おしゃべりながんの図鑑 病理学から見たわかりやすいがんの話

著者 :
  • CCCメディアハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484192208

作品紹介・あらすじ

「病理学」とは<病気はどうしてできてくるのか?>という学問です。
その病理学の真骨頂が、日本人のふたりに一人がかかるという「がん」。
病理医であり、松岡正剛氏率いるイシス編集学校師範でもある著者が平易な語り口&直筆イラスト満載で満を持して放つ病理学(がん)のはなし。

感想・レビュー・書評

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  • 今月、母をがんで亡くし、ようやくがんがどういう病気なのか向き合うことが出来た。
    すごくわかりやすく、素人にも読みやすい一冊。
    自分自身、闘病中の母を見てるのが辛かったということもあり、がんが本当に憎く、がんで亡くした事が本当に悔しい!
    悔しいけど、長生きすればするほど、がんになる確率は高くなり、私たち人間は、がんと共存していかないといけない。。。

  • 私自身が医師から「あなたは高分化がんだから、たちの良い方だ。未分化だったら大変でしたよ。」と言われた経験を持つ。敢えて調べることは無かったが、この本を読んで高分化がんが何かを理解できた。知識がなくとも興味深く、面白く読める。次作にも期待したい。

  • 確かに”図鑑”ですね。普段から高校生を相手にしているだけあって、言葉選びも優しいし、細胞や臓器の絵も分かりやすいので、言葉の分かりやすさを後押ししています。内視鏡治療についても、丁寧に説明してあります。また、文化とか組織型とか、医療関係者にもお勧めです。

  • 病理学について、イラストを使って丁寧に説明されており、難しいところはあるものの興味深く読めた。病理診断にはかなりの経験値が必要であることは本書を読めばよくわかる。素人には標本を見ただけでは、どこに異常があるのか判断ができそうにない。興味深いのは、著者と大阪大学の仲野先生との対談で、AIの進歩による病理学の動向である。AIによる病理診断が人間と同等であるならば、今後病理学がどうなっていくか、とても気になるところだ。

  • ☆わかりやすく、よくまとまっている。がん・がんの疑いと診断されたら。

  • 細胞レベルの振る舞いから
    がんを紹介する、これまでにないタイプの
    入門書。

    文章も平易で分かりやすい。
    “がん”と“癌”の違いとか、メジャーな病気なのに
    知らないことが多いと痛感した。

    続編を期待!

  • 未知のものは怖い。わたしにとって、がんは未知で怖いものだった。でも、筆者の手描きの細胞たちを眺めているうちに、怖いという気持ちは次第に薄れていった。がんの種類はたくさんあり、著者ですら何種類あるのか分からないという。"がん"と"癌"の違いやがんが治る人と治らない人がいる理由など、ためになる話が多かった。"遺伝子の小さな異常は毎日起こっている"が、"遺伝子自体がそれを修復したり、免疫機構が働くことで、発生したがん細胞が増えないような仕組みが働いて"いる。細胞って働き者だな。

    p50
    一方、次の代に受け継がれる遺伝子に異常が起こり、腫瘍が生じる場合があります。そのような遺伝子異常によって生じるがんを、「遺伝性腫瘍」あるいは「家族性腫瘍」と呼び、現在、11種類ほどの遺伝性腫瘍が明らかになっています。
    遺伝性腫瘍の場合は、受精卵の時点で遺伝子に異常が生じています。先天性の異常というのはこの時点の異常をいい、生殖細胞、つまり受精卵に異常をきたすことを意味します。1個の受精卵からすべての身体の細胞ができていくので、その遺伝子の異常は、身体全体の細胞にくまなくいきわたってしまいます。遺伝性腫瘍の患者さんで、複数の臓器でがんが生じやすいのはそのためです。

    p53
    まず、「がん」とひらがなで表記される場合は、一般的に悪性腫瘍をそのまま指していることが多いです。ひらがなの「がん」=悪性腫瘍、と考えていただいてかまいません。

    癌は、「上皮性の悪性腫瘍」というのが正しい定義です。(中略)
    つまり私たちの身体は、中心に管が一本貫いていて、ドーナツのような中空構造をしているのですね!よって、消化管の内側を覆う細胞は上皮となります。

    p55
    (前略)骨や血液の細胞に生じる悪性腫瘍は癌ではないのです。代わりに、骨肉腫や白血病等、癌とは異なる名前がついています。

    p59
    例えば、大腸癌は特に高分化な癌が多いのですが、高分化な癌とは、もともとの大腸の粘膜の構造に類似した特徴を有しているものをいいます。元の細胞の特徴からどんどん逸脱していくと、中分化、低分化、未分化......となり、分化度が落ちる、分化度が低くなる、と表現します。分化度が低いGaba、先祖返りするような状態に近いですから、無秩序に増殖しやすく、悪性度が一般的に高くなります。
    同じ臓器に発生したがんでも、治る人と治らない人がいるのは、実は、この分化度が深く関係していることもあるのです。

    p71
    粘膜内癌という名前は、もしかしたら加入されている「がん保険」などで見かけたことがあるかもしれませんね。「粘膜内癌は除く」と書いてあったりします。これは、「粘膜内癌の段階で見つかった場合は、がん保険はおりません」という但し書きです。
    粘膜内癌という状態は超早期癌であり、完全に切除することができれば、ほぼ100%治せる癌です。

    白血病は、主に白血球ががん化した悪性腫瘍です。だから「白」血病なのです。

    p97
    骨髄は、年齢によって細胞密度が異なります。生まれたばかりの赤ちゃんは細胞だらけで、面積でいうと100%近くが細胞で占められます。一方、80歳くらいの高齢者になると、健康な方でも細胞密度は30%程度となり、残りは脂肪細胞に置換されていきます。

    p105
    脳腫瘍は、脳のあらゆる部位に発生する可能性があり、発生部位によって症状も異なります。

    最初は頭痛や吐き気などの症状が認められ、次第に意識障害に進んでいきます。頭蓋内圧は健常者においても多少の変動があり、夜間睡眠中に若干高くなるので、頭蓋内圧が亢進したことによる頭痛は、起床時がいちばん強いことが多いです。肩こりなどで起こる筋緊張性頭痛とタイミングが異なるため、それのサインがあれば、早めに専門医を受診するとよいと思います。

    p106
    脳は、主に脳神経細胞とグリア細胞という細胞から構成されています。グリア細胞は、神経細胞と神経細胞の間を埋め、脳の支柱として存在しているだけではなく、水分やイオンなどの物質の輸送をはじめ、神経細胞を保護する役目を有しています。

    p107
    特に肺がんは、脳に転移をきたしやすい腫瘍です。

    p110
    肺癌の転移の場合は、肺癌と同じ形の癌細胞が脳にも認められます。

    p111
    悪性の細胞は、増殖のスピードも速いですが簡単に死んでしまいます。壊死が目立つ腫瘍は脳腫瘍に限らず、一般的に悪性の場合が多いです。

    p112
    最近、脳腫瘍における遺伝子異常がどんどん解析されており、形態的な診断に加え、遺伝子検査の結果を合わせて診断することが必須となってきています。

    p122
    好奇心は本当に大事。

    何より大事なのは、引き出しをいっぱい持っておくことですね。若い頃にいっぱい引き出しを作っておくべきです。そうすると、人生がおもろくなる。

    p130
    腕や足にできる場合は、患者さん自身がさわって気づくこともありますが、さわって気づくほど表層にできるものは、良性のことが多いです。

    p135
    高分化型脂肪肉腫は、放っておいたり再発を繰り返していると、「脱分化」を起こすことがあります。
    (中略)
    一般的に、すごく悪いやつに変化してしまう場合が多く、脱分化脂肪肉腫は予後不良のことが多いです。

    p140
    胃がんの場合で有名なのは、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染です。ピロリ菌は、食べ物や飲み水から感染することがほとんどで、多くが幼少時に感染すると考えられています。日本の場合は、衛生環境が十分整っていなかった時代に生まれた方の感染率が高く、60歳以上の約80%の人はピロリ菌を保菌しているといわれています(比率については諸説ある)。現在は衛生環境が改善されたため、若い人の感染率は減少傾向です。胃癌を発症する人が少しずつ減っていくことも、予想されています。

    p158
    膵臓がんの画期的な治療法は、見つかっていないのが現状です。

    p162
    喫煙は、肺がんに限らずほとんどのがんの危険因子です。喫煙歴が長ければ長いほど、がんのリスクが増します。肺の場合は、がんだけではなく、たばこの有害物質によって肺の構造が壊れていきます。それらは、肺気腫をはじめとした慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ばれる疾患として知られています。

    p166
    肺がんは、日本においてもまた米国においてもがん死因のトップです。
     
    肺癌は、まず小細胞癌と非小細胞癌に大別されます。
    (中略)
    実は、この小細胞癌、予後が不良で、ほかの組織型のがんと比較して、有効な治療薬も見つかっていないのが現状です。

    p173
    免疫療法薬は、肺がんがほかのがんの治療をリードしている分野です。最初に日本に登場したのがニボルマブ(商品名:オプジーボ)という薬で、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体というものです。
    PD-1というのは、細胞傷害性T細胞というリンパ球の表面にある受容体のこと。がん細胞にあまりに接していると、このT細胞の表面にPD-1がどんどん増えていき、T細胞が疲れてしまうんですね。
    さらに、がん細胞のほうもPD-1受容体(PD-1とPD-L2がある)というT細胞の攻撃を回避するシグナル(受容体)を出します。PD-1とPD-1受容体が結合すると、T細胞はがん細胞への攻撃を止めてしまいます。これは、「免疫寛容」と呼ばれるものです。
    このニボルマブという薬はPD-1にくっつき、がん細胞が持つPD-1受容体が結合するのを阻止します。すると、T細胞が元気を取り戻し、がん細胞を攻撃し出すのです。

    p183
    ウイルス感染は、ときとしてがんを引き起こすことがあります。感染による発癌の原因は主に二つあり、ウイルスの遺伝子が我々人間の遺伝子に組み込まれることによって遺伝子異常が生じ、細胞増殖の調節が効かなくなることに起因するもの、そして感染によって慢性的な炎症が生じ、細胞にダメージが生じることに起因するものがあります。

    p185
    ウイルスは、基本的に核酸(DNAやRNA)とタンパク質からなる小さな病原体であり、単独では生物としての要件である自己増殖能を持たず、寄生して初めて自己増殖を行います。そのため、しばしば「生物と無生物の間にあるもの」と表現されることもあります。

    p208
    子宮頚がん検診は、綿棒で子宮頚部の粘膜を擦ってガラススライドに塗布する細胞診検査です。痛みもありませんし、比較的簡便な検査ですから、一年に一度くらいは受けてください。

    p219
    肝臓に転移をきたしやすいがんは大腸癌で、進行大腸癌の患者さんは手術後も肝臓(あるいは肺のこともある)に転移をきたしていないかどうさ、CT検査等で定期的に確認していく必要があります。 

    p220
    がんを引き起こしやすい代表的なウイルスは、C型肝炎ウイルスです。
    C型肝炎ウイルスは、ウイルスに汚染された血液で作られた血液製剤のほか、注射針やメスといった医療器具から感染することが多いといわれています。近年製造されている血液製剤は、ウイルスの検査の精度が向上したこともあり、まず安心といわれていますが、1994年以前の血液製剤はウイルスのチェックが不十分な場合があります。

    p222
    A型肝炎、B型肝炎は、感染直後に急性肝炎を起こす場合が多いのですが、C型肝炎の場合の多くは、症状が出ずに気づかないことが多いのです。そして、60~80%の患者さんがそのまま治癒せずに知らないまま慢性化し、慢性肝炎の状態になります。慢性肝炎も症状がかなり進まないとほとんど症状が出ないため、「なんとなくだるいなぁ」という程度の軽い症状のまま、じわじわと進行してしまいます。
    慢性肝炎の患者さんの20~30%が20年の経過で肝硬変に至ります。肝硬変に進展しまうと、年率7%ほどの頻度で肝がんが発症するということが、統計学的にわかっています。

    p230
    実は、遺伝子の小さな異常は毎日起こっているといわれていますが、遺伝子自体がそれを修復したり、免疫機構が働くことで、発生したがん細胞が増えないような仕組みが働いています。ただ、細胞が老化すると遺伝子の小さな異常が蓄積したり、その頻度が増したり、修復機構がうまく働かなかったり、免疫の働きが落ちたりしていきます。高齢になるとがんになりやすいのは、細胞の老化が原因です。

    p248
    情報があふれかえった時代に、どう情報を収集して、それをどう伝えるか。

  • どこかの雑誌で紹介されていたので手に取ってみたが、確かにがんについて、目から鱗な情報が多くありとても為になった。

    ただ、自分のような例は除いて、この本は一体どのような読者を想定しているのかよくわからなかった。純粋な好奇心?がんと診断されたばかりの人?その家族?

  • 確かに分かりやすいかった。学生時代、こういうのがあれば、というか触れることが出来ていれば、ミクロの世界に対する関心も、もう少し高かったかもしれないな。かといって、四六時中顕微鏡に向き合うってのは、考えてみるとちょっとゾッとするけど。本書のように、面白い先生によるところの、熟練の語りに耳を傾ける、くらいがちょうど良いのかも。

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著者プロフィール

順天堂大学医学部附属練馬病院病理診断科先任准教授、臨床検査科長。
2002年順天堂大学医学部卒業。2006年同大学院博士課程修了。
医学博士、病理専門医、臨床検査専門医。
NPO法人「病理診断の総合力を向上させる会」理事。イシス編集学校師範。
外科病理診断全般を担当し、研修医・医学生の指導にあたる。
趣味は、クラシックバレエと読書。二児の母。

「2020年 『おしゃべり病理医のカラダと病気の図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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