忘れられた花園〈上〉 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488202057

作品紹介・あらすじ

1913年オーストラリアの港にたったひとり取り残されていた少女。名前もわからない少女をある夫婦がネルと名付けて育て上げる。そして2005年、祖母ネルを看取った孫娘カサンドラは、祖母が英国、コーンウォールにコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。なぜそのコテージはカサンドラに遺されたのか? ネルとはいったい誰だったのか? 茨の迷路の先に封印された花園のあるコテージに隠された秘密とは?デュモーリアの後継とも言われる著者のミステリアスで魅力溢れる傑作ミステリ。文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 港に残された少女ネルと
    ネルを看取ったその孫カサンドラ
    そしてネルの持っていた本の作家イライザ
    他にもいますが主人公の各時代が切り替わりながら進む(目次には西暦と場面の文字、これだけで面白そうな雰囲気がある)

    ネルとは何者なのか?
    なぜこんなことが起きたのか?
    スラスラと引き込まれて、各時代で似たような場面でリンクしたり、時間差で登場人物のつながりが明かされたり
    作者の連続技がすごい。

    ひとまず感想は下巻にて
    登場人物が多いのがややつらい

  • 再読!
    何度手にしても心を鷲づかみにされる。

    バーネット夫人も登場していたの、思い出しました。文字通り『秘密の花園』

  • オーストラリア・ブリスベン、1930年、ネルは21才の誕生パーティの時に父親から、実はおまえは実の子じゃないと告げられる。イギリスからの船が着いて、一人残っていたのだ、と。それからネルは幸せだったそれまでの家族が、何の関係も無い別なものに見えてきて、婚約も解消し、家を出て自らのルーツ探しに奔走する。2005年、95歳で孫に看取られながら死んだが、今度は孫のカサンドラが祖母の謎を辿る・・

    オーストラリアでの90年、そしてルーツのイギリスでは19世紀末、さらにその家の始祖はコーンウォル地方で、1724年、難破船からの略奪で財を成した、というのまで村人からの聞き込みで分かってくる。デュ・モーリアの「荒野の館」もコーンウォルで難破船から泥棒してたなあ。ルーツを探して出てくる出てくる驚きのエピソード。むむ、これはディケンズの世界だあ。後半になるにつれ、えっ、そんな、そっちに行く~? という怒涛の展開。いやしかし、やはりヘソはネル本人で、まったく翻弄された人生だったよね、ったく。・・しかし現状を受け入れるしかないのかも、開き直るしかないよね、とも感じる。


    実は自分は本当の子じゃなかった、これがどれほどの衝撃なのか。それまでの、今の環境、さらには自身の過去すべてが、価値の無いもの、否定したいものに思えてくる。みなしごを育てる以外は、他人の子を自分の子にして育てる、こういうことは子の無い親のエゴだ。身長の高低を変えられないのと同じように、子供の有無を考えられないものなのか、しかし子の無いのを受け入れられないのだろうなあ。

    初めて読んだオーストラリア人の小説。

    早川海外ミステリハンドブック2015:時代を作る・作った新世代ミステリ

    2008発表
    2011.2.25初版

  • たった一人、イギリスからオーストラリアについた船に残された4歳の少女ネル。
    大人になったネルが過去をたどるための唯一の手がかり『お話のおばさま』ことイライザ。
    ネルの過去をたどる孫娘の(といってもちゃんとした大人)カサンドラ。

    時代を越えて3人の女性の人生が交差する時に見えてくる真実。

    という話なんだと思うんだけど、まだ上巻なので真実はまだ見えてこない。

    だけど、私の好きなイギリス文学の匂いが濃厚なこの作品。
    読みながらどんどん世界に溺れていく。

    ああ、下巻を読むのがものすごく楽しみ。
    こんなトキメキ、学生時代みたい。

  • 親と自分との関係が突然変わってしまうこと。親から突然置き去りにされること。そのような体験は、子供にとって「生きる世界の底が抜け」、世界との接点を失うような体験。そんな女性(たち)が、自らのルーツを探ることで、世界との繋がりを取り戻そうとする物語。

  • ちょっとヤングアダルト風味が疲れる所もあるけど、久々になんというのかね、10代の若かりし頃に感じていた、文章への強い陶酔、メルヘンの力量(ファンタジーでもSFでもなくて)を思い出した。自分が知らないだけなのか、出会わないだけなのか、メルヘンを久々に感じた。女子は皆アリスの世界のようなメルヘンが好きなはずだが、何十年も忘れてた。別に年とっても、「少女」はいなくなるわけでなくて、変わらず自分の中にいるんだ、それをいつも忘れている。

  • ネットで見かけて。

    イギリスからオーストラリアへ向かう船の中でひとりきりだった少女。
    バッドマンを恐れていた母を亡くし、弟と二人で生き抜く少女。
    祖母に預けられたまま、母親が別の家庭を持ってしまった少女。
    この三人の少女を中心に話は進むが、
    三人の折り重ねられた人生、
    いづれも波乱万丈すぎて追いついていくのが大変だった。
    著者の作り出した迷宮で彷徨っているようで、
    「小公女」よりも「小公子」よりも「秘密の花園」が好きだった
    自分としては楽しかった。

    冒頭、祖母の家に置いて行かれた少女が、
    歯ブラシがない、と言って泣き出す場面には心をつかまれた。

    (下巻へ続く)

  • オーストラリア出身でイギリス在住の作家「ケイト・モートン」の長篇ミステリ作品『忘れられた花園〈上〉〈下〉(原題:The Forgotten Garden)』を読みました。
    「ダフネ・デュ・モーリア」の後継者… 21世紀の「ダフネ・デュ・モーリア」… 等々のキャッチコピーが気になり、読んでみることにした作品です。

    -----story-------------
    〈上〉
    1913年オーストラリアの港にたったひとり取り残されていた少女。
    名前もわからない少女をある夫婦が「ネル」と名付けて育て上げる。
    そして2005年、祖母「ネル」を看取った孫娘「カサンドラ」は、祖母が英国、コーンウォールにコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。
    なぜそのコテージは「カサンドラ」に遺されたのか? 
    「ネル」とはいったい誰だったのか? 
    茨の迷路の先に封印された花園のあるコテージに隠された秘密とは?

    〈下〉
    祖母から英国コーンウォールの崖の上にあるコテージを相続した孫娘「カサンドラ」は、祖母「ネル」の書き残したノートと謎めいた古いお伽噺集を手に英国に渡る。
    「ネル」はなぜ遠い地にコテージを買ったのか? 
    「ネル」はいったい誰だったのか? 
    今はホテルとなった豪壮なブラックハースト荘、その敷地のはずれ、茨の迷路の先にあるコテージの手入れを進めるうちに、「カサンドラ」は封印された庭園を見出す。
    そしてブラックハースト荘の秘密とは……? 
    解説=「川出正樹」

    *第3回翻訳ミステリー大賞受賞作
    *第1位 第3回 AXNミステリー「闘うベストテン」(2011年)
    *第7位『ミステリが読みたい!2012年版』海外篇
    *第8位〈週刊文春〉2011ミステリーベスト10 海外部門
    *第9位『このミステリーがすごい!2012年版』海外編

    ●数々の書評から

    魔力に満ちた一冊――ニューキャッスル・ヘラルド
    最後の最後に明かされる真実。驚愕の真相とはまさにこのこと――カーカス・レビュー
    読者を別世界に誘う壮大で豪奢な作品――NYデイリー・ニュース
    「モートン」は読者を時に驚かし、時に当惑させ、そして徹底して楽しませてくれる――スター・テレグラム
    あざやかな筆致、堪能すること間違いなしの作品――デイリー・エクスプレス
    「ダフネ・デュ・モーリア」の完璧なまでの後継者――ル・フィガロ
    -----------------------

    2008年(平成20年)に発表された作品で、「ケイト・モートン」の長篇第2作目にあたる作品です、、、

    舞台はオーストラリアそしてイギリスのロンドンやコーンウォール、時代は1800年代終盤から2005年と、舞台と時代を行きつ戻りつしながら、空間的にも時間的にも大きな広がりをの中で、自らの、そして祖母の出自の謎を解き明かす物語… 面白かったです。


    第1次世界大戦前夜の1913年、オーストラリアの港で、ロンドンから着いた船の乗客が去ったあと、たったひとり取り残されていた少女を港の職員が見つけ、自宅に連れ帰ることに… 小さな白いトランクと少女、トランクの中身はわずかな身の回り品と、お伽噺集『少年少女のための魔法のお伽話集』が一冊、、、

    名前も思い出せないらしいこの少女を連れ帰った職員は、妻とふたりで彼女を「ネル」と名づけて育てることに… その後、妹たちが生まれ、長女として明るく育った「ネル」が21歳になった夜、父親は彼女に真実を告げる。

    「ネル」は、自分が何者であるのかがわからないという驚愕から、心を閉ざし、人が変わったようになってしまう… 時は流れ2005年、祖母「ネル」を看取った孫娘「カサンドラ」に、祖母の友人が驚くべき知らせを持ってくる。

    「ネル」が彼女にイギリスのコーンウォールにある小さなコテージを遺してくれたというのだ… なぜ、祖母はそんなコテージを持っていたのか? いつ手に入れたのか? 祖母の遺したノートと、かたみの古びたお伽噺集を手に、彼女はコーンウォールを訪れる、、、

    コテージは、今はホテルとなった豪壮な館・ブラックハースト荘の敷地のはずれ、崖の上にあった… そして、そこには茨の迷路と、閉ざされ忘れられた花園が……。

    「カサンドラ」の祖母「ネル」はいったい誰だったのか? 「ネル」はブラックハースト荘とどんなつながりがあったのか? 幾重にも重なる謎を解き明かすことはできるのか!?


    1880年代から1913年に至る時間内では名門「マウントラチェット家」にまつわる物語が、主に一族の女主人と娘、そして当主の姪「イライザ」の視点から描かれ、1975年前後の時間内では「ネル」によるロンドンとコーンウォールでのルーツ探しが描かれ、2005年前後の時間内では「ネル」の死後、白トランクは孫「カサンドラ」へと受け継がれ、彼女は祖母の謎を解くべく渡英して謎を解き明かそうという姿が描かれ… という3つの物語が、1つの物語として編み込まれていく展開が愉しめました、、、

    「ネル」が辿り着いた真実… 「カサンドラ」が辿り着いた真実… それは、ちょっとだけ違う部分もあるのですが、読む側は全ての真実が理解できる展開となっており、モヤモヤ感がなくスッキリとした読後感が味わえました。

    凶悪な殺人事件やトリックを活用した盗難事件は起きず、自分のルーツを探るという地味なテーマにも関わらず、最初から最後まで読者の興味を惹きつける展開でしたねー

    「ネル」は誰と誰の子どもだったのか?

    「ネル」の本当の名前は?

    誰が何の目的で「ネル」を屋敷から連れ出したのか?

    なぜ、その人物は「ネル」をオーストラリア行きの船に乗せたあと消えてしまったのか?

    なぜ、その後、誰も「ネル」を捜しにこなかったのか?

    全ての謎が解けたときのスッキリ感は、何とも言えませんでしたね… ホントに面白かったです。

  • 亡くなった祖母が残した手がかりをもとに、祖母の出生の謎を追う孫が主人公のミステリー。
    孫が祖母と暮らすことになった理由がわかったときは、ひとりの母として、何とも言えない気持ちになりました。
    過去と現在のエピソードが次々に語られるたびに、真相に近づいたり、謎が深まったり…
    上巻のラストの文章は、読み終わったあとに読むと「あぁ…」とため息が出てしまいました。

  • ■1910年頃、1975年頃、そして2005年頃。数十年をはさんだこの三つの時代を舞台に、現代を生きる主人公が祖母にまつわる謎を解きあかそうとする長編ミステリー。
    ■しかしその謎というのが、「ロンドン発オーストラリア着の船の中でひとりの身元不明の女の子(これが当時の祖母)が見つかった。彼女はどこから来たの? そしてなぜひとりなの?」というもの。つまり謎自体は全然混みいっていないし、かつとりわけミステリアスというのでもない。
    ■一方、章ごとに三つの時代が目まぐるしく入れ替わるのだが、その章の総数が文庫二冊分で50を超えている。そのため、――あくまでぼくの場合―― 次から次へとあわただしくメモをとりながらの読書を強いられることになる。また、読了後改めて見なおしたそのメモはいかにもゴチャゴチャとしてまとまりがない。この点こうして出来あがったメモが、元となったこの小説の本質をいみじくも言い表していると感じられた。
    ■作者はそこで少しでもあっさり済まそうとしたのだろうか。脇役クラスの登場人物たちはみなその肉付けが薄っぺらい。その言動はわざとらしくてステレオタイプ。しかもお話を進行するにあたって驚くほど都合よく動いてくれる。……読書中そんな箇所にでくわすたび、自分で自分の表情が曇ってくるのがよくわかった。
    ■ところで結局、”現代に生きる主人公”は件の謎を解きあかせたのか? 実はこれがよくわからない。最後は主要登場人物の丸ゴシックの独白で謎の経緯が読者には明かされるのだが、肝心の主人公がどこまで真相を理解できていたのか……。それよかそんな謎よりも主人公は、ハンサムで若くて頭がいい庭師との未来のことで終盤は頭がいっぱいなのであった……。

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著者プロフィール

1976年、南オーストラリア州ベリに三人姉妹の長女として生まれる。クイーンズランド大学で舞台芸術と英文学を修めた。現在は夫と三人の息子とともにロンドン在住。2006年に『リヴァトン館』で作家デビュー
『湖畔荘 下 創元推理文庫』より

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