- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480815712
作品紹介・あらすじ
街角でふと耳にした会話やお店の看板、家族の寝言など、たまたま出会った言葉の断片が契機となって生まれたエッセイ。偶然出会った言葉が詩に見えてくる!?
感想・レビュー・書評
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本書のテーマは「偶然性による結果的ポエム」についての考察だそうです。
特に気に入ったエッセイを二つ引用します。
P36より
本当の名前
以前枡野浩一さんが、ものを書き始めたばかりの人が自分でつけたペンネームにはしばしば「月」という文字が入る、という意味の指摘をされていたが、そう思ってみると、確かにインターネット上のペンネームなどは「月」だらけだ。この「月」は言霊的に効きにくいだろう。
偶然性のある「月」ならいい。
だが「月」を入れた名前の多くは、その他の部分も素敵な文字で固められている。本人の思い入れの強さによって、偶然性の要素、つまり「思いがけなさ」が奪われているのだ。
自分で自分に名前をつけることの難しさを感じる。
と云いつつ、私も自分でつけたけど。
柚月裕子さんはペンネームです。本名知っています。
(何度もレビューに書かせていただいた気がしますが、地元の小説講座で生徒としてご一緒させていただいていたのです)
確かに月が入っていますね。
でも、大成功されているからいいのではと思いますが。
「月」とは関係ありませんが、伊坂幸太郎さんもペンネームです。(やはり地元の小説講座に講師としていらしたとき懇親会でお尋ねして聞いてしまいました♪)
それで御本人から直接お聞きしたのですが、本がたくさん売れていらっしゃる「西村京太郎」さんに字画をあやかってつけられたそうです。ついでに調子に乗って伊坂さんの御本名もお聞きしてしまいましたが、それは内緒ですが。字画ってあるんですね~。
私も、短歌を作って投稿しているのでペンネームを考えた方がいいのかと思いました。(今は実名で投稿しています)
P59より
私の詩集買ってください
何故か必ず「詩集」で「小説」や「イラストレーション集」ではないのだ。見るたびに切ない気持ちになったのは、私も詩を書くからか。それとも、張り詰めた表情や佇まいが、暗い未来を約束しているように思えたからだろうか。
それにしても、自分の詩を読んで欲しいという願いを真っ直ぐに形にした筈の「声」が、イレギュラーな印象を帯びてしまうのはどうしてだろう。記憶の中の彼女たちはみんな似ていて、一人の少女であったようにも感じられる。
これ、すごくわかります。
私も以前東京に住んでいた時に新宿で声をかけられたことが何度かあります。
最後の一文がメルヘンだと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歌人の穂村弘さんが「街角でふと耳にした言葉、お店の看板、子どもの主張、教室の机の落書き、家族の寝言」などから「偶然性による結果的ポエム」が生まれた瞬間を切り取って考察したエッセイ。
ふと目や耳にした会話で「?」や「!」と感じたことを、穂村さんという人を通すと、にゅるりと穂村ワンダーランドに連れていかれてしまう。
穂村さんのエッセイは久しぶりだけれども、変わらず面白かった。
以前読んだエッセイには出てこなかった奥様がしばしば登場されていてドキリ。
これぞ、穂村さんの奥様!と勝手に感じるエピソード満載で、おふたりの仲良しぶりにあてられる。
あと、穂村さんの「これかっこいいセンサー」って独特で、それを知ることによって私自身の「これかっこいいセンサー」も拡張、研磨されてくようで、面白い。
若い頃、「現実」に馴染めずオロオロしていた穂村さんは少しなりを潜めつつも、今も「現実」に行き交う言葉の端々から垣間見える「世界」を見つけて驚いたり感動したりしている。
そんな穂村さんに憧れを覚える。 -
近くのショッピングモールの本屋さんでなんと、この本が三冊並んでました。短歌コーナーが前よりも大きく設けられているような気がします。この本の表紙は今までの穂村本と趣が違って、ジェットストリームのようなシックな色合い。装丁葛西薫さん。
内容はいつもの昭和感満載で安心します。街角でふと耳にしたことから膨らむ、ほむほむ妄想世界へ!本書のテーマは「偶然性による結果的ポエム」ですって。穂村さん短歌はなくエッセイのみです。
『前にも云ったかもしれないけど』、同じこと言っちゃってます。わかります。
『昭和?』「私も何かを云った後で、今のは昭和だったかなあ、とよく不安になるのだ。」、同感。
『名前の教え方』、自分の名前をどう説明するか、皆さんどうしているのか話してみたい。
無邪気な子どもの質問に「生まれたての宇宙みたいな状態」って素敵。
妻との会話は、狼狽している穂村さんを優しく諭す感じが微笑ましくて若干嫉妬心。
言葉に対する感性がますます研ぎ澄まされている。穂村さんの朗読で聴いてみたい。
穂村さんの『情熱大陸』や『プロフェッショナル』してほしいな。-
☆ベルガモット☆さん、111108さん、こんにちは!
『彗星交差点』、読みました〜
そして☆ベルガモット☆さんとおなじく穂村さんと奥...☆ベルガモット☆さん、111108さん、こんにちは!
『彗星交差点』、読みました〜
そして☆ベルガモット☆さんとおなじく穂村さんと奥様に「若干嫉妬」しましたよっ!
穂村さん、奥様が大好きなんだな、というのが、これみよがしじゃないけれどすごく伝わってきますよね。
2023/04/29 -
☆ベルガモット☆さん、5552さん、こんばんは。
5552さんのレビューも見てきましたよ!穂村さん何だか大人になってるけれど、相変わらず妄...☆ベルガモット☆さん、5552さん、こんばんは。
5552さんのレビューも見てきましたよ!穂村さん何だか大人になってるけれど、相変わらず妄想っぷりが激しそうですね。お二人のレビューから、私も読んだら奥様に若干嫉妬しそうです〜汗2023/04/29 -
5552さん、111108さん、こんばんは!
5552さん、読了されたんですね、♡マーク押して来ましたっ
そうなんですよ、奥様との微...5552さん、111108さん、こんばんは!
5552さん、読了されたんですね、♡マーク押して来ましたっ
そうなんですよ、奥様との微笑ましいエピソード、照れてしまうくらいの愛が溢れていますよね!旅先でのエピソードはごちそうさまって言いたくなります。
「これかっこいいセンサー」って確かに独特~5552さんのセンサーも興味あります☆
111108さん、少年ぽさを残しつつ年を重ねた開き直り穂村さんも感じたりしましたよ。
111108さんの「昭和感=ノスタルジー」で良い意味でとらえ直して歌が作れないかなあと試行錯誤中です♪2023/04/29
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表紙がすごく格好良くて、画像ではわからないけども手に取って見るとざらざらした小さな出っぱりが無数の星々や隕石・光の当たり具合によっては氷の粒のように見え、『彗星交叉点』というタイトルの持つ宇宙性や神秘性が伝わって来る。
私は穂村弘先生の文章を読むのは初めてだったが売場で表紙を見かけてつい手が伸びてしまった。
なんだろう、何となく後半へ行けば行くほどスッと入ってくる文章というか、角が取れて優しくなっていく感じ。彗星も宇宙空間を渡っている間に摩擦的な何やかやで滑らかになっていくのだろうから、きっとそれを表現しているのではないだろうか(個人の見解です)。
58編のエッセイ。
一番好きなのは〈おませ〉の編。「走るイコール疲れるですよ」(p127)と言っているひょろっとした小学生男子を想像するだけで笑えてくる。また、「どうせ僕はプライドのない男さ」と宣う幼児に対し「てのひらなめるのやめなさい」(ともにp128)と嗜めるお母さんの様子にはもう笑うしかない。
あとはやっぱり〈名前の教え方〉かなあ。自分の名前の漢字をどう伝えるか問題はめちゃくちゃよくわかる。「なるべくニュートラルな熟語」(p80)は探すよねー。探して追求した結果わけわからん教え方に辿り着くのも共感しかない。
〈くらっとくる言葉〉も好き。「パパがJALのゲボ袋に銀杏入れてチンしてる」(p177)はくらっとくる。情報量がすごいしリズミカル。
堪能しました。ぜひ次は種村先生の作品集を読んでみたいです。
おすすめのものがあればご教示頂けると幸いです。
1刷
2023.3.28 -
大好きな穂村弘さんの本。と言いながらこの頃のエッセイ、パンチ力が少なくて薄味。物足りなく感じる。街角や電車の中やインターネット上で、たまたま目や耳にした短い言葉によって触発。お店の看板、子供の主張、教室の落書きなどたまたま出会った言葉の断片を集めて、あれやこれやと彷徨者のごとく考え遊ぶ。
そこは、歌人、一歩外に出れば聞く耳をそばだてる。人の話を盗み聞きするとは、到底できませんな。でも、これって職業病・・・仕事となると、何事も辛いですな。 -
いつもながらの言葉のマジシャン、穂村先生のエッセイにハズレはありません。
しいて言えば、自分の拙さ情けなさ語彙の少なさ頭の悪さ、思い知らされたよう。
クスッと笑ったり、しんみりしたり。 -
こんな風に日常を切り取れたら、
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クスクス笑いながら読了。ほむほむ好きだなあ。「本書のテーマは『偶然性による結果的ポエム』についての考察」だそうで、こういうのを書かせたら、ちょっと右に出る人がいないのではなかろうか。
町を歩いていたら、あるカフェの前の看板にこう書かれていたそうだ。
「今日は、急遽、恩返しに行く為、ランチを休ませていただきます」
「恩返し」しかも「急遽」。穂村さんはああかこうかと想像する(この章のタイトルは「間違いよりも変」)。こういう、日常生活の中で遭遇した、あれ?ということが絶妙な手つきで取り上げられている。
しかし穂村さん、よくこんなに「あれ?」に出会うなあと思いかけて、いやいや違うなと気がつく。穂村さんのアンテナの感度が高いのだ。言葉というものにとても敏感なのだ。そしてそれを言語化するのがすごくうまいのだ。考察の最後がいつもアサッテの方にいっちゃうのが持ち味。
心からそうだよねえと思って、うんうんうんうんと張り子の牛のようにうなずいたのが「前にも云ったかもしれないけど」という一文。そう私も「もう話したよフラグ」が壊れてて、だもんだからつい「前にも云ったかもしれないけど」って言いがち。「自信ないなら云うなよ」って思われてるのかあ、トホホ。 -
穂村さんの本を読むとそういうこと思っていいんだよなといつも安心する。
仮面ライダーとウルトラマンの話が好き。 -
詩人の穂村さんによる軽妙なエッセイ。「言葉遊び」なテイストではあるが、なにかこう爽やか、というか、すぅ~っと入ってくるような文体や表現が新鮮でした。