- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488142070
作品紹介・あらすじ
雇い主の車で初めての南仏を目指した女が巻き込まれた事件。なぜ、初めての土地で皆が彼女を知っているのか? そして彼女は見知らぬ男の死体に対面することに……。
感想・レビュー・書評
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穂村弘さんの読書日記『きっとあの人は眠っているんだよ』(河出書房新社)、タイトルは本書からの抜粋ということで読んでみました。
この美しいようでいて不穏な気配もする一文を期待しながら読み進めていったのですが…あれ、同じシーンなのに文章が違う…?
そして物語中盤で気づいてしまったのです。
穂村さんが読んだのは旧訳、私が読んでいるのは新訳であることに。
少し残念と思いつつ(自分が悪いのですが…)、すでにこの詩的な美しさをもつミステリに魅せられていたのでした。
ブロンドの髪に白いスーツを着こなす美しき主人公・ダニー。
ほんの気紛れから、社長のサンダーバードに乗って南仏へ向けて走り出したのですが、行く先々で彼女のことを知っている者に出くわすのです。
彼女自身は南仏へ行くのは初めてだというのに…。
身に覚えがないにも関わらず、他者から聞かされるもう一人の自分の話。
知り合いのいない土地で「それは自分ではない」と主張しても信じてもらえない。
だんだんと諦観が滲み、ゆるゆると自分を見失っていくダニーの描かれ方にぞくぞくしました。
連城三紀彦さんの解説で知った、物語の結末に隠されたジャプリゾの遊び心に「おお!」と最後の最後まで驚かされて読了。
久々の海外ミステリを堪能したのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なんとなく、なんでそうなったのか
誰が犯人か
は、すぐに検討がつきます。
それが正しいのかどうかを確認しながら読む感じでした。
おかげで変な不安はなかった。 -
かつて浅丘ルリ子主演のドラマを夢中になって見ていた。主人公のキャラはドラマとは異なるけど、内容ほぼ同じ、これはこれで面白かった。トリックはわかっていたから驚かないけど、最後のエピソードは意外だった。
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つい最近、ピエール・ルメートルの『死のドレスを花婿に』という作品で大逆転小説を読んだばかりなのだが、ルメートルが今を時めくフランス・ミステリ作家であるのに比べ、本書『新車のなかの女』のジャプリゾはそもそもミステリ専門の作家ですらない。ミステリというジャンルに入るのは『寝台車の殺人者』『シンデレラの罠』と本作くらいではないか。それなのに、1966年という遥か昔に書かれた作品が、既にルメートルのやっている大逆転の凝ったプロットによるミステリを実現していたというのは、驚愕以外の何物でもない。
『新車のなかの女』は、最初から面白い。いきなりガソリンスタンドのトイレで何者かに殴られたことの独白から始まる。しかも初めて南下するはずのパリからリヨン経由、マルセーユへの道路を、勝手に持ち出した上司のサンダーバードを走らせている間に、何度も一日前に自分と会ったり話したりしたという目撃者たちにあちらこちらで出くわす。怪しげな若者との出会いと駆け引き。
真相は何層ものタマネギの皮のような状況に覆われており、奇妙で不穏なロードムービーのように南仏に向け、サンダーバードとともに疾走する。もちろん用意されているのは驚愕の真相。秋冬に用意された時間と空間の罠が、読者を欺き、作者が得意とする女性の心理描写を主とする文章自体のレトリックによる幻惑を用いる。フランス小説ならではの、ノワールな人間関係と、太陽の輝く南仏への道。
ページ数からは考えられない凝りに凝った職人芸のような世界が終始展開する一気読み必須のエンターテインメントが、半世紀前に作られたとは思えない鮮度をもって魅了する、まさしく奇跡のような一作である。 -
なにはともあれ、まずは雰囲気がとっても「おフランス」なんである。しかしそこだけに酔っていてはいけない。
過去のある女、不穏な違和感、もう1人の自分…幻惑される。
とても計算されてるんだろうなと思う。 -
シンデレラの罠で有名な作家のもう一つの名作とのことで読んでみた。結論から言うと今一つ。当時としては斬新だったのかもしれないが、、、。全体的に予想通りだったし、ちょっと無理がある感じが否めない。
最後の2ページ必要? -
雇い主の車を乗り回し南仏を目ざした女が巻き込まれた事件。なぜ初めての地で誰もが彼女を知っているのか? そして発見された謎の死体……。鬼才ジャプリゾの傑作を新訳で。
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2015/08/23読了
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平岡敦さんの翻訳は読みやすくて相変わらず大好き。
ジャプリゾを読むのは初めてだったけど、生活のためにミステリ作家に転身したなんて嘘みたいな巧妙な仕掛け。
主人公と一緒に彷徨い、騙され、途方に暮れました。
ただ、60年代に書いたミステリだから成り立つ要素ももちろんあり、今の感覚でいうとそうそううまくいくかね?みたいなひねくれ感情もありました。
とはいえ、ジャプリゾまた読んでみたいなあ。