旅の終わりに (海外文学セレクション)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 64
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010768

作品紹介・あらすじ

妻は末期癌、夫はアルツハイマーの老夫婦。これ以上の治療は望まず、自分の死後の夫の身を案じている妻が下した決断は、愛用のキャンピングカーで2人、かつて子供たちを連れて旅したルート66をたどる旅に出ることだった。運転する夫の記憶は突然戻ったり、消え去ったり。 二人は愛し合い、強盗に対峙し、そして……! 無駄のない、ひねりのきいた文章の軽快な老人ロードノベルだが最後の最後で人生を、夫婦を考えさせる傑作。2018年1月26日より原作映画公開予定。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公は老夫婦 。60年近く連れ添ってきた。
    子供たちは成長し、2人の人生は黄昏を迎えた。
    夫のジョンはアルツハイマーを患い、妻のエラは人工関節に末期癌と満身創痍。
    だが、エラはどうしても出発したかった。ルート66をたどり、ディズニーランドへと向かう長い長い旅に。キャンピングカーで、ジョンと2人きりで。

    医者も子供たちももちろん大反対だった。
    皆の目を盗み、2人は出発する。
    主導権を握っているのはエラだ。
    ジョンの病状はかなり進んではいるが、車の運転だけはまだ見事なもので、むしろ運転しているときはご機嫌だ。エラの指示するまま、老いた2人を乗せた車は西へと向かう。

    物語の語り手はエラだ。
    容赦なく進む老い。言うことを聞かない身体。薄れゆく記憶。
    どうにもならない運命に傲然とエラは立ち向かう。
    このまま病院や老人ホームに閉じ込められて、他人に人生を管理されるのは嫌だ。
    愛する夫と2人、最後の旅をしたいのだ。

    ルート66は、アメリカ西部発展の礎となった道路である。スタインベックの『怒りの葡萄』にも登場し、のちにポップカルチャーにも多く取り入れられた。現在は廃線だが、なお象徴的存在として生き続けている。

    長年住み慣れたデトロイトを離れ、インディアナ州、イリノイ州、ミズーリ州と車は進む。
    章のタイトルは通過する州名である。目的地はカリフォルニア州。
    旅の途中で、エラは家族のスライドをジョンとともに鑑賞する。彼の薄れゆく記憶をつなぎとめるように。
    旅路は、同時に、2人の人生もたどっていく。

    時に車がパンクし、時に強盗に襲われかけ、時に2人して転倒して起き上がれなくなり、時にジョンがパニックになり。
    老いた2人の道行きは困難だらけだ。
    だが、老いや病につきものの痛みやつらさややるせなさも、ガッツのあるエラが語るとまるで一大冒険譚のようだ。
    そう、それは2人にとって、ともに過ごす最後の冒険だったのだ。

    結末には賛否両論あるだろう。
    だがこれは紛れもなく1つの愛の物語である。同時に、現代社会が形成している「老後の形」について、多くの人に問いかける物語でもある。


    *ドナルド・サザーランドとヘレン・ミレン主演で映画化もされている。『ロング・ロング・バケーション』 2人の向かう先や設定に多少違いはあるようだが、こちらも見ごたえがありそうである。

  • キャンピングカーでアメリカ横断の旅に出た老夫婦。一方はガン,もう一方は認知症。二人の旅はまるで彼らの生きてきた道さながらに,山あり谷ありの連続でした。人生夕暮れだって寂しいだけじゃない,素晴らしいことがたくさんあるんだと感じさせてくれる,素敵な作品です。

  • 7割読んだ。ルート66?はアメリカ人にとって特別な存在なの?さして絶望感もなくでも読み進められる。翻訳の人が良い仕事してそう。

  • 末期ガンの妻エラと認知症の夫ジョンの老夫婦がキャンピングカーで旅にでます。老夫婦が最期に向かう先は…。
    「ロングロングバケーション」の映画化で話題になりました。

  • 旅=人生と捉えると、全くタイトル通りの内容。
    見る視点によって結末をどう感じるかが違ってくる。
    ジョンとエラ、本人たちの視点から見ればハッピーエンドだと思う。しかし、子どもたちの立場に立ってみると、バッドエンドになるだろう。
    家族だからこそ、病気を持って生きていくことの辛さを理解しようとしなければならないのだろうが、どのような形であれ愛する人には生きていて欲しいと思うのが当たり前だろう。
    「死ね」という言葉は人に言ってはいけないと小さな頃から言われ続けているが、本書の中では「生きろ」という言葉も同じくらい辛い言葉なのだと思う。
    エラが一番辛い立場で彼女の立場を考えると重い気持ちになる。しかしまた、彼女の明るさに救われる本でもある。
    ジョンが、エラを深く愛していることが、端々に感じられるところもほっこりする。
    夫婦という関係は特殊で、長年連れ添うと最早、愛なのか情なのか腐れ縁なのか、本人たちでもよくわからない理由で一緒にいる。
    しかしそれが愛がなくなったとか、悪いというわけではなく、長年連れ添った夫婦にしか出せないものだし、そういう関係になれれば良いなと思う。

  • エラとジョン素敵な関係だなと思いました。常にじゃないけど、お互いへの思いやりや愛が見え隠れしていて、こんな夫婦に憧れます。エラの視点からだとこんな終わり方もありだと思いますが、残された子どもの視点から見ると辛いですね。本人の意思を尊重したいですが、大切な人には最後ありがとうと伝えてお別れしたいです。

    翻訳物は読みきるのに時間がかかってしまい途中諦めようかと思いましたが、終わりまで読み切って良かったです。

  • ★3.5
    末期ガンのエラと認知症の夫ジョンが繰り広げるキャンピングカーでの旅は、恐らく言語道断で「周りの迷惑も考えずに!」の一言なのだと思う。その反面、「最後の時くらい好きにさせてあげたい」という気持ちもある。そんな二人の旅は、時にアクシデントに見舞われるものの、喜怒哀楽が豊かでとても楽しく、様々な人たちとの出会いも微笑ましい限り。だからこそ、序盤から予想はしていた結末が、あまりにも悲しくて受け入れ難い。が、エラの気持ちは充分すぎるほどに分かるもので、私もエラの立場なら同じようなことをしたかもしれない。

  • 帯に主演のお二人のお写真があり、それだけで随分読みやすくなるものだなあ。
    ハッピーエンドだ。素敵なご夫婦だ。映画も観たい。

  • 老夫婦の珍道中。仲間や子どもたちとの旅を振り返りながら懐かしい道をキャンピングカーで走る。
    結末は最初から薄々わかっていて、そもそも最初から末期の癌の妻と認知症が進んでいる夫という物悲しい2人で、でもユーモラスな語り口にあまり陰鬱にならずに読めました。
    様々なトラブルがバタバタと起こり、決して平穏な旅じゃなかったけど、辿り着けて良かったとラストまで明るいエラにつられて、色々と思う所はあるけれど、なんとなく明るく読み終わりそうだったんですけど、本当に最後の一行で、突然涙が出てしまいました。

  • THE LEISURE SEEKER(原題)|作品詳細|映画情報満載 GAGA★ポータルサイト│ギャガ株式会社(GAGA Corporation)
    2018年 全国順次ロードショー
    70代夫婦、ジョンとエラ。 大好きなキャンピングカーで最後の最高の旅に出る!
    ストーリー
    アルツハイマーの夫ジョンと、末期ガンの妻エラの夫婦は、ボストンからフロリダにあるヘミングウェイの生家をめざし愛車のキャンピングカーで旅に出る。相次ぐトラブルに見舞われながらも旅を続ける2人の旅の先は―?最高のロードムービー誕生!

    東京創元社のPR
    80代の夫婦、末期癌の妻とアルツハイマーの夫が、かつて子供たちを連れて旅したようにルート66をキャンピングカーでディズニーランドを目指しひた走る。夫婦愛、家族愛、生と死……人生を考えさせられる軽やかで情感溢れる傑作。
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488010768

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