- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488028985
作品紹介・あらすじ
2010年10月。宮城県の港町に暮らす高校2年生の小羽は、統合失調症を患う母を介護し、家事や看病に忙殺されていた。彼女の鬱屈した感情は、同級生である、双極性障害の祖母を介護する航平と、アルコール依存症の母と幼い弟の面倒を看る凛子にしか理解されない。3人は周囲の介護についての無理解に苦しめられ、誰にも助けを求められない孤立した日常を送っていた。しかし、町に引っ越ししてきた青葉という女性が、小羽たちの孤独に理解を示す。優しく寄り添い続ける青葉との交流で、3人は前向きな日常を過ごせるようになっていくが、2011年3月の震災によって全てが一変してしまう。2022年7月。看護師になった小羽は、震災時の後悔と癒えない傷に苦しんでいた。そんなある日、彼女は旧友たちと再会し、それを機に過去と向き合うことになる。ヤングケアラーたちの青春と成長を通し、人間の救済と再生を描く渾身の傑作長編!
感想・レビュー・書評
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はい、今年(2023年)の山田風太郎賞受賞作です
ちょっと気になる山田風太郎賞
今年で14回目となるんですが、受賞作はめちゃめちゃバラエティにとんでいて、バラエティにとんでいるのになんとなくどの受賞作も山田風太郎を感じる
ちょっと不思議な山田風太郎賞
そう感じさせるのは選考委員の方々が「分かって」いるからだと思うし
KADOKAWAのこの文学賞に向ける愛情みたいなんがほのかに感じられたりします
そんな山田風太郎賞を少しづつ読み進めていこうとうっすらと決意したところで、まずは今年の受賞作を読んでみました
そしたらもういきなりの異色作w
もちろん山田風太郎賞としてはという意味で、山田風太郎さんの作風に一切ない感じが逆に山田風太郎賞にふさわしい感じもしてくるという不思議
山田風太郎さんてそういう人w
はい、『藍色時刻の君たちは』の話しますよ!
ヤングケアラー(とそれに付随して精神疾患)と東北大震災のお話
あとがきにもあったように作者の思いがぎゅうぎゅうに詰まったけっこうな大作
しかも章ごとにかわる一人称視点ときたのに
読みやい
なんで?って考えたときにちょっと一歩引いた感じなんよね
一歩引いて冷静に冷静に話を進めていてそこが読みやすさに繋がっている
自分の思いがぎゅうぎゅうなのを自覚しつつ、客観性をとても大切にしてる
だけど溢れちゃうところを無理に蓋したりもしていない
「伝える」ってことをとにかく重要視している
そんな文章に感じました
そしてこのこの話を読んで思ったのは、なんかまぁそれなりに色々あったけど、自分はまぁまぁ幸せな家庭に育ったなぁってことで、それはそれで感謝なんだけど
それってこの物語に登場する3人のヤングケアラーたちが「不幸せな家庭」に育っているって決めつけてるってことで
でもそのことが良いことではないにしても、普通のことなのか、悪いことなのかよく分からんな〜ってことでした
「不幸せな家庭」って思うから支援しようって行動に繋がるのも事実やしな~とかなんとか
難しな〜 -
今までにもヤングケアラーを扱った小説は読んだことがあるが、この本は現役看護師ならではの目線だからかもしれないが、過度な描写、表現はないにも関わらず当事者たちのしんどさや辛さ、やるせなさなどが充分に伝わってくる。
装画、装丁も良い。
宮城県の港町に住む3人のヤングケアラーである高校生は、家族の介護と家事に忙殺されていた。
周りの無理解に苦しめられ、誰にも助けを求めることができない孤立した日常を送っていた。
同級生である3人だけが、家族の病で繋がった関係で、登校時だけ待ち合わせていた。
この短い時間の会話だけが、高校生であるということを感じていたのだろうか…。
小羽は、統合失調症を患う母を。
航平は、双極性障害の祖母を。
凛子は、アルコール依存症の母と幼い弟の面倒を。
その3人に優しく寄り添ってくれたのは、親族の家に身を寄せていた青葉という女性だったが、2011年の震災によって全てが一変してしまう。
消息もわからないままだった3人が、2022年に再会してから青葉の過去を知ることになり…。
青葉が先生に伝えていたこと
航平のことは、想像力のある、心優しい文学少年。
凛子のことは、一等星のように明るい子。
小羽のことは、名前からの通り、どこまでも羽ばたける子。
同じ経験をしたものは、辛さが自分のことのようにわかるのだろう。
今、このときにどうしたらいいのかが判断できるのかもしれない。
誰かに委ねてもいいのに、どうしたらいいのかわからないのが現状なのかも、と思うとヤングケアラーに気づくことが大事だと感じた。
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前川ほまれさん著の『藍色時刻の君たちは』の概要と感想になります。重苦しい内容のため、ご注意下さい。
概要です。
小羽、凛子、航平の高校生三人にとって一度きりの青春時代は、家族の介護と東日本大震災という傷だらけの想い出を残して過ぎ去った。
ただ三人の救いは、震災前に出会った少し年上の格好良くて優しい浅倉青葉というお姉さんと過ごした日常。
三人は青葉さんにそれぞれの憧れを抱きながら大人へ成長するが震災後も未だに癒えない傷は多く、11年振りに奇跡的な再会を果たした三人は苦しさを承知で故郷を訪れる。
感想です。
本作でヤングケアラーという言葉を初めて知ったことと、私の読書歴の中で初の二段組の長編を読んだことで、なんとも言えない読後感を味わっています。
どのような感情を抱くことが正解なのか分からずじまいですが、自分の知らない日常と感情と闘っている人々の存在を他人事だと無視できないなと感じています。
相手を思いやる気持ちは大事ですが、本作で語られるような境遇にある人々は自分を責めずに、頑張ってきた自分をたくさん褒めて労って欲しいです。 -
責任感が強く、優しくて、面倒見がいい人ほど自分自身を責めてしまうような気がします。
様々な辛い出来事にあった人にかける慰めの言葉は人それぞれで伝わり方が違い、逆に傷つけてしまう事があるなと思うと言葉もでなくなってしまうけれど、それでもわかりたいという思いはなくさないでいたいと思う。 -
ヤングケアラーという問題と被災者のメンタルヘルスの問題。大きな2つの問題について描かれた小説だ。両方ともあまりに大きな問題なので、両方詰め込むのはお腹いっぱいになりそうだが、ちゃんと整理されていて読みやすかった。
統合失調症の母を持つ小羽、双極性障害の祖母を持つ航平、アルコール依存症の母と幼い弟をもつ凛子。これでもかというほど苦難の連続でいっぱいいっぱいになりながら、現実から逃げることも許されずに頑張るしかなかった彼らに、手を差し伸べる青葉。
震災があって3人ともヤングケアラーではなくなった。ヤングケアラーではなくなったが震災は彼らに大きなしこりを残していった。
震災前の彼らの生活は、読んでいてあまりにもしんどかった。身内だからやるしかない。でも、彼らが頑張ってしまうから、大人たちは彼らのしんどさに気づかない。
手離したらいいと言われても、どう手離せばいいのか見当もつかない。
彼らみたいなヤングケアラーが問題視され始めてまだ日が浅い。今後、彼らを大人たちが守る制度ができてほしい。
震災についても、あの日を忘れない、がんばろう東北…と励ますためのキャッチコピーも、彼らを追い詰める言葉になってしまう。忘れさせて…もう頑張ってるよ…と思って歯を食いしばっている被災者がいるのだ…
能登被災者も、今も、そしてこれからも試練が続くのだろうと思うと心が痛む。メンタルヘルスは単純な問題ではないが、せめて物理的な不自由さから早く解放されてほしい… -
前半は高校生の時のこと。後半は大人になってからのこと。
大変すぎる。
高校生なのに、家にいる病気のお母さんの面倒を見て、家事をこなして、テスト勉強もしなければならなくて、
なのにおじいちゃんが脳梗塞で救急車で運ばれて。
書類を書きながら、頼れる親類はいなくて、
本当に大変!
友達も大変。
仲の良い3人。
織月小羽、航平、住田凛子、
お互いの家庭の状況を理解できるヤングケアラー達。
修学旅行にも行けない。
自分が頑張らなければ、家族のために。
そして浅倉青葉さん。黒い噂があったが恩人。
「いつかちゃんと、手を離しなさいね。小羽には小羽の人生があるんだから。」と言ってくれた。
素敵な人だった。
大人になり、パニック障害に悩む小羽。
青葉さんの過去の出来事を知る。
なるほど、辛かった。
複雑性悲嘆→遷延性悲嘆障害(PGD)は新たに定義された精神疾患。愛する人の喪失に対する特徴 的な反応。PGDの特徴的な症状(感情、思考、行動)
遷延(せんえん)→ のびのびになること。はかどらず長引くこと。
星野先生と会話した時に、号泣。
会ったことはないのに、3人のことをよくわかっていて、「青葉くんから聞いていたよ」と。
あとがきで作者を知る。男性。
看護学校の図書室で調べ物をしている時にあの震災に遭う。
前川ほまれさん、現役の看護師なので、医療系のリアルな話がたくさん。
わかりやすい。
ヤングケアラーの問題や、心に深い傷がある人などの問題など、考えさせられる。
泣ける本、良書。
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統合失調症の母をもつ小羽、母がアルコール依存症で幼い弟の面倒もみる凛子、躁うつ病の祖母を介護する航平の3人の高校生。似た境遇ゆえ夫々の置かれた状況をお互いに理解し合える友達である所謂ヤングケアラーであるこの3人に、東京から来た十程歳上の青葉さんは寄り添い、サポート、アドバイスをする中で、理解し合える様になってきた矢先に東日本大震災の津波に襲われてしまうという、なんとも切ない第一部。
第二部は、その12年後に彼らが再会し、青葉さんの実相に辿り着くという流れ。
家族の面倒をみる高校生達の本音であろう部分が変に感傷的ではなく淡々と描かれていると感じる。ラスト間際の、青葉さんが小羽の母親をおんぶして津波から逃れようとするシーンに特にそれを感じ、返って哀しさ、儚さが増していると感じた。
それにしても、老人介護は介護保険の整備など社会的認知も進み、所謂「家族が手を離す」事が進んでいるとは思うが、このヤングケアラーの方はまだまだだと感じる。 -
今までヤングケアラーを扱った本を積極的に読むことはありませんでしたが、3人の高校生それぞれの事情に東京から来た青葉さんの謎、そして震災が起こることはわかっているのでどんな展開になるのかと夢中で読みました。
辛い話の中にも希望も見えるのは救いでしたが、幼い雄大が出てくる場面は息子を持つ母親としては一番微笑ましく、そして泣けるところでした。
現代のいろいろな問題を取り上げながらそれぞれがうまくつながっている、読み応えのある良書。
多くの人に勧めたいです。 -
まず第一部が苦しい。
作品紹介に「3人は周囲の介護についての無理解に苦しめられ」とあるが、そういわれてしまえば、私自身も苦しめる側の無理解な人間だと思うし、読みながら自分の無力さと、小羽たちの重い日常と色々考えて、どんどん辛くなった。
そして第二部は震災後の苦しみ。
こちらもやはり、同じ経験をした者にしか心を開くことが難しいように思える…
そもそも私が理解したいとか、寄り添いたいとか思うのは傲慢なのかもしれないなんて思ってしまったり…。
本当に難しい。
でも苦しみが少しでも癒えて欲しいと願う。
この物語の中で、小羽たちは青葉さんとの出会いで救われ、青葉さん自身も、この三人との出会いに救われていた。
沢山の苦しさの中からも、小さな温かい光が感じられたし、小羽が最後に一歩を踏み出せて良かった。
子どもたちへの温かな眼差し、忘れないようにしよう。
作者のあとがきは、必読だなと思います。
そしてイケメンなんよ‹‹\(´ω` )/››
そしてイケメンなんよ‹‹\(´ω` )/››
まぁアプローチが山田風太郎賞だけどね
ふだん看護師さんの兼業作家さんなんだね
看護師しながら小説書くってすごいね...
まぁアプローチが山田風太郎賞だけどね
ふだん看護師さんの兼業作家さんなんだね
看護師しながら小説書くってすごいね
看護師として伝えたいこと、宮城県出身者として伝えたいことがぎゅうぎゅうの良作でしたで、早う予約しなはれ(あきない世傳が抜けない)