再び、立ち上がる! ―河北新報社、東日本大震災の記録

  • 筑摩書房
4.11
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本棚登録 : 86
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480818331

作品紹介・あらすじ

あの日、一瞬にして街が消えた。そして大切な人が…自らも被災した河北新報社は、その直後から各地を丹念に取材し、被災した人々を励まし続けた。300日間の苦闘を描く、魂のドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は地元紙が綴った3.11の記録です。奇跡的な生還、突然の死別…。数多くの苦難と哀しみを抱えながらも、再生に向けて立ち上がる人々を描くクロニクルです。

    ページをめくる手が何度か鈍ってしまいました。 この本は甚大なる被害を出した東日本大震災。『そのとき、人々は』ということを地元紙がまとめた記録です。やはり、出版時機を見てみると約一年後の2012年2月10日ですから、『1年後』だからこそ語ることの出来る『運命の1日』の様子でありました。

    地震が起こった直後と津波が人々の住んでいる地域をまさに『黒い塊』となって襲い、何もかもをそれこそ『根こそぎ』奪い去っていく様子が克明に映し出されており、読んでいてあの日のことを少なからず思い出してしまい、気持ちが重くなってしまいました。

    ここに記されている方々の『運命』はどれもが読んでいて胸が詰まるものですが、自分が特に印象に残っているのはどこかの病室で寝たきりになっている患者のいる病室を津波が襲い、ベッドにいる患者ごと『引き波』が全てを遠い彼方に押し流していこうとしたとき『見るなーっ』と叫んでいた声が記されており、叫んだ人間の心中と、その瞬間のギリギリの様子が浮かんでくるようでありました。さらに、震災後も同じ地域に住んでいた人々が引き裂かれ、あるものは放射能の恐怖から全国各地に『移住』し。あるものは仕事のために現地に留まり、妻子だけを非難させ、またあるものは自分の『故郷』で最期を迎えたいと留まる…。

    これがこの文章を書いている『今』まさに続いているのだということと、仮設住宅で孤立化した上にPTSDや震災ストレスで精神的にも蝕まれていくそういったことも記されており、いまだ先の見えない『天災』の惨禍とその復興への道のり。その『ありのまま』の姿を地元紙だからこそ記録することが出来た一冊であると思います。

  • 東北の地元新聞社が執筆・編集した本書は、地元紙の意地と誇りで上梓されたものなのだろう。ここには、大規模災害が起こり、闘い、そして前進していく姿が見える。しかし取材の文章を見ると、諸外国に絶賛された理性と自制心あふれる日本人という良い面だけではなく、行政に・消防救急隊員に・ガソリンスタンド店員に・イベント会場スタッフ等々に食って掛かる人間がいたことに、仕方がないにしても「やはり……」の感は否めなかった。また「○○があったなら(助かっていた)」のような感想を見るにつけ、逆に自助の精神の重要さを思った。

  • 泣くことすらできない。原発に覆い隠されてしまいがちな津波の傷痕の深さを今更ながら。

  • 東日本大震災発生時、
    何が起きたのか、何をしていたのか。
    1人ひとりの言葉が、
    重く深く伝わってくる一冊。


    第1章 その時、何が
    第2章 その命を
    第3章 逃げる、その時
    第4章 それでも、前へ

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:369.31//Ka19

  • (2012.06.09読了)(2012.06.01借入)
    【東日本大震災関連・その91】
    「河北新報のいちばん長い日」(河北新報社著、文藝春秋刊行)は、東日本大震災に際しての河北新報社の記者や販売店の人びとを扱った本でしたが、この本は、河北新報に掲載された記事をまとめたものです。
    当然のことながら、ほかの報道機関が報じたものと重複する記事もありますが、まだそのような本を読んでいなかった人にはお勧めです。
    「あの日、どこで何が起きたのか。誰の人生がどこでどう変わったのか。人々は津波にどう対応したのか、そして生死の分かれ目はどこにあったのか。
    被災現場を丹念に巡り、一つ一つの出来事、一人一人の命を記録していくこと。それが犠牲になった人たちとその家族の思いにこたえる仕事として必要とされている。さらに、記録をその後の悲劇を防ぐ教訓として後世に伝え継いでいくことが、報道の務めとして強く期待されている。」(あとがきより)

    【目次】
    巻頭言
    第1章 その時、何が
    第2章 その命を
    第3章 逃げる、その時
    第4章 それでも、前へ
    あとがき
    初出一覧

    ●火災が(53頁)
    気仙沼市の多くの住民は言う。「水をかぶった街で火災が起きるなんて……」。一方で、焼け落ちた街には、焦げ臭さとともに油臭が漂った。倒壊した木材に交じり、燃料が入ったタンク、船、車、ガスボンベなどが点在していた。
    ●携帯電話(78頁)
    東日本大震災で、携帯電話は広範囲にわたって使用不能になった。最大の原因は、電波を送受信する基地局の機能停止。巨大地震と津波による施設損壊に加え、長時間の停電が基地局の機能を奪った。
    3月12日、機能停止した基地局は一時、4900局に達した。
    ●特別養護老人ホーム(102頁)
    東日本大震災で、岩手県大船渡市三陸町の特別養護老人ホーム「さんりくの園」は入所者67人のうち50人以上が波にのまれた。地震当日、生存が確認されたのは16人。施設が現在把握している死者・行方不明者は、震災後に亡くなった人も含め54人に上る。入所者は要介護度4以上で、平均年齢は88歳。
    ●車を捨てて(165頁)
    気仙沼署の佐藤宏樹署長は「渋滞時、署員が車を捨てて逃げるよう呼びかけたが、だれも出てこなかった。『ここまでは波も来ないだろう』『車を置いていけない』という思いが悲劇を拡大したのではないか」と指摘する。
    ●三メートル以上の津波(183頁)
    気象庁によると、地震の三分後「岩手では三メートル以上」とする大津波警報を発表。岩手県沿岸では約30分後に六メートル、約45分後に10メートルと予想を更新した。沖合の衛星利用測位システム波浪計で観測されたデータによるもので、更新は初のケース。
    ●マイヤ大船渡インター店(238頁)
    CGCグループは1973年、オイルショックを受けて結成された。中小のスーパーが全国でまとまり、商品を安定的に供給するのが狙いだ。
    災害マニュアルは2004年の新潟中越沖地震を教訓に改定され、「被災地と連絡が取れない場合でも物資を送り込む」と定めていた。
    卸やメーカーがガソリン不足などを理由に「商品を送れない」という中、シジシーから連日届く商品が、(マイヤ)大船渡インター店の生命線になった。
    (震災の時、本当に助かりました。平時でも利用させてもらってますが。)

    ☆関連図書(既読)
    「巨大津波が襲った 3・11大震災」河北新報、河北新報社、2011.04.08
    「河北新報のいちばん長い日」河北新報社著、文藝春秋、2011.10.30
    (2012年6月11日・記)

  • 震災に、津波に
    遭われた人々の
    貴重な記録の数々―

    多くの人々の心に
    深く刻み込まれ
    長く、語り継がれなければならぬ―

  • 2012年3月11日、そうあの東日本大地震と巨大津波のあった日からちょうど1年たった今日、この本は私の手元に届いた。

    何か大きな意思を感ぜずにはいられない。

    第1章 その時、何が
    第2章 その命を
    第3章 逃げる、その時
    第4章 それでも、前へ

    3月11日、
    テレビ各社が特番を組んでいたけれど、どうしても見る気持ちになれなかった。
    でもこの本と静かに向き合うことはできた。
    これまでのテレビ報道より幅広し視点で振り返ることができたような気がする。

  • 資料番号:010845733
    請求記号:369.3/フ

  •  内容としては、既に本紙で一回以上読んでいるものだから、前の『河北新報社のいちばん長い日』よりは初読の印象が重たくなかったかもしれない。
     約一年経ったいま読むと、また違った様々な思いが込み上げてきた。あの頃、恐らく夏くらいまで? は、本当に情報を貪るように新聞にかじりついていたのが、段々読む目線が変わってきた気がする。上手く言語化できないけど。「知りたい・知らなければ」だけだったのが、「忘れたくない・忘れられない」の比重が大きくなってきたような。
     もうすぐ一年です。

     

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