ヒエログリフを解け: ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488003975

作品紹介・あらすじ

千年以上、誰も読むことができなかった古代エジプトの謎の文字"ヒエログリフ"。解読のきっかけは、ナポレオンのエジプト遠征でヒエログリフが刻まれた黒い石板“ロゼッタストーン”が発見されたこと。そして、イギリスとフランスの二人の天才学者が解読レースに名乗りをあげたことだった。国の威信がかかったともいうべき究極の解読レースに、性格も思考方法も正反対のライバルは、どのように挑んだのか? 未知の言語を解読するプロセスをスリリングかつリーダビリティあふれる筆致で描く、傑作ノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 【読もうと思った理由】
    さいきん歴史に関連する本で、食指をそそられる本がなく、あまり歴史関連書を読んでいなかった。そんな折、ブクログでフォローさせて頂いている方の本棚をザッピングしていると、気になる本を発見。それがKOROPPYさんの本棚で見かけた本書「ヒエログリフを解け」だ。副題が〈ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース〉であり、副題からも興味関心をそそられる単語しかない。個人的に知的好奇心はそれなりにある方だと思うが、ここまで現在の自分の興味関心にピッタリとハマる本も珍しい。しかもノンフィクションだ。読む前からこんなに興奮する本も滅多にない。

    【ヒエログリフとは?】
    古代エジプトの象形文字(絵文字)の一つで、神聖な碑文に用いられたので、神聖文字、または聖刻文字と言われる。その書体を簡略化し、パピルスに書けるようにしたのが神官文字(ヒエラティック)で、その筆記体が民用文字(デモティック、民衆文字ともいう。)である。エジプトがペルシア帝国に征服され、さらにヘレニズム時代にギリシア語が公用語とされたことによって、古代エジプト語と共にヒエログリフも使用されなくなり、忘れ去られた。ナポレオンのエジプト遠征の際にロゼッタストーンが発見されたことから、その解読が始まった。

    【ロゼッタストーンとは?】
    ヒエログリフ解読の鍵となった石碑のことで、発見したのはフランス軍だが、紆余曲折を経てイギリスのものとなり、現在は大英博物館にある。破損しているが、残されている石のサイズは高さ114cm、幅73cm、厚さ28cm、重さ762kgとかなりの大きさ。破損前の高さは推定で150cm~160cmである。材質は黒い玄武岩。

    発見は1799年7月で、ナポレオン配下のフランス軍が要塞を築く工事をしている最中に発見された。元その地方にあった神殿の石材を流用していた中に、変わった石があったのに気づいた兵士がいたということだ。下っ端兵士が石の重要さに気づいた幸運に感謝すべきだろう。名称の「ロゼッタ・ストーン」は、発見された地名の「ロゼッタ」(現在はラシッド村)に由来する。のちにフランス軍がエジプトから撤退する際、イギリス軍との条約によりこの石も引渡し対象となってロンドンに持ち去られることになるが、その前にフランス軍が写しをとっていたため、フランスでも解読が進められていた。

    【感想】
    この本を読んで何より良かったのは、エジプトの歴史や、言語学をもっと深く知りたいと思えたことが何よりも大きい。ヒエログリフやロゼッタストーンについて本書を読む前の知識は、19世紀初めにフランスのシャンポリオンがロゼッタストーンを手がかりに、ヒエログリフを解読した程度の知識しか、恥ずかしながら持ち合わせていなかった。

    本書の構成としては、ノンフィクションなので、解読に至るまでの苦悩やライバルとの熾烈な解読レースなどが書かれているのは当然だが、エジプトの歴史や言語学についても本書で初めて知ったことも多くあった。

    例えば、アルファベットの起源はヒエログリフであることや、紀元前2400年のエッセイには既に「上司とうまくやっていくためのアドバイス」として「上司と同じテーブルに着いた時には、上司が笑う時には自分も笑う。そうすれば上司に受け入れてもらえるだろう」などと書かれている。現在でも十分通用する処世訓が書かれているのには、ビックリした。ちなみに日本では、初代の神武天皇が紀元前660年に即位したが、その更に1800年も前に既に上記処世訓が書き記されていたのは、驚愕に値する。

    また自分の無知を晒すようで恥ずかしいのだが、ライプニッツのことも本書で初めて知った。ライプニッツは、「百科全書」を編んだデニス・ディドロをして「ライプニッツの才能に比べられたら、まずもって自著を放り出し、どこか暗い隅の奥深くで安らかに死にたくなる」と言わしめたらしい。またライプニッツは世界共通の言語を編み出すという夢に、死ぬまで取り憑かれていたという。

    そもそもヒエログリフは3,000年も続いた古代エジプトで用いられていた文字であり、紀元前3,000年頃には使用されていた形跡がある。一般的に考えると、そんなに長期にわたって使用されたなら、記録もたくさん残っていてもおかしくなさそうに思える。しかし、そうはならずにヒエログリフは一度滅び、千年以上に渡って読めない言語であり、世界の謎だったんだそう。

    その決定的な要因には、キリスト教の台頭が関わっている。例えば、紀元後の300年代初頭にローマ帝国のコンスタンティヌス大帝がキリスト教に改宗した。これによってキリスト教はローマの国教になり、その後エジプトのあらゆる神殿はキリスト教を侮辱するものだとしてひとつ残らず壊されてしまった。多神教が当たり前だった時代は他の神々は併合されていったが、一神教にはその余地はなく、古い神々は排除された。ヒエログリフは、過去の悪習の象徴として徹底的に排除され、一度忘れ去られてしまったのだ。無論のこと、それ以外の地で痕跡を手にヒエログリフ解読を目指した人は多くいたが、誰も成功することはなかった。事態が大きく動き出すのは、ロゼッタストーンが発見されてからだ。そこから熾烈な解読レースが始まる。

    【今回得た気づき】
    西洋史上、もっとも優れた知性を持つと本書で紹介されたアイザック・ニュートンが万有引力の理論をどうやって見出したのか?の問いに対して、即答した答えが以下だ。

    「絶えず考え続けたのです」

    これって文章で表すと、一文で非常に端的であるが、なかなか一つの命題に対して考え続けることは、現実的に相当に困難だ。本書では、「ニュートンがもっとも傑出していたのは、問題を頭の中にずっととどめておく力であり、強靭な洞察力にある」と書いている。本書でシャンポリオンも若かりし頃から、興味があることはエジプトに特化しており、他のことには一切興味を示さなかったらしい。アインシュタインの名言でもあるが、「私は、それほど賢くはありません。ただ、人より長く一つのことと付き合ってきただけなのです。」と。

    やはり歴史に名を残すような偉人は、一つの事柄に対して10年でも20年でも興味を失わず、考え続けられることにあるんだと改めて感じた。なので自分も長年興味が尽きない、対人関係におけるコミュニケーションや、人間が持つ根源的な欲求などに関して、本の力を借りながら自分なりに今後も思考し続けていきたいと思う。

    【雑感】
    次は、平野啓一郎氏が著者の「三島由紀夫論」を読みます。この本から三島由紀夫氏のことを深く知ったその後に、以前から読みたかった「金閣寺」を読もうと思ってます。
    また今回、非常に良い本をお教えいただいたKOROPPYさん、心よりお礼申し上げます、ありがとうございました!

    • ユウダイさん
      おびのりさん、コメントをくださり、ありがとうございます!おびのりさんこそ、古典の名著を数多く読まれており、いつも凄い方だなと思っておりました...
      おびのりさん、コメントをくださり、ありがとうございます!おびのりさんこそ、古典の名著を数多く読まれており、いつも凄い方だなと思っておりました。また特にオススメの古典作品があれば、お教え頂ければ幸甚です。今後ともよろしくお願いします!
      2023/06/11
    • KOROPPYさん
      こんにちは。

      早速お読みになられたのですね。
      楽しんでいただけてうれしいです。

      私もみなさんのレビューから、新たな本との出会い...
      こんにちは。

      早速お読みになられたのですね。
      楽しんでいただけてうれしいです。

      私もみなさんのレビューから、新たな本との出会いがたくさんあります。
      思いがけない本との出会いが、ブクログのいいところですよね。

      これからもよろしくお願いします。
      2023/06/11
    • ユウダイさん
      KOROPPYさん、ご丁寧にコメントまで下さり、ありがとうございます!お陰で良い本と出会え、貴重な体験をさせて頂きました。重ねてお礼申し上げ...
      KOROPPYさん、ご丁寧にコメントまで下さり、ありがとうございます!お陰で良い本と出会え、貴重な体験をさせて頂きました。重ねてお礼申し上げます。今後とも宜しくお願いします!
      2023/06/11
  • ヒエログリフの読解そのものだけではなく、ヒエログリフの発見、エジプト熱の始まり、失われた文字を後世の人間が紐解くことの難しさなど、読解に至るまでのさまざまなエピソードを描いた、ノンフィクション。

    おもしろかった。

    ナポレオンのエジプト遠征から、偶然や情熱の重なり合いで、情報や遺物そのものがもたらされ、解読へと進んでいく。
    本筋から外れたエピソードも興味深く、おもしろい。

    言語的な話になると、日本語とは合致しないというか、ところどころ英語圏の人間の感覚だな、と思う部分があった。

    • ユウダイさん
      KOROPPYさん、初めてコメントさせていただきます。突然のコメントでビックリさせてしまい、申し訳ございません。ただ、あまりに僕の興味のど真...
      KOROPPYさん、初めてコメントさせていただきます。突然のコメントでビックリさせてしまい、申し訳ございません。ただ、あまりに僕の興味のど真ん中の本をレビューされていたので、ついついコメントしちゃいました。しかし、むちゃくちゃ面白そうな本ですね!ヒエログリフの解読や失われた文字の発見、さらにノンフィクション!興味をそそられるワードしかないじゃないですか!その本、明日探しに行きます。良いレビューを書いて頂きありがとうございます。心より御礼申し上げます。
      2023/05/12
    • KOROPPYさん
      >ユウダイさん
      初めまして、こんにちは。
      私もみなさんのレビューから本を探しに行くことが多いので、興味を持っていただき、うれしいです。
      ...
      >ユウダイさん
      初めまして、こんにちは。
      私もみなさんのレビューから本を探しに行くことが多いので、興味を持っていただき、うれしいです。
      楽しんでいただけますように。
      2023/05/13
  • ロゼッタストーン、古代文明の謎解きにどう役立った? | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
    https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/080600393/?ST=m_news

    ヒエログリフを解読した「エジプト学の父」シャンポリオンの生涯 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト(2022.11.06)
    https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/091500427/

    ヒエログリフを解け ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース - エドワード・ドルニック/杉田七重 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/sp/isbn/9784488003975

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      Web東京創元社マガジン : 杉田七重/エドワード・ドルニック『ヒエログリフを解け――ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レ...
      Web東京創元社マガジン : 杉田七重/エドワード・ドルニック『ヒエログリフを解け――ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース』訳者あとがき(全文)
      http://www.webmysteries.jp/archives/31450082.html
      2023/02/07
  • ロゼッタストーン。そう聞くだけで胸が躍る学生時代を私は送った。古代エジプトの文字であるヒエログリフ解読の歴史ついては、学部生の頃、恩師から「エジプト学史」の授業で学んだ。文字通り、エジプト学の歴史を扱う講義だった。エジプトの面白さは古代史だけではない。トレジャーハンティングの時代を経て、考古学、歴史学的な調査に至るまで、実に興味深いエピソードに溢れているのだ。

    本書は、ヤングとシャンポリオンの2人によるヒエログリフの解読レースを克明に追ったものだ。細かいエピソードを積み重ねることで、2人の天才のキャラクターを浮き上がらせている。あまり日の当たることのないヤングにここまでページを割くとは、作者のドルニックはヤング推しなのか。
    もちろん、解読の謎解きもエキサイティング。版元がミステリの老舗、東京創元社さんなのもうなずける。実際、ドルニックはアメリカ探偵作家クラブ受賞作家でもある。これは立派なミステリなのだ。たまらん。

    実は去る2022年がシャンポリオンによるヒエログリフ解読から200年のメモリアルイヤー。本当なら東京創元社さんは去年のうちに出したかったんじゃないかなと想像している。

    なお読んでいて、いくつか誤りに気がついた。たとえば、「大いなる家」ペル・アアのくだりは、ペルとアアが逆に解説されている。他にも王朝名の間違いなどもあった。とはいえ本書は学術書ではない。読み応えのある人間ドラマであり、芳醇なミステリなのだ。やはり、たまらん。

  • 小学館のサイト・小説丸でこの本のコラムを書かせて頂きました!

    エジプトに人生を捧げたその情熱に、ラスト、
    我ながらなんでやと思いつつも大号泣…。
    (激しく入れ込んで読んだため。
    感動本ってわけではない!)

    ナポレオン遠征からのヨーロッパでのエジプトブーム。
    ヒエログリフ・謎の文字・ギリシャ語が併記されたロゼッタストーンの発見とそれを奪い合う英仏。
    幼い頃からエジプトに夢中だったシャンポリオンと、10年経っても誰も解読できないと聞いて暇つぶしに解読を始めた天才ヤング。
    ヒエログリフが古代の叡智と思われていた時代背景。

    いろんなことが絡み合ってめちゃくちゃおもしろかった!!!!!!

    序盤の説明がちょっとくどい感じがしたけど、途中からだんだんおもしろくなって、天才たちの奇跡のような解読劇に、あー、序盤の文章のあの盛り上がり…わかる〜、となった。
    あと多分、ヒエログリフは日本語を使ってるとわりと身近な部分もあったけど、英語が母語の著者には衝撃が大きかったんだろうなと推測する。

  • ナポレオンのエジプト遠征で発見されたロゼッタストーンに刻まれていたのは古代エジプトの文字“ヒエログリフ”だった。英仏二人の言語解読レースの行方とは。→

    ロゼッタストーンもヒエログリフも知らない真っ白な状態で読み始めた私でも、とても楽しく読めた。エジプトにまつわる話やナポレオンの逸話なども入っていてグイグイ引き込まれた。
    ヤングとシャンポリオンがいいんだよなぁ……。ヒエログリフはシャンポリオンが解いたというのが歴史的事実らしい→

    けど、ヤングやそれ以外の人たちも関わっていた(というか、影響し合っていた?)のがわかって良き。

    ラストの「n」のくだりはゾクリとした。うわぁぁぁ!ミステリ好きはこういうの好きじゃない?私は好きだ!

    エジプトについて、文字についてもっと知りたい気持ちが盛り上がる一冊。

  • 実際は数十年に及ぶじりじりとした解読作業を、その苦労がちゃんとわかる説明ありながらスピード感をもって一気に読ませてくれる。ヒエログリフを、ついに読めるようになった彼がエジプトの王家の谷に行きそこで刻まれていた文を読んで驚いたシーンがかっこいい。

  • ヒエログリフとは誰でも知っているロゼッタストーンに書かれてる文字のこと(タカとか蛇とか)。

    ロゼッタストーンは3つの文字で同じことが書かれている。一番上がヒエログリフ、真ん中がデモティック、そして一番下がギリシャ語。

    この石の発見の過程から、この文字に魅せられた(憑かれた?)学者や時代背景からとにかく沢山の事を楽しく伝えてくれる本。ヒエログリフがどうやって解読されてきたのかもまるで現場にいるように伝えてくれてて読んでてワクワク。そして例え話が妙に納得だしニヤつくほど笑えるのもいい。たいして興味ない人でも最後まで楽しんで読めること間違いなし。

    ヒエログリフ、生で見てみたいっ!!

  •  古代エジプトの文字であるヒエログリフはロゼッタストーンの発見によって解読された、と学校の授業で習った。現代人も読める古代ギリシャ語が同時に刻まれていたことで、対応する言葉を探して解いたのだろうと思っていた。本書を読むとそんな簡単な話ではなく、二人の天才のひらめきと努力、古代エジプトの遺物に魅せられた野心家の人々の協力によってようやく解けたことがわかった。

     ひとつ目の着眼点は固有名詞だ。19世紀初頭イギリスの天才学者トマス・ヤングは、表意文字である漢字で外国人の名前を表すときには表音文字のように使うのではないか、という発想からギリシャ文字で繰り返し登場する「プトレマイオス」という王の名前に着目し、ひとつめの手がかりを見つけた。
     二つ目の着眼点は、楕円形(カルトゥーシュ)で囲まれた文字だ。これは重要な言葉に印をつけたものではないかとヤングは推測し、当時のいちばん重要な固有名詞として「プトレマイオス」をあてはめ、最初の解読に見事に成功する。その後もヤングは次々と解読を進めていたが、あるヒエログリフの書き写しの誤りに気づかず自身の説に行き詰まり、その時点でヒエログリフへの興味を失ってしまう。多芸多才の天才肌によくあるエピソードだが、もったいない。
     一方、フランス人の天才学者ジャン=フランソワ・シャンポリオンも、遅れて同じ点に着目する。バンクスの書き残した銘文とコプト語の知識も活用して、カルトゥーシュで囲まれた固有名詞を推測し「クレオパトラ」の文字の解読に成功する。さらに、ヒエログリフは固有名詞だけでなく普通の文章にも音を表す文字として使われていたことを突き止める。シャンポリオンはその後もエジプトで発見された銘文を解読しつづけ、歴史から抹消された女性ファラオであるハトシェプストがいた証拠まで発見する。

     最初のヤングによる推測まで100ページを費やすなど前半がまどろっこしかったが、ヒエログリフの困難な解読劇以外にも、全体を通して文字というものが歴史のなかでどのように生まれ、未知の文字に対してどのようにアプローチすべきかの考察も大変興味深かった。
     当初、中世ヨーロッパの学者たちは、古代エジプトを神聖視するあまり、美しいヒエログリフの絵文字は深遠な宇宙の真理を伝える聖なる刻印だと誤解して、買物メモや落書きなど日常的に使用されていた文字だということに気づかなかった。
     また、ロゼッタストーンに刻まれた三種類の文字のうち、ヒエログリフと古代ギリシャ語にはさまれたデモティックと呼ばれるものが一見文字のように見えながら実は速記メモのようなものであり、こちらの方から解読しようとした人々がことごとく失敗した、というエピソードもある。
     現代でも、あらゆる分野で誤った思い込みや専門家の視野狭窄、大衆受けしそうなトンデモ科学の流布がされており、神秘的なロマンを追い求めるのはいいが、科学的な裏づけのないものはとにかく疑ってかかるべきなのだろう。いずれにせよ、何千年の時を越えて、当時の人々の言葉が我々に不意に語りかけてくる、というわくわく感はたまらなかった。ライバルで反目し合っていたヤングとシャンポリオン、そして彼らの解読に力を貸した当時の人々に感謝したい。

  • かつて授業で聞いたので、ロゼッタストーンをナポレオンが持ち帰ったこと、シャンポリオンが解読したことは知っており、さらに簡単に解読できたと思っておりました。
    しかし、実際の解読にどんな苦労がありどれだけ時間を費やしたのかを、この書で知ることができました。
    この書はスラスラと読むことができ面白かったです。

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