わたしのいないテーブルで: デフ・ヴォイス

著者 :
  • 東京創元社
4.08
  • (63)
  • (55)
  • (41)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 567
感想 : 69
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028480

作品紹介・あらすじ

コロナ禍の2020年春、手話通訳士の荒井の家庭も様々な影響を被っていた。刑事である妻・みゆきは感染に怯えつつも業務をこなし、一方の荒井は二人の娘の面倒を見るため手話通訳の仕事も出来ない。そんな中、旧知のNPO法人から、女性ろう者が起こした傷害事件の弁護団への通訳としての参加依頼が届く。些細な口論の末に実母をナイフで刺した事件。聴者である母親との間に何が? コロナ禍でのろう者の実態と苦悩を描く、〈デフ・ヴォイス〉シリーズ最新長編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『デフ・ヴォイス』シリーズ第四弾。
    コーダ(家庭の中でただ一人の聴こえる子ども)として育った手話通訳者の荒井尚人が刑事のみゆきと結婚してみゆきの連れ子の美和は中学三年生になり、荒井とみゆきの間に生まれた娘でろう児の瞳美は4歳になります。

    今回のこの作品は2020年春から秋にかけてのコロナ禍の下、ろう者社会と荒井家に起きた出来事をドキュメント風に描いたものだそうです。

    コロナ禍はろう者社会にもかなり深刻な影響を与えていることを知りました。
    ソーシャルディスタンスの徹底や「人との接触をなるべく減らす」というのはウイルス対策としては正しくとも「他人の介助を必要とする者」たちにとっては相当の不便を強いるものだということです。確かにそうだろうなと思いました。コロナ禍ももう3年目に入っていて、一体いつになったら出口が見えるのかとただでさえうんざりしますね。

    事件としては、ろう者の若い女性が自分の母親を刺すという事件が起こります。今回、荒井は事件の担当者の補佐役です。

    瞳美はすくすくと育ち手話で話す学校の幼稚部に入園していますが、祖母の園子が口語を教えようとして、ひと悶着起こりますが、みゆきが園子に瞳美の世話を頼まないことで解決します。

    荒井の母親の知人のろう者、長澤トキ子が「人間のもっとも大切なものは自尊心」「手話は私に自尊心を持たせてくれた、かけがいのないもの」と語るところは響きました。

    第一弾から読んでいるシリーズなので、知っている家族にまた逢えて嬉しかったです。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪

      毎回、知らなかった世界を教えてくれるシリーズですよね。

      今回はコロナ禍におけるろう者の世界も勉強になりました。...
      まことさん♪こんにちは♪

      毎回、知らなかった世界を教えてくれるシリーズですよね。

      今回はコロナ禍におけるろう者の世界も勉強になりました。

      荒井家、これからもいろいろな壁が立ちはだかりそうですね。
      瞳美ちゃんの成長も追いかけたいです。
      2022/03/18
    • まことさん
      くるたんさん。こんばんは。

      そうですね。
      私も勉強になりました。
      荒井家では、瞳美ちゃんの愛らしさ。
      そして、美和ちゃんの恋の行方も気にな...
      くるたんさん。こんばんは。

      そうですね。
      私も勉強になりました。
      荒井家では、瞳美ちゃんの愛らしさ。
      そして、美和ちゃんの恋の行方も気になりますね。
      続刊が楽しみなシリーズですね!
      2022/03/18
  • デフ・ヴォイスシリーズの4作目。
    ストーリーは先が読めてしまいちょっと飽きてきたが、やはり学ぶことが多い。

    母親の手話を見て代筆する、という場面があった。
    日本手話を母語とする人にとって日本語は第二言語。
    日本手話とは全く別物なのだ。
    これまでもそのような描写があったかもしれないが、今回改めてハッとさせられた。
    それを恥ずかしいと思ってしまう幼い頃の荒井の気持ちも。

    聴こえるからこそ読み書きも自然と身につく。
    また一つ新しく知ることができた。

  • 今作ではコロナ禍でのろう者の生活というのもテーマのひとつだったように思います

    たいへんなんだろうな〜とはなんとなく思いつつ
    そうは言ってもたいへんなのはこちらも一緒と一緒のはずがないのに思ってしまったりもして
    デフ・ヴォイスシリーズを読むことで少しでもそういった方たちを慮る気持ちを思い出せて良かったなと思うと同時にカエルのように扱っていないよな(どういうことかは本編を読むとわかります)と自分の頭の中を点検しています

    そして今作で一番ハッとしたのはろう者の老人トキ子さんのいう「自尊心」という言葉です
    ウィッキーさんによると〜「自尊心」とは自分が有能であるといういわゆる自信と、自分に価値があるという自尊の2つの要素から成り立っている〜とのこと
    日本でも過去にろう者の方たちからこの「自尊心」を取り上げるようなまたは最初から育たないようにする政策が取られていたり
    家庭の中、特にろう者が聴者の中で一人きりの場合などにそういったことを強要していることがあるのではと指摘しているように思います

    こういった指摘に対しいろいろな考えがあるとは思いますが、まずは知ることがとても大事だと思いますのでこのシリーズはこの先も続いてほしいなぁと思うのでした

  • 今作も心に残る一冊。

    女性ろう者が母親を刺した傷害事件を軸に、ろう者と聴者の、家族の心の隙間を描いた作品。

    家族であって家族じゃなかった…一体、いくつの言葉が想いが深く突き刺さってきただろう。
    涙と共にずっとそばでろう者達の声が聴こえてくるような時間だった。

    この物語の、ろう者達の根底に流れるのは手話は立派な「言語」だということ。 
    自尊心を与えてくれる、自分としていられる世界だということ。

    この認識が何よりも心の隙間をせばめる大切な事の一つ。

    今作も心に残る、残したい、ろう者達のかけがえのない世界と声がたまらない。

    • まことさん
      くるたんさん。こんにちは♪

      くるたんさんのレビューで、新刊が出ていることを知りました。
      瞳美ちゃんの成長ぶりが愛らしいなあと思いまし...
      くるたんさん。こんにちは♪

      くるたんさんのレビューで、新刊が出ていることを知りました。
      瞳美ちゃんの成長ぶりが愛らしいなあと思いました。
      口語を使って家族を喜ばせようとするところなど泣かされますね。
      私もトキ子の「手話は私に自尊心を持たせてくれた」というところ響きました。
      2022/03/18
    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪

      まことさんもシリーズ読まれていたんですね♡
      私もこのシリーズ、久々に追いかけました。

      トキ子さんの言葉、泣きま...
      まことさん♪こんにちは♪

      まことさんもシリーズ読まれていたんですね♡
      私もこのシリーズ、久々に追いかけました。

      トキ子さんの言葉、泣きました。シリーズで一番刺さったかな。

      2022/03/18
  • シリーズの最新作であるこの作品は、今までて一番早く読み終えた。
    NHKのドラマも見たせいか、登場人物がかなり私の頭の中で整理されたからだろう。

    本を読んだことで、手話に対してある程度の認識を学んだ気にはなっていたが、改めてまだまだ足りていないことを思い知らされた。
    特にコロナ禍の学校給食で手話が取り入れられた場面では、自分の認識が一方的だったと痛感。
    この家族の成長に合わせて自分も深化していきたい。

  • 手話と口話。
    親子で言葉の壁があって、本当の気持ちをうまく伝え合えないもどかしさ、想像できるでしょうか…?

    裁判に出てくる親子が本当にもどかしい。


    コロナがだんだんと拡大していく世の中も背景にしていて、なんだか暗いモードで話が進んだ感じ。
    色々考えさせられますね。

  • 2020年のコロナ禍の中、刑事のみゆきは仕事を休む事が出来ないので自宅学習に切り替わった娘達の面倒をみるためなかなか手話通訳の仕事が出来ない荒井。リアルに起きた問題が荒井家の事情を通して語られるのであーそんな事あったな、と妙だけど懐かしい感じになる。そんな中ろう者の娘が聴者の母を包丁で刺した障害事件への協力の依頼が入る。黙秘を続ける娘の背景を追ううちに聴者の家族の中で孤立するろう者の孤独が浮かび上がるが、これが反転した立場の荒井が自分を見つめる道に続いているのが相変わらず秀逸。言わなきゃ判らない、を安易に言えない難しさが胸に落ちてくる。IT音痴でガラケーだった荒井をオンライン対応出来るまで導いてくれたり美和ちゃんが相変わらずいい娘、いいお姉ちゃんだけどもっと自分本位でもいいんだよ、と心配になった。ろう者の瞳美に聴者の世界が見えてきたタイミングでのみゆきの母としての最後の言葉も怖い。

  • やはり、最高です。
    大ファンです。
    泣けます。

    4作目の本作はコロナ禍一年目の最中という設定。
    瞳美ちゃんもすっかり大きくなっている。

    ディナーテーブル症候群というのが
    タイトルにつながるのだが、
    家族の中で、
    自分が愛されていること、
    大切な存在だと扱われること、
    自分の意見を求められ聞いてもらえること、
    などなど
    どんな人にも必要なことであるが、
    家族の中で唯一の聴覚障害児は
    疎外され孤独であったというのが
    この巻の中心であった。

    トキ子さんも言っていたが
    人間のもっとも大切なものは、自尊心。
    そして言語は思考、理解、コミュニケーションなど、あらゆることに必要なもの。

    私も息子を育てる上での認識を深め、
    自分の仕事についても思いを新たにした。

  • 2020年1月年明けと共にコロナの感染が始まった。
    わたしの住む愛知県も感染者の多い地域だが、やはり中心部名古屋から離れていると、最初の頃は実感もなくニュースを見ていたと思う。

    さて今作デフ・ヴォイス第四弾
    コロナが蔓延していく状況の中、荒井家と取り巻く環境も変わっていく。

    幸い感染することなく毎日読書してますが、コロナが小説に出ている作品は一つもなかったなぁ…と
    この状況下の障害者の方々がいかに大変なのかと
    またまたこのシリーズに気付かされた_φ(・_・

    荒井は仕事激減、みゆきは警察官…警察官にソーシャルディスタンスはありません。

    我が家にも警察官2人…家族も発熱は許されない笑
    いやいや大変です(u_u)

    荒井家も色々問題を抱えて解決まで行かない所で物語は終わりでした。

    今回「ディナーテーブル症候群」を知りました。
    荒井家でただ一人聞こえない瞳美の成長、それによる数々の問題…
    次回作は読者の支持があれば…って!
    丸山正樹に清き一票お願いしますm(_ _)m

  • デフヴォイスシリーズ4作目。
    3作目まで読んで、やや満足した感じがあって、もういいかなとすら思っていたけれど、読んでよかったです。

    マジョリティであるはずの尚人が家族の中ではマイノリティであり、その孤独感というところがデフヴォイスシリーズに深みを持たせてきていたと思う。
    だけど、家族の中で一人だけろう者であるということ、どこにいっても聞こえないということ、それはどんなに辛く、孤独なのか、ろう者にとって手話とは何なのか、4作目にしてやっと近づけた気がする。
    本当には理解できない、だから歩み寄らないといけない、そういうこととは別に、全く理解できてなかった、想像できていなかったと思う。
    なんだかものすごく泣けてしまいました。

    続きがありそうな終わりだったので、5作目も出版されることを楽しみにしています。児童書の方も読んでみたいな。

全69件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

京都大学大学院理学研究科教授。

「2004年 『代数幾何学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

丸山正樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×