生者と死者に告ぐ (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488276119

作品紹介・あらすじ

犬の散歩中の女が突如射殺された。ライフルで80メートルの距離から正確に頭部を狙撃されたのだ。翌日、森に建つ邸宅で、女が頭部を撃たれて死亡。数日後、若い男が心臓を撃ち抜かれる。全員が他人に恨まれるタイプではなく、共通点がわからない。そして警察署に“仕置き人”と名乗る謎の人物から、死亡告知が届く。犯人の目的は? 被害者たちの“見えない繋がり”とは? 刑事オリヴァーとピアが未曾有の連続殺人事件に挑む!

感想・レビュー・書評

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  • 刑事オリヴァー&ピア・シリーズ7作目。
    連続射殺事件の被害者たちの繋がりがなかなか見えてこず、捜査が進まない。やっとその繋がりが明らかになったところで関係者から思うように情報を得られず、さらに犯行が重ねられる。
    今回の事件は、どうにも救いがないように思えてやり切れなかった。
    もちろん悪い奴というのはいて許し難いのだけど、無関係な遺族は辛すぎるんじゃないだろうか。やり遂げた方はこの結末でいいのかもしれないけど。

    作中では前作から1年半ほど経過していて、あの過去の件がどうなったのかさらっと語られている。
    メインの事件とは関係ないことはいつも本と本の間で進んでいて、いつの間にかオリヴァーはまた恋愛方面が順調ではない様子。どうせ新しい相手が現れるんでしょと思っていたら、ふらーっと吸い寄せられて、ほらきた。
    貴族の包容力で彼好みの自立した女性にもモテるのに、深い関係になったら続かないという印象なので、次の巻ではどうなっているか楽しみだ。

  • オリヴァー&ピアのシリーズ、第7作。
    ドイツのミステリです。

    オリヴァーは主席警部で捜査のリーダー。ピアは恋人ではなく、仕事上のパートナーです。
    散歩中の女性がライフルで遠くから射殺される事件が起きた。
    ピアは夫と休暇旅行に行くはずだったが、人手不足の時期に難事件が起きたのを案じて取りやめる。
    次々に射殺事件が起きるが、被害者は誰も恨まれるような人柄ではなかった。
    捜査は難航するが…?
    思いがけない事件の描写がシャープで、ミステリとして興味を引く内容。

    オリヴァーは離婚後、幼い末娘を可愛がって、ようやくだいぶ落ち着いた暮らしに。ただし、今の交際相手とはどうも仲が深まらないので別れを考えている。
    今回は捜査に州の事件分析官が参加するが、これがやや戯画的というか、口は達者だが的外れで、お荷物になってしまう。
    ピアの妹キムが登場、実は司法精神医で、彼女の見立ての方が、事件分析官よりも役に立つという結果に。
    ピアは家族と上手く行っていないという話だけは以前からあったが、詳しいことは出てこなかったと思います。
    旧弊な両親らしいけれど、それなりに和解が成立した様子にほっとする心地。
    事件の関係者でキャリアウーマンのカロリーネの描写が丁寧で、ん?この人、オリヴァーとお似合いじゃないかしら…(笑)

    重いテーマを背景とした事件に切り込みつつ、人間的要素で読ませます。
    現実味のある登場人物、捜査する面々も等身大で、人生が少しずつ変わっていきます。
    そのあたりも読みどころ。楽しみなシリーズです。

  • オリヴァー&ピアシリーズ第七作。

    前作から二年ほど経っている設定で、ピアもその恋人クリストフも前作でのショックから立ち直り、いよいよ結婚へ踏み出していた。ホッとした。
    しかし、長期休暇を取ってクリストフと旅行を楽しむ予定のピアに連続殺人事件が立ち塞がる。
    ドイツなら休暇は休暇と割り切って旅に出るのかと思いきや、意外にも人手不足の職場事情を思いやって休暇を返上するワーカホリック振りを見せる。
    そしてそんなピアを非難するどころか気遣うクリストフって、本当に良い人。
    そしてオリヴァー。離婚後も元妻コージマと幼い娘に振り回されつつ、やはり仕事中心の日々を過ごしている。

    ドイツでの銃犯罪は非常に少なく、作中の表現では14%だそうだ。またいわゆる通り魔事件も少なく、犯罪の70%は被害者と犯人に何らかの繋がりがあるらしい。何となく日本に似ている。

    しかし今回の事件は銃犯罪。調べると、意外にも銃を持つ者(勿論許可証が必要)、銃を撃てる人間は多い。
    被害者にはどんな繋がりがあるのか調べるうちに、思わぬ隠蔽事件が見えてくる。

    最初は貫井徳郎さんの「乱反射」みたいな話なのかと思ったが、もっと深くもっとどす黒いものだった。
    「ドイツは法治国家ではない」
    という言葉にも納得。ドイツだけではない、日本も他の国にもそんな側面はあるだろう。
    こんな大罪を犯しておいてお咎めなしの人間もいれば、罪とも言えないことで社会的に抹殺される人間もいる。
    人々が日頃抱える不平等感や格差、そうしたモヤモヤを改めて突きつけられた。

    人間は罪悪感や良心を長期間保ち続けることは出来ない。それは生物が生きていくための自己防衛機能なのだろう。
    一方で理不尽に家族を奪われた者はどう悲しみや苦しみと折り合えば良いのか。
    ピアも前作で危うく大切なパートナーやその家族を失うところだった。

    このシリーズは他のレビュアーさんも書かれているが長い。
    核心に入っていっても、最後の最後まで真相が分からない。そしてスッキリ解決、大団円とは行かない。

    次々に起こる事件に追われて、落ち着いて考えればもっと良い捜査方法、良い視点を思いついていただろうにと後悔するような紆余曲折があったり、流行りの言葉で言えば『ワンチーム』で当たらなければならないのに自分勝手に暴走する者がいたり、捜査は遅々として進まない。二時間ドラマであっという間に解決するスーパー刑事軍団ではないのだ。
    しかも犯人は常に警察の先を行っている。

    今回は初めてピアの家族が登場した。妹が意外にも司法精神医という仕事をしていることも判明。なんと事件捜査に加入している。いくらその道のプロとは言え、家族を捜査に加えるなんて「名探偵コ○ン」か。
    そしてオリヴァー。新しい彼女との関係はどうも上手く行っていないようだ。だが仕事の方は一時のポンコツから随分と回復。逆にポンコツプロファイラーがみんなの足を引っ張ってくれて怒鳴るシーンが多いのが気になるが、ピアとともに課を引っ張る頼れるリーダーだ。

    本国では九作まで刊行されているとのこと。続編も楽しみに待つ。

  • ネレ・ノイハウス『生者と死者に告ぐ』創元推理文庫。

    オリヴァー&ピア・シリーズ第7弾。『仕置き人』を名乗る連続射殺犯にオリヴァーとピアが挑む。シリーズで最も凄惨な事件が描かれながら、相変わらず手薄な警察組織にやきもきしつつも無難な結末を迎える。

    犬の散歩中に女性がライフルで頭部を撃たれ、射殺される。翌日、森の中の邸宅で女性が同じく頭部を撃たれて死亡する。数日後には若い男性が心臓を撃ち抜かれて死亡する。全く共通点の無い被害者に頭を抱えるオリヴァーだったが、犯人の『仕置き人』から警察署に死亡告知が届けられる。

    本体価格1,500円
    ★★★★

  • オリバーが仕事ができる!(意外)
    相変わらず女に弱い。
    ピアがカッコいい。
    ピアの夫が素敵だ。

    酒寄先生の翻訳がものすごく読みやすい!

    だが長い!

    日本のミステリーで同じ題材のものを複数読んだが、いずれも問題提起色が強かったので、この作品はその辺は突っ込まず、謎解きとして複雑かつ残酷で、とても面白かった。

    解説がいちばんの謎。

  • このシリーズのなにがよいといって、シリーズの冠たるオリヴァーとピアが、カップルではないことだ。
    それぞれに別のロマンスがあって、二人の間には一切ない。
    オリヴァーとピアは上司と部下で、よき相棒で、ともに事件に取り組む仲間なのだ。
    男女がともに仕事をするのが普通の世の中で、これはとても現実的だ。
    ちょっと理想的すぎるかもしれない。ま、いいではないか。

    シリーズ7巻目の本書は、分厚く、重い。
    人物紹介は、長い。
    そして、テーマは重い。辛い。痛い。
    いつもどおり、読み甲斐がある。

    読みながら、作者ネレ・ノイハウスは嫌いな人が増えたのではないかと、勘ぐった。
    いや、むしろ、作者の嫌うような人物が、世の中に増えたのかもしれない。
    権利ばかりを主張して、義務は頭にない人。
    親しさを装っていちいち要らぬことを言う人。
    口の達者な能力無し。言い訳だけは上手いできない人。
    現場跡に群がり、血痕を撮りたがる有象無象。

    傲慢で、身勝手な人々に、作中のあちこちで出くわすのだ。

    「最近とみにひどいです。みんな、権利ばかり主張して、配慮は死語になりました」 (28頁)

    舞台は2012年、発行は2014年。
    ドイツで妙な踏切事故をよく聞くようになったのは、この頃ではなかったか。
    警告音が鳴っていようが、遮断機が閉じていようが、かまわず車を突っ込んで、列車とぶつかる。
    あげく「こんなところに列車が通るのが悪い」などと言う。
    自分が通れば、電車もなにもかも全て、道をあけて当然と思っているらしい。
    神に選ばれた唯一の人と勘違いしているのだろう。

    「信じられない」ピアは血の跡に群がる人だかりを見て、嫌悪感をむきだしにした。(347頁)

    ピアのきわめてまともなこの気性が嬉しい。
    礼儀正しく毅然として、言うべきことを言う姿勢が素晴らしい。

    「捜査の妨害になります」ピアは冷静に答えた。「どうか出ていってください」 (27頁)

    オリヴァーはといえば、その育ちのよさ、親切心、鷹揚さの見える挿話がよかった。
    貴族としての包容力でチームをまとめるべく努め、招いた客(元妻の母)はタクシーではなく自身が送ると、紳士らしく申し出る。

    「オリヴァー、あなたこそ、わたしが欲しいと思っていた息子よ」(136頁)

    さらに娘からは「世界一の父さんよ!」と、心から言われるのだ。(134頁)

    ドイツ人の理想とする男性像かもしれない。

    『彼は女性に関して信じられないほど鈍感だ。明らかな秋波にも気づかないときている。』(232頁)

    女心の機微を読むに長けている――つまりは「すれている」こともなく、むしろ抜けている。といって朴念仁ではない。
    その上、有能な女性が好みだなんて、有能な女性の理想の男性ではないか。

    いっぽう、巻末の解説はいろいろいただけなかった。特に悪女云々が失笑ものだ。
    まず女性は悪女について語らない。
    そもそも男性が論ずる悪女たるや「ボクの心を乱して、ボクの懐からごっそり持っていた女」に帰結してしまうからだ。
    悪女論なぞ、女は本を読まないとされた時代の遺物だ。
    男性しか読まない本で、話の合う男性のみで、こっそり論ずるのをお薦めする。

    このシリーズのなにが救いといって、オリヴァーとピアのよい関係だ。
    事件がどんなに残酷でも、二人のやりとりにはほっとする。
    二人の周辺の人々――捜査班の面々や、家族などの様子に、しばしばにやっと笑う。
    最後はちゃんとひと息ついて、後味が悪くない。

    だから、読み終えた時、さらに次が楽しみになる。
    きっとまた重いテーマだろうなと、予想がついてしまってもだ。

    シリーズの順番は以下のとおり。
    1巻ごとに事件は解決しているので、どれから読んでもかまわない。
    けれども、オリヴァーやピアたちの話も楽しみたければ、やはりシリーズ順に読むのがいい。
    話の順が発行順とはちがっているので、要注意である。

    『悪女は自殺しない』
    『死体は笑みを招く』
    『深い疵』
    『白雪姫には死んでもらう』
    『穢れた風』
    『悪しき狼』
    『生者と死者に告ぐ』
    『森の中に埋めた』

  • オリヴァー&ピアのドイツミステリー第七作。連続射殺事件発生。遠距離から正確な射撃。関連性が見つからなかったが、どうやら被害者は臓器移植に関わった者の近親者らしい・・・

    長い。明かされる真実は意外なものであり、おぞましいものではあるけれど、そこへと至る過程が(個人的好みからすると)長いと思う。すごく現代的なテーマを扱っていて良いけれど、文庫600頁も費やすほどなのかとも思う。(個人的に読まなければならない本が山積みになってるから焦ってるという事情が点を辛くしてるのかも知れない。すまぬ)

  • ホーフハイム刑事警察署の管轄内で、犬の散歩中の女性が射殺された。80メートルの距離から正確に頭部を狙撃されたのだ。翌日、森に建つ邸宅で、女性が窓の外から頭を撃たれて死亡。数日後には若い男性が心臓を撃ち抜かれた。そして警察署に“仕置き人”からの死亡告知が届く。被害者たちの見えない繋がりと犯人の目的とは。刑事オリヴァーとピアが未曾有の連続狙撃殺人に挑む!

    シリーズ第7作は、サスペンスフルな展開で始まるが、途中から前作同様、社会派ミステリの要素も入ってくる。最後の最後まで一気読み。堪能いたしました。

  • 面白いんだけど、3分の2くらいに短く出来そう。どういうわけか話が進まない。
    今回も酷い登場人物がいるが、あんまりどうしようもないキャラは出さなくてもいいのではないだろうか。出す意味がわからない。物語に必要なわけでもないし、面白さが増すわけでもない。
    オリヴァーは大分ましになった。ピアがちやほやされる場面は今回はあまりなかった。

  • オリバー&ピアシリーズ7作。
    あらすじ
    散歩途中の女性が射殺される。犯人はスナイパーの腕を持つようだ。続いて女性が窓の外から、さらに若い男性は心臓を撃ち抜かれる。この男性が臓器移植を受けていたこと、それぞれの被害者の夫や娘が医療関係者であることもわかる。ほかには被害者の娘はかつて人命救助の不備を遺族に責められていたらしい。地元警察には犯人からの告発予告状も届く。一方、母親を殺害された娘は医者の父親が金庫に携帯を持ち、ある人間関係を隠していることに気づく。背後には臓器移植に際して、ドナー判定に関わる犯罪があるようだ。

    相変わらず登場人物は多いけど、キャラクターの濃さとか、クセの強さが適度で読み進めやすい。ドナー判定とか、人間の尊厳とかも丁寧にかかれているし、チームも一生懸命に働く様子とか、安心して読める。

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