その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。: 古代ローマの大賢人の教え (単行本)
- 筑摩書房 (2020年3月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480847508
作品紹介・あらすじ
仕事、進路、人間関係……。尽きない悩みも、古代の賢人に学べば、みるみる氷解。不安をなくし、自分でできることを拡張するためのヒントに満ちた人生哲学の書!
感想・レビュー・書評
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古代ローマ時代に奴隷から哲学者となったエピクテトスの哲学を、現代の問題に照らし合わせながら解説した本。
本書は著者二人の会話形式でまとめられている。元はWebでの連載だったためか、腰を据えて読む、というよりは、画面上でスクロールしながら気軽に読めることを想定したのだろう。書籍としてはちょっと軽いかな、と初めは思ったが、私のような哲学初心者にはこれくらいくだけた感じでないと頭に入ってこなかったかもしれない。
エピクテトスの哲学をものすごく簡単にまとめると「権内にあるものと権外にあるものを区別する」、つまり、自分でコントロールできることとコントロールできないことを見極めて、コントロールできることに力を注ぎなさい、ということのようだ。
エピクテトスが生きていたのは暴君ネロの時代。奴隷の身分だった彼はいつ殺されてもおかしくない状況だった。このような過酷な環境だからこそ、殺されたらどうしよう、とおびえる間に自分のできることをしよう、という考えに至ったのだろう。
最近「親ガチャ」なんて言葉が流行っているが、別の親だったら自分はもっと良い人生を送っていたのかもしれない、と思っていてもしかたがない、今自分でできることを考えていかなければいけない、ということだ。
権内と権外を区別するためには「理性的能力」つまり、「人間が行うあらゆることについて判断する能力」が必要である。そしてそれには「心象の正しい使用」が重要になってくる。「心象」とは、「わたしたちが抱く『印象』、心に浮かぶ像」で、その使用は「権内」のことになるが、私たちは外部の様々な情報に踊らされて心象に振り回されてしまいがちだ。だから、心象の正しい使用を目指すこと=理性的能力を上げること=「権内」と「権外」を見極める力をつけること、というわけだ。
世の中にこれほど多くの情報があふれている今の時代、誤った心象を持たず正しく使用するのは至難の業だ。その力を持つためにはどうすればいいのか。これはできるだけ多くの心象を吟味・検討することにつきる。つまり日々の訓練あるのみ、なのだ。
本書は軽い語り口ながら、古代哲学を現代の問題に落とし込み、私たちが日常で陥りがちな考えの傾向を改めるきっかけを与えてくれる。私のように思い込みの激しい人間は、エピクテトスの哲学を実践するには相当な修行が必要だが、この考えを意識しながら生活をするだけでも人生が少し楽になるような気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
二人の対談形式は、文字起こしでも独特の雰囲気が醸し出されており好きですな。
エピクテトス引いてはストア哲学が今の世の中でも通用する思想だなと改めて痛感。ストイックの語源ではあるが、思いの外人間の情動や愚かさを許容してくれ、どううまく付き合っていくかの助言を提示する。どうしょうもない自分に寄り添ってくれる包容力が救われますね。 -
「権内」と「権外」という考え方はなるほどと思ったけれど、様々な現代の悩みにエピクテトスの哲学を当てはめて答えていくというものだと思って手に取ったら、悩みの数が少なくて、残念だった。
対話形式で読みやすいという良さはあったけれど、登場人物の2人が同じ目線で話しているので、どっちかどっちだかよくわからなく、あまり内容が入ってこなかった。
エピクテトスについて無知な人が有識者に教えてもらうというような方がより理解がしやすかったかもしれない。
入門編としてはサラサラ読めてとっつきやすくて良かったと思う。 -
完全なるジャケ読み。フォトショ加工とかじゃなくてゴム版画らしい。すごい好き!前ジャケ読みしたイタチごっこの本も、そういえばこの方だった。中身は対談形式になっているけど、対談してる2人のキャラが被ってるので、よくわからない感じ。素人と先生の2人で対談にしておいたほうが無難だったのではないかと。
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現代の様々な悩みをエピクテトスの哲学の考え方を使って解決する本なのかと思っていたが、悩み相談は職場の上司に対する愚痴と高校生の進路相談の2つだけ。
「エピクテトスならこう言うね」なんてタイトルに書けるほど悩みに答えていない。
そして体系的に説明されているわけではないので、エピクテトスとストア派に関する哲学入門書というわけでもない。
本文は著者二人の対談形式で書かれているが、相槌一言で一行なんてこともあり中身がスカスカでわざわざ書き起こす必要のない会話ばかり。
そして200ページ強しかない書籍で各章も短いのに章の冒頭と終わりで何度も何度もこれまでのまとめを説明するものだからくどい。
そもそもたいした解説をしていないのだからまとめなど不要だ。
エピクテトスの哲学については、その考え方の神髄は権内(コントロール可能なもの)と権外(コントロールできないもの)を区別することにあり、権外にあるものは気にするだけ無駄だから無視しろというもの。
確かに、自分にできることなのかそうでないのかをはっきりさせないと問題解決への道筋を立てることもできないので、権内と権外の区別という点についてはとても参考になった。
しかし、自分にはどうにもならないことを気にして種々の感情を抱くことも人間らしさだと思うので、それをすべて捨て去ることには納得できない。
それに、権外のことをよく知り、自分の権内の領域を広げようと努力しなければ成長しないままだ。
1900年も前の考え方だから、現代に合わせてアップデートが必要ということは本書でも触れているが、その記述は最終章の終盤のごくわずかだ。
しかも、アップデートするならば権外を無視するという本来の教えとは矛盾が生じ、本文中にあった悩み相談にも答えられない。
何がしたいのかよくわからない本だった。
これで1400円+税は高すぎる。 -
2023年9-10月期展示本です。
最新の所在はOPACを確認してください。
TEA-OPACへのリンクはこちら↓
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00549899 -
ゆるくいえば、エピクテトスをめぐる漫談的な一冊。でも内容面ではエピクテトスおよびストア派哲学の概要をとらえた入門的な対話篇でもあって、現代でもエピクテトスの思想は通用するか否かをテストし続けている。表紙帯で「人生哲学の書」と銘打っているけど、油断するとエピクテトス思想の現代的解釈という点を見失うかもしれない。専門的な哲学研究者からのコメントを待ちたい。
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読了日 2022/12/05
図書館で借りた本。山本貴光さんと吉川浩満さんの対談?形式本。
帝政ローマの時代に生きたエピクテトス(元奴隷、哲学教授、のちに自由の身)の、ストア派哲学の紹介本。
権内/権外(自分にコントロールができること/できないこと)の区別。そして権外を捨てること。
心像(自分の中に想起されること)を正しく使用すること。これは時間を使って検討することも含む。
論理的に思考し、正しく自然を認識し、よく生きること。
仏教やキリスト教との考え方の違いもわかりよかった。
あと、ニーバーの祈り。
ひょっとすると俺はエピクテトスを私淑するべきかも知れないね。 -
哲学漫談というか、漫才というべきか。何かを得られたという感じはないんだけど、読んでいて楽しかった。エピクテトスって、知らなかったけど、有名な哲学者だったんだね。エピクテトスの考え方で今の悩みに答えるなら、って。自分の権内と権外を分けて考えて、権外は思い悩むな、理性と使え。理性とは、論理的に思考し、自然を認識し、よく生きろ、と。それをするのは、そこそこ訓練が必要だぞ、と言ったところだろうか。本書にそれほど多くの悩みが答えられたわけでもないんだけど、読みながらあれこれ自分の懸案事項を考えたな。