死体は嘘をつかない (全米トップ検死医が語る死と真実)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488003869

作品紹介・あらすじ

全米を騒然とさせた黒人少年の射殺事件は果たして人種差別に基づく殺人だったのか、正当防衛だったのか。生後七か月の赤ん坊の急死から明らかになった恐るべき真実。ケネディ暗殺事件の犯人リー・ハーヴェイ・オズワルドとして埋められた死体は本人だったのか。有名音楽プロデューサーは女優を銃殺したのか。三人のティーンエイジャーによる悪魔崇拝殺人の真相とは……。四十五年、九千以上の解剖経験を誇る全米トップ検死医が、オバマ大統領が声明を出すほどに全米を揺るがした大事件や、悪魔崇拝者の残酷な殺人と思われた事件を、法医学的に鮮やかに解き明かす。面白さ無類の傑作ノンフィクション! アメリカ探偵作家クラブ賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカの検死局には死因究明の幅広い権限が与えられており、警察とは別に独自の現地調査を行うこともある。そんな検死の世界をベテラン検死医が自らの経験を元に明かしたノンフィクション。

    まず、起こった事件の概要が説明され、謎や争点が提示されたあと、作者が登場する。そして彼の導き出した結論が語られ、それを踏まえて裁判結果がどうなったか、といった顛末まで描かれる。「リアルCSI」のようなスリリングな構成は、犯罪実話を得意とする共著者に負うところが大きいのだろう。

    テレビドラマとは違い、すべてがスッキリと解決するとは限らない。そこにはアメリカの司法制度の問題や、科学的な証拠以外の社会的要因やイメージが裁判に影響するといった厄介な問題が浮き彫りにもなっている。

    作者のキャリアに沿ったエピソードで辟易する部分もあったが、銃創の専門家ならではの見解は目からウロコで大変興味深く読めた。USAドラマファンは面白く読めるはず。射入口と射出口が逆なんて! オー、マイガー!

  •  法医学者であり、45年間9000件もの解剖経験を持つ検屍医が、これまでに関わった10の事件について語った本。検屍医の仕事がいかに科学的知見に基づいた地道なものであるかがわかる。
     一見、不可解だったり容疑者が明らかに見える場合でも、死体や現場に残された手がかりをひとつひとつ丹念に調べていくと、見えなかった真実が明らかになっていく。余計な憶測のはさむ余地の無いその過程は一級品のミステリを読んでいるようで、おぞましい描写も少しはあるが、何よりも実際にあった話であるだけに最後まで知的好奇心は尽きなかった。

     白人が黒人を銃殺して全米に人種対決のセンセーションを巻き起こした事件、何年間ものあいだ子供たちを殺していたのに疑われなかった女の足どり、オズワルドを掘り起こして本人鑑定をした話、さらには画家のゴッホの自殺の真相に至るまで著者は関わってきた訳だが、何よりも周りに左右されず、ただ真実だけを追求する一人のプロフェッショナルの姿に感銘を受ける。

    ”すでに述べたとおり、真実を明らかにすることが法医学者の唯一の使命だ。警察の味方をするのでも敵になるのでもなく、遺族の味方をするのでも敵になるのでもなく、ただ公平で偏りのない真実を告げることだ。私の告げることが、彼らの聞きたかったことである場合も、聞きたくなかったことである場合もあるだろう。それは私にはどうでもいい。真実を告げているのだから。
     真実はつねに満足のいくものとはかぎらない。”(P.216)

     真実を明らかにしていく過程でしばしば著者たち検屍医は、人々の偏見やマスコミの過剰報道、その他有象無象の圧力によって、捜査を妨害されることがしばしばあるという。また現在、アメリカでは有名無実と化した検屍官制度が残っている州があって、科学的知見に基づく検屍医が十分に育成されていないことを憂いている。
     著者の仕事ぶりを知ると、テレビドラマの検屍の仕方や犯罪現場の検証がいかにいいかげんに描かれているかがわかり、また冤罪が生まれやすい背景もおのずと見えてきて、ぞっとする。本書に書かれているエピソードの中にも、検屍医の申し立てにも関わらず世論のムーブメントによって有罪となったと思われる事件が含まれており、非常に後味が悪かった。

  • 面白い
    フィル・スペクターやゴッホ(自分で撃った傷としては不自然)も出てくる。
    第一章はよくできたミステリのような鮮やかな解決
    その後はスペクターのような、モヤモヤしたケースも出てくる。特に司法取引に関して。
    別人説検証のためオズワルドの墓を掘り返す
    サタニストによる殺害など見たことがない
    十代での妊娠、多すぎ
    選挙で選ばれる検死官(葬儀屋や墓地の職員)のいい加減さ。73ページ※検死官と検死医の違い
    68ページ
    内科医は何でも分かるが何もしない
    外科医は何も分からないがなんでもする
    精神科医は何もわからず何もしない
    病理医はなんでも分かっていて、何でもするが、もう手遅れだ

    70ページ
    妻に拳銃で4発撃たれる(外れた)。見えたが音は聞こえない。

  • ふむ

  • アメリカの法医学者が自身が関わったいくつかの難事件をいろんな角度から検証し真実を導き出したことが書かれたノンフィクション。読み応えがあった。事件か事故か法医学で検証し、こちらが真実だろうと思われてもはっきり断定できないケースもあるんですね。それは検察側のメンツだったりする。ゴッホの死は自殺ではない可能性が高いとは驚き。この本を読むと「死」の原因が不明のケースって意外とあるのではと思った。

  • 死体の状態や解剖結果から論理的に死因や死んだ時の状況を明らかにする検死医 。テレビの世界とは違う現実と、パズルのピースを埋め合わせて真実を見つけ出す作業が興味深かった。もちろん、司法の問題も絡むため、検死により明らかになった内容と裁判の判決が一致しないこともあり、またそもそも解決しない事件もある。そういう意味で期待通りでないと感じる読者はいるだろうが、それは現実はテレビ通りではないことを示すまたひとつの事実なんだと思う。事件全体の説明が必要なのはわかるけれど、個人的にはもっと解剖の話があっても良かったかな、と思う。

  • 私は法医学の現場を垣間見たいのであって著者がどう育ってきたかに興味はない。何十ページも過去の自慢話につき合わされるのは真っ平だ。
    ポール・ウッズの章は法医学でもなかった。検死をしても死因すらわからなかったが、容疑者の経歴からおそらくポールは殺されたのだろうと著者が推測したという話でしかない。

  • とてもスリリングな読み物だった。
    アメリカでは自然死が半分以下(その次は事故死)とは知らなかった。
    2018年に釈放されるという、ジェニーン・ジョーンズがどうなったか思わず調べてしまった。
    別件で起訴されるため拘置所にいるらしい。ちょっとほっとした。(彼女はシリアルキラーの看護婦だった。)

    ゴッホの死因について触れているのも興味深い。
    検視医の見地から見ると彼の死因は自殺ではなく、他人に撃たれたのではないかという。銃創の場所、状態など当時の記録からでも色々なことが読み取れるらしい。

    陰惨な事件を扱っていたりするが、ユーモラスなところもあって飽きさせず、つい一気読みしてしまった。

  • 法医学的観点のこと以外にも、アメリカの司法制度を垣間見ることができて、なかなか興味深かった。日本の司法取引は、これからアメリカのようになっていくのだろうか。

  • 内容はタイトルのとおり。半世紀にわたってアメリカ検死界のトップに在り続けた著者が語る、有名無名の事件の「解剖」録。ケネディ暗殺犯・オズワルドをめぐる陰謀論からフィンセント・ファン・ゴッホの死の真相(!)まで、著者の分析は淡々と科学的かつ誠実だ。その技量と職業意識、日本ほどではないが不備不足が目立つという検死界への真摯な提言などは疑うべくもない。
    強いて文句をつけるなら、「オレがオレが」のあまりのアクの強さだろうか(アメリカならまあ、これくらいアリなのかもしれないが)。そもそも父も斯界の重鎮だったという恵まれた出自で、常に陽の当たる表舞台のど真ん中に立ち続けた白人男性の強烈な自負心が、興が乗り始めた第2章に突然差し挟まれる長々とした父子2代の自叙伝となって現れており、鼻につく。聞きたい話はソレじゃないんですけど…という気になった。

    2018/12/17〜12/18読了

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