罪悪

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488013448

作品紹介・あらすじ

ふるさと祭りの最中に突発する、ブラスバンドの男たちによる集団暴行事件。秘密結社イルミナティにかぶれる男子寄宿学校生らの、"生け贄"の生徒へのいじめが引き起こす悲劇。猟奇殺人をもくろむ男を襲う突然の不運。何不自由ない暮らしを送る主婦が続ける窃盗事件。麻薬密売容疑で逮捕された孤独な老人が隠す真犯人。-弁護士の「私」は、さまざまな罪のかたちを静かに語り出す。刑事事件専門の弁護士が、現実の事件に材を得て描きあげた十五の異様な物語。世界各国を驚嘆せしめた傑作『犯罪』の著者による、至高の連作短篇集。ドイツでの発行部数30万部突破。ドイツCDブック賞ベスト朗読賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 15の短編集。今回も私が関係した事件という書き方。表紙の絵が合っている。ちょっと文体や雰囲気が吉村昭に似ているかな、とも感じた。綿密な調査による淡々とした記録なのだが、やはり創作文学だ、という読後感。

    「イルミナティ」
    ヘンリーは12才で修道院を改修した私立の寄宿舎に入れられた。両親が公立校より私立校がいい、という判断からだった。それがヘンリーにとってはどうだったか。 

    「家族」
    遺伝について考える。悪の遺伝子は伝わるのか・・
    私に家族の歴史を送ってきたヴァラー、「私たちで終わりにしたほうがいい」。


    「秘密」
    私の弁護士依頼人。やっと病院に連れてゆくと言った言葉は・・

    この3編だけ読んだ。

    2012.2.20初版 図書館

  • 人が人を諌める時、その心に去来するものは、言葉で言い表せないほど複雑な思いが充満している。刑事事件弁護士が法廷での実体験をとおして、被疑者の犯行に至るまでの心情を繊細に語り綴った15篇の罪の物語です。犯罪者心理に深く入り込む暗く異様な事件のなかで、『清算』と『家族』に仄かな慰めを見つけた思いです。

  • 体温の低い文章が強烈な印象を残す短篇集。うららかで陽気な祭りの日に起きた、実に愚かしく陰惨な事件のスケッチから幕が開き、この本が、法による裁きと「罪」との間の、決して埋まらない隙間を扱うものであることを告げる。けっしてバラエティに富む短篇集とはいえないものの、ささいなことから人生を決定的に破壊されてしまうひとびとの悲劇を描く「イルミナティ」や「子どもたち」から、タランティーノの映画を見ているような「鍵」まで、どれも見事な手際。そしてしめくくりの「秘密」は、あっと言わせてニヤリとさせる、ちょっとしたボーナストラックみたい。装丁もよく雰囲気をつたえていて◎。

  • 刑事弁護士である著者が現実の事件をヒントに書いた短編集。『犯罪』に続く第2弾である。
    相変わらず淡々とした語り口で事件を描写してゆき、一編一編はそっけないほど短いのだが深い味わいを残す。後味が悪い話も多く、勧善懲悪とか因果応報など全くないので読むとどんよりするが、それでも面白いという不思議な本。

  • シーラッハの「犯罪」に続く第2弾

    今回は、犯罪と立件されたものも、されななかったものも含めて、その中核にある”何が罪悪なのか” という点がクールに、描き出されている。

    人間の営みのなかでの、怠惰やちょっとした悪意が引き起こす悲惨な結果、運命の皮肉など、クールな描写が、本作でも効果的である。

    その中でも、「清算」という一編は、どんでん返しの妙もあり、面白かった。

  • 前二作と同様に冷徹で、無駄のない文体で犯罪に走る人間たちが描かれている。時にグロテスクに、アンバランスな塩梅で描かれる、「法と人」。
    ショッキングな内容のものもあればオフビートなものもあり、犯罪を扱ったものなのに笑いを誘発するものもあった。一癖二癖ある作品である。

  • ゾクゾクとヒリヒリと。
    あんまり短くてエッ!っていうのも。
    ほどほど書き込みはやっぱりある程度ほしいかな。
    ショートショートという読み方するにはいまいちビックリがないかな、読み方が悪かったかな~淡々と物語が終わってしまう。

  • 後味悪いのもいっぱい。「犯罪」のほうをまだ読んでないので楽しみ。

  • 日本の法律とは少し違うようだが、アメリカの弁護士ものの「駆け引き」をゲームのように楽しむのでもなく、日本の刑法と言うものからにじみ出る湿っぽい感じもない。弁護士でもある作者の実体験がどこまで反映されているかは不明だが、弁護士としての葛藤や犯罪に抱く感情を一切封印して書かれている中、『家族』の最後の一文に書かれた「私は彼が好きだった。」がずしんと来た。

  • 「犯罪」でいくつかの賞を受賞した、弁護士を営む著者の第二作目。15の短編が修められており、体裁は前作と同様で、淡々と語られる犯罪の顛末に終始する。前回より若干、ドラマティックな印象があるのは、司法の制度に関連する事柄が登場するからだろうか。制度は使いようで、被疑者に有利にも不利にも働く。裁判官との駆け引きや、弁護士ならではの法の操り方というのがもちろんあり、それは国によっても違いがある。前作に比べれば少し、救われる結末になる編が多い。
    最終編の最後の最後で、小さなどんでん返しがあり、思わず笑ってしまった。

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