このゲームにはゴールがない ――ひとの心の哲学 (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480843272

作品紹介・あらすじ

ウィトゲンシュタインとスタンリー・カヴェル。ふたりの哲学者の議論を手掛かりに、人間の心というものに迫る。勇気に満ちた、古田哲学のあらたな一歩。

感想・レビュー・書評

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  • 古田徹也による懐疑論─特に、他人の心を知ることはできないという「他人の心中についての懐疑論」の本。もっと広範囲の外界すべてについての懐疑論を解体することから始め、ウィトゲンシュタイン、カヴェルを引きながら、不確かであるその有り様が心的なものであると説く。非常にわかりやすく読み易く書かれていて、それは読み飛ばしてしまう危険性があるのではと危惧するくらい。何度か読んでゆっくり咀嚼した方が良いかも知れないな。ゴールがないゲームとはわれわれがその内にあり営んでいる言語というゲームであり、生きているというそのことでもある。

  • 外的世界の存在や他者の心の存在・内側に対する懐疑論について、初学者にもわかりやすく解説された一冊。

    「自分が痛みを感じていることを知っている」という一文を、「知っている」という言葉の誤用であり、そうした文はナンセンスとする考え方は、ウィトゲンシュタインらしいなと思った。

    懐疑論者は、人間の言葉の扱いを誤っているというのは分かるようで、やや抽象的でもあり、好みは分かれるかなと思った。

  • 心って一体なんだろう。

    そのことを考えてたくてずっと心理学をしてきた。でも、心理学では心について問うことができないと知った。なぜなら、心理学の多くは「心とはなにか」についてほとんど問うていないからだ。

    心理学は「心」をモノのように想定している。「心」をモノのように想定するとは、たとえば、私の目の前に椅子があるとする。その椅子には触れるし、見ることもできるし、舐めることも、嗅ぐこともできる。心理学では「心」をこの椅子のように想定している。でも「心は見えない」などと言ったりする。よくわからない。でも、「心」をモノのように想定しているから、「心とはなにか」と問う必要もない。

    「心とはなにか」を考える鍵は、ウィトゲンシュタインの論考にありそうである。そのように思ったのは、ここ数年の話である。ちょっとずつウィトゲンシュタインを読み、解説書を読み、ウィトゲンシュタイン哲学を下敷きにした哲学書を読み、自分なりに心を考えてきた。なにかありそうなのだけど、なんだか掴めない。そんな曇った日々だった。

    本書は、そんな曇りを晴らしてくれた。『このゲームにはゴールがない』が、私には「ゴール」だった。これはもちろん、本書に「答え」が書いてあることを意味しているわけではない。本書の内容を要約せよ、と言われたら、それができるほどまだ読み込めていない。だが、ここには私が考えたかった”心”がある。その意味での「ゴール」である。「心」はモノではない。だからといって、私秘的なものというだけのものでもない。心とはまさに私秘的であるとともに公的でもあり、確固たるものというよりも、はざまにある揺らぐものである。

    本書は構想18年以上にも及んでいるらしい。著者が本書を上梓することを諦めなくて良かったと思う。本書出版の機会を出版社が作ってくれて良かったと思う。本書が流通する世界に、それを母語で読める世界に立ち会えたことを感謝している。

    心について考えることはここで終わるわけではない。まだまだ考えなければならないことはたくさんある。まずは、本書を読み込み、”心の性質”について、周りの人に(口頭でも)説明できるようにならなければならない。その後には、それを基に、論じたいことがたくさんある。ああ、結局、このゲームにはゴールなんてなかったようである。

  • とっても面白い
    単なる哲学エッセイとかではない

  • 懐疑論という哲学ジャンルがある。主にウィトゲンシュタインを引用しながら論駁しつつ、言語ゲームの入門書のような趣を持たせたのが本書。

    懐疑論自体は哲学史のなかでも脈々とあるのだが、日常的なレベルでも「自分以外の人間が実はロボットだったら」とか「この世界は現実ではなく夢なのでは」とか、そのくらいのことは誰しも考えたことはあるかと思う。本書を読むうえでは、懐疑論への認識はその程度で問題ない。

    300頁弱あるが、本書の進み方は良く言えば丁寧、良くも悪くもなく言えばゆっくり、悪く言えば冗長である。
    これは読むひとの哲学知識…というかウィトゲンシュタインの言語ゲームに関する知識の量によって変わると思う。

  • 第12回 人生の意味への懐疑 ― 不条理とアイロニー
    第13回 真理への懐疑 ― 哲学史のなかの懐疑論
    第14回 道徳への懐疑 ― 他者とともに世界を生きること
    第15回 哲学への懐疑 ― 文学と科学のはざまで
    https://ameblo.jp/yasuryokei/entry-12796417523.html

  • ヴィトケンシュタインの言語ゲームという考え方を基盤として、原理的な他者の分かりえなさが(=ゴールがない)、他者が「ある」ということを可能にすること、そして他者の存在は(孤独に対する)救いであるという内容かな。

    上記に向かって精緻に議論を進めているようにもおもえるが、ちょっと迂遠に感じたことと、あまり目新しさを感じなくて、面白いと思えなかった(このため後半は流し読み)。

  • 「ひとの心」の不確かさにウィトゲンシュタインらの著作を紐解きながら迫る。

    難解な部分も多いが、とても丁寧に解説されており取りあえず読み切ることが出来た。本の前半では「外界全体」への懐疑論に対する分析、後半では「ひとの心」に焦点を当てた分析。どちらも自分が日々感じていることに引きつけて読むことが出来た。

    また読みたい。

  • 面白かった。

  • 一章と最後の節のみ読了。

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著者プロフィール

1979年、熊本県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科准教授。東京大学文学部卒業、同大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。新潟大学教育学部准教授、専修大学文学部准教授を経て、現職。専攻は、哲学・倫理学。著書『言葉の魂の哲学』(講談社)で第41回サントリー学芸賞受賞。

「2022年 『このゲームにはゴールがない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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