オランダ靴の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488104382

作品紹介・あらすじ

大病院の創設者である老婦人が、手術直前に絞殺された。エラリーの鋭敏なる頭脳は真犯人を指摘できるのか。犯人当てミステリの名作として世に名高い〈国名シリーズ〉第3作。

感想・レビュー・書評

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  • 「論理に酔いしれる」という体験は、クイーン以外の作家の作品ではなかなかすることができない。
    本書はその体験ができる1冊だ。

    絆創膏で接着された靴紐、奥に押し込まれた舌から
    ・医学の専門知識のある人物(浅くても良い)
    ・オランダ記念病院関係者
    ・足がかなり小さい(女性または子供)
    という犯人の条件を導き出し、ズボンから
    ・普段は病院のズボンを履いていない人物
    という条件を導く。

    第二の事件では「なぜ犯人は執筆していたジョニーの後ろに回れたのか」という点に着目し、犯人を特定。

    と、大まかにロジックを書き出してみたが、実際は例えば絆創膏の件では「いつ靴紐が切れたか」というところから細かく検討している。
    この少しずつ少しずつ論理を組み立てて紐解いていく過程がたまらない。

    そして幕間では、何と推理もメモする欄まで設けている。実際に直接書き込む人はほとんどいないだろうが、クイーンの犯人当てに対する誠実さ、フェアに徹する姿勢が窺える。

    こういった変に奇をてらわず、とことんロジックに拘った推理小説がもっと増えていってほしい。 

  • 今回も犯人をなんとなく当てたものの、自信がなかったし、登場人物の名前を忘れちゃった。
    でもまあ、だいたいは当てたんだし、いいかな。
    1989の感想転記

  • エラリークイーン3作目。
    前作に引き続き、よく出来たパズラー作品。
    一番おお、と思ったのは、「ここで窓が必要」の部分で最初は?だったが、途中で気づいた瞬間。思わず手を叩いたぐらい。
    古典的作品で色々な作品が本作の真似をしている影響もあると思うが、ミステリー作品としてわかりやすく、その結果自分で結構気づける部分も増え、その分楽しめた。

  • 考えもしなかった人が犯人でかなりビックリ。でも推理を読んでると、成る程成る程と納得。シンプルなトリックで面白かった。

  • たぶん30年ぶりくらいの再読だろうか。
    エラリー・クイーンの国名シリーズは珠玉の名作揃いと言われているが、オランダ靴は一般的にも高評価だろうが、個人的にも高評価。
    初めて読了したとき、読者への挑戦状の直前でエラリーが第二の殺人現場において、「ここに窓が必要」というセリフを吐くシーンの意味を知って唸らされたのを憶えている。
    もとの井上勇訳がそれほど読みづらいとは感じていなかったので、新訳になって特段に読みやすさが高まったとは必ずしも思わないが、少しずつでも時代に合わせてアップデートされていくのは良いことだ。今の世代にもこの100年近く前の本格推理小説の面白さを感じてほしい。

  • 同時刻に出現したありえない二つの存在、謎の靴や手術着といった遺留品などを、綿密かつ美しいロジックで解き明かす古典ミステリ。文章は精緻で読みやすく、所々にユーモアも感じられる。徹底した検証と土台のしっかりした推理は美しく、とても論理的。その論理展開もスムーズで、ありえない可能性を一つ一つ除外していく方法はまさに畳むという表現がぴったりと当て嵌まる。ミステリ初心者でも納得のいく作品である。

  • 病院で発生した連続絞殺事件を、誰が犯人でどのようにして殺したのか、ひたすらロジックで追及していきます。
    「悲劇四部作」と比べると、犯人の意外性やトリッキーなプロットは控えめですが、第一の事件で犯人が残した靴や、第二の事件の決定的な手掛かりなどから犯人を特定する推理は、実に理路整然としていてお見事。ロジックの精緻さはこちらの方が上だと思います。徹底されたフェアプレイも好印象で、パズラー小説では1、2を争う名作だと思います。

  • うーん。
    ロジックによる推理の傑作!みたいな評価のようですが、読んでみて期待したほど面白くなかった。
    靴紐が切れて絆創膏で繋ぐかなぁとか、靴のベロが奥までとか、ズボンの丈が上げてあったとか、まあ女性の犯行なのかなとは思うが、エラリーがこれらの謎解きをするときの、検事やらの反応ほど、私はびっくりできなかった。
    そ、そうだったんですねー…という感じ。
    犯人の動機など後付けの印象。

    X.Y.Zの悲劇は、結構面白かったので、ちょっと残念。

  • もう少し早く現場の証拠から犯人にたどり着けないのかなと少し感じてしまいました。
    長編だからどうしても第二の事件を起こさないといけないんだろうなー。
    それでも、ロジックはさすがエラリー・クイーン!

  • 2022年2月23日読了。クイーンの「国名シリーズ」第3弾。病院で絞殺された大富豪の女性、容疑者を絞り込めないまま起きる第二の殺人。探偵エラリー・クイーンが証拠の靴から導き出した真相とは…?散々もったいぶって終盤に繰り出される「論理的な推理」が見事、「えー、そんなのアリかよ~」と一瞬思うが、言われてみればなるほど「確かにこれしかないのか」と思わされる推理ではある。あの台詞・描写が伏線だったのね~と推理披露の段階で気付かされる作者の仕掛けもまさに思惑通りという感じか…。警察の面々の献身的な働き・新聞記者や市役所のお偉方とのやり取りなどの描写も読み応えある。この作品で推理パズラーの一つの頂点を極めた結果が、「犯人の偽の手がかりにはまる探偵」「厚みのある人間描写」など中期クイーンの作品群の特徴につながっていった、ということらしい…。他の作品も読んでみよう。

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著者プロフィール

エラリー・クイーン。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの合作ペンネーム。従兄弟同士で、ともにニューヨーク、ブルックリン生まれ。1929年『ローマ帽子の謎』で作家としてデビュー。ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍。主な代表作に『ギリシア館の謎(32)、『エジプト十字架の謎』(32)の〈国名シリーズ〉や、『Xの悲劇』(32)に始まる〈レーン四部作〉などがある。また編集者として「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行した。

「2021年 『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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