厨師、怪しい鍋と旅をする

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027940

作品紹介・あらすじ

優れた厨師を輩出することで有名な斉家村の見習い料理人・斉鎌(さいれん)は、ある日茸を採りに入った山で、不思議な男から借り受けた鍋――機嫌によっては料理を美味くし量を増やしてくれるが、食物で満たされないと自ら獲物を狩りにいくという恐ろしい鍋のため、村を追われることに。本来の持ち主に返却するため、戦場から有力者の屋敷、妖怪の荒屋まで、様々な場所で様々な料理を作りつつ旅と続ける斉鎌だが……若き料理人が出会う不思議の数々を描く中華×料理×幻想譚。

感想・レビュー・書評

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  • 中国の明時代の話?題名通り、若い厨師(料理人)がとんでもない鍋とあちこち巡って、怪しいことや不思議なことやえぐいことに遭遇する話。後の妻にも出会う。淡々と語られるのがみそだねえ。鍋は結果悪いことはせんかったよ。いかにも中国風の物語群で、面白いこと無類。勝山海百合、いいね。

  • 何とも味のある、中華幻想譚。表紙もいい味出していますよね。
    厨師(料理人)の斉鎌は、何でも美味しく仕上げるけれど、長く使わないと腹を減らして人等を襲うという、便利だけど乱暴すぎる不思議な“鍋”を借り受けます。この鍋を持ち主の男に返す為、図らずも流浪の厨師になってしまった斉鎌。
    彼が行く先々で起こる、不思議な出来事に関わったり、関わらなかったりする展開です。
    淡々とした文体も、この作品の独特の“味わい”に一役買っているように思います。肝心と思われる部分を敢えて端折ったり、ぼかしたりしているのも読者側の妄想に任せているのかなと(多分、“敢えて”だと思います。多分・・)。
    そして、“鍋”関係なく、斉鎌はなかなか腕の良い厨師なのですが、特に彼のつくる饅頭はめっちゃ美味しそう。今、読んでいるのは真夏なのに、中華まんが食べたくなりました。

  • 学生時代から本を貸し借りする友人からのオススメで手に取る。
    タイトルも不思議だし、内容も不思議。

  • 「『怪しい鍋』って何なに?」と思いつつ読みそびれていたのを、遅ればせながら先日手に取った。

    料理人を生業とする村出身の、若い出稼ぎ料理人・斉鎌のお話。あるお鍋をある人物から借りてしまったために村にいられなくなり、返す日が来るまで渡りの料理人として腕を磨きつつ日々を送る。故郷に帰れないという呪いには『さまよえるオランダ人』の悲壮さが感じられないこともないが、上手くやれば斉鎌にダイレクトに災いが降りかかることはないので、道中が何となく可笑しい。

    中華ファンタジーは中島敦と武田泰淳という、中国文学の泰斗が手がけたジャンルでもあるので、名詞や動詞の使い方にもまして文体の「らしさ」が肝になることが多いと思うが、この作品はそのあたりをうまくクリアしており、口跡よくというか、テンポよく読める。それに、日本の妖怪譚よりも湿っぽくなく、「そういうこともあるだろうな」と妙に納得してしまうところに、距離の遠さが生むリアリティ(濃さともいえるし、薄さともいえる)が出ていて面白かった。それにしても、現代の文芸作品で「か知ら」の表記は初めて見たので、はじめは誤植かと思った。

    個人的には、同じ鳥を見ていても、生き物としての鳥好きの娘と、食材としての鳥に興味のある斉鎌の話が合わない「鳳嘴苑」と、万能の秘薬をめぐる「石棺いっぱいの蜜」の歳月の使い方が面白かった。各話にこそこそと現れて「他言は無用」とこそこそ去っていく、謎の追跡チームの動きも不穏ながら、何となく愉快。あと、お鍋の戻ってくる様子が隕石の落下のようで激しすぎて、とても気に入っている。

    解説は中華料理に造詣の深い、作家・翻訳家の南條竹則さん。穏やかな筆致とものすごい情報量がご著書の中華料理エッセイと同じで楽しく読めたけれど、これは作品の解説というよりむしろ饅頭の解説ではないかと思った。

  • 厨師とは、厨房の師、即ちる料理人のこと。清朝時代と思われる中国で、妖異の鍋と包丁のようなものを持ち放浪の旅をする厨師、斉鎌の奇妙な体験をつづる中華ファンタジー短編集。

    中島敦を今風に読み易くしたような、中華味の物語が味わい深くて面白い。スゲー怪物やとんでもない事件は起こらないものの、民話調の不思議な怪異譚がなんとも心地よい。初読の作家さんだが、面白かったので過去作を追いかけてみようかと思う。

    無性に饅頭が食べたくなる。そして、解説は物語や作者ではなく、ほぼ饅頭の解説になっているっていうもの面白い

  • 厨師、つまり料理人として渡り歩いている斎錬の持っている鍋は預かり物であるが、なんでも美味しくする不思議な鍋である。鍋だけでなく、彼の腕も確かなので、美味しそうな話が続く。色々な場所で料理をしての話が、オムニバスのように続いていって、それらのエピソードが所々で繋がっていく構成になっている。穏やかな語り口で、大きな起伏があるわけではないけれど、面白かった。

  • 料理人である厨師の一族、斉氏の一人、斉鎌は奇妙な鍋を手に入れたことから、流浪の厨師となった。「料理」「鍋」「中華」という言葉の連想からはとても想像できないような様々な物語があり、とても楽しめました。おすすめです。
    鳥がいい味を添えていました。勝山海百合さんのこういう話、もっと読みたいです。解説は南條竹則さん!

  • タイトルに惹かれて読んだ。不思議なタイトルだが、タイトルそのまま、不思議なお話だった。
    2020/9/26

  • 本棚でタイトルに惹かれ、手に取れば表紙は片山若子さん。
    日本ファンタジーノベル大賞受賞作家による中華ファンタジー。
    というわけで即借り決定したわけです。
    11話収録されてまして、どれも短めです。

    ちゃんと使わないと凶暴化して自分で獲物を襲うという怪しい鍋を、謎の人物から借りてしまった若い料理人のにーちゃんが主人公。
    鍋はしゃべったりはしてないです。
    変な里に迷い込む話とか、日本昔ばなしチック。
    勝手に市原悦子さんナレーションをあててみたりしてw

    これがラノベだったら、鍋は最後あぁはならないだろうし、話の運び方や他のキャラクターもそんなに作っていない感じがします。
    そこも昔話風?
    まずまずかと。

    解説 / 南條 竹則
    装画 / 片山 若子
    装幀 / 東京創元社装幀室

  • 中華風ファンタジー。不思議な鍋のせいで旅をしているんだけど、あまり鍋に関わる話は無くて、ちょっと不思議な物語が淡々と語られてます。
    話に大きな山や谷が無いため、もうちょっと短いと読みやすかったかなと思います。

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