雑草はなぜそこに生えているのか (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689955

感想・レビュー・書評

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  • 雑草って強いのではなくて、弱い。
    弱いから人のそばに生えるらしい。

    雑草などをぜーんぶとったさら地に初めに生えるのは背の低い一年草、それを放っておくといつのまにか背の高い一年草が優勢になり、それも放っておくと多年草が生えて、さらに放っておくと木が生えて藪になる。さらに放っておくと森になる。森には雑草は生えられない。だから小さな雑草を抜くってことは、もっと強い種に乗っ取られないように循環を断ち切ることで、その種を守ることにもなるらしい。

    雑草って育てようと思うと結構難しいらしい。雑草の種は、野菜と違って同じ時期に芽をださない。冬眠みたいにじーっと土の中で時期を待っていて、一番条件のいいタイミングで発芽するらしい。
    その賢さこそが雑草の強さ。今まで考えたことのないことをたくさん学べました。

    そんなことを思いながら川原の雑草を見ると、今までとは異なる景色が見えてくる。
    専門家のお話は、やっぱりおもしろいですね。

  • 稲垣さんが売れっ子(学者なのにこう言うのもなんですが)なのは、やっぱり読みやすくて面白いから。さらにためになるし、入試にも出るなら、読まなきゃソンだね、中高生は。
    稲垣さんは、専門は植物学、専攻が「雑草生態学」なので、これは一番詳しい分野を書いた本でもある。
    雑草がなぜ繁茂するのかが、よくわかった。

    イギリスのジョン・フィリップ・グライムが、成功する植物の要素を三つに分類した。
    Competitive(競合型:植物同士の競争に強い→大木になるものなど)
    Stress tolerance (ストレス耐性型:サボテンや高山植物など厳しい自然状態でも生きられるもの)
    Ruderal(撹乱依存型:予測不可能な環境変化に強い)
    雑草は最後のR、環境変化に適応する能力が高い、から成功しているのだそうだ。(P27-30)

    植物は自殖(自分の雌しべに自分の花粉をつけて種を作ること)を繰り返すと劣性のホモ結合体が多くなり、生存率が下がる。そのため、自殖しないよう、様々な工夫をしている。その方法を紹介ところも面白いが、雑草はとにかく種を残すことに優れた植物なので、自殖しなければ種が残せない場合は自殖する。同じ種類でも自殖するものと他殖するものに分かれたり(スズメノテッポウなど)、夕方まで虫が来なかった場合自殖するもの(ハコベ、オオイヌノフグリなど)、夏になり、春より虫が減ると閉鎖花となり自殖するもの(スミレ、ホトケノザなど)などバラエティ豊か。(P100-110)

    雑草自体がとても身近な植物なので、この本で得た知識を確認しやすいのも嬉しい。
    稲垣さんがこれまでどんな人生を歩んできたかも巻末にあって、若い人の参考になると思う。

    個人的には、植物を人間に喩えすぎじゃないかな、と思ったけど、その方が面白い、読みやすい、と思う人が多いだろうから、まあ、いいか。

  • 道端の雑草(植物)の見方が変わる。環境を自ら変えられないという制約の中で、子孫を残すという目的からブレずにどう生きていくか戦略を立てるように感じられて、色々考えさせられる...

    一般的には否定的に捉えられがちな「雑」という漢字が持つ「多様性、まとめ切れないもの」みたいなものにすごくグッと来る。序盤。

  • タイトルに惹かれてつい手に取ったが、とても面白かった。雑草は植物としての競争力は弱いが、環境の変化に強く、同じ種の中でも多様性がものすごく大きいそうだ。

    根性論や叩き上げの形容詞として「雑草魂」みたいな言い方をする事に違和感があったので、雑草の実態とはだいぶ違うことがわかり、溜飲が下がったな。ベタだけど、人間社会のメタファーとしても読みたくなる。

  • 環境に適用する。
    周りに敵が多ければ、そもそも発芽しない。環境に合わせて一年草か多年草かなど植物学の分類を超える。

    目的のために絞って対応する。子孫を残すために全力を尽くすから、踏まれても立ち上がらない。

  • ゴルフ場に、周囲の芝生の長さによって背の高さを変える雑草がある(同じ種類だけど個性があって、芝刈りに耐える背の高さのものが生き残る)
    セイタカアワダチソウは外来種で、毒を出すことで猛威を振るったけど、その毒で自分がやられて今はそんなに勢いがない

    とかそういう雑学、からの人生訓。

  • 雑草に関する本。
    今まで生きてきて、雑草とは学校のグラウンドや畑に生えるしぶとい草…くらいに思ってなかった。
    しかし、どこでも生えているように見える雑草は荒れ地にしか生えないという事実に驚いた。緑化が進むと、雑草に日光が及ばないほど背の高い植物が生え始めるからだ。定期的に手入れがされ、環境がリセットされる人間の領域で雑草は生えやすい。だからこそ、人間にとって身近な植物になっている。その環境の中で、人間によって間引かれる植物は生き残るために、人間の活動に合わせた進化をしてきた。それが雑草という植物。

    目に見える世界が全てではない。雑草を見たときに、それが草であることや、自分の身にとって直接的な脅威にはならないことを経験上知っている。しかし、それしか知らない。この本を読んで、自分が意識していないだけで目に見える世界のほんの一部分の世界は、とんでもなく深い世界の歴史や知識へつながっていることを自覚できた。

  • h10-図書館2020.6.3 期限6/23 読了6/3 返却6/5

  • 雑草の面白い話は勿論ながら、雑草の生き様を通して著者が何を想い、何を楽しんでるのかがよく伝わってくる良書だと想いました。

    中高生くらいから大人まで、幅広く楽しめる、雑草学&人生哲学書。

  • 馬鹿な俺には分からん

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著者プロフィール

稲垣 栄洋(いながき・ひでひろ):1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院農学研究科修了。農学博士。専攻は雑草生態学。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て、静岡大学大学院教授。農業研究に携わる傍ら、雑草や昆虫など身近な生き物に関する記述や講演を行っている。著書に、『身近な雑草の愉快な生きかた』『身近な野菜のなるほど観察録』『身近な虫たちの華麗な生きかた』『身近な野の草 日本のこころ』(ちくま文庫)、『植物はなぜ動かないのか』『雑草はなぜそこに生えているのか』『イネという不思議な植物』『はずれ者が進化をつくる』『ナマケモノは、なぜ怠けるのか』(ちくまプリマー新書)、『たたかう植物』(ちくま新書)など多数。

「2023年 『身近な植物の賢い生きかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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