- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480885289
作品紹介・あらすじ
日露戦争、足尾事件、大逆事件、美食、盛り場、貧民窟…、日本せましと駆け抜けた快男児、その足蹟を追った傑作評伝。
感想・レビュー・書評
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ノンフィクション
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松崎天民というのは、岡山の人で、明治から大正にかけ新聞記者、とりわけ「探訪記者」(今でいえばルポライターだ)として活躍した人物で、朝日新聞に勤めていたころは夏目漱石とも関係があるほどだ。だが、森銑三さんなどには評価されず、その『逸話辞典』にも載っていないという。しかし、天民は畸人で、坪内さんはこの人物に惹かれ、その著作を早稲田大学の図書館と古書目録(古書展?)からもとめ、天民伝を書いた。この天民というのは、飯と女が好きな、ややはちゃめちゃの人物だが、「女子学生」「木賃宿」「精神病院」とかのルポは、当時の世相を事細かく映し出すものだった。仕事もいろいろやっているが、あんまり長く続いたものはなく、新聞記者にしても、つぎからつぎへと会社を変えている。しかし、「新聞配達」をやれば、当時いくら配っていくらもらったとか、配り忘れがあればいくら弁償するかといったお金に関するディテールを事細かく書き残しているのである。給料もそうで、どこの新聞社ではいくらだったと一々書いている。天民は晩年『食道楽』という雑誌の編集をするが、決してグルメ、食通などではなく、梅干しと漬け物で米の飯をたくさん食えれば満足したそうだ。その大食がたたってか、50代で亡くなってしまう。坪内さんのこの本は「ちくま」に15年にもわたって連載したもので、その時々の発見、どうやって調べたかも書いてあってそれなりに面白いのだが、全体としては、やや統一感がない。一書にまとめるのなら、裏話は裏話であってもいいが、全体の話はもうすこしまとまりのあるものにしてもらいたかった。
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インターネットもなく
むろん 携帯電話などもない
そんな時代だからこそ
ひたすら
現場に行って
「足で書いた」記者の話
その歩いた足跡
そのものが
日本の近代史になっている
私たちは
今のジャーナリズムの中で
「現代の松崎天民記者」を
どれほど 大事にしているのだろう