月のケーキ

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010997

作品紹介・あらすじ

幼い娘が想像した「バームキン」を宣伝に使ったスーパーマーケットの社長、だが実体のない「バームキン」がひとり歩きしてしまい、世間を大騒ぎさせることに……『バームキンがいちばん』。ヴァイキングの侵略者が攻めてきた。これまでは魔女である祖母が城を守っていたが、祖母亡き今、城の守りは孫のコラムに託された。果たしてコラムはどんな手段を使って城を守るのか?『にぐるま城』など、ガーディアン賞受賞の名手による奇妙な味わいの13編を収めた短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 月のケーキ ジョーン・エイキン著 : 読売新聞オンライン
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20200620-OYT8T50229/amp/

    ジョーン・エイキン『月のケーキ』訳者あとがき(三辺律子) : Web東京創元社マガジン
    http://www.webmysteries.jp/archives/22526519.html

    nine seasons.
    http://kiyoko9.blogspot.com/?m=1

    月のケーキ - ジョーン・エイキン/三辺律子 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/sp/isbn/9784488010997

  • まるでおとぎ話のようでありながら、現在の現実にも則している不思議な物語を集めた短編集。
    不思議すぎて、何か謎めいた風が吹き抜けていったかのような読後感。

  • ジョーン・エイキンは書いています。
    「作家の任務とは、子どもたちにむかって、この世界は単純な場所ではないことを示すことだといえるでしょう。この世界は途方もなく豊かで、奇妙で、混乱しており、すばらしいと同時に残酷で、神秘的で美しく、説明しがたい謎なのです。自分がどこからやってきたのか、どこへ行くのか私たちは知りません。私たちはどれほどつとめてみてもぼんやりとしか理解できない幾重にも重なった意味にとりかこまれているのです。
    このような事実を告げられた方が、子どもたちにとってどれほど楽しいかわかりません。」
    この言葉そのままの深みのある短編集でした。

    おはなしの中で、文明の進歩によって自然(とくに森)が破壊されることにより、失われるもの(魔法も!)に対し危惧もしています。

  • 食べると悪いことが起こるまえの状態に戻れるという「月のケーキ」、娘の話す物語を商売に利用する父親「バームキンがいちばん!」、おばあちゃんが残したオウムのフォッズの言葉で次から次へと形見の品にお湯をかける「オユをかけよう」など13話の短い童話集。
    なかでも「バームキンがいちばん!」の女の子アンナの意表を突いた発想は楽しい。
    スズメがバスの乗車券をくわえて飛んでいくのを見送り、「スズメはバスに乗りにいくところだったのかな」とか、男の人が手押し車に長靴をのせて押していくのをながめて「長靴は、手押し車にのせてもらわなきゃならないくらい疲れてたの?」と思いを巡らすシーンや、バームキンについて「どこにいるかによるかな。 石は、道にあるときはいいものだけど、靴の中に入るといやなものになるでしょ。 アイスクリームは手に持っているといいけど、手の甲に垂れたらいやだし、木は外にあればいいけど、お風呂場に生えたらいやでしょ」 と話すシーンには頷かされる。

  • この世の隣の世界やあの世との境目、そこに住む魔女を知っている人が書いた骨太のファンタジーの短編集。
    今まで知らなかったのが本当に惜しい!
    イギリスのウェールズなどの妖精やドルイドなどといったものについて知っている人なら絶対に気にいると太鼓判を押せる珠玉の作品集。

  • 植物の茎を折る匂いがしている。足裏で黒く湿る土を踏む感触がある。わたしの内でひそかに息づいている瞑想の迷路、終焉の場所としての森を呼び覚ます書物だった。
    森のなかでは日常は時間を持たない。記憶に住みついている心臓の鼓動のような足音を立て、外の世界へ、もうひとつの道へ進もうとするけれど、どの刻限へも移ろわないのだからどこへも行けない。照りつける陽光を分厚く遮る影のなかを冷え冷えと流れる仄暗い風。まるで海鳴りのように限りなくどよめき続ける。わたしは数百万の葉ずれの音の中に失われたものの名ばかりを聞いた気がした。

  • 13の短編集。
    幻想的で、少し怖かったり、温かみがあったり、カラフルというに相応しい。

    表題作、「月のケーキ」は何か少しずつ足りないものを持っている人々が暮らす村が舞台だ。
    希望を失った人たちが暮らすその村はどこか気味が悪い。
    ある日主人公のトムはやはり薄気味悪い村の女に月のケーキ作りを共にするよう強いられる。
    何かを取り戻したい、そんな思いを感じて。

    「やってしまったことはやってしまったことだから。それでも、人生は進んでいく。
    そうじゃなきゃ、まるでただのゲームだもの。だけど、これはゲームじゃない。」(34頁)

    この言葉が物語の流れを変える。
    美しい言葉とは裏腹に、不穏さを感じる月のケーキ。
    彼はそれを口にするのか。
    人生は自分で手綱を取る、そんなメッセージをまさか「気味が悪い」から始まる物語から得るとは。

    「羽根のしおり」は大切な人を失う物語だが、そこに優しさを感じられる。
    「千の風になって」という歌が流行った事があった。
    柳田國男の『先祖の話』という本がある。
    まさにその歌詞にあるように、大切な人の心は、目に見えないけれど、そばにあることを感じさせる。
    私は両親や兄弟姉妹、配偶者も子供も失ったことはないから、悲しみは「乗り越えられる」なんて言えない。
    だが、もし、悲しみに暮れる人がいるならば、「いつか読んで」と、この物語を差し出すことはできるだろう。

    「オユをかけよう!」は愉快な話。
    子供らしさと、ちょっとビターな笑いが混じった話。
    なんでもお湯をかけてみるけれど、さて、かけるとどうなるかな?
    絵本にして読んでみたい物語だ。

    訳者あとがきにあるように、著者は子供向けに物語を書くとき、「この世界は単純ではないことを示す」ようにしている。
    だから心に響き、だから美しく、恐ろしく、悲しく、愉快なそんな多面的、多層的な物語になるのだろう。

  • 脳内で萩尾先生にコミカライズしていただきつつ、読みました。むふ。

  • 海外らしいブラックジョーク的なものもあり日本にはないよなこういうの笑って感じで読んでました。
    日本にはないからこそ楽しめる話があるかもしれません(^-^)

  • 短短編集。登場人物が子供と老人が多い。薄めファンタジーですか?
    中では、「バームキンがいちばん!」が好きというか。他は全部もやもやする
    感じで。表題作「月のケーキ」は食するものではなくて、呪物のような物であり、結構アイルランドとかあの辺りって、ドイルド信仰っていうの?ところかしこにそういう表記がある。田舎、寒い、となると、薪。あれ火をぼんやりみてると、色々ふつふつわきあがってくるもんあるよね。そうすると、独自の死生観が発生してしまうんでしょうかな。

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