過剰診断: 健康診断があなたを病気にする (単行本)

  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480864345

感想・レビュー・書評

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  •  早期発見は患者にとって必ずしも良いとは限らない。検査を始め、医療的な介入にはつねに何らかのリスクがある。個人レベルでは、健康な人ほど、介入するメリットは小さくなり、検査や治療にかかる負担や被害が上回ってしまうことがある。あるいは、本来生活に支障がないのに、診断と治療のサイクルに閉じ込められ、心身に強い負担がかかることもある。社会的にも、診断基準を引き下げることで膨大な「患者」が発生したり、検査対象が広がったがために、治療を要する患者を拾い上げる以上の手間や犠牲が出ることもある。本書の大半はそうした実際例が紹介されている。

     検査は必要な人に対して行うこと。それが過剰診断の防止には必要であり、そのためには過剰診断自体がデメリットをもたらすということを、医療者も市民も認識すべきなのだろう。それは期せずして、このコロナ禍においても言えることであるから、いま一読されると面白く読めると思う。

  • 日本じゃ歯止めが利かないって

  • 「医者が患者をだますとき」と同じコンセプトの本。基準値を引き下げるだけで(血圧、コレステロール
    )「患者」が増える。というような話。
    乳がんもスクリーニング用のマンモグラフィーでは見つからないし、有用性はほとんどない、というような内容も。症状のない潜在的な誤診患者に対する手術なども多い。患者はもともと症状がないのだからメリットはない。

  • 糖尿病、血圧、コレステロール等の基準値が変更されたことによって、病人が増えたという指摘は以前から知っていたが、本書では多くの事例を含めて、総括的な論考で過剰診断を糾弾している好著だ.p259の結論に出てくる「過剰診断は、何百万人もの人々を不必要に患者にし、自分の健康に不安を抱かせ、不必要な治療を受けさせ、診断と治療に伴う不便や経済的な負担を負わせている.私達の医療システムには既に過度の負担がかかっているというのに、過剰診断のために、さらに膨大な費用がかかっている.」がこの問題を的確に言い表していると感じた.

  • 症状のないひとに継続的な治療を施すという意味で、高血圧はパラダイムシフトであった。その後、過剰診断が横行しているが、そのために症状が出たり死んだりしないのであれば病気と診断する必要はないという。

    検査のカットオフ値を広げる(DM、コレステロール)とか、技術面での進歩(画像診断とか)によって、症状がないにも関わらず異常を指摘される人が年々増えてきている。これに今後、遺伝子検査が導入されるようになると、様々な疾患のリスク、という形で診断が行われるようになり、ほぼ全ての人がリスクを保有しているということになるだろうという。

    症状がない時点で診断を下すのは過剰診断だ、というのはちょっと単純化し過ぎと思うが、記憶にとどめておくべき内容も多い。
    例えば、早期診断はつねに生存期間を延ばす。実際的には誰も延命していないにもかかわらず延ばす。これをリードタイムバイアスという。すなわち、発症したら5年で死ぬ病気を、その二年前に見つければ、何も治療しなくても余命が5年から7年に延長される。

    また、検査は命を救うために行うべきで、病気を見つけるためではない。
    これを誤解しているために過剰診断自身がその有用性を主張することになる。放置しておいても症状が出たり死んだりしない病気を見つけると、その予後は当然よいため、過剰診断によって治療成績が上がったように解釈される。

  • これはおもしろい。

  • 早期診断・早期発見による過剰診断・過剰治療の危険な罠に鋭いメスをいれる。
    具体的には基準値の引き下げ、がん検診や早期発見推奨、メタボ検診等々。
    多くの実例と数字を基礎にして、過剰診断の不合理性を的確に暴いていく。

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