その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。: 古代ローマの大賢人の教え (単行本)

  • 筑摩書房
3.45
  • (13)
  • (24)
  • (36)
  • (5)
  • (4)
本棚登録 : 501
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480847508

作品紹介・あらすじ

仕事、進路、人間関係……。尽きない悩みも、古代の賢人に学べば、みるみる氷解。不安をなくし、自分でできることを拡張するためのヒントに満ちた人生哲学の書!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古代ローマ時代に奴隷から哲学者となったエピクテトスの哲学を、現代の問題に照らし合わせながら解説した本。

    本書は著者二人の会話形式でまとめられている。元はWebでの連載だったためか、腰を据えて読む、というよりは、画面上でスクロールしながら気軽に読めることを想定したのだろう。書籍としてはちょっと軽いかな、と初めは思ったが、私のような哲学初心者にはこれくらいくだけた感じでないと頭に入ってこなかったかもしれない。

    エピクテトスの哲学をものすごく簡単にまとめると「権内にあるものと権外にあるものを区別する」、つまり、自分でコントロールできることとコントロールできないことを見極めて、コントロールできることに力を注ぎなさい、ということのようだ。
    エピクテトスが生きていたのは暴君ネロの時代。奴隷の身分だった彼はいつ殺されてもおかしくない状況だった。このような過酷な環境だからこそ、殺されたらどうしよう、とおびえる間に自分のできることをしよう、という考えに至ったのだろう。
    最近「親ガチャ」なんて言葉が流行っているが、別の親だったら自分はもっと良い人生を送っていたのかもしれない、と思っていてもしかたがない、今自分でできることを考えていかなければいけない、ということだ。

    権内と権外を区別するためには「理性的能力」つまり、「人間が行うあらゆることについて判断する能力」が必要である。そしてそれには「心象の正しい使用」が重要になってくる。「心象」とは、「わたしたちが抱く『印象』、心に浮かぶ像」で、その使用は「権内」のことになるが、私たちは外部の様々な情報に踊らされて心象に振り回されてしまいがちだ。だから、心象の正しい使用を目指すこと=理性的能力を上げること=「権内」と「権外」を見極める力をつけること、というわけだ。

    世の中にこれほど多くの情報があふれている今の時代、誤った心象を持たず正しく使用するのは至難の業だ。その力を持つためにはどうすればいいのか。これはできるだけ多くの心象を吟味・検討することにつきる。つまり日々の訓練あるのみ、なのだ。

    本書は軽い語り口ながら、古代哲学を現代の問題に落とし込み、私たちが日常で陥りがちな考えの傾向を改めるきっかけを与えてくれる。私のように思い込みの激しい人間は、エピクテトスの哲学を実践するには相当な修行が必要だが、この考えを意識しながら生活をするだけでも人生が少し楽になるような気がする。

  • 二人の対談形式は、文字起こしでも独特の雰囲気が醸し出されており好きですな。

    エピクテトス引いてはストア哲学が今の世の中でも通用する思想だなと改めて痛感。ストイックの語源ではあるが、思いの外人間の情動や愚かさを許容してくれ、どううまく付き合っていくかの助言を提示する。どうしょうもない自分に寄り添ってくれる包容力が救われますね。

  • 「権内」と「権外」という考え方はなるほどと思ったけれど、様々な現代の悩みにエピクテトスの哲学を当てはめて答えていくというものだと思って手に取ったら、悩みの数が少なくて、残念だった。
    対話形式で読みやすいという良さはあったけれど、登場人物の2人が同じ目線で話しているので、どっちかどっちだかよくわからなく、あまり内容が入ってこなかった。
    エピクテトスについて無知な人が有識者に教えてもらうというような方がより理解がしやすかったかもしれない。
    入門編としてはサラサラ読めてとっつきやすくて良かったと思う。

  • 完全なるジャケ読み。フォトショ加工とかじゃなくてゴム版画らしい。すごい好き!前ジャケ読みしたイタチごっこの本も、そういえばこの方だった。中身は対談形式になっているけど、対談してる2人のキャラが被ってるので、よくわからない感じ。素人と先生の2人で対談にしておいたほうが無難だったのではないかと。

  • 現代の様々な悩みをエピクテトスの哲学の考え方を使って解決する本なのかと思っていたが、悩み相談は職場の上司に対する愚痴と高校生の進路相談の2つだけ。
    「エピクテトスならこう言うね」なんてタイトルに書けるほど悩みに答えていない。
    そして体系的に説明されているわけではないので、エピクテトスとストア派に関する哲学入門書というわけでもない。
    本文は著者二人の対談形式で書かれているが、相槌一言で一行なんてこともあり中身がスカスカでわざわざ書き起こす必要のない会話ばかり。
    そして200ページ強しかない書籍で各章も短いのに章の冒頭と終わりで何度も何度もこれまでのまとめを説明するものだからくどい。
    そもそもたいした解説をしていないのだからまとめなど不要だ。

    エピクテトスの哲学については、その考え方の神髄は権内(コントロール可能なもの)と権外(コントロールできないもの)を区別することにあり、権外にあるものは気にするだけ無駄だから無視しろというもの。

    確かに、自分にできることなのかそうでないのかをはっきりさせないと問題解決への道筋を立てることもできないので、権内と権外の区別という点についてはとても参考になった。

    しかし、自分にはどうにもならないことを気にして種々の感情を抱くことも人間らしさだと思うので、それをすべて捨て去ることには納得できない。
    それに、権外のことをよく知り、自分の権内の領域を広げようと努力しなければ成長しないままだ。

    1900年も前の考え方だから、現代に合わせてアップデートが必要ということは本書でも触れているが、その記述は最終章の終盤のごくわずかだ。
    しかも、アップデートするならば権外を無視するという本来の教えとは矛盾が生じ、本文中にあった悩み相談にも答えられない。

    何がしたいのかよくわからない本だった。
    これで1400円+税は高すぎる。

  • 2023年9-10月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00549899

  • キーワード:権内/権外

    2章
    ●権外のことに悩むのは時間の無駄!権内の範囲でベストを尽くせ。
    権内のことに自信があれば、権外の事情よる苦境をやりすごしやすくなる。

    4章
    ●心像とは、我々が抱く印象、心に浮かぶ像のこと
    心像の正しい使用こそ、我々の権内にある唯一の能力。心像の正しい使用とは、何をして何をしないか何を求め何を避けるか適切に判断すること。

    5章
    ●心像には、欲望、義務、承認の3つの領域があるが、急を要するのは、欲望の領域。
    禁欲というよりも操欲。
    コントロールするには、片っ端から吟味せよ。

    ●例えば…イケメンや美女を見て、羨ましいと思うのは避けられないかもしれない。しかしそれは単なる思い込みで、目の前にイケメンや美女がいるという権外の出来事があるだけ。羨む代わりに自分にできることやれ。自分の意思で変えられることに時間を使えばいい。

    ●知識を得たり技能を身につければ、自分で出来ることが増える。同じ状況でも自分の知識や技能次第で、権内の範囲が変わる。

    6章

    ●将来の社会で何が必要とされるかなんて分からない。
    ●山本さん「やりたいことが見つからないのは無理もないことだから焦らなくても良い。ただ、どちらにしてもいまの社会でご飯を食べるには、なにかしら仕事をする必要がある。」「何の仕事が良いか考えるためには、世の中にどんな仕事があるのか見渡して、ある程度選択肢を目に入れておく必要がある。」自分への反省もこめてとのこと。

    ●山本さんは、別に就職したくなかった。本と映画が好きで、成行き的に、会社のお金でそういうことができるところを選んだ(コーエー)。

    Q:欲望がないとき、それでも次になすべきことを決めねばならないとき、人はどうしたら良いか?
    A:そもそも目標や進路は、すぐにぱっと決まるものではない。ロールモデル(こうなりたいという人)を探すのが有効。
    全てにおいて、事前に、それに「先立つこと」と「後続すること」を考察すること。そのうえで、生じる困難に耐えられるのか検討せよ。
    自分の性分に合っているかも考えよ。
    ※前提として、自分の権内にあることを扱うように、日々訓練せよ。

    第8章
    ●正しい知識で、現代社会における権内権外のラインを引く。それには勉強が必要。

    ●人類が作り出してきた知識や技術をどの程度我が物にしているかによって、その人にとっての権内権外の境目が大きく変わる。

    ●ただし、能力の拡張と、その能力をどう使えるかは別物。区別して検討する必要がある。(SNSとか)
    =テクノロジーの仕組みを理解すれば良いという話ではなく、どう使えば良いかということをセットで考えねばならない。

    ●自分が備える知や技術の現状を棚卸して、それを起点に自分を拡張する。

    終わりに
    ●人類は目にする情報の真偽を正しく見分けられないし、他人の言葉に感情を乱されたりするのを避けられない。

  •  ゆるくいえば、エピクテトスをめぐる漫談的な一冊。でも内容面ではエピクテトスおよびストア派哲学の概要をとらえた入門的な対話篇でもあって、現代でもエピクテトスの思想は通用するか否かをテストし続けている。表紙帯で「人生哲学の書」と銘打っているけど、油断するとエピクテトス思想の現代的解釈という点を見失うかもしれない。専門的な哲学研究者からのコメントを待ちたい。

  • 読了日 2022/12/05

    図書館で借りた本。山本貴光さんと吉川浩満さんの対談?形式本。
    帝政ローマの時代に生きたエピクテトス(元奴隷、哲学教授、のちに自由の身)の、ストア派哲学の紹介本。
    権内/権外(自分にコントロールができること/できないこと)の区別。そして権外を捨てること。
    心像(自分の中に想起されること)を正しく使用すること。これは時間を使って検討することも含む。
    論理的に思考し、正しく自然を認識し、よく生きること。

    仏教やキリスト教との考え方の違いもわかりよかった。
    あと、ニーバーの祈り。
    ひょっとすると俺はエピクテトスを私淑するべきかも知れないね。

  • 哲学漫談というか、漫才というべきか。何かを得られたという感じはないんだけど、読んでいて楽しかった。エピクテトスって、知らなかったけど、有名な哲学者だったんだね。エピクテトスの考え方で今の悩みに答えるなら、って。自分の権内と権外を分けて考えて、権外は思い悩むな、理性と使え。理性とは、論理的に思考し、自然を認識し、よく生きろ、と。それをするのは、そこそこ訓練が必要だぞ、と言ったところだろうか。本書にそれほど多くの悩みが答えられたわけでもないんだけど、読みながらあれこれ自分の懸案事項を考えたな。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

山本貴光(やまもと・たかみつ) 文筆家、ゲーム作家、ユーチューバー。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。著書に『マルジナリアでつかまえて』(全2巻、本の雑誌社、2020/2022年)、『記憶のデザイン』(筑摩書房、2020年)、吉川浩満との共著に『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。――古代ローマの大賢人の教え』(筑摩書房、2020年)など。

「2022年 『自由に生きるための知性とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本貴光の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
劉 慈欣
ヨシタケ シンス...
ミヒャエル・エン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×