- Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488291082
作品紹介・あらすじ
あのフロスト警部が、デントン署を去るときが来た? 自らのヘマが招いた事態とはいえ、マレット署長や新任の主任警部の目論見どおり追い出されるのは業腹だ。だが管内で容赦なく起き続ける事件の捜査に時間を取られ、異動の日は刻一刻近づくばかり。絶体絶命、史上最大のピンチに見舞われ弱りきった警部は、最後にどんな始末をつけるのか。シリーズ累計85万部、全作品が年間ミステリランキング1位に輝いた、超人気警察小説最終巻。
感想・レビュー・書評
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フロスト警部シリーズの惜しくも最終作。上巻。
今回も、人手不足のデントン署に次から次へと事件が舞い込み、なぜかフロスト警部にお鉢がまわってくる。
出世と世間体のことしか考えない警察上層部の叱責と、人は良いが能力のない部下の失態を下品なジョークで受け流し、小さなミスもなんのその、ワーカホリックのフロストは不眠不休で事件現場をかけずり回るが、捜査はどれも遅々として進まない。
フロストが抱えている大小の事件が多すぎて、読んでいる方も混乱し、フロストと同じように頭の中に霧がかかったように疲弊してくるが、これがこのシリーズの醍醐味で、この疲労感のまま漂い続けていたい気になってくる。
失踪事件のひとつがやっと進展を見せたところで上巻は終了。残り下巻でこのシリーズを読めるのも終わりかと思うと寂しくなる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原題は不穏な"A KILLING FROST"、初出は2008年。芹澤恵訳。
つーいーにー、最終巻きてしまった!
本作はウィングフィールドの遺作。病と闘いながらの執筆であり、完成した本を手にする前に79歳で亡くなったという。
芹澤さん訳は最後までキレキレで、フロストのブラックなユーモアやすっとぼけぶりだったりマレットへの慇懃無礼な嫌味だったり、プッと笑える素敵な訳でした。
今宵もマレットが上にいい顔をして大盤振る舞いで署員を他に貸し出しだが故に、人手不足のデントン署。
今やデントン署の名物ともなってしまった子供の失踪事件(デントンで子供は夜に出歩いちゃダメ!)に、連続強姦事件(デントンで女性は夜に出歩いちゃダメ!)、バラバラ腐乱死体の発見、そこにスーパーへの脅迫やら盛りだくさん。
厄介な事件を次々と追っつけられているフロストだが、マレットは新たに着任させたスキナー主任警部と組み、フロストをよその署に異動させようと目論んでいた…。
いつものことならのらりくらりと煙に巻くフロストなのだが、今回は窮地に陥る。きっかけが、いつものあの改ざんだらけの車輌維持経費の申請書とはね!!なんかシリーズ通してあまりにフロストの日常すぎて、壮大な伏線とは思わず。悪いことだというのすら忘れかけてたよ…←
でもなんだかんだ、フロストは部下たちからは慕われているんだよね。みんなマレットでなく、フロストと共に事件を解決したいと頑張っている…。
そうそう、まさかのモーガン続投!相変わらずの芋にいちゃんだけど、前巻よりもやや成長しているような?片腕とはいかずとも、小指くらいにはなった気も?フロストの毒舌も簡単に受け流して頑張っていた。
でもリズはいなくなっていた…。前巻で辛いことがあったから、どうなったのか心配。どこかで元気にやってくれたらいいのだけど。 -
今回も最高に面白かったフロスト警部だが、これが遺作でシリーズが終わるのがとても残念です。
訳者の芹澤恵さんのインタヴュー記事で「この訳で本当に合ってるのかな?」と思うとありましたが、気持ちがよく分かります(笑)。 -
「フロスト始末」(上・下)R.D.ウィングフィールド。芹澤恵訳。創元推理文庫。原著は2008年英国で発表されたようです。
2019年1月に読み終えているようです。
フロスト・シリーズ最終作。作者のウィングフィールドさんが2007年に死去。遺作です。でも未完ではありません。
死病の床で完成されていたそうです。拍手。パチパチ。
病床で弱りながらとりあえず最後まで書いた、とか。
ほぼ未完だったけど編集者が手を入れてなんとか完成させた、とか。
そういう感じは読んだところまったくしません。堂々たる傑作。
まあ、ほんとのところどうなのかは分かりませんが。
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相変わらず、混沌とスピード感と緻密さのエレクトリカル・パレード。
一方で、スタイルや美学にこだわらない泥臭い、下品で人間くさい、猛烈な圧力の、ヘヴィメタル・エンターテイメント。
このシリーズを語るときに、矢張りヰの一番には主人公の中年(初老?)警部であるフロストの、
連続シリーズの主人公としては相当に冒険的な下品さ、卑猥さ、が注目されることになります。
それに、ダーティ・ヒーローなんてものぢゃないんです。単にダーティ。
普通に警察なり会社なり、速攻でクビになっておかしくないような不正を、フロストは犯しちゃいます。
それも、「そう見えて、実はそうぢゃなかった」という構造ではなくて、ほんっとに悪いことしてます。
さあ、だけど応援しちゃいます。
これは一寸、興味深い疑問なんですが、「フロスト・シリーズに10代や20代の若者たちは熱狂するのか?」。
上記の味わいも含めて食べ物で言えば、確実に雲丹とか生牡蠣とか鮒寿司とか豆腐餻とかブルーチーズとか山羊とかモツとか、そういう類いのものです。
臭い。苦い。けれど、癖になる旨さ。
他に例えれば。煙草だって、15や16で始めて口にしたときから「旨い」と思う人はほぼいないでしょう。
不健康で不健全で違法で悪徳な香りに憧れて始めて、続けて、ハッと47歳になったときには、「ああ、煙草がうまい」と心底から震えたりします。
フロストも(煙草と比べるのが妥当かどうかは兎も角)我ながら、若い頃に読んでも「面白い」とは思ったでしょうが、心底震えたりはしなかったのでは。
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ですが、そういう持ち味は、さておいて。
そういう持ち味議論に隠れて、実は舌を巻くのはエンターテイメントとしての執念。
謎解き、ミステリ、ドンデン返し。それが1本の筋として流れるのだけど、並行して別の事件が起こり、クロスして3つ目の事件まで起こる。
さらにパラレルで署内で行われる胃腸がげんなりするような権力争いと出世競争、そこにカンウンターを入れるギャグと皮肉精神。
更に主人公に訪れる、破滅の危機・・・。
そして、崖に爪を立てて血を流してでも、とにかく「安易な性善説」と「お涙オセンチ感動路線の決着」だけは避ける。
その慄然とするまでのエンタメ精神・・・。
もう、これは本当に凄いンです。
ここまでの執着と執念で小説を書ける人は、なかなか居ません。
かろうじて横山秀夫さんなんかが近いかも知れませんが、横山さんは究極やっぱり短編アーティストで、ウィングフィールドさんの胸板の厚いパワープレイの迫力はありません。
ウィングフィールドの、この弩弓の迫力の前では、伊坂幸太郎さんも小さく感じます。プレミアリーグとJリーグの差・・・。
海外でも、スティーブン・キングさんやエルロイもすごいンですけど、やっぱりお国柄、文化なのか、どこかザックリ感とスプラッタ感があります。
(デニス・ルヘインさんが、比べ得る存在かも知れません)
これは、ウイングフィールドさんが、前職が放送作家だった、と言う事とも関係があるかも知れません。
なんというか、「とにかくスピード感!」みたいなブレなき精神。
そして、「冬のフロスト」もそうだったはずなんですが、この「フロスト始末」も、
ほんとうに、ほんとうに、ほんとうに、文庫本で言えばラスト1頁のところで、鮮やかにひっくり返される。
もう、この技術。この執念。
涙、なみだ、のスタンディングオーベーションです。
創元推理文庫ですし、ミステリ小説、犯罪小説、警察小説なんですけれど、
こういう技術こそが、小説がアートである、ということなんだと思います。
2020年、あるいは2021年あたりに、シリーズ全部再読しようと目論んでいます。
(こういうとき、電子書籍は圧倒的に強いんですよね・・・場所を取らないし、汚れたり傷んだりしないから) -
毎度ごまかしていた車両維持費の請求書の改竄がとうとうバレてしまい左遷の危険に陥るフロスト警部。まいどのことながら少年少女が誘拐されている。
今回の相棒は前巻に引き続きお芋くん。最終巻とあってちょっとしんみりしている。 -
まさにフロストワールド
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R・D・ウィングフィールドの遺作にして、「フロスト」シリーズ最終作。原著は 2005年、翻訳は 2017年の出版。いつものように夜を徹っして読みふけり、とうとうこの最高に面白いジェットコースター警察小説シリーズも全巻読み終わってしまった…。
と思ったら、著者の遺族の許可を得て別人による続編が書かれているらしいので、それでも読んでみるか。 -
相変わらずデントン署は人手不足で不眠不休のフロスト。
とにかく寝てほしいと毎回願い、読んでいるこっちまで疲労がw
今回はフロストお得意の例の件がバレ、フロスト大ピンチ。どうなることやらとヒヤヒヤ。
最後の最後まで面白かった。 -
いつもは下品でワーカーホリックの上司フロストの部下となる新人の視点から、読者は架空の町デントンを旅することになるのだが、今回はフロストの視点になっている。これは、署長らによるフロスト追放の画策がサブテーマとなっているため、彼は住み慣れたわが家を追い出される瀬戸際まで追い詰められ、たびたび亡くなった妻への思いに引き戻されるという展開上のことなのだろう。もうひとつ意外だったのは、いつもは読者もへとへとにさせるほど徹夜が続くのに、今回のフロストは割と休息時間が多く、短時間ながらも寝ているのだが、へまは相変らず。
芹沢恵さんの訳は、シリーズを通して評価が高く、今作でも微妙な言い回しを含めた冗談の掛け合いを日本の読者にもニュアンスが伝わるように上手に訳されているのだが、フロストの携帯が鳴るのを常に"さえずる"と訳されたのには違和感を感じた。あのフロスト警部が着信音を小鳥のさえずりのような穏やかなメロディに変えているわけではないだろうにと思って原文を当たると、ただ"when his mobile rang"を"携帯電話がさえずりだした"と訳していた。考えに考えての訳かもしれないが、イメージとかけ離れた不釣り合いな印象。 -
最後と思うと残念です