- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784484212234
作品紹介・あらすじ
いま、注目の完売画家が語る、現在の美術界、そしてこれからの美術とビジネスの在り方
デビュー以来、販売した500点以上の作品がすべて完売するという 「完売画家」 として知られ、SNSで発信する芸術観 「#画家として生きるために」 に共感を覚える人が急増中!
感想・レビュー・書評
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現役プロ画家である著者が、職業「画家」になるまでの道のり、画家の世界で現在どう生きているのか、自身の失敗も交えながら語った1冊。
画家になろうと志している方にとっては、指南書のひとつのような役割も果たしてくれそうですが、ビジネス書のような側面もあるため、画家の世界をのぞきつつビジネスのヒントを得たい方は手にとってみてもよいかもしれません。
読み切ってみておもったのは、どの世界で生きるにしても、一定の成功(と呼ばれるもの)を手にするには、正確な自己分析、そして行動力が欠かせないこと、そして明確にこうなりたいというイメージがあるならば、その道ですでに成功している方に相談するのがいちばん、ということでした。
もちろん学校で教えてもらえる基礎もありますが、それが実際の現場で通用するとは限りません。
本書でもその都度書かれていますが、【「絵を描いて生活の糧にする方法」を学校は教えてくれない】(24ページ)、なぜならそこにいる先生方の多くは学外に出て活躍した経験をもたないから、です。
経験していないことを教えることはとても難しく、教えをこう相手としても向いていないのは明白ですね。
誠実な先生であれば、自分の経験のなさを素直に認めて、経験のある外部の方を紹介してくれたりもするかもしれませんが…
これは小学〜中学の先生にも言えることかもしれませんね。
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余談になりますが最近、複数の大きな川柳の公募に応募すべく、テーマに沿った川柳を詠もうとしていました。そして「入選したい!」という気持ちが強くなり(川柳をはじめて数か月にも関わらず!)、自分の想いが入った句よりも、「入選しそうな句」を作り出したいという気持ちが強くなった結果、1つも句が詠めない日が続き焦っていきました。
そんなときに読んだ本書で、こんな文章を見つけました。
「何かのバイアスに引き寄せられすぎているときは、自分本来の作品の魅力からは、はずれていることが多いです。たとえば、いろいろな評価を気にしすぎて、それにうまく答えようとする作品になってしまうことがあります。すると、見事にマーケットからそっぽを向かれる。」(159ページ)
まさに自分の状況をあらわしているようで、ドキッとしました。
公募のテーマに合わせよう、入選するような句を作るんだ!!と意気込みすぎた結果、自分のなかにないものを無理矢理作ろうとして出せなくなっていたのですね。
この文章を読んでからは、公募のことや句の出来は横に置いて、目の前にパッと見えたものや、ふとおもったことから句を作っていくようにしました。
するとまたいくつかの句を詠めるようになりました。
公募によって自分の句を見てもらうことも大事ですが、入選にこだわりすぎてすり寄っていく詠み方では、自分のよさを閉じ込めてしまうことがあるのだな…と思い知りました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
確かずっと前のアメトーーク読書芸人で紹介されて、なんとなく読みたい本リストに入れていた本。ついに読めた。
これは借りて良かった。
これはある種のビジネス書だ。
「売れる画家になるにはどうすればいいか」そのためのマインド論や具体的な方法論が忖度なしに書かれている。
この本の中で書かれている通り、画家というと商売っ気のない人だったりそういう俗っぽいことを話題にしてはいけない存在っていうイメージがあったけど、立派な職業である以上「いくら稼げるか」というのはとても重要なファクターだ。
業界はそこをタブー視している、と著者は嘆いている。
これは画家に限らず、クリエイター業一般に通ずることかもしれない。
嘆くだけじゃなく、その中で何ができるか、現状を変えるためにどう動くべきか、その考えを余すことなく教えてくれている。真摯な人だ、と感じた。まずはこの作家のYouTubeを見てみよう。 -
プロの絵描きの大変さを知った。狭い世界で嫉妬と噂話のドロドロした関係に耐え創作を続ける努力は並大抵ではないであろう。
障害者との出会いの場面では涙した。作者の障害者への想いの馳せ方に深い洞察力、想像力が発揮されている。そういう視線は制作でモチーフを見つめる眼差しと同じだったのではないだろうか。絵画制作とは常に自分と向き合う時間。そこで培われたに違いないと確信している。 -
今まで知らなかった業界のことが理解できた。どこの業界も狭いし、有名になれるのは本当ごく僅かな人だけであるし、そこにたどり着くにはがむしゃらにやるというより戦略的に行動していくことが大事なのだろう。
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「完売画家」という(自称するにはやや自信満々な)タイトルと作者の年齢からなんとなくもうすこし違う内容を想像していたのだけれど、良い意味で裏切られた。
画家としての自分の経歴やいかに自分が成功し、失敗し、努力したか、画壇のよくないところなどが少し反抗的な感じで語られるのかと思ってたけど、むしろできる限りフラットに、ビジネス書のような語り口で画壇のシステムについて説明する感じ。
いままで知らなかった絵の価格のつけられ方や、日本の絵画ビジネスについてが「赤裸々に」なんて大げさなものでもなく、なんかあっさり語られていき、面白かった。
現在日本でフルタイムの画家としてやっていけてるのは30〜50人らしい。「画家が絵で生活できる業界にしたい」というのが切実に感じられる数。とはいえなかなか絵って買わないよね… -
絵画の魅力に対して一般の人間が理解できる言葉で、一段深い解説をしていた。
中島さんの絵画に対して向き合って考えている時間が長いからこそなし得ることができたのだと思った。
完売画家になるために業界を拡張させることと作品に深みを出すために心がけることは他の業界でも通づると事があった。
自分の携わっている業界に還元できることを深く考察しなければと思った -
雑誌に広告が載っていてパワーワードなタイトルに興味を持ち、『ブルーピリオド』で美術熱も高まっていたので試しに購入してみました。
美術界で生きる人向けの本だったらどうしよう…と懸念していましたが、美術に携わる人だけに通じる/向けた内容ではなく、成功に向けてのビジネス的視線から、もしくは美術の受け手(購入者、鑑賞者)としても参考になる話だと感じたので読んでよかったです。
おそらく彼はパイオニアなんだろうな、と思うのでそれゆえに賛否両論集めやすいのかもしれません。出る杭は打たれるような。
ほとんどの話は賛同できましたが、サロンはちょっと私の偏見もあるかもしれませんが受け入れ難かったです。
戦略的思考、言語化能力が長けている方と見受けました。
彼の境遇がその能力を無理にでも発揮させる状況を作ったのかなとも思います。
画家としての活動の中で、本著の中で触れている失敗や苦悩だけでなく非難を受けたこともあったことでしょう。これまで彼は逃げずに思考してそれに対しての自分の意見、考えをブラッシュアップしてきたのではないかと思います。
だからこそ、テクニックの話に尽きるのではなく、絵の価値など多岐に渡る話が読めて満足です。
『完売画家』というキャッチーかつパワフルなタイトルから“売る”ためだけにフォーカスする内容の可能性も考えていたのですが、そんなことはなく、絵に真剣に向き合い、購入してくれる方、絵を見てくれる方にまで意識を向けていて、独りよがりではない点が好感持てました。
また、写真と比べて絵にしかない価値や、絵は描く時間より購入者が眺める時間の方が長いから心地よい絵の方が売れるというが良いという持論は、何となく感じていたけれど言語化できていなかったのでこの本で読んで、なるほど、と腑に落ちました。
とてもとても素敵な絵を展示会で眺めて、筆致に感動しました。
100万という金額は手に出せず購入はかないませんが眺めているだけでも幸せで、ふと頭によぎったのは展覧会をするくらいになればクリアファイルが発売されてそれなら買えるかもと思ってしまいました、が、そんな失礼なこと口に出せない、とすぐに思い直しました。
筆致から受けた感動はクリアファイルのような平面では再現できない、感動が起きない。この世にひとつしかない画家の魂が込められた絵だからこそ感じるものがあるのだと体感していたので中島さんのお話はすんなり頭に入ってきました。
作品を持ってくれる人の幸福度、の話から思ったこと。
私は音楽にしても美術にしても近現代のものよりクラシカルな古典ものが好きなのですが、現代美術は自己満足が大きい気がしてしまいました。現代までに残ってきた古典の素晴らしい傑作はある種、他が淘汰され人の目に心地良いものが残ってきたのではという考えが思い浮かびました。
絵画が窓の役割を担っていたという話は初耳で大変興味深く、そして強く惹かれました。
ナショナルギャラリーの映画を見た時に、ある絵が、飾られる場所(依頼を受けて描かれた絵だったので)を考えて光や影の具合が描かれたからこそ展示の際はその点を考慮して照明や絵を飾る位置を考えると言われてました。
絵にしても写真にしても家が小さい日本、さらに最近はスマホの普及もあるのか小さな画面やポストカードクリアファイルポスターで見ているばかりで、壁に飾られる絵の存在意義や魅力について見失っていた気がします。絵がもたらしてくれるものは飾られるからこそ届くこともあるんですよね。
八虎の溶鉱炉の絵、ほしいと思ったもん。
『ブルーピリオド』大学編の教授の教えにハテナ飛びまくっていたのですが、それも何故なのかこの本を読んでわかりましたし、美大の教授は凄いはず!と思い込んでいただけなんだなと気付かされました。
願わくば学生たちが足を引っ張られず希望の芽をつまれず、自分がもしやりたいこと/なりたいものがあればそれに向かえますように。
そして既得権益にしがみつく人たちからそのような後世のひとたちのために土壌や環境を大人として用意していく方向性に世の中を向けたい、と思います…。
中島さんは行動に移していて凄い人だなと感服です。 -
「画家(アーティスト)」の具体的な飯の食べて生き方を実例を交えて解説。
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著者に関する知識を全く入れずに読んだ。
共感できることが多く書かれていて、その中でも印象に残っているのは大学などの教育機関への批判だ。大学で教鞭を執るものがそもそも売れている画家ではなく、どこか絵を描くこととビジネスを結びつけることが卑しいものだとされているという主張には共感しかない。
少し話は逸れるが、大学で指導される内容が世間一般で求められる能力から乖離し過ぎるという事故は、私の知る限りではファインアートの世界に限らず、建築やその他デザイン分野にも起きているように思う。一般社会で生き抜くために必要な教育かという視座に立つと、いささか視野が狭すぎるように感じた指導が、少なくとも10数年前、私が学生の頃には横行していたように思う。
著者が受けた大学教育の場もおそらくそういった環境だったのではないかと推察する。本書を読み節々で気になったのは、著者が合理的な思考を持ち、商業主義寄りのリアリストである点だ。少なくともアカデミックで権威主義の人々には受け入れられない人物であることは直感的に理解できる。本文中でも大学教授から陰口を叩かれていることに触れられているし、相当なプレッシャーやストレスを今も受けておられるんだろうと容易に想像でき、とても心配になる。
業界を良い方向に変えたいと思う信念に嘘偽りはないと感じたので、しょうもないスキャンダルや炎上騒ぎに足を引っ張られぬことなく、今後も頑張って欲しい。 -
美術業界がよくわかる内容。日本に美術、芸術が広がらない原因や、大学教授、業界関係者が美術家を応援する構造になってないのが理解できた。こういう人が大学教授にでもなって改革していってほしい。