- Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488276102
作品紹介・あらすじ
マイン川で少女の死体が発見された。年齢は14歳から16歳、長期にわたって虐待された痕があり、死因は溺死だと判明する。不可解なことに、淡水ではなく塩素水で溺れていた。刑事オリヴァーとピアは捜査を始めるが、数週間経っても身元が判明しない。さらに新たな殺人未遂事件が発生し捜査は混迷を深めていく。少しずつ明らかになる、警察組織を揺るがす凶悪犯罪とは。〈ドイツ・ミステリの女王〉が魅せる巧みなミスリード。大人気警察小説シリーズ第六弾!
感想・レビュー・書評
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ドイツのミステリ、刑事オリヴァー&ピアのシリーズ、6作目の刊行。
主席警部のオリヴァーとピアは恋人ではなく同僚で、仕事で認めあっている関係です。
オリヴァーは離婚後やっと落ち着き、幼い末娘に愛を注ぐ日々。
前作「穢れた風」まではどうなることかと思わされたけど、まずはよかった、よかった。
川で少女の変死体が発見され、不審な事実が判明。
一方、人気女性キャスターが拉致されます。
さらに、事件が‥
少女虐待を暗示する描写が挿入され、誰のことなのか、過去のことなのか、救出が間に合うのか‥はらはら。
絡み合う事件がしだいに大きな姿を見せ始めるのです。
登場人物が多い中で、すべてを失った男がひっそりと生きながら仲間を助けたりしているのが印象的でした。
ピアは恋人とは安定した関係ですが~
年上の彼には大きくなった娘がいて、孫までいる。
その孫が勝手に送り込まれてきて、ピアは慣れない世話をするはめに。
4歳児リリーに振り回され、太ってると言われたり、「じいじの相手ならばあば?」と言われたり。
これが次第に馴染んで来るのが微笑ましい。
ついには母性愛が高まっていくのです。
ピアの出番が多めで、お金持ちの友人の家に行ったり、いつもより豪華な面も。
ドレスアップしている時に現場に駆けつけると、同僚に感心されたり。
ピアは金髪でかなりの美人なのだが、やや豊満な体型らしい?
農場に住んでいるから働きやすい服装で、仕事のときも実用本位のスタイルなんでしょうね。
第一作では30代後半でしたが、6年経って40代なかば近い?
子供もいないのに、ばあばはないよねー。
最後はドイツのお母さんだね、と呼ばれます(笑)
女性たちが大活躍、充実した読み応えでした☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
刑事オリヴァー&ピア・シリーズ6作目。
虐待の痕がある少女の遺体が川から発見され、序盤から胸が悪くなるような事件を匂わせる。
あまりにも酷い犯罪に、現実のこととは思えない。いや、フィクションなんだけど、こういうことが現実にもありうるという意味で、犯罪者のその心理が信じられないというか、もう、本当に悪。
前作に続いて捜査十一課は安定したメンバーで、オリヴァーもiPhoneを使いこなせない以外は問題なし。よしよしと思っていたら、退場したはずのフランクが出てきた。
彼の過去が明らかになり、不愉快な言動にも理由があることがわかる。まあ、それを知っても全く好感は持てないのだけど。
その過去が絡んだ諸々の顛末がとても気になる。 -
ドイツ・ホーハイム警察署刑事、オリヴァー&ピアシリーズ第六作。
序盤は様々な視点で場面転換が続くため、一体どこを軸に進むのか分からない。
キャンピングカー生活をしているらしき男、テレビの人気女性キャスター、ピアの友人エマ、何か酷い目に遭っているらしき少女の回想、オリヴァー、そしてピア。
これだけでも六つもある。
しかし読み進めるに連れて、オリヴァーとピア以外の話が巧妙に繋がっていることが分かり、更にはピアの話も…。
タイトルの意味は想像通りだったが、予想以上におぞましかった。日本に限らず世界中にこういう話はある。
人間は無償の愛を捧げる一方で、こんな残忍な行為も出来てしまう。恐ろしい。
加害者というのは何も直接的に何かした者だけではない。見て見ぬ振りをした者、見たくなくて逃げた者も含まれるのではないか。
しかし闘いたくてもこんな酷い返り討ちをされたら躊躇する。
オリヴァーとピアは一体どう立ち向かい、勝てるのか。
軸が見えてくる中盤以降は最後の最後までハラハラする展開の連続だった。
今回の作品では、つくづく人は見かけによらないことを思い知らされた。
今までイメージ最低だったあの人にこんな事情があったとは。またその逆も。
なんだか大沢在昌さんの新宿鮫シリーズを彷彿とさせる。
もう一つ、訳者さんのあとがきにもあったが、今回は母親と娘の様々な形も描いてあって興味深く読んだ。反抗期でも思春期でも難しい年頃でも、何らかの形でコミュニケーションを取ろうとする努力は必要だなと改めて感じる。
シリーズとしては、このところ「らしくない」オリヴァーだったのが、プライベートの問題が一段落して「らしい」オリヴァーが戻ってきたのが嬉しかった。
またピアの方もプライベートは順調。クリストフ、どうかこのままピアを支えて欲しい。
同僚では堅物のクレーガー鑑識課課長の新しい一面や活躍を見られて面白かった。
本編とは離れるが、作中ハルク・ホーガンの名前が出てビックリ。ドイツでもプロレスって人気なのか。 -
ネレ・ノイハウス『悪しき狼』創元推理文庫。
シリーズ第6弾。今回は登場人物が非常に多く、冒頭から入れ替わり立ち替わり新たな人物が登場する。また、シリーズ最長ということもあって、読むのに苦労した。
川で見付かった少女の変死体を巡り、オリヴァーとピアは捜査を開始する。なかなか少女の身元は判明せず、捜査が難航する中、新たに殺人未遂事件が発生する。様々な疑惑が渦巻き、巨悪の影が見え隠れするが……
今回ばかりは、なかなか波に乗れぬままに何とか読み終えたという感じ。このシリーズにそろそろ飽きてきたのかな。 -
このシリーズの6冊目。相変わらず面白い。事件が虐待ということで少し陰惨な感じがしたがオリバーとピアのコンビによる事件解決のテンポがいい。まだ少なくとも3冊は翻訳されているので読むぞ。
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ちょっと前に民放テレビで映画「カメラを止めるな」が放送されたとき、冒頭に出演者が出てきて、予告をしていたんですが、「冒頭何分までは、よく分らないかもしれないけど、我慢してみれば、後半は必ず面白くなります。」という趣旨の発言をしていたのが気になりました。カメラではなく、視るのを止めるな、という訴え。
確かに前半に伏線が一杯張ってあって、分かりにくかったり不自然だったりして、それが後半で回収されていくのが面白さの映画なので、後半まで視てもらわないと、な映画ではありますが、しかし作り手自ら「我慢」って、という違和感。そう、youtubeをはじめとした動画を見慣れた世代は、だらだら退屈な部分はすっ飛ばして、ハイライト、オチだけ見るというのが普通の感覚で、それができないテレビのリアルタイム放送はまさに、「我慢」でしかないんだなと改めて思いました。
さて、本書、巻頭の表に載ってるだけで、40人近くの登場人物が出てくる上に、次々と場面転換してく複雑な構成。群集劇というか、ホテルグランド方式というか、全ての伏線がある一つのイベント会場に集約していくこの気持ちよさは先の動画視聴スタイルでは決して味わえません。たまにはじっくり時間をかけて、「我慢して」、そういう体験をしてみるのも良いのでは。 -
オリヴァー&ピアシリーズ6作目
あらすじ
川から少女の遺体が見つかる。長期間虐待を受けた跡があった。警察は当初、前歴のある元弁護士を疑う。有名テレビキャスターのハンナはセラピストの仲介で元ギャングの大物と、ビッグニュースを報道しようとするが、何者たちな暴行される。ピアの同級生エマは結婚して義理の両親の屋敷で暮らす。恵まれない女性や子供を保護する施設を運営し、そこのタッフは、父母の養子だ。しかし、娘に虐待の疑いがかかり不安に思う。セラピストの女性が殺害される。また、オリヴァーたちの元同僚、フランクは性格に問題を抱え、処分されたがクビになっていない。過去に捜査中に3人を撃ったことと関係あるらしい。捜査にやたらと積極性な上級検事も施設の養子だった。
面白かったー。ラスト付近まで全然予想できなかった。ピアたちと同じように、こんがらがりながら読み進めている感じ。あっちこっちで事件が起こり、傷ついた人がいて、どうやら組織は大きそうで、解決するか心配だつた、メインだと思っていた、オリヴァーの元カノ、署長はどうなるんだろう。解雇かな。
今回はピアの生活がかかれていてよかった。恋人のクリストフが包容力があって微笑ましい。鑑識課長のクレーガーが冴えていた。
シリーズは6作目だけど、全然飽きることなくむしろスケールも面白さもパワーアップしてる。次も楽しみ。 -
ドイツミステリーの女王による、オリヴァー&ピア刑事のシリーズももう6作目。川で少女の遺体が見つかった。凄まじい暴行の跡があった。身元がなかなか分からない。肺にあったのは塩素で消毒された水なので、川で溺死したのではない・・・人気ドキュメント番組のキャスター、ハンナ・ヘルツマンは、大きなネタを掴んだ。極秘裏に取材を進めていくと、とんでもないことが分かってきた。しかし・・・ピアの友人エマは、シングルマザーとその子供のための協会「太陽の子協会」の創始者の息子と結婚し、義父、義母と共に暮らしている。しかし、夫は家庭を顧みず・・・トレーラーハウスで暮らす貧しい男は、裏で弁護士のような仕事をしている・・・それらが並行して描かれるが、後で一点に集約されていく。
うーむ。さすがネレ・ノイハウス。面白過ぎる。(どうでもいいことだけれど、ネレって、礼という字に似てるな)
おぞましい事件の裏にあるおぞましい真実。作者のあとがきによると、現実の世界でもあることらしい。その話がメインにあるのだけれど、サイドストーリーも素晴らしい。感じの悪い刑事だったフランク(どの話が忘れた)がなぜそうなったのか、本作で分かる。
個人的には、偽弁護士のようなことをする男と、ロードキングス(バイク乗りたちの犯罪集団)の元幹部の話が非常に興味深かった。 -
なぜか俄然目立ち始めたクレーガー。おいしいところをガンガンふんだくる。
一方オリヴァーは空気。もっと見せ場をやれよ。主人公なんだよね?違ったの?
バラバラな話が半分過ぎたあたりで繋がり始めると面白くなってくる。
だが、そこに行くまでの前半がまだるっこしいというか、話がなかなか進まない…
短くぎゅっとまとまると、もっと良くなりそうな、そんな感じ。
薄幸の青年と、はねっかえり小娘はノイハウスのパターンなのね。 -
毎回楽しみにしているオリヴァーとピアシリーズだが、
実は、すぐに手に入れて、すぐに読むわけではない。
手に入れて、しばらく置いておく期間がある。
準備を整えたいのだ。
気持ちの、気分の、体調の、時間の、場所の、環境の・・・・・・そんな色々の。
というのも、このシリーズ、毎回テーマは軽くない。
ナチ、冤罪、環境問題等々、一筋縄ではいかない、考えさせられるものばかりだ。
その上、はじまりが必ず不穏なのである。
事件に関わる人々の状況も落ち着かないし、
オリヴァーやピアの周辺もなんだか穏やかではないし、
どう関わるかまだ分からない人々も、それぞれなにかを抱えている。
なにか起こりそうだが、まだなにかは明らかではない、
でも必ず不幸が訪れそうな、この落ち着かない状況が、
それぞれ登場人物ごとに描かれるのだ。
正直、ストレスである。
それに堪えて読んでいくために、上記のような色々を整えておく必要がある。
「だったら読まなければいいじゃない?」
もっともな問いである。
それにはこう答えよう。
「だって、面白いんだもの!!」
テーマは重く、人物は多数、ひどい事件があるにも関わらず、
このシリーズはどの巻も、立派なエンタテイメントになって、
信じられないことに、読後感がよいのである。
だから読みたい、止められない。
前半は呼吸を整えつつ、
後半は息を詰めて一気読み。
『悪しき狼』も期待どおりだった。
「あなた、早く戻ってきて、早く家に帰ってきて」
とは、作中に出てきたドイツのヒット曲である。(446頁)
シリーズファンの大半が、近頃のオリヴァーについて、とにかく気をもんでそう呼びかけていただろう。
この巻で「おかえりオリヴァー」と言えてよかった。
これで、ちょっとは安心して、次の巻を待つことができる。
件の歌はこちら
Junge, komm bald wieder Freddy Quinn
https://www.youtube.com/watch?v=6Ag3QNdomuQ