- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488174057
作品紹介・あらすじ
ノルウェーの森の奥で老女が殺害される。被害者の左目には鍬が突き刺さっていた。第一発見者の少年が、精神病院に入所している青年エリケを現場で目撃していた。捜査陣を率いるセイエル警部は、エリケを犯人と決めつける者たちの偏見の言葉に左右されず、冷静に手がかりを集めていく。だが信じがたい事実が発覚。エリケは近くの町の銀行強盗に巻き込まれ、銃を持って逃走する強盗犯の人質になっていた。ガラスの鍵賞受賞作家が贈る衝撃のミステリ!
感想・レビュー・書評
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ノルウェーの森の奥で、一人暮らしの老女が鍬で頭を割られて死んでいた。精神病院から抜け出し、被害者の家の近くにいるところを目撃された青年エリケが容疑者として挙がるが、彼は街で起きた銀行強盗の人質として犯人に連れ去られてしまったことが判明する。
セイエル警部は、二つの事件を解決するため彼の行方を追いかける。
比較的早い段階でエリケが容疑者となり、セイエル警部と部下のスカラは、聞き込みを中心に捜査を進める。話は、セイエルたちの捜査のパートと、銀行強盗と行動を共にするエリケのパートが交互に描かれる形式になっている。
エリケは言葉を発して何かを説明することがほとんどない。彼の感情の動きや刺激に対する反応は、彼の脳内で肉体を侵食し破壊する力に変換される。その生々しい描写のグロテスクさに思わず恐れおののいてしまう。
聞き込みでは、エリケに対する様々な印象が語られる。風貌や行動から彼を恐れる住民たちの言葉と彼を診察する医師の言葉は対照的でどちらが正しいのかわからない。また、時折描かれる彼の内面の暴力性がさらに謎を深める。彼は本当に老女を殺害したのか、もしそうならその動機は何なのか。エリケという人物に対するつかみどころのなさが話をミステリアスに導いていく。
捜査はこれといった進展を見せないまま話は進んでいき、本当に謎は解けるのだろうか、と心配になってくるラスト、話は急激な展開を迎え、衝撃の結末を迎える。
この話の最初に、「これはエリケの物語。」の一文がある。読んだ後改めて思う。確かにこれはエリケの物語である。
読んでからしばらくたっても、エリケのことが頭から離れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本当にエリケの話だったんだなぁ…。
セイエル周辺も面白かったのだけど、読み終わるとエリケのことばかり思い出す。
真相は、こうじゃないかと思っていたことが珍しく当たったが、それが突きつけられる一文の上手さにぞっとした。
キャラクター造形が上手く、ほんの一場面しか出ない人物でももっと話を聞きたいような気になった。
ああ、「話を聞かせて」というのはこの物語の一つのアンサーなんじゃないかと今ふと思ったので、私がキャラクターの話を聞きたいと思うのも繋がることのように感じる。 -
ノルウェーの森の奥で老女が殺害される。被害者の左目には鍬が突き刺さっていた。第一発見者の少年が、精神病院に入所している青年エリケを現場で目撃していた。捜査陣を率いるセイエル警部は、エリケを犯人と決めつける者たちの偏見の言葉に左右されず、冷静に手がかりを集めていく。だが信じがたい事実が発覚。エリケは近くの町の銀行強盗に巻き込まれ、銃を持って逃走する強盗犯の人質になっていた。ガラスの鍵賞受賞作家が贈る衝撃のミステリ!
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エリケの内面の描写が繊細で詩的。
シリーズの他の作品も読みたいが邦訳されてるのかな? -
猟奇的な殺人事件で幕を開け、続いて銀行強盗が人質を取って逃走するが、それらのフレーズが連想させるような派手な物語ではない。
悲しみや虚しさがひたひたと静かに満ちていき、まったく救いのないラストに帰結する。どこか哲学的な読み口の小説だった。
そんな雰囲気から、色気づいて浮き足立つやもめの中年刑事だけが浮いている。が、あとがきを読むとシリーズものらしいので、しかるべき経緯があるのかもしれない。
ちょっと甘めの星4つ。
2020/2/23読了 -
初めて読んだシリーズだけど、本国のノルウェーではすでに12作ほど刊行されている人気シリーズだという。
読み始めて、ああ、北欧らしい(決めつけ)描写が続くな、と思ってた。
叙情的な、散文的な、輪郭がクリアでないままに続くストーリー。
でも、それで十分に引き込まれる。
そして気がついた時には、すでに鋭く突きつけられるものがある。
地に足がついた、という感がある優秀なミステリー。 -
ノルウェーの作家カーリン・フォッスム、1997年発表のミステリー小説。
森の中の一軒家に一人暮らしの老女が殺される。発見者は少年院に住む12歳の少年。精神病院を脱走した統合失調症の青年が現場で目撃され・・・。
一応警察ドラマですが、犯罪捜査の場面は添え物のような物語り。多数の登場人物の間で視点が次々と切り替わり各々の心理描写がかなり克明に細々と描かれる群像劇のようなスタイルです。あまりに細々としたどうでもいいような描写にうんざりする部分もありますが、これがこの著者の持ち味なのでしょう。悪くはないです。
ミステリーとしては他愛無い話で、物語りの要は銀行強盗をした間抜けな若者と彼が逃亡する際人質にした精神病の青年、この二人の珍道中。面白いけれど、最後の方の展開にどうもリアリティが感じられないし、後味も悪いです。 -
ノルウェーの作家「カリン・フォッスム」の長篇ミステリ作品『晴れた日の森に死す(原題:Den som frykter ulven、英題:He Who Fears the Wolf)』を読みました。
「アンネ・ホルト」の『ホテル1222』に続きノルウェー作品… 北欧ミステリが続いています、、、
「カリン・フォッスム」作品は2年近く前に読んだ『湖のほとりで』以来ですね。
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全世界で累計550万部、30か国以上で翻訳
ガラスの鍵賞受賞作家が贈る衝撃のミステリ!
ノルウェーの森の奥で老女が殺害される。
被害者の左目には鍬が突き刺さっていた。
第一発見者の少年が、精神病院に入所している青年「エリケ」を現場で目撃していた。
捜査陣を率いる「セイエル警部」は、「エリケ」を犯人と決めつける者たちの偏見の言葉に左右されず、冷静に手がかりを集めていく。
だが信じがたい事実が発覚。
「エリケ」は近くの町の銀行強盗に巻き込まれ、銃を持って逃走する強盗犯の人質になっていた。
ガラスの鍵賞受賞作家が贈る衝撃のミステリ!
解説=「ヘレンハルメ美穂」
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「セーヘル警部」シリーズの第3作目… 現時点、ノルウェーでシリーズは第13作目まで刊行されているようですが、翻訳されているのは既読で第2作目の『湖のほとりで』と本作品の2冊だけのようですね。
独特の味わいのある作品で、いつの間にか精神病院から抜け出した「エリケ・ヨルマ・ピエテル」に感情移入していましたね、、、
真相は藪の中… と思わせておいて、意外な結末が訪れるエンディングは秀逸で、自分にかけられた容疑が晴れた感じがするほど、気付かないうちに感情移入しちゃっていました。
複雑なトリックがなくても、ミステリって愉しめるんだな… と改めて感じたし、不思議な読後感が印象に残る作品でしたね。
ある日、「エリケ」は精神病院〈ビーコン〉を抜け出した… 「エリケ」は森の中を進み、「ハルディス・ホーン」が鍬を使って草の掘り起こし作業をしている姿をしばらく木陰から眺めていたが、「エリケ」が「ハルディス」の目の届くところにいきなり姿を現したため、「ハルディス」は驚いて不安な気持ちになる、、、
その後、地区警官の「ロベルト・グルヴィン」のもとへ、少年院〈ギューテバケン〉へ入所中の少年「カニック・スネリンゲン」が「ハルディスが死んでいる」と知らせに来る… 「カニック」によると「ハルディス」の家の近くに「エリケ」がいたという。
「グルヴィン」は、「ハルディス」の農場へ向かい、「ハルディス」が左眼に鍬が突き刺さった状態で死んでいるのが確認される… 「エリケ」は「ハルディス」を殺害した容疑で手配される、、、
次の日の朝、フォーケス銀行で強盗事件が起きる… 目撃者によると、犯人は若い女性を人質に取って逃げたという。
事件が起きる前に、銀行の近くで銀行強盗犯を目撃していた「セイエル」は二つの事件を追うことに… 防犯カメラの映像から、女性と思われた銀行強盗の人質は「エリケ」だったことが判明、、、
銀行強盗の「モルガン」は、「エリケ」を人質に取ったが、彼が何も喋らず無表情なので不気味に思う… しかし、一緒に行動するうちに、「エリケ」の行動や発言から、「「エリケ」が天才なのではないか」と思うようになる。
「モルガン」と「エリケ」は、森の中の小屋にたどり着いて立て籠もる… 「セイエル」は〈ビーコン〉を訪れ、精神科医の「ソーラ・ストゥリュアル」に会って「エリケ」のことを聞き出すが、「ストゥリュアル」は「「エリケ」が「ハルディス」を殺したと考えるのは間違っている」と語る、、、
「セイエル」は、「ハルディス」殺害事件には、何かおかしなところがあると感じ、「エリケ」は犯人ではないと考える… そして、「ハルディス」の死を警察に届けた「カニック」が偶然、森の中の小屋に近付き、「カニック」の射た矢が「エリケ」の腿に刺さったことがきっかけとなり、「カニック」は「モルガン」と「エリケ」に捕らえられ、微妙な関係の三人がひとつ屋根の下に集うことになる。
三人はウイスキーに酔って眠るが、「モルガン」が目を覚ますと、「エリケ」が血を流して死んでいた… これで真相は藪の中かと思われたが、、、
後日、「セイエル」は、「カニック」に会うために彼が収容されている少年院〈ギューテバケン〉を訪ねるが、「カニック」が弓用の手袋をしているのを見て、「ハルディス」殺害の犯人が「エリケ」ではなく、「カニック」だったことに気付く… 二つの事件が意外なカタチで合流し、頼りない銀行強盗の「モルガン」と、面倒な人質「エリケ」の二人が次第に心を通わすシーンが印象的でしたね。
作者の社会から疎外される人を受け止めようとする誠実さが感じられる展開でしたね… 直感ではなく物証に基づいて真犯人が暴かれるエンディングと、そこにおける「セイエル警部」の態度に好感が持てました、、、
意外なだけでなく、ほっ とできる、安心感を伴ったエンディングが印象的でした… 面白かった!
以下、主な登場人物です。
「エリケ・ヨルマ・ピエテル」
精神病院〈ビーコン〉に入院中の青年。24歳。
生まれつき股関節が悪いため、左右に揺れながら歩く。
フィンランドのヴァルティモで生まれる。
「エルシ・ヨルマ」
エリケの母親。故人。1950年生まれ。
「ハルディス・ホーン」
農家の女性。76歳。フィンネマルカに住む。
「トルヴァル・ホーン」
ハルディスの夫。故人。
「ロベルト・グルヴィン」
地区警官。巡査。
「カニック・スネリンゲン」
少年院〈ギューテバケン〉に入所中の少年。12歳。
弓が入っているケースをいつも持ち歩いている。
「マルグン」
〈ギューテバケン〉の職員。50歳代の女性。
「コンラッド・セイエル」
警部。50歳。デンマーク生まれ。コルバルクという犬を飼っている。
「エリーサ」
セイエルの妻。故人。
「ヤーコブ・スカラ」
セイエルの部下。
「カールスン」
警官。
「モルガン」
銀行強盗犯。本名は、モルトゥン・グルペア。
「カーシュテン」
〈ギューテバケン〉の少年。
「シーモン」
〈ギューテバケン〉の少年。
「シーヴェルト」
〈ギューテバケン〉の少年。
「ヤン・ファーシュタ」
〈ギューテバケン〉の少年。
「ソーラ・ストゥリュアル」
〈ビーコン〉の精神科医。40歳代半ば。女性。
「ギャハル・ストゥリュアル」
ソーラの父親。
「オッデマン・ブリッゲン」
食料雑貨店の店主。ハルディスに品物を届けていた。
「ヘルガ」
ハルディスの姉。ハンメルフェストに住む。
「ヨーナ」
ブリッゲンの店のレジ係。
「クリストフェル・マイ」
ハルディスの姉の孫息子。
「クリスティアン」
カニックに弓を教えている。
「スノーラソン」
医師。
「トミー・ライン」
ブリッゲンの店の元従業員。オッデマンの身内。元犯罪者。
「トーマス・ライン」
クリストフェル・マイが住むアパートの家主。
「ヨハンネス」
農夫。
「エルマン」
警察官。 -
北欧ミステリにしては凄惨さが薄い。