- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488441043
作品紹介・あらすじ
世紀末ウィーンに生まれた貴族の血を引く双生児、ゲオルクとユリアン。だが、前者は名家の跡取りとして陸軍学校へゆき、後者は存在を抹消され、ボヘミアの廃城で世間から隔絶され育てられる。やがて、ある事件からゲオルクは故郷を追われ、野心と欲望の都市ハリウッドで映画制作の道に足を踏み入れるが……動乱の1920年代、西洋と東洋の魔都で繰り広げられる、壮麗なる運命譚。
感想・レビュー・書評
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読み終わるのにものすごく時間がかかってしまった……登場人物もいまいち掴みどころがなく、これといった出来事があるわけではなく、ただ淡々と一人称で描かれるストーリーは緩慢に感じられてほとんど興味を持って読めず…….ようやく上巻最後で出来事が起きたのでここからの展開が早いことを祈ってます
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金曜日に本屋さんに行ったらすでに店頭に並んでいたので喜び勇んで購入、待ちきれず早速お風呂で上巻読み始めたら上がるときに水没させてしまった・・・オーマイガ・・・しかし乾燥させてめげずに続きを読みました。
閑話休題。上巻ではまだ全貌が見えないのでムズムズ。冒頭の上海に、どう繋がるのー!?全貌がまだ見えないゆえに、皆川博子の特色であるところの退廃した空気もまだ薄め。
シャム双子が切り離されそれぞれの人生を歩んでいるのだけれど、家族に認知されてたほうのゲオルグは、すくすくヤンチャに育ち、陸軍学校で決闘騒ぎをおこして退学、あげく相手が悪くて養子先から追い出されるも新大陸アメリカで逞しく生き延びてハリウッドで映画監督として成功している。彼の自伝用の語りという体裁で進められる前半は、デカダンでもなんでもないサクセスストーリーなのだけど、これが大事な伏線。
切り離された片割れのユリアンは日陰者の人生を余儀なくされるけれど、家族の愛はなくとも、世話をしてくれるヴァルターには愛されているし、親友ツヴェンゲルも優しい。けれどヴァルターの本来の目的であるところの双子の感応力についての実験に関わるうちに・・・
水没→乾燥させるとページがパリパリになって読みにくいので、下巻はお風呂では読まないことにします。 -
再読ですが面白かったです。
というかほぼ新しい気持ちで読みました。。
結合双生児だったゲオルクとユリアン、分離したからはゲオルクは一旦表舞台へ、ユリアンは無き者としてこっそり成長しました。
ゲオルク、ユリアン、そしてパウルの3人の章がそれぞれ進んでいくのですが、まだどのように絡み合ってくるのかわからずわくわくします。
ゲオルクは一時期映画監督の仕事をするのですが、その章で書かれた、
〈大衆の息抜きに役立つであろうものはまた、彼らの感覚を麻痺させ、思想的に白痴化させる。民主的であると謳われる文化のほとんどは、いい意味で大衆的なのではなく、悪い意味で通俗的である。〉…私も、同意しました。
ユリアンからの?精神感応でゲオルクが描く『双頭のバビロン』という物語…ゲオルクが作った映画の数々もとても面白そうで気になります。
下巻も楽しみです。 -
2015-10-26
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双子で二人の主人公の語る時間・観点が異なり
振り返りと追いかけが平行して動く物語の中
私が今年これまで読んでいた著者の作品に比べると
美しくも濁ったような粘り気のある妖しさ、
スピード感には多少欠ける気がするが、
「あなた誰?」の章が、どうかかわるのか。
また、あの人がこの人というのが明かされ、
驚愕から、ではそれがどう結びつくのか
最後まで読みたくなる。最終的な評価は下巻で。 -
皆川さんはやっぱりすごい!!
私がどこにいても、普段読書ができない環境であるテレビの音の中やベッドの上でさえも、その物語の中に引き込んでしまう。
1920年代のハリウッド、1900年前後のウイーンそしてボヘミア…
皆川女史の幻想的な歴史ミステリに溺れていく!
さぁ下巻へ。 -
気になっていた小説をようやく読むことが出来た。
重厚な雰囲気と歴史と知識と情景の洪水に前半はゆっくりとしか読み進められなかったのだが進むにつれて読むペースが上がって、これは一体どう展開されるんだろうと…特殊な双生児として生まれたユリアンとゲオルク。一言で言えば二人が歩んだ人生の物語。
ハプスブルク帝政末期のウィーンから禁酒法時代のハリウッド、鴉片の蔓延する上海と移り変わる舞台も多彩で興味深い。 -
私的に、2015年に読んだ本ではナンバーワン。
1920年代の物語。ウィーンに生まれた双生児、ゲオルクは貴族の跡取りとして育てられ、ユリアンは世間から隔絶された館で育てられる。
これは、なんというジャンルに分類すればよいのでしょうね。幻想的であり、猥雑であり、醜くも美しくもある執着と呼べる感情が織り込まれ、耽美的であり、栄光と挫折が縒り合された、なんとも複雑な味わいの物語。
運命、という言葉を強く印象付けられる一冊。読み始めると、この世界に引き込まれ、濃厚な空気に酔わされる。 -
圧倒的な、何が本当で何が嘘かもわからないまでに該博な知識と、人間としての魅力に富んだ登場人物たち。謎と、読み進めずにはいられない引力のようなものがそこへ塗り込められたように加わり、次から次へとページを捲らせる。気付かぬうちに、幻想と現実が絡み合う中へ誘われている。まだ上巻しか読み終えていないが、下巻が楽しみでもあり不安でもある。だが、きっと手に取ってページを、止まることなく捲り続けてしまうのだろう。また、文の端々に見られる批判的……批判的? な精神に、皆川博子氏は静かで恐ろしい作家だと、強く思った。