ワイルドサイドをほっつき歩け --ハマータウンのおっさんたち

  • 筑摩書房
3.75
  • (93)
  • (244)
  • (179)
  • (19)
  • (4)
本棚登録 : 2349
感想 : 245
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480815507

作品紹介・あらすじ

大ヒット作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に次ぐ、
待望の最新エッセイ集!

日常をゆるがす大問題を前に、果敢に右往左往するおっさん(おばさん)たちの人生を、音楽にのせて描く。
ブレイディみかこの新たなる代表作、誕生!!

中高年たちの恋と離婚、失業と抵抗。
絶望している暇はない。

EU離脱の是非を問う投票で離脱票を入れたばっかりに、
残留派の妻と息子に叱られ、喧嘩が絶えないので仲直りしようと
漢字で「平和」とタトゥーを入れたつもりが、
「中和」と彫られていたおっさんの話……
本を読むことを生きがいにしていたのに
緊縮財政で図書館が子ども遊戯室の一角に縮小され、
それでも諦めずに幼児たちに囲まれながら本を読むうち、
いつしか母子たちに信頼されていくこわもてのおっさんの話……
などなど、笑って泣ける21篇。
「みんなみんな生きているんだ、友だちなんだ」!

「『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で青竹のようにフレッシュな少年たちについて書きながら、そのまったく同じ時期に、人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんたちについて書く作業は、複眼的に英国について考える機会になった。二冊の本は同じコインの両面である。」(「あとがき」より)

装丁:岩瀬聡
帯文:高橋源一郎 ヤマザキマリ ライムスター宇多丸

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【感想】
    「今の『おっさんたち』って叩かれすぎだよなぁ」と、まだ20代の私は思う。
    おっさんたちは価値観が古く、ジェンダー意識も希薄で、景気が良かった時代においしい思いをして生きてきた、と思われている。同時に、豊かな時代の利益を食いつぶし、今の惨状を若者に押し付けた世代である、とも思われている。
    しかしながら、自分も一日一日おっさんに近づいている。もし自分が仕事で理不尽なクレームに合い、何も手につかず、クタクタになって家に帰ってきたとき、そこらの中学生から「あなたは今日一日分おじさんになりましたが、日本のためになるようなことをしていませんよね?」と言われたら、「子どもに何がわかる」と怒ってしまうに違いない。
    つまり、おっさんだって目の前の一日を生きるのに必死なのだ。社会全体を俯瞰できるほどの余裕などなく、ただ自分の暮らしを守るために一生懸命戦い続けてきた。そんな彼らを「おっさん」と括って老害扱いするのは、あまりにも盲目的ではないだろうかと、そう感じてしまうのである。

    本書は、そうしたおっさんたちのうち、「イギリスに住むおっさんたち」の生きざまを綴ったエッセイだ。執筆されたのが2018年頃であるため、ブレクジットによる混乱に焦点を当てている記述が多くなっている。

    おっさん叩きは全世界で共通の現象だが、イギリスは日本よりもその度合いが強い。
    というのも、イギリスのおっさんたちの世代は、福祉社会と呼ばれていた頃に社会に出た人々だからだ。失業すれば簡単に失業保険が出たし、怪我や病気をしてもNHS(国民保健サービス)で無料で治療してもらえた。学費も無料だったので大学にも行けた。労働組合の力が強く、現在と比べると労働者の権利がしっかりと保障されていたという。
    世代間が断絶するようになったきっかけは、2010年に保守党が政権を担ってからだ。保守党は緊縮政策を実施し、多くのイギリスの公共サービスを縮小・廃止する。この緊縮財政により76万人を超える雇用が失われた。地方自治体の財政危機は極めて深刻で、無料託児所、コミュニティ・スペース、図書館といった基礎的なサービスが次々閉鎖され、そこに充てられていた公共スペースを売却して予算不足を埋め合わせたという。
    予算の緊縮によって起こったのが、民間企業へのアウトソーシングだ。いわゆる「市場に任せておけば最大限効率化してくれる」理論である。道路工事、ゴミ処理、社会福祉といった公共サービスのほとんどがアウトソーシングされたものの、事態はひどくなる一方だった。民間企業は利益を優先しなければならないため、サービスの質が低下し、街はどんどん荒れていったという。

    これに割を食ったのが、筆者の周辺のおっさんたちも所属する「労働者階級」だ。福祉の縮小によってダメージを受けるのはいつだって労働者層・貧困層だ。いまやイギリスでは5人に1人が貧困状態、150万人が極貧状態であり、ホームレスの数も急増している。第二次世界大戦後初めて、平均余命が短くなったとの統計も出ている。

    緊縮政策によってボロボロになってしまったイギリスでは、今、公共サービスを受けられた世代(おっさんたち)と受けられない世代(若者たち)、かつEU離脱派(おっさんたち)と残留派(若者たち)の間で激しい世代間闘争が起きている。本書はそうした断絶の狭間にいる「危機にあえぐおっさん」の日常を描くのだが、取り上げられている人々は、おっさんでも若者であっても、みな必死に生きている。そこには「お前らは得してる世代だろ」というようなやっかみはない。ただ荒波の中で懸命に生きる人々の様子が、等身大のまま綴られていく。その描写に思わず「世代間格差ってなんだろうなぁ」と感じ、やりきれない気持ちになってしまった。
    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【メモ】
    ●ロボットに仕事を取られるとか、移民に仕事を取られるとか、すぐ危機感を抱いて騒ぎだすから「考え方が遅れている」とか「排外主義者」とか叩かれるけれども、地べたでこうやって外国人の子どもの顔についたチョコレートを拭いてきたのはいつだって彼のような人々なのだ。ロボット犬と義理の息子の顔を交互に拭いているジェフの横顔を見ていると、妙にしんみりした気分になった。この世代のおっさんたちは、ひょっとすると人類史上稀にみる労働の大転換期を生きているんじゃないだろうか。

    ●「世界に目をやり、その問題を見てみれば、それはたいてい年老いた人々だ。道を開けようとしない年老いた男性たちである」
    2019年12月、米国のオバマ前大統領がシンガポールでこんなことを言ったらしい。世界が激動・混迷するこの時代、「おっさん」たちは何かと悪役にされてきた。トランプ大統領が誕生したのはおっさんのせいで、EU離脱もおっさんのせい。どうして彼らは過去の「良かった時代」ばかりに拘泥し、新しい時代の価値観を受け入れようとしないのか。セクハラもパワハラもおっさんのせいだし、政治腐敗や既得権益が蔓延るのもおっさんたちのせい。リベラルの後退も世の中が息苦しくなっているのもおっさんのせいなら、排外主義も社会の劣化もすべておっさんが悪い。彼らは世の諸悪の根源であり、政情不安と社会の衰退の元凶だ。なんかもう、おっさんは世界のサタンになったのかというような責められ方ではないか。
    とはいえ、おっさんたちだって一枚岩ではない。労働者階級のおっさんたちもミクロに見て行けばいろいろなタイプがいて、大雑把に一つには括れないことをわたしは知っている。なぜ知っているのかと言えば、周囲にごろごろいるからである。彼らが世界のサタンになる前からわたしは彼らを知っている。だから、おっさんがサタンなどという神の敵対者になれるほど大それた存在とは思わない。彼らは一介の人間であり、わたしたちと同じヒューマン・ビーイングだ。

    ●2010年に保守党が政権を握ってから、緊縮財政と呼ばれる悪名高き政策を始め、これが何なのかと言うと、一言でいえば「国の借金が膨れ上がってますから、返さないと我々はえらいことになります」と人民を脅して政府が様々な分野での財政支出を削減することだ。つまり、政府が末端庶民のためにカネを使わなくなるということであり、例えば、英国の地方の町では、インフラ投資が長年行われていないために「アンティークをインフラに使うな」というジョークが流行している。病院や学校も規模縮小と人員削減の一途を辿り、地元の公共の建物が続々と閉鎖になっている。
    お金持ちの人々はこうした公共サービスを使っていないので、緊縮財政が大規模に行われようとも痛くも痒くもない。彼らは病院も学校も私立のものを利用するし、福祉の助けも要らない。この政策の影響をモロに被ってしまうのは、いわゆる労働者階級、つまり我々である。

    ●「額に汗して働けば報酬が得られる」みたいな生き方は退屈だと反抗する若者たちがカウンタカルチャーを盛り上げた時代と、「額に汗して働いても報酬が得られるかどうかわからない」歩合制やゼロ時間雇用契約が横行する時代。少しぐらい道を踏み外しても制度で保護された若者たちと、競争競争競争と言われて負けたら誰も助けてくれないばかりか、「敗者の美」なんて風流なものを愛でたのももう昔の話で、負けたら下層民にしかなれない若者たち。おとなしく勤勉に働けば生きて行ける時代には人は反抗的になり、まともに働いても生活が保障されない時代には先を争って勤勉に働き始める。従順で扱いやすい奴隷を増やしたいときには、国家は景気を悪くすればいいのだ。不況は人災、という言葉もあるように、景気の良し悪しは「運」じゃない。人が為すことだ。

    ●英国で近年話題になっているのが、「ベビー・ブーマー世代叩き」と呼ばれる風潮であり、これはEU離脱の国民投票以降、とくに顕著になった。
    「ブレグジットは、ベビー・ブーマー世代が私のような若者に突き立てた中指だった」「どのようにしてベビー・ブーマー世代は最も自分勝手な世代になったのか」みたいな敵意剥き出しの批判にさらされることになり、彼らは「グレイテスト・ジェネレーション」から「レイシスト・ジェネレーション」になってしまったという非難する若者たちさえいる。
    英国のEU離脱国民投票の後で彼らが特に激しく批判されたのは、世論調査の結果、彼らがプレグジットの結果「国内で職を失う人がいたとしても、英国はEUから離脱することが正しいと思っている」と判明したときだった。
    こうした結果から、「強硬離脱派」というのはベビー・ブーマー世代の高齢者が多いのだと考えられるようになり、そりゃそうだろう、高齢者はもう年金暮らしの人が多いので失業とか経済の良し悪しとかは関係がないし、ずっと同じ金額の年金をもらって暮らしていく人たちなんだから、自分のイデオロギーのことしか考えてない自己中心的な人々なんだよ、と若い層からぶっ叩かれるようになった。

    ●だいたい「楽しんだあいつらは許せない」とか「わがまま」とか、モラル的なことを理由に人々が特定のグループをバッシングしだすときは、社会全体に余裕がないときだ。そんなときはだいたい、お金がないから楽しいことは我慢しなさい、なんにつけても節約・倹約し、自分の身の丈に合わないことは諦めて生きていくことが一番の美徳です、と言い聞かされている陰気な時代だ。これを一言でいうと、「緊縮の時代」という。
    人種差別や排外主義だって緊縮財政と大きくリンクしているということが、近年、欧州ではさかんに指摘されている。「自分より得をしている気がする者」を全力でぶっ叩きたくなるのが緊縮時代の人々のマインドセットだとすれば、そのターゲットは外国人にも生活保護受給者にもシングルマザーにもなり得るのであって、「いい時代を生きたベビー・ブーマー世代」もその一つの形態に過ぎない。
    ほんと、何度言っても言い過ぎることはないほど、緊縮財政というやつは罪つくりなのだ。

  • おもしろい!

    英国の労働者階級のベビーブーマー、「ハマータウンのおっさん」たちを描いたエッセイ。
    ブレグジット直前のロンドン。ワイルドサイドをほっつき歩く、還暦を過ぎて人生の酸いも甘いも噛みちぎった強烈なおっさんたちのドタバタした日常。

    あとがきによれば、「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と全く同時期に書かれた本とのこと。「ぼくはイエロー…」はフレッシュな輝きに満ちた感動的なエッセイだった。まるで、コインの裏表。
    でも、読後「人っていいな」としみじみ思う点は同じ。

    おっさんたちは決して裕福ではないが幸せそうだ。少なくとも負け組には見えない。ポジティブでパワフルで、読んでいて愛と勇気をもらえる。

    無理矢理にも人生を肯定したい人におすすめの本。

  • 英国の労働者階級のおっさんたちの日常をブレディさんが紹介する。おっさんたちが直面するEU離脱投票や緊縮財政など。
    『パリのすてきなおじさん』(金井真紀)も、おじさんたちのカッコよさ、移民問題について、生き方で読み応えバッチリですが、こちらもブレディさんが英国の今、おっさんたちの生き様をおもしろく描いています。社会的問題こそは違うけれど、問題に立ち向かう姿とか、普通の生活や日々のこと、恋愛・結婚についてストレートに描かれ、こう言ったのは英国だけでなく、どこでも通じるところがあるんだろうなあ、周りを見回してしまう。気難しいおっさんも、個性的なおっさんも、社会を自分の足で歩いてきたんだろうし、みんな社会をダメにしようと頑張っていたわけではないだろうし、それぞれの苦労があって今がある、少しはおっさんたちに敬意を払わなくちゃね。
    本を通してですが生の声を聞くことで、新しい世界が見えてきたようで刺激的でした。面白おかしく描けるブレディさんだからこそかな。

  • 本書に書かれている著者紹介によれば、ブレイディみかこさんは、1996年から英国ブライトン在住、本書の発行は2020年のことなので、本書発行時点で、25年弱英国に住んでいたことになる。英国で保育士資格を取得し、保育所での勤務経験もあるようである。英国人と結婚し、子供もいる。結婚相手は、60過ぎの、本書の副題にもある「ハマータウンのおっさん(労働者階級のおじさん)」である。本書は、著者の結婚相手の友人たちのエピソードを書き下ろしたもの。著者言うところの「地べた」の英国がよく分かる。

  • 著者が住むブライトンの貧民街(って著者はいうけど)のオッサンたち。やはり緊縮政策っていうのが諸悪の根源なんだけど、何なんだろうね?
    それはそれとしてブレグジットを巡る世代間の亀裂っていうのが、今後日本でも似たような感じになるのかな?
    なかなか興味深かった。

    Amazonより------
    大ヒット作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に次ぐ、
    待望の最新エッセイ集!

    日常をゆるがす大問題を前に、果敢に右往左往するおっさん(おばさん)たちの人生を、音楽にのせて描く。
    ブレイディみかこの新たなる代表作、誕生!!

    中高年たちの恋と離婚、失業と抵抗。
    絶望している暇はない。

    EU離脱の是非を問う投票で離脱票を入れたばっかりに、
    残留派の妻と息子に叱られ、喧嘩が絶えないので仲直りしようと
    漢字で「平和」とタトゥーを入れたつもりが、
    「中和」と彫られていたおっさんの話……
    本を読むことを生きがいにしていたのに
    緊縮財政で図書館が子ども遊戯室の一角に縮小され、
    それでも諦めずに幼児たちに囲まれながら本を読むうち、
    いつしか母子たちに信頼されていくこわもてのおっさんの話……
    などなど、笑って泣ける21篇。
    「みんなみんな生きているんだ、友だちなんだ」!

    「『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で青竹のようにフレッシュな少年たちについて書きながら、そのまったく同じ時期に、人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんたちについて書く作業は、複眼的に英国について考える機会になった。二冊の本は同じコインの両面である。」(「あとがき」より)


  • 青竹のようなフレッシュな少年たちについて書いた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者が
    全く同時期に、『ワイルドサイドをほっつき歩け』で
    人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんを書いた。英国を複眼的に考える機会となったと著者は解説で述べている

    確かに前著を読んだ時のみずみずしい少年の感性には衝撃を受け、深い感銘を受けた

    しかし、今回もおもしろかった
    ベビーブーマー時代の日本で言えば団塊の世代をもう少し広げたような世代 我が家にも一人いるおっさんの話

    EU離脱を誘導し、福祉社会の持続を不可能にする悪の元凶のように言われるおっさんであるが、このおっさんを見つめる著者の目が優しい。しかもとても冷静に見つめ分析している

    おっさんたちが酒を飲みながら、集い語らう中で、NHS
    (国民保健サービス)の問題やらEU離脱の影響などを垣間見ることができた
    家事の傍ら、TVを見ているだけで、英国が抱えている深刻な事情など知りもしなかった
    まあ、深刻な事情は、日本だって同じだけど・・・

    いろんな批判はあるだろうけれど、今の英国や日本を作ってきたのは、戦後の混乱期を立ち上がり、頑張った祖父母の世代、そしてそれを引き継いだおっさんたちであることに間違いはないだろう
    それだけは、素直に認め敬意を表したいものである

  • 前作のもかなり良かったけど、今回のイギリスのおじさん達の話、結構面白かったです。

    何処の国もそうだけど、TVで映るだけじゃ本当の事はわからない。
    特に驚いたのは医療の事。日本じゃすぐ病院に行って診てもらえるのに、イギリスじゃいろんな手順を踏まないと診てもらえない。
    しかも何か月も先とかありえない。
    これは衝撃的だった。

    仕事の面でも結婚観でも違うんだな~
    昔はイギリスってすっごく憧れてたけど、住むのは大変そう。

  • 英国のベビーブーマー世代(1946年〜1964年生まれ)の「おっさん」達を、ブライトン在住でアイルランド系イギリス人の夫を持つブレイディさんが、良いこと悪いこと含め書いたエッセイ。

    2016年のEU離脱の国民投票に関する話は、とても興味深かった。
    離脱派の人(労働階級のおっさん達はここに入る)と、残留派の人たち(ミレニアル世代:1981年〜2000年生まれはここに入る)の世代間闘争、それが親子喧嘩のように巷でも繰り広げられていることや、
    はたまたEU離脱を進める中でアイルランド問題が再熱し庶民まで影響を受けていること、
    更に夫婦喧嘩にも発展し離別にまで至ってしまったこと、
    ふ、深い、深過ぎる。

    緊縮財政でNHS(国民保健サービス)が使えない状況になっているから、病気になっても医者に診てもらえない。というか、診てもらうまでに膨大な時間と労力が要る。
    「ブレグジットすればEUへの拠出金の一部がNHSの資金として使える」という離脱派が流したデマに騙されてしまったのは、そんな逼迫した裏事情があったのかと、なるほど…と唸ってしまった。

    読めば読むほど、緊縮財政は労働階級の方々を苦しめるだけの政策のような気がした。
    図書館すら無くなるなんて!
    (↑図書館愛用者としては、そこは許せない)

    ブレイディさんの本は、いつも自然な一般庶民の話で、リアルな英国人の暮らしぶりが見えるので、とても面白い。

    今回は「労働者階級のおっさん達」の生き様を面白おかしく学ばせてもらった。

  • 今英国で悪者扱いされている「EU離脱を支持する白人労働者階級のおっさん」。そんなステレオタイプを打破したくて書いたのではないかと思われる、一生懸命な「おっさん」たちが愛おしくなるエッセイ集。カテゴライズやラベリングは意味がない。一人一人は多様で個性的だ、ということが実感できる一冊。時に笑える、しかし人生だもの、ほろ苦さや悲哀も漂う。

    一人一人の個性を活写しつつも、イギリスっぽさも上手に描いているのではないかと思った。例えば一つ面白かった発見が、Monty Python - Always Look on the Bright Side of Lifeをyoutubeで開いてみたら「これを自分の葬式で流してほしい!」と言うコメントが多かったこと。

    本書では「EU離脱支持」の背景に緊縮財政があるという主張が度々出現し、緊縮政策の中、託児所、福祉施設、さらに図書館まで閉鎖されて労働者階級が切り捨てられていく様子が書かれている。本の言葉を借りると「reality bites」でイタタタ…となった。(図書館なくなるの辛いなぁ…)
    他国の実情を知ることは、自国を振り返る契機ともなり、思いを巡らせることができて面白かった。

  • 評者◆ブレイディみかこ氏インタビュー
    「おっさんの醍醐味」がわかる本――女性にこそ読んでほしい 図書新聞
    http://www.toshoshimbun.com/books_newspaper/week_description.php?shinbunno=3457&syosekino=13859

    筑摩書房
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815507/

    • りまのさん
      良い夢を。
      良い夢を。
      2020/08/01
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      猫は、やっと目覚めたところです、、、
      猫は、やっと目覚めたところです、、、
      2020/08/01
    • りまのさん
      猫さん、一番最初に本棚に載せた本。りまのの好きなの。
      猫さん、一番最初に本棚に載せた本。りまのの好きなの。
      2020/08/01
全245件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブレイディみかこの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
砥上 裕將
伊坂 幸太郎
凪良 ゆう
川越 宗一
カズオ・イシグロ
宇佐見りん
村井 理子
小川 哲
川上未映子
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×