月蝕島の魔物 (Victorian Horror Adventures) (Victorian Horror Adventures 1)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 99
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488024772

作品紹介・あらすじ

十九世紀、活気に満ちたヴィクトリア朝のイギリス。クリミア戦争から奇跡的に生還を果たしたエドモンド・ニーダムは、しっかり者の姪、メープルとともに大手の会員制貸本屋で働きはじめる。そして、ようやく仕事に慣れはじめた矢先、作家アンデルセンとディケンズの世話を押しつけられてしまう。個性豊かな二大文豪にふりまわされるニーダムに、さらなる難題がふりかかる。月蝕島(ルナ・イクリプス・アイランド)の沖で発見された、氷山に閉じこめられた謎の帆船を見に行くとディケンズが宣言したのだ。かくして、不吉な噂に満ちた月蝕島への旅がはじまった。

感想・レビュー・書評

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  • ★3か4か迷っているところ。
    夏休みに冒険譚をチビちゃんに、と思ってたんだけど、面白いそうだね、ふーんと放置されていたので、読んだ。

    貸本屋で働く、元軍人のニーダムと姪のメープル。社命でディッケンズとアンデルセンのお守りをすることになる。
    イギリス北部の月蝕島で氷山に閉じ込められた帆船の謎とは。
    月蝕島の領主、悪徳地主のゴードン大佐との対決は。
    ちょこちょこ出てくる歴史的な事件やら人物が楽しい反面、ちょっと面倒だったのだけど、後半に生きてくるのでびっくり。
    ベルヌやルパンに重なるドキドキの展開。
    楽しかったー!
    モランってそういう存在なんだ、とこれにもびっくりだった。

  • 「ちょっと頼りないけど、やるときはやる元クリミア戦争軽騎兵隊所属の叔父さんと、本好きで元気で頭がいい美少女の姪っ子が、文豪ディケンズとアンデルセンと一緒に大冒険をする話」

     ―――よし、買いだ(笑)。

     流石は田中芳樹、正しく「冒険活劇」しているのみならず、歴史考証はしっかりしつつ、かつ、1%の嘘をたくみに織り交ぜてのエンターテイメントがしっかり展開されている。
    (巻末の参考書籍も圧倒的で、これを拾って読書をするのもすごく楽しいではないのかと思わされたり)

     結構ボリュームはあるけれど、これもさすがの筆力で、読みやすくかつ一気に物語世界に引っ張り込んでくれるのも素晴らしい。久々にひきこまれて30分読破をしてしまいましたよ勿体ない……。

    (以下、本当にオチのネタバレ注意)












    ……そして、オチのアレはクトゥルー関係のアレかと思ったのだけど、巻末の参考文献を見るかぎりでは、どうもそうではないらしい。はいはい、なんでもかんでも邪神ネタにつなげたがるクトゥルー脳乙、と、自分で自分を戒めた次第です……。いやでもちょっと妄想するくらいいいよね……orz

  • ひさしぶりに田中芳樹氏の本を読んだ。19世紀イギリスの事件を20世紀初頭に回顧するという手の込んだ設定で、ヴィクトリア朝のイギリスを体験できるんである。主人公はクリミア戦争を生き残った勇者で、野戦病院でナンチンゲールの看護をうけた。戦場のトラウマをかかえながらも、ロンドンの貸本屋に再就職して生活をささえている。このニーダム氏と姪のメイプル(田中芳樹風の元気な女性)や文豪のディケンズとアンデルセンの世話をすることになり、スコットランドにいき、奇怪な事件にまきこまれるというお話です。当時の出版業界が貸本を主としていたことや、この時期にチョコレートが固形になったこととか、グラッドストーンの演説とか、こまかい設定がけっこう史実にもとづいていておもしろい。ディケンズとアンデルセンの間に交流があって、アンデルセンがかなり奇矯な人物だったことも史実(脱出用のロープを持ち歩いていたとか、生き埋めをさけるために、「ぼくは生きています」と書いた紙を持ち歩いていたとか)も史実のようです。

  • 今まで読んだ、田中芳樹作品とはかなり趣が違った。
    社会批判的な、体制批判的な言葉がなくて(それはそれで面白かったけれども)、素直によめたというか。面白い冒険小説だった。

  • 銀英伝や創竜伝、アルスラーン戦記などを高校生時代に読んで以来の田中作品。以前に読んだ作品はやはりファンタジー要素がふんだんにあり、それはそれで楽しかったのだがやはりフィクションだということが年頭にあったものだった。今回のこの作品はヨーロッパ史を入念に調査して、ディケンズやアンデルセンなどの歴史上の人物を田中作品に登場させたところに斬新みと歴史上の人物はこんな人だったのか!と思わせるような驚きに似た感想。
    主人公は、ヤン=ウェンリーのような戦略・戦術的な才能やダメダメ政府に対する反政府思想を持っているわけではなく、竜堂兄弟のように人知を超越した力があるわけでもなく、アルスラーンのように勇者・智者をたずさえているわけでもなく、勇敢な一般人のように感じた。
    また、所々に歴史説明を加えてくれているので、歴史背景を垣間見れるところにも味があると感じた。

  • ヨーロッパのあの時代が、どのようなものだったのか…歴史や小説が好きな人間には、たまらない設定がたくさん。
    ただし、かなり子供向け。中学生くらいの子に読んでみてほしいな。

  • ハキハキとしたメープルがかわいい。
    クリミア戦争帰りのニーダムは心配性ながらもしっかりしている。
    ディケンズとアンデルセンはそれぞれ作品に似た(?)キャラクター。
    真夏のイギリスに現れた氷山の謎を解きに月蝕島に向かう。

    「魔物」はてっきり概念のような存在かと思っていたら、クトゥルフ神話のような不気味なものが出てきた。
    結局、次男の話は法螺だったのか、あるいは…というところが気になっている。

  • すでにいい大人の自分にはちょっと退屈に思える部分もあるけれど(ルビだらけだし)、高学年以上向けの冒険小説だと思えば評価が違ってきます。
    近代イギリスの文明・文化に沿って描かれているので、主人公たちとその時代を生きているかのように感じます。最後に単位の説明も載っていて親切。子供には最高の読み物じゃないかな。

  • さっくり読了。ふむ、いつもの田中芳樹という感じで、最近重めの(雰囲気も物理的にも)本が多かったので息抜きに丁度良かった。

    とは言え、やや子供向けだなぁと想っていたら、この本、以前に理論社から出ていたんですな。潰れてからの新装刊が早いのはやはり田中芳樹だからなのか。みんなどこもそんな感じなのか。とか下世話な事も考えつつ。

    19世紀のイギリスを舞台に貸本屋に勤めるジャーナリストの叔父姪がディケンズ&アンデルセンのデコボココンビに振り回されながら月蝕島に赴いて…!ていう話。
    タイトルも合っている…んだけど、うーん…途中までクトゥルフ方向にしたいのかと想ったり。面白いんだけど、いらんところの解説が多くていつもの伝奇的怪物解説はどこいった!みたいな、やや消化不良なところも。薬師寺涼子の方がエッジが聞いていて面白いなぁ。(まぁ、多分理論社で出していた本だからですよね?)(やや子供向けにしたんですよね?)

    で、三省堂さんにサイン本が入っていたので購入したのですが、きっと続きも出たら買うかなぁと想うくらいには面白かった…かなぁ?今イチ断言しづらいけど、勢いで買うだろうなぁ。目に入れば。
    リアル本棚は「モンタギューおじさんの怖い話」の隣に置こう。そうしよう。

    カテゴリにちょっと迷ったけど「ミステリ」に。冒険小説でも良いのだけど、怪物とか魔物が出てくるのはこっちかなっと。
    私の使う「ミステリ」は大きいジャンルとしては含む、だけど通常「推理小説」及び「探偵小説」は入りません。悪しからず。

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著者プロフィール

1952年熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。1978年「緑の草原に……」で幻影城新人賞を受賞しデビュー。1988年『銀河英雄伝説』で第19回星雲賞(日本長編部門)を受賞。2006年『ラインの虜囚』で第22回うつのみやこども賞を受賞した。壮大なスケールと緻密な構成で、『薬師寺涼子の怪奇事件簿』『創竜伝』『アルスラーン戦記』など大人気シリーズを多数執筆している。本書ほか、『岳飛伝』『新・水滸後伝』『天竺熱風録』などの中国歴史小説も絶大な支持を得ている。

「2023年 『残照』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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