探訪記者松崎天民

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 34
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480885289

作品紹介・あらすじ

日露戦争、足尾事件、大逆事件、美食、盛り場、貧民窟…、日本せましと駆け抜けた快男児、その足蹟を追った傑作評伝。

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクション

  • 2018/7/14購入
    2019/12/2読了

  • 坪内祐三『探訪記者 松崎天民』筑摩書房、読了。明治から昭和にかけ、木賃宿や娼窟、女学生ルポなどを、地を這う取材を基に読ませる名文で綴り、足尾銅山、大逆事件、精神病院を取材した探訪記者の本格的評伝。「探訪記者」とは現代でいえばルポルタージュの走りか。天民への畏敬の満ちた一冊。

    小学校を出て様々な職業を遍歴し文筆の世界へ。天民は足尾銅山へも坑夫となって山へ入り、取材したというから驚くばかり。しかし彼自身差別や貧困に強い関心を持っていたにも拘わらず「イデオロギーとしてではなく実感としてだった」という。

    「著者は天民の人間性に惚れ込み、その生きた時代を描きたかった」。「地下の天民、もって瞑すべし/大村彦次郎」 http://www.chikumashobo.co.jp/blog/pr_chikuma/entry/723/ 明治後半~時期の「新聞記者」事情も詳しく分かるオススメの一冊です。

  • 松崎天民というのは、岡山の人で、明治から大正にかけ新聞記者、とりわけ「探訪記者」(今でいえばルポライターだ)として活躍した人物で、朝日新聞に勤めていたころは夏目漱石とも関係があるほどだ。だが、森銑三さんなどには評価されず、その『逸話辞典』にも載っていないという。しかし、天民は畸人で、坪内さんはこの人物に惹かれ、その著作を早稲田大学の図書館と古書目録(古書展?)からもとめ、天民伝を書いた。この天民というのは、飯と女が好きな、ややはちゃめちゃの人物だが、「女子学生」「木賃宿」「精神病院」とかのルポは、当時の世相を事細かく映し出すものだった。仕事もいろいろやっているが、あんまり長く続いたものはなく、新聞記者にしても、つぎからつぎへと会社を変えている。しかし、「新聞配達」をやれば、当時いくら配っていくらもらったとか、配り忘れがあればいくら弁償するかといったお金に関するディテールを事細かく書き残しているのである。給料もそうで、どこの新聞社ではいくらだったと一々書いている。天民は晩年『食道楽』という雑誌の編集をするが、決してグルメ、食通などではなく、梅干しと漬け物で米の飯をたくさん食えれば満足したそうだ。その大食がたたってか、50代で亡くなってしまう。坪内さんのこの本は「ちくま」に15年にもわたって連載したもので、その時々の発見、どうやって調べたかも書いてあってそれなりに面白いのだが、全体としては、やや統一感がない。一書にまとめるのなら、裏話は裏話であってもいいが、全体の話はもうすこしまとまりのあるものにしてもらいたかった。

  • インターネットもなく
    むろん 携帯電話などもない

    そんな時代だからこそ
    ひたすら
    現場に行って
    「足で書いた」記者の話

    その歩いた足跡
    そのものが
    日本の近代史になっている

    私たちは
    今のジャーナリズムの中で
    「現代の松崎天民記者」を
    どれほど 大事にしているのだろう

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著者プロフィール

評論家、エッセイスト。1958年、東京生まれ。早稲田大学文学部卒。「東京人」編集部を経て、コラム、書評、評論など執筆活動を始める。評論、随筆、対談、日記エッセイ、解説等多彩に活躍。『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り―漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代―』で第17回講談社エッセイ賞を受賞。著書に『ストリートワイズ』『靖国』『文学を探せ』『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』『総理大臣になりたい』など多数。近著に『昭和にサヨウナラ』『文庫本を狙え!』『文庫本宝船』など。

「2017年 『壁の中【新装愛蔵版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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