違いに気づけるし、間違いを正せる。
屋敷の主人の子供たち、アリステアとペニーの兄妹もそうして間違いに気付き、ただせた。
君たちなら大丈夫。
まだまだこの子供達には困難があるだろう、しかしどうかこの子たちの未来が美しいお話で満たされるものでありますように。
鈍色の雲のうえには、蒼天が広がっている。 -
おもしろかったし、涙する場面もいくつかあり、本当に「物語」を読んだ充実感。
モリーとキップ、幼いのに強すぎる!
ただ歴史的背景を知ったら、こうやって生きていた子どもたちが実際にいたと思われ、心が痛む。
ディズニー映画化、楽しみなような、映画化してほしくないような、複雑な気分。 -
カナダ図書館協会児童図書賞受賞作。映画化も決定しているらしい。
ホラーというよりは幼い主人公姉弟の成長譚としての性格が強かった。 -
装丁とタイトルからもう少し叙情的なのかなと思って読んだら、ガチにゴシックホラーだった。でも少年少女の成長物語でもあり、家族の再生物語でもあり、なかなか面白かった。夜の庭師のいわくがもう少しだけ捻りがあると良かったかな。
-
両親を失ったモリーとキップの姉弟はイングランドの巨木に取り込まれたようなお屋敷にメイドと庭師として雇われる。借金の取り立てに苦しむ主人、冷ややかに見つめる奥様、お菓子ばかりを食べて太っている息子、甘えん坊でお話が大好きな妹。そして、夜になると歩き回る謎の男。
日に日に不健康になっていく主人一家。怪しい夜の男の正体は?
お話が得意なモリーと、片足の不自由なキップが、知恵と勇気で主人一家を救う。読んでいて、先が気になりどんどん読みすすんでしまった。
映画化が決まっているというが、うまく映像化してもらいたい。 -
故郷を離れイングランドへ辿りついたモリーとキップ姉弟。
メイドと庭師として働くことになった屋敷には、生気のない一家と夜の男。
姉弟の成長は大人になることを強いられているようにも見えて、少し痛々しい。それでも最終章のモリーが語り部として楽しそうで本当に良かった。
これだけ児童文学の王道な作品を、いきなり創元推理文庫で刊行してるのにちょっと驚いた。岩波少年文庫あたりで読んだ懐かしい感覚。
見落としてるだけでハードカバーも出てるのかな。
ホラー要素強めなんだけど、恐怖より不思議さの方が印象に残った。
ホラーファンタジー、かな。