- Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488414078
作品紹介・あらすじ
英都大学に入学したばかりの一九八八年四月、ある人とぶつかって落ちた一冊――中井英夫『虚無への供物』――が、僕、有栖川有栖の英都大学推理小説研究会(EMC)への入部のきっかけだった。アリス最初の事件ともいうべき「瑠璃荘事件」、著者デビュー短編「やけた線路の上の死体」、アリスと江神の大晦日の一夜を活写した「除夜を歩く」など、全九編を収録。昭和から平成へという時代の転換期を背景に、アリスの入学からマリアのEMC入部まで、個性的なEMCメンバーたちとの一年を瑞々しく描いたファン必携の短編集、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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江上さんとアリスの出会いにキュンとなる。時系列の短編集で江上シリーズの面白さを改めて知った。あとがきにもあるように青春譚としても味わい深い。珍説が飛び交う『四分間では短すぎる』とミステリ談義の『除夜を歩く』が特に好き。
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1988年4月。英都大学に入学したアリスは、すれ違いざまにぶつかってしまった相手の本を落としてしまう。その本は、アリスの愛読書でもある中井英夫『虚無への供物』。かなり読み込んだ跡の残るその文庫本の持ち主、EMC(英都大学推理小説研究会)部長の江神さんと言葉を交わしたことをきっかけに、アリスはEMCに入部することになる。
「中井英夫が好き?」
もうね、この出会いのエピソード、大好きです。なにがって、本がきっかけとなるところがですよ。これほど、本好きにとってのロマンティックなハプニングはない!(注・アリスと江神部長のロマンチックな展開があるわけではないので、あしからず。)なんてったって、わたしの大好きな青春ドラマも、主役の2人がぶつかってお互いの本が入れ違いになって……と運命が繋がっていくんですから。全然関係ないですけどねっ 笑
こんな出会いかたって電子書籍ではムリ。やっぱり紙の本(何度も読んだ跡があればあるほど、さらに盛り上がる)だからこそのロマンです。
とまあ、わたしのロマンティック趣味は、おいといて……
とても楽しめた短編集でした。
アリスの入部から、マリアが入部を決意するまでのEMCの1年間が、季節の移り変わりとともに生き生きと描かれています。
『瑠璃荘事件』
4月。モチさんの下宿「瑠璃荘」で、講義ノートの盗難事件が起き、モチさんに嫌疑が向けられる。EMCメンバーたちは、現場検証と称して「瑠璃荘」へ向かう。
事件は江神部長が論理的に解明しますが、その後のアリス、モチさん、信長さんの会話が良いのだ。なかでもアリスの言葉が瑞々しい。「名探偵も他人を信じることかできる。」なんて最高でしょ。
『ハードロック・ラバーズ・オンリー』
5月。アリスはハードロックが大音響で鳴り響く音楽喫茶に入り、大学生風の女性と知り合う。ある雨の日、外で見かけた赤い傘をさす彼女の後ろ姿にアリスは声をかけたものの、彼女は何の反応も見せずに去っていく。
音楽と雨。このシチュエーションは人をセンチメンタルな気持ちにさせるのかもしれない。
『焼けた線路の上の死体』
夏休み。EMCメンバーたちは、モチさんの実家を訪ねたところ、轢死事件に遭遇し、検視によって轢かれたのは死体であったことが判明する。なぜ、犯人は死体をわざわざ線路上に置き、轢かせたのか。
道中、〈くろしお4号〉でのEMCならでは「シャーロック・ホームズごっこ」が面白い。彼らのワイワイキャッキャッぶりが大学生活を謳歌しているようで、夏休みだなぁ、江神さんもキャッキャッ走るんだなぁとほのぼの。4人の事件解決へと奔走する姿が初々しくて眩しい。
『桜川のオフィーリア』
9月。かつて江神部長と一緒にEMCを立ち上げ、今はフリーランスのライターをしている石黒から、川の流れに身を横たえた少女の亡き姿の写真を見せられる。この写真を持っていた者が犯人なのか、若しくは何のために持っていたのか。
この謎の前に、アリスたちは矢吹山のキャンプ中に起きた、噴火によるクローズド・サークルでの殺人事件『月光ゲーム』に遭っている。あの『焼けた線路の上の死体』で見せた事件解決での興奮は消え去り、アリスは辛い記憶に囚われたままとなる。
「僕たちは江神さんとともに、その体をそっと流れに戻してあげられたのかもしれない。」
写真の少女に向けられた、なんて優しい言葉だろう。彼らがそんな風に考えるのは、あの事件によって彼らのなかで何かが変わったからなのだろうな。
『四分間では短すぎる』
10月。元気のないアリスのために、先輩3人が「無為に過ごすため」の飲み会を開く。そこでアリスが、駅の公衆電話で隣になった男の言葉「4分間しかないので急いで。靴も忘れずに。……いや……Aから先です」の意味をみんなで解くことに。
この短編がいちばん面白かった。
途中、『点と線』の〈空白の4分間〉についてのモチさんと信長さんが激論を交わす。わたし的には、モチさんのロマンティックな解釈が好みなので、彼に軍配を上げたくなるのだけれど。あとは湖西線が出てくるのが「おっ!」と。
とにかく、先輩たちのコンビネーションが冴え渡り、アリスが元気になってきたなぁと思えた一編。
『開かずの間の怪』
11月。二年前まで開業していた花沢医院。その廃墟となった病院の「開かずの間」から幽霊が出てくるとの噂を、信長さんの下宿の大家さんから聞いたメンバーたちは、幽霊探索を実施する。
面白い、というか可笑しかった短編。
どんなときもミステリアスな江神部長の、ちょっぴり狼狽した姿が拝めてありがたや~ 笑。
『二十世紀的誘拐』
12月。モチさんと信長さんはゼミの酒巻教授の家に泊まることになる。次の日大学に出てきた2人は、教授から「絵を預かった」との脅迫状がファックスで送られてきたとの相談を受ける。
何のために犯人はその絵を盗んだのか。
二十世紀的トリックに込められた脅迫者の意図。時代の波に乗ることの空しさを覚えたけど、最後にはそれに抗う彼によって、清々しい気持ちにさせてくれた。
『除夜を歩く』
1988年が去る。アリスと江神部長が本格ミステリ論を語りながら、大晦日の京都の街中を延々と歩く。
いちばん印象的でいちばん好きな短編。
アリス、江神部長の隣を譲ってー!って心底思った 笑。
「アリス、お前はなんでそんなミステリが好きなんや?」
推理に感動するだけでなくて、何か違うから読み続けるというアリスに、江神部長は続ける。
「それはな、人間の最も切ない想いを推理が慰めるからや」
なんだろ。涙がでそうになる。夏に起きた『月光ゲーム』事件、これから起こる『孤島パズル』事件や『女王国の城』事件を思い出してしまうから。ふと口をついて出る江神部長の言葉に、彼の背負う宿命を思い出してしまうから。
『蕩尽に関する一考察』
新しい学年が始まる。古書店「文誠堂」の店主が、古書を譲ったり、お金を湯水のように遣う理由は。
マリアがEMCメンバーと繋りができ、アリスが『月光ゲーム』事件を乗り越えることができるだろうと思えた、そんな新しい季節が始まる。 -
短編同士、長編との関連とにくい演出が多くて良かった。もう一度長編も読み直してみようかな、と思える良い短編集だった。
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若き学生時代の日常ミステリー、緻密な推理の凄さとフレッシュな仲間達が素敵すぎ! 学生アリス短編集、シリーズ第5弾。
本シリーズの主人公である新大学生となった主人公が、様々な事件や変わった出来事に巻き込まれる短編物語集。主人公のアリスが推理小説研究会に入ってから、マリアが参入するまでの約一年間のストーリー。
いやー、やっぱり学生アリスシリーズは最高っすね。また月光ゲームから読みなおしたくなりました。今はライト文芸と本格ミステリーを組み合わせた作品がたくさんありますが、起源はこのシリーズですよね。新本格第一世代の貢献ぶりったら、すさまじいと思いました。
どの話もどっぷり本格ミステリーで面白すぎ! ホームズの赤毛連盟ばりの推理が次々と体験できます。
作者のデビュー作である「やけた路線の上の死体」なんてもう最高、これ普通に長編で一冊できますよね。作中作、そしてミステリ議論がされる「除夜を歩く」も、すげー面白かった。これ以上言いようがない、まさに"ミステリーを楽しませてくれる"という作品です。
そしてなんといっても四人の登場人物ですよ、みんな真面目で可愛い。そして部長の切れ味が凄まじすぎ。最終話でマリアが登場しますが、ここから孤島パズルに繋がっていくんすね~
若干の思い出補正もあって、ほめ倒しですが、学生アリスシリーズはマジ面白いので本格ミステリー好きにも関わらず、まさか読んでない人がいれば、今すぐに読みましょう。まずは月光ゲームからです、そして3作目の双頭の悪魔はもう芸術の域です。 -
有栖川有栖作品の二大看板。「作家アリスシリーズ」の火村英生と「学生アリスシリーズ」の江神二郎。
共通点としては二人ともミステリアスで、意外と茶目っ気があるやり取りをする、というのが自分の中であります。
と言っても、火村は作品数も多いのでミステリアスながらもなんとなくキャラは掴めるのですが、江神さんは未だに謎が多い印象。
『女王国の城』で彼の家族なんかも少しだけ分かったものの、やはりどこか超越しているというか、まだまだ彼の本質を掴み切れてない印象があります。
そしてこの『江神二郎の洞察』は、シリーズ五作目にして、『月光ゲーム』事件前の英都大学推理小説研究会(EMC)の日常から、『孤島パズル』以降、活躍するマリアこと有馬麻利亜の出会いと入部までを時系列ごとに描いた短編集になります。
そしてこの短編集を読んで、江神さんも何だかんだ推理研を楽しんでるんだな、と実感。
廃病院で後輩を捕まえようと走り回る江神さんは、想像すると結構シュールだけど(笑)
最初に収録されている『瑠璃荘事件』では、EMCの先輩、モチこと望月の住む下宿で起こったノート盗難事件の推理が描かれます。
ノートが盗まれたと思われる時間、望月の下宿先である瑠璃荘では、望月しか犯行が可能と思われた人物がいないらしく……
犯行時間をめぐる瑠璃荘の電球のロジックが見事だったのと、アリスの無垢な一言が望月と織田よろしく、ミステリに毒された自分にはまぶしい短編。
「ハードロックラバー」
顔なじみの女性にハンカチを返そうと声をかけたアリス。しかし、女性はアリスが大声で呼びかけたにも関わらず立ち去ってしまい……
ハードロックラバーとは、アリスの大学の近くにある音楽喫茶のこと。大音量でロックをかけるその店と、女性の謎が江神さんの一言でつながり、アリスが女性の動作に新たな意味を見つけ思い馳せるのが印象的。
「焼けた線路の上の死体」は夏休みを利用し望月の実家へ遊びに行った推理研が、近所でたまたま起こった殺人事件の真相を推理する話。
他のアンソロジーで既読だったけど、今回読み直すと推理研が電車に乗るまでのバタバタだったり、望月の町を散策してる様子もまた楽しかった。やっぱりこのわいわい感が好きなんだろうなあ。
「桜川のオフィーリア」は江神と推理研を立ち上げたOBの持ち込んだ相談の推理。友人はなぜ事故死した幼なじみの死体の写真を持っていたか、という謎。
美少女の美しい遺体、清らかに流るる桜川、そして舞い散る桜の花びら。
『月光ゲーム』事件後でセンチメンタルになっているアリスの心情と、ラスト二行の抒情がこれもたまらない
「四分間しかないので急いで。靴も忘れずに。……いや……Aから先です」
アリスが公衆電話から電話をかけているとき、隣の電話機から聞こえた奇妙な声。それをハリイ・ケメルマンの短編『九マイルは遠すぎる』よろしく、言葉の意味を推理する「四分間では短すぎる」
四分間の意味するものは、という推理から思考は広がっていく様子は読んでいてとても面白かった!
そして江神さんと望月・織田の先輩コンビのバツグンのコンビネーションや、優しさが明らかになる短編でもあります。
ロジックと合わせて推理研の絆も感じられ、この短編集でも特に好きな短編です。
「開かずの間の怪」は廃病院に肝試しに訪れた一行に襲いかかる、怪現象を推理する話。
上述したテンションの高い江神さんや、ビビるアリスとモチさん、信長こと織田の奮闘が読んでいて楽しい短編。
「ザ・モラトリアム」というべきか、推理研はある意味子どもより全力で子どもしているかもしれない(笑)大学生って多かれ少なかれ、そんなものなのかもしれないけれど。
「二十世紀的誘拐」はモチさん・信長のゼミの教授の家から誘拐された、絵の真相の推理。
謎めいたタイトルの意味が、芸術論につながり犯人の動機につながる。ある意味時代を切り取った短編でもあるのかもしれない。
「除夜を歩く」はモチさんが書いた短編の推理小説の謎を解きつつ、江神さんとアリスが推理小説談義をする話。
モチさんの推理小説がけちょんけちょんに言われているのが可笑しいけれど、それが問題作(?)とも言うべきか、江神さん曰く「本格ミステリが抱える根源的な問題について考えるにはうってつけ」とのことらしく……
モチさんの小説については、犯人当てはアリスに任せたけど、トリックはアリスよりも先にたどり着けました(笑)
そして作中のミステリ論も面白かった。推理小説の祖であるエドガー・アラン・ポーは、一方ですべて理屈で説明しようとする推理小説とは真逆の怪奇やゴシック小説も書いていました。
そんな矛盾の作家から生まれたミステリに込められたもの。有栖川さんの他の著作でもこのあたりは言及があったけど、「除夜を歩く」ではそれはさらに大きな話になって、ある意味ミステリの根幹を揺るがす問題にまでぶち当たります。
そこまで疑いだしたら……と思う反面、ミステリの根源を揺るがしつつも(?)江神さんが限界に挑んだミステリを「最高やないか。素晴らしく人間的で詩的や」と評するあたり、本当に有栖川さんはミステリを愛しているのだな、と感じます。
特に学生アリスシリーズの長編はこだわり抜いた犯人当ての印象が強いので、メタ的な意味でも、有栖川さんの目指しているミステリ像というのが垣間見れるように思います。
あと作中でちらりと言及されたけど、江神さんが書いていると噂される幻のミステリ『赤死館殺人事件』への期待が高まる話でもありました。有栖川さん、作中のモチーフで一冊書いてくれないかなあ。
そしてここでも、江神さんの優しさが顔を覗かせます。この短編の雰囲気もバツグンに良かった。
「蕩尽に関する一考察」
この回でマリアが登場。謎は急に羽振りがよくなった古本屋店主の目的を推理する話。
この短編集の後半からは時系列で言うと、夏休みでの『月光ゲーム』事件以後を描いています。
そして、その事件で傷ついたアリスの回復の話でもあると思うのだけど、それが完了したのがこの短編かも。
殺人事件が起こった後に事件を解決する名探偵のことを、一時「屍肉喰らい」と思うまで墜ちていたアリスが、その名探偵である江神さんの優しさと、推理によって救われていく様子。それと共にマリアのつぶやいた一言も、余韻となって残ります。
シリーズの長編とは趣が違って、日常の謎であったり、あるいはアリスのセンチなところがクローズアップされたりと、そのタイプの違いが面白かった。
また『月光ゲーム』と『孤島パズル』の間の時間を埋める、アリスの再生の物語としてもシリーズ読者としては楽しく読めました。
ミステリアスだった江神さんの優しさが身近に感じられるのも良かった。シリーズ最後の長編と、最終作となる予定の短編集。それを読むときの見方も少し変わってきそうで、早く読みたいと思う反面、シリーズが終わってほしくない、という想いも改めて抱きました。
これは永遠のジレンマだわ…… -
アリスと江神部長の出会いから始まる一年間の出来事を綴った短編集。9編の作品は日常の謎あり、トラベルミステリあり、誘拐からミステリ論議まで幅広くボリューム満点。読者も推理研メンバーの一員となって四季を過ごせる一冊。
『女王国の城』まで読んで手をつけるのもいいし、時系列的にはマリア加入エピソードまでなので、『月光ゲーム』だけ読んでおけば充分に楽しめる(本編のネタバレはなし)。本編の中では描かれていないミステリ研の日常が面白い。読みたかった余白をワクワクで埋めてくれる作品集。これを読んでからまた本編を読み直すと、キャラへの思い入れも一層深まっていいよね。
特に好きな作品について、
本編でもちらっと顔をのぞかせた事件『桜川のオフィーリア』。石黒の友人・穂積宅で見つかった写真。そこには川で亡くなった友人・青葉の姿が収められていた。それは穂積が彼女を殺したという意味なのか、それとも…。その写真に込められた意味を知った時の衝撃は、あの美しい死体の映像とともに胸の奥に焼きつくようだった。
「四分間しかないので急いで。靴も忘れずに。……いや……Aから先です」
アリスの隣の公衆電話で話していた男の謎の言葉を紐解く『四分間では短すぎる』。この言葉からこんなストーリーが生まれるの?!ってなるし、推理していく過程が面白い。この言葉を味わい尽くすには四分間では短すぎる。一晩中かかりそう(笑)
年越しを過ごすアリスと江神。新元号への推理から、望月の書いた推理小説の犯人当てへと移り、さらにミステリの本質を語り合うという読みごたえ抜群すぎる『除夜を歩く』。元号の話は平成から令和へと変わった今の時点で読むとまた楽しい。あと、江神のミステリについての言葉が印象深かった。最後にそれを引用しておきます。
「ミステリはあらかじめ底が抜けてる、と言うてるんや。数学的なパズルや、論理学が研究対象とする論理とは断絶してる。困った顔をせんでもええ。繰り返すけど、その論理は幻なんや。どんな幻を描いたかでミステリの価値は決まる。俺にとっては、そういうもんや」 -
短編集。
一番好きな話は、除夜を歩く
いつか江神さんの書いた赤死館殺人事件も読みたいな。
短編集だけど400ページを超えてて読みごたえあった。
アリスがEMCに入ったばかりの頃の話や、マリアが入るきっかけとなった話が入ってる。
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LINEノベルにて読了。アンソロジー所収の「船長が死んだ夜」以来、まとまった作品としては初読みの有栖川有栖作品がこの短編集というのはどうなんだろうという気もするが、LINEノベルのラインナップがこれだけなのだからしゃーない。所謂日常の謎系だが、大学在学中に書いたという実質的なデビュー短編も含まれ、学生アリスシリーズの骨子が最初から完成されていたことが判る。未読の長編について触れている箇所も少なくないので、まあそちらから読むのが本筋なんだろう。
昭和~平成に移り変わる辺りでは笠井潔御大の『青銅の悲劇』を思い出し、「除夜を歩く」の作中作には麻耶雄嵩の「ノスタルジア」に思いを馳せてしまう偏ったミステリ読みとしては、「桜川のオフィーリア」のはっとするような美しさが逆に新鮮だった。いかに普段攻撃的なイヤミスに毒されているかが判る。-
2020/05/06
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学生アリスシリーズ初の短編集。
名探偵・江神二郎のファンにはたまらない。
タイトルからしてしびれるよね。
アリスと江神部長の出会いから、マリアの入部までが時系列になっているのもありがたい。
学生アリスシリーズはどれも長編大作なのだけど、その合間にもちゃんと推理研のみんなは学生してるんだなぁ、推理研らしい活動もしてるんだなぁ、というある種のリアリティを感じられました。
特に好きなのは『除夜を歩く』。
アリスと江神さんの会話がめちゃくちゃお洒落です。
あぁ、月光ゲームから読み直したい。