「愛」なき国 介護の人材が逃げていく

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484082172

作品紹介・あらすじ

NHKスペシャル「介護の人材が逃げていく」をベースに大幅な追加取材を行い、介護現場の深刻な実態を衝撃レポート。

感想・レビュー・書評

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  • <特に印象に残ったこと>
    *介護保険制度は砂上の楼閣か
    *介護士は使い捨て、5年後すら想像がつかない
    *もはや、スタッフの頑張りでどうにかなるレベルではない
    *人が辞めると、蓄積した知識が一気に失われてしまう
    *時間をかければものになる若者を、余裕がないから雇えない
    *介護でいう優秀あ人材は、いわゆる偏差値の優秀さではありません。
    たとえば自分がおとしめられた経験があったりして、社会の冷たさや人間のいやらしさに
    敏感で、性格のより人が、非常によい人材になります。
    *とにかく我々のいいところを伝えようと、それを心がけてやっただけです。
    *仕組みと実態の乖離を是正してほしい。「たとえば、要介護5がいちばん重いといわれていて、介護報酬もいちばんた高く
    設定されています。でも本当は、いちばん人手がかかるのは要介護3
    *ドイツの介護保険だが、在宅サービスはあくまでも家族介護を補助する制度として位置づけられていて
    *第1位は「働きぶり・能力によって賃金に差をつけてつけてほしい」第2位は「経験・勤務年数によって賃金に差をつけてほしい」
    *続けたいのに、子どもが生まれたら転職するしかない」
    *すぐに辞めて技術が蓄積できない日本人よりも、継続して熱心に働いてくれるフィピン人を雇った方が、介護の質を保てるのではないか」
    *もともとフィピンは労働力を“輸出”し、外貨を手に入れるで出稼ぎ大国である。
    *介護の心を持っている人であれば外国人でも関係ない
    *カナダ行きを希望した女子学生は、2年間介護士として働けば永住権をもらえること
    *日本以外の国だって、いい条件ではたらけるチャンスがたくさんあります。
    *団塊の世代から、いよいよ“男介の世代”に突入
    *介護保険は社会保障ではなく、市場原理で成り立っている
    *生活は、市場で買うサービスや物と、市場で買わずにみんなで分かち合って消費するもの、すなわち「社会サービス=悲しみの分かち合い」
    との二つから成り立っている。ところが日本人には「自己責任」という意識が強く、「悲しみの分かち合い」を分かち合わないという傾向がある。
    *自分がいかに豊かになるかだけを追求してきた結果、社会保障が貧困になってしまったのだろう。
    *人生の最期を引き受ける大切な仕事だからこそ待遇が大事
    *やりがいがあるはずなにに、やりがいがない
    *介護は、心理学では感情労働と呼ばれる仕事だ
    *助けがあれば自立できる人の自立を、妨げるのが目的か
    *介護報酬を下げれば人件費もさげられるのは当たり前
    *質の高い介護実現することで、人もお金もうまく回る
    *制度に人を合わせるのではなく、人に合わせる制度を作りたい
    *基本的人権を手に入れたいと願うのは、決して贅沢なことではない。
    *黙っていたのでは、やすらかに死ぬ権利を求めて戦わなければならないのだろう。
    *介護の問題は「愛」があれば何とかなるという甘っちょろい話ではない。

  • なんだこれ?
    介護保険って新しくできた制度なのに、なんでこんなに穴だらけなんだ?
    そもそも、その穴ってなんなんだろう。
    本文中にもあるけど、ほんとうに「藪の中」だ。

    登場人物が、みんな真面目な人なだけに、その思いが強い。
    とくに、現場で頑張る人たちは、そのあまりの純粋さに、なんと言っていいか分からない。
    こんな人たちを食いつぶして存在している制度とは何なのかと思う。
    だけど、制度や、それを制定した人が悪いとも言えない。
    分かりやすい悪者はいない。
    それぞれの登場人物が、それぞれの経験と知識と誠意の精いっぱいの範囲で、超人的に努力している。なのに、何かが決定的にうまくいっていない。

    これ、経済学者が出るべきじゃないかな。
    どう見たって根本的な問題は、金にまつわることだよ。
    金の問題を金の問題と認識すれば楽になるのに、
    それをまるでタブーのように扱うから、何かがおかしくなる。
    経済原則は、物理法則のようなもの。水が低きに流れることを、いいとか悪いとか言うのは意味がない。
    とにかく、経済学者に出てきてほしい。
    それも、技術者的で、エコノミスト指向の人。
    思惑とか善意とか意味とかべき論とかとは全く切り離して処方箋を書くべきだろう。

  • 介護制度の現状を、様々な当事者の声を交えながら、うまく整理して提示している。いかにもNHK。さすがNHK。第2章1節で、これまでの高齢者福祉の流れがまとめられているが、これが簡にして要を得ている。また、コムスン事件やくすのきの郷事件についても、簡潔ながら事件に至る事情がよくわかった。10年以上前の番組であり本でもあるのだが、ぜひ同じテーマで最新の状況を番組化・書籍化してほしい。

  • 【読書その116】平成19年3月に放送されたNHKスペシャル「介護の人材が逃げていく」を書籍化した本。自分自身が仕事で担当する分野も多く、一気に読み切る。理解できるところ、できないところがあるが、しっかりとしたエビデンスを調べながら自分の中で消化したい。立場は違えど想いはみんな同じだと思う。それにしても、自分が今の場所にいることの重さを痛感する。一方で、その幸せを噛みしめる。今まで以上に頑張らないといけないと気持ちを新たにする。

  • 『時間と学費をムダにしない「大学選び2011」』(光文社)の著者(石渡嶺司/山内太地)が選んだ「福祉・心理」に関する本

    (レベル2:これを読んでおけば、入試で差がつく!)

    2007年放映のNHKスペシャルに追加取材をして書籍化。
    なぜ、人材が逃げていくのか。福祉・介護業界を目指すのであれば、なぜ離職することになるのか、その現状を把握するためにも読むべき。

  • 介護保険が開始されてからの介護業界の現状をしっかり書いてあります。
    日本は恵まれていると思ったら、実は老後に対してはとても厳しい国であるということが分かりました。


    今の高齢者達の現状をしりながらも国はなんで予算を回してくれないんだろう....。

  • 介護の仕事が好きで続けたいと思っていても、今の介護保険制度では低給与で生活が成り立たず、男性が“結婚退職”する現状。一方、介護保険導入前には、介護疲れによる家庭内殺人は報道すらされなかったとの指摘も。

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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