- Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488011048
作品紹介・あらすじ
人生を諦めた人にしか用がないと言われる廃墟パライソ・アルトには、さまざまな人がやってくる。逆立ちで現れたうなじにコウモリのタトゥーがある少女、車に積んだ札束を燃やしたいという大物銀行家、横笛を吹きながら現れ、質問にも横笛で答える男……。廃墟に住む「天使」は彼らの話に耳を傾け、向こう側への旅立ちを見送る。生と死、日常と非日常の狭間にたゆたう不思議な場所と幻のような来訪者たちを描く、美しくも奇妙な物語。
感想・レビュー・書評
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自殺をするために、人々が訪れる荒れ果てた村、
「パライソ・アルト」。
そこで、話の聞き役になって、見送る天使の存在。
自殺をしに来ているわりには、達観しているというか、悲観的な部分は殆ど見られず、むしろ、滑稽に思えたのが興味深く、死に対する考え方が異なるのは、作者がスペイン生まれだからかもしれない。
そこには、宗教観も含まれている。
読んでいくうちに、死の直前に接点のない人に自分の半生を聞いてもらうのも、いいかもしれないなと思いました。変に知ってる人でない方が、却って、何でも話せる気楽さがある気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
★3.0
全2編が収録された連作中短編集。廃墟となった村、パライソ・アルトを訪れるのは、命を絶とうと決めた人たちばかり。老若男女を問わない訪問者は、その村に住む“天使”と会話を交わす。が、“天使”とはいうものの純粋でも無垢でもなく、ちょっと変わったオジサンという感じ。そして、村を訪れる人たちも、負けず劣らずの変わり者揃い。そんなこともあって、自殺を描きながらも不思議なユーモアが感じられ、深刻な気持ちになることはほとんどなし。訪問者の死の明確な描写もないため、お伽噺ちっくでオブラートに包まれたような読後感。 -
廃墟の文字に惹かれてよみましたが、スペイン文学のザラザラした感じを求めるとちょっと肩すかしをくらう感があります。
関係ないですが、スペインを旅行した時に長距離バスで寂れた田舎を通過しましたが、日本の木造建築が山奥で腐っていく感じとはまた違う、乾いた平地で石造りの建物が崩れていく無常感みたいなのがあったこととかちょっと思い出しました。 -
つかみどころのない不思議な本でした〜
スペイン語の原文読んでみたい。
あとがきを踏まえてもう一度読んでみようかなあ -
翻訳ゆえなのか、微妙なわかりにくさはあるんですが、妙に残る話。兵士が出てくる辺りが特に好きです。
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普通の人は天国も地獄も行ったことはなかろうし、全てがイマジネーションの力に頼る世界観なんだろうけど、お国柄というのか、個々の人生の見つめ方というのか、そういうのが見えて興味深い内容。しずかーな、おだやかーな、雰囲気。日本人が描くと湿度たっぷり重々しいけど、あっちの人は、粉っぽいというか、湯気の中というか、最期の最後まで、まだ人間はおわってないんだぜ、さあ、ろうそくの灯火を見守ろうではないか、てな感じで、日向のような暖かみが感じられた。
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「自殺」がテーマでありながら、読みすすめると装幀画の世界が広がっていく。何処かに「パライソ・アルト」のような場所があるのかも知れない。と錯覚してしまうほどの不思議な感覚が読後も続く。