スペース (創元推理文庫) (創元推理文庫 M か 3-4)

著者 :
  • 東京創元社
3.93
  • (110)
  • (149)
  • (98)
  • (12)
  • (5)
本棚登録 : 1110
感想 : 134
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488426040

作品紹介・あらすじ

前作『魔法飛行』で生涯最大の冒険を経験した入江駒子は、その余波で風邪をひきクリスマスを寝て過ごすことに。けれど日頃の精進ゆえか間もなく軽快し、買い物に出かけた大晦日のデパートで思いがけない人と再会を果たす。勢いで「読んでいただきたい手紙があるんです」と告げる駒子。十数通の手紙に秘められた謎、そして書かれなかった“ある物語”とは? 手紙をめぐる《不思議》にラブストーリーの彩りが花を添える連作長編ミステリ。伸びやかなデビュー作『ななつのこ』に始まる、駒子シリーズ第三作。解説=光原百合

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 駒子シリーズ第三弾。

    「スペース「バック・スペース」の中編二本の連作。

    駒子が瀬尾さんに読んで頂きたい手紙があると言って渡す手紙は、前略はるか様で始まる長文。

    「スペース」は、人と人との空白の物語で、これは誰が書いた手紙なんだろうと疑問に思いながら読み進め、「バック・スペース」でもやっとした頭の中が、冴え渡るような感覚になる。

    なるほど、自分がいるべき場所を懸命に探そうとして辿り着いた居場所なんだとわかる。

    バスに置いてけぼりを喰らったまどかが、バス運転士と結ばれるというのも運命的である。

    今回は、駒子と瀬尾さんのやりとりは少なかったが、2人の気持ちがうっすらと感じられたような気がした。



  • 過去作との繋がりが見えたとたんに景色変わる!
    仕掛けもすごいし、いい映画を見た後のような読後感。

    ネット公開されている著者本人のインタビューだと全4部作という証言がある。

    ななつのこ
    単行本:1992年9月 東京創元社 ISBN 4488023347
    魔法飛行
    単行本:1993年7月 東京創元社 ISBN 4488012507
    スペース
    単行本:2004年5月 東京創元社 ISBN 4488012981

    2作目までのインターバルが1年、
    3作目までのインターバルが11年、
    4作目までのインターバル、、、、、、。

  • 駒子ちゃんシリーズ3作目。

    毎回異なる趣向で驚かされるこのシリーズだが、今回、前半の話の殆どが駒子ちゃんが書いたと思しき十数通の手紙を読むのに費やされる。
    これらを読むと、遡って駒子ちゃんの入学仕立てのキャンパスライフがよく分かるが、何故相手からの返信はなく出した手紙ばかりとか、いつものようにプチ謎が入っているけど手紙の中で解けているようでないようでとか、こんなに親しい駒井はるかって友達これまで出てきていたかなとか、そう言えば愛ちゃんとかふみさんはどうしたのみたいな、微妙な違和感。
    勿論、瀬尾さんの手によってこの違和感の訳は明かされるのだが、手紙ばかり読まされたことには、今回はちょっと策に走り過ぎたかという感じをそこでは抱いた。

    ところが後半、今度は同級生のまどかという子が語る話になり、手紙で書かれていた時期のことが繰り返されるのだが、同じ出来事に対して手紙には書かれなかったことがその行間を埋めるように語られ、明かされたタネには更に別の仕掛けがあって、読み終えた時には全体の話の印象がまたもやガラリと変わってしまう。
    いくら何でもこの出会いは出来過ぎだろうと思うのだが、それも許せちゃうくらいに自分の居場所を探す女の子たちの懸命さ切なさにしみじみ浸る佳い話に。
    駒子ちゃんや瀬尾さんは脇役みたいな扱いなのだが、終わってみればしっかりと印象を残すところも巧みで、今回もまた作者の思惑通りに楽しまされてしまった。

    これまでも読んだ本の中に「宮沢賢治」や「銀河鉄道の夜」に触れた話が結構あったが、本作でもその存在感たるや大。

  • 『ななつのこ』『魔法飛行』に続く〈駒子〉シリーズ第三弾。今回は中編二本の前後編によるラブ・ストーリー。

    前作から少し時間が空いてからの刊行のせいもあるのか、三作目にしてさらに趣向を変えてきた。駒子と瀬尾さんの関係がどうなっていくのか?が気になりつつ、まったく別視点の物語が描かれていく。前半の手紙の部分が読みにくく、「何を読まされているんだろう?」となったのだが、他のレビューをみると多くの人が同じ感想を抱いたようだ。さらに、出来すぎた偶然が重なるのがやりすぎに思え、ミステリーとしての驚きはあるものの、今ひとつスッキリしないところはある。しかし読後感はほっこり、ラブ・ストーリーとしての完成度は高い。
    単体の作品としては前作に劣るが、シリーズものとして考えると重要な通過点に思える。ぜひとも完結編を望むところだけれども、いかんせん一作目が30年前だし望み薄か……(泣)。

  • 「ななつのこ」など入江駒子シリーズ未読だったため、瀬尾とヒロインの関係性がよく分からず、いきなり始まる手紙についても差出人の単なる近況報告のようで退屈に感じた。

    が、手紙の謎と真相、そして結末を知ったら物語の色合いが変化し、伏線回収も小気味よく、なにより読後感が爽やかで清々しい。

  • スペース。
    確かに今までも星や宇宙を二人でみる場面が何度かあったこのシリーズ、でもこのタイトルって?
    いつもの駒ちゃんのトボけたような日常に急に挟み込まれた「はるちゃん」宛の手紙。
    「本を読んでいると、物語を書く人の頭の中って、まるで混沌とした宇宙みたいだってよく思います。完成稿に辿りつくまでに、どれほどたくさんの空白が埋められ、言葉が選ばれ捨てられていくのかしらね。考えるとめまいがしそう。
    私ね、ちょっと思ったの。今の私って、まるで選ばれなかった場面みたいだって。
    最近、どうして自分は今、ここにいるんだろうって、ふと思ったりします。間違った場所にいるような気がしてならないの。」
    前作でもこんな台詞があったな。
    でも、所々に違和感。
    そしてこの手紙が瀬尾さんと駒ちゃんの間のスペースをちゅっと縮める。
    最後のシーンにヤキモキしながらも駒ちゃん、ガンバッタ!とガッツポーズしてしまった。

    そのまま二人に新たな展開?と期待して開いた「バックスペース」は駒ちゃんと瀬尾さんはほとんど出てこない。
    でも、第三者からみた駒ちゃん達が新鮮。前章でも出てきたみる事ができるのは人の一部分という言葉がここでも生きる。
    瀬尾さんの名前にニヤニヤし、二人のお話と並行にあった物語を堪能した。

    「生きていればきっと、逃げ出すよりほかに道がないときだってある。遮二無二突進していって、その結果無惨に衝突するよりは、回れ右して逃げ出す方がずっといい。
    一度打ち込んだ文字を、バックスペースキーでなかったことにしたっていいじゃないか?
    少しくらい、後戻りしたっていい。やりなおしたっていい。まったく別な、新たな文字を打ち込むことだってできる。」

    今までのシリーズではほんのり、ぼんやりとしてきたテーマが今回はくどいくらいガッツリ前面でちょっと戸惑う。
    相変わらず読後の余韻も最初から読み直したくなるつながりっぷりも好きだけど。

  • 週刊アスキー2000年7月25日号〜10月17日号スペース、ミステリーズ!vol3(2003年12月)〜vol4(2004年3月)バツクスペース、の2つの中編を2004年5月創元クライム・クラブから刊行。2009年5月創元推理文庫化。駒子シリーズ3作目。駒ちゃんと瀬尾さんは脇役的な配置。「スペース」は、半分以上を占める15通の手紙で一旦挫折しました。気を取り直して、読み進めましたが、期待はずれの世界観と謎度合でした。「バツクスペース」はスペースよりも面白く読めましたが、世界観、謎共に心に残りません。「ななつのこ」の別品さに思い至りました。陶子シリーズに進みます。

  • 手紙長っ。
    シリーズものではないみたいに前二作と趣が違って、ちょっと戸惑いました。手紙がなくて、無理に駒子も絡めず(あるいはスピンオフとして作られていて)、はるちゃん主人公のパートだけだったらよかったな。

  • 駒子シリーズと呼ばれる「ななつのこ」「魔法飛行」に続く三冊目らしいが、知らずにこちらから読んでしまった。多少、「おそらく前の二冊で説明されているんだろうな」というところはあったが、読むのに問題はなかった。「スペース」と「バックスペース」の、連作のような裏表のような2作品。日常ミステリ。手紙文が延々と続く箇所があって、そこは読むのがしんどかったが、最後はとても優しい気持ちになれた。

  • 駒子ちゃんシリーズ第三弾

全134件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

加納朋子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×