めぐりんと私。

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 99
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028381

作品紹介・あらすじ

三千冊の本を載せて走る移動図書館「本バスめぐりん」との出会いは、屈託を抱えた利用者たちの心を解きほぐしていく。家族の希望で縁もゆかりもない土地で一人暮らすことになった規子の、本と共に歩んできた半生を描く「本は峠を越えて」や、十八年前になくしたはずの本が見つかったことを引き金に当時の出来事が明るみに出る「昼下がりの見つけもの」など5編を収録。めぐりんが本と人々を繋ぐ移動図書館ミステリ、シリーズ第二弾。

感想・レビュー・書評

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  • 『本バスめぐりん。』の続編。
    今回もちょっとハラハラ、でもホッとする話ばかりで楽しく読めた。

    「本は峠をこえて」
    終戦直後に移動図書館(当時は『自動車文庫』と呼ばれていたらしい)があったのが感慨深い。この話の主人公・節子にとっての本は人生を切り開く第一歩であり、挫折の折も寄り添い転機のきっかけにもなっていた。
    読書に興味のない夫が懸命に考えた愛情の証、素敵だった。

    「昼下がりの見つけもの」
    子供のころに失くして両親が弁償したはずの図書館本が突然見つかる…といういかにも大崎さん作品らしい謎。
    しかしその真相はけっこう苦い。というより、こういうことに大切な本を利用するなと言いたい。
    横道に逸れるが、松尾由美さんの『安楽椅子探偵アーチー』が出てきて懐かしかった。

    「リボン、レース、ときどきミステリ」
    本が好き、と言ってもその好みはそれぞれ。私のように小説が好きな人間もいれば、趣味の本、雑誌、写真集や画集、あるいは解説本などが好きだという方もいるだろう。
    異性から本が好き=小説、特にミステリ好きと思われてしまって否定できず、ミステリ作品に挑戦しようとする佳菜恵が可愛い。
    『十角館の殺人』『ツナグ』『屍人荘の殺人』『ジェリーフィッシュは凍らない』が出てきてニヤリとしてしまう。

    「団地ラプンツェル」
    作中一番好きな話だった。突然引っ越ししてしまった少年が残した謎めいたメッセージ。それを元に少年の行方を捜す友人の二人と、幼馴染の高齢者男性二人の即席探偵団。
    こんな凝ったメッセージを残すなんて、かなりおませな少年なのかと思うけれど、年齢差のある探偵団はきちんと答えを導き出した。
    これもまた本バス<めぐりん号>と本が繋ぐ縁。

    「未来に向かって」
    大崎さんの作品でよく提示される、業界の危機。特に税金を使う公的図書館は、中でも移動図書館は真っ先に標的にされるのだろう。
    <めぐりん号>のサポート職員・典子が司書になるきっかけを与えた丸山市の移動図書館<ほんまる号>廃止の衝撃のニュース。しかし典子にそのきっかけを与えた<ほんまる号>の当時の職員は諦めていなかった。

    本や本バスが繋ぐ縁の話ではあるが、そこには必ず人がいる。一見のんびりしていそうなテルさんが探偵役というのも面白い。亀の甲より年の功とは言うものの、テルさんは踏み込むべきところ引くところをよく知っている。ウメちゃんの素直さ率直さも心地いい。

  • 移動図書館「本バスめぐりん」。確か前作もかなり前に読んだが、今回2作目だと思う。

    60歳の運転手テルさんと司書のウメちゃんとで本を載せて団地やビジネス街を巡回する。

    利用者たちとほのぼのした交流は、こちらまで優しい気持ちになる。
    たまに謎な出来事もあったりするのだが…
    そこもまた、サクッと解いていく。

    こういうバスでふれあうのも良いだろうなぁと。
    遠方にいる人や移動手段のない人、仕事でなかなか時間が無い人などありがたい動く図書館だと思う。

  • 「めぐりん」に再会して新たな感動を得られました

  • 大崎梢のおすすめ小説6選!本屋好きにはたまらない作品 | ホンシェルジュ
    https://honcierge.jp/articles/shelf_story/653

    西脇エリ(@nishiwaki_eri) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/nishiwaki_eri/

    めぐりんと私。 - 大崎梢|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488028381

  • 移動図書館「めぐりん」とそこに通う利用者のお話。図書館に通う人にも色んな人生があって、そしてどこかで繋がってたりして…

    今、住んでいる神奈川県が舞台になっていて、あの辺かなあとか考えたり親近感が湧いた。でも移動図書館は知らなかったなー
    幸い図書館が徒歩圏内あって、しょっちゅう通っているので、当たり前に感じていたけど、有難い存在なのかもと少しだけ思った。

  • 移動図書館『めぐりん』を利用する人たちが抱えた謎をめぐりんに持ち込み、解決していく物語。
    図書館や書店が舞台の場合、司書や書店員目線で物語が進んでいくが、本作のうちほとんどは利用者目線で物語が進む。
    図書館が利用者に優しく寄り添う姿勢にはっとさせられた。
    最終章のように、現実でも、図書館や本に携わる人たちや利用してくれる人たちに、明るい未来が待っていると思いたい。

  • 前作に続き、こちらも面白かった!
    利用者さんたちの日常のちょっとした謎を解きも楽しいし、人との触れ合いに心が温まる。
    どの物語もそれぞれの味わいがあり、とても温かい気持ちになります。

    めぐりん存続の危機をみんなで乗り越えたり、老婦人と子どもたちの交流に思わず目を細めたり、思わぬ再会や別れもあったり…。
    自分の子ども時代に思いを馳せてみたり、本の思い出がよみがえってきたりしました。

    心に優しく響いてくる言葉やシーンもたくさん。知ってる本が作中あちこちに出てきたのも嬉しかった。
    続編が出るなら是非追いかけたいシリーズになりました。

    ***以下、前巻からの心に残った言葉***

    『話しかけるって、勇気がいるよね。自分の考えていることを伝えるのは、だいたいいつもむずかしい。黙っている方がらくなときもある。でも話してよかったと思えることもたくさんあるよ。』

    『口にできない思いが多すぎる。でも溜めたりこぼしたりしながら、移り変わる季節の中を自分なりの歩幅で歩いてくれればと思う。その道を明るく照らすものがひとつでも多いことを祈る。』

    『本って変わらないのがいいのかも。いつでもどんなときでも開けばそこに同じ物語があるんです。変わらないから安心できる。』

  • めぐりん号第2弾!
    第1弾の「本バスめぐりん」は、めぐりん号の運転車テルさんと、職員うめちゃんを中心にとらえた内容だったように思うけど、こちらはめぐりん号を利用する人に焦点を当てたもので、趣がまた少し違っていて、楽しめました。
    人と移動図書館の出会いによって、その人達の人生が豊かになる、そんな様子が良い。
    第1章のお話が特にそう思わせられ、凄く良かった!
    不完全で欠けている部分があるからこそ新しい出会いがある。そしてそれは町であったり人であったり、仕事であったり、美味しい食べ物であったりいろいろ。
    これからの私にも、いろんな出会いがあるといいな。そしてたくさんの本に出会いたい!
    そう思えた作品でした。

  • 移動図書館「本バスめぐりん」は今日も走る。
    訪れる場所で出会う利用者が抱える謎を解く、ミステリ短編集。
    ・本は峠を越えて・・・めぐりんにより甦る思い出と過去の出来事。
       亡き夫は、義理の息子たちは、何故この家を選んだのか?
    ・昼下がりの見つけもの・・・再起のために戻った実家で、18年前に
       無くした本を発見。何故ここに?父母だって男女だから。
    ・リボン、レース、ときどきミステリ・・・声をかけてきた男性は、
       ミステリ好き。話が楽しい。だが、彼自身がミステリ。
    ・団地ラプンツェル・・・幼馴染との再会は少年たちとの出会いに。
       70歳代と小学生たち、4人の冒険と謎解きの始まり。
    ・未来に向かって・・・故郷の移動図書館が廃止になる?
       自分を司書に導いてくれた、あの人は?だが、未来はある。
       司書、公共図書館の抱える問題や活動にも言及している。
    めぐりん巡回MAP有り。
    定年退職後、新人運転手になったテルさんと、
    図書館司書のウメちゃんが乗る移動図書館「本バスめぐりん」。
    めぐりんが行くステーションに集まる様々な利用者と、謎。
    今回は、各ステーションでの利用者中心のミステリ短編集です。
    とは言え、テルさんとウメちゃんもサポートとしてパワーアップ。
    前作に登場した人物たちも、さり気なく出番があるのが、嬉しい。
    本と人を繋ぐ、めぐりん。めぐりんを中心に集う人々の描写が
    心地よい。その光景だけでも、一冊の本のようです。
    また、好きな書名が作中に出てきたのも楽しい。再読しようかな。
    反面、図書館の抱える問題等の投げかけもありました。
    でも大丈夫。そう、未来はあります。どこも模索してるはず。

  • めぐりんの第2弾が出てた。今回はもっとウメちゃん、テルさんの目線だったような気がするが、今回はそれぞれのお話に主人公がいる感じ。(前のレビューを観たら、この前はテルさん目線だった。)
    それぞれに抱える悩みがあるんだなぁ。。。ラプンツェルは自分も一緒に探検している気持ちになれた。ラプ方式とは単純だけれども面白い方法を考え付いたもんだ。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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