難しい本を読むためには (ちくまプリマー新書 408)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 481
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480684332

作品紹介・あらすじ

ページを開いてもわからないものはわからない。そんな本に有効なのは正攻法の読み方だ。キーセンテンスの探し方から読書会まで、いままでにない読書法を教えます。

感想・レビュー・書評

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  • 難しい本は、焦らず読むのではなくグルグル回り。前後を行ったり来たりしながら何を伝えたいのか、理解しようとする姿勢に意味がある。

  • 文系ですが、学生時代は現代文が苦手でした。

    本書では読解の技法として「具体例をあげる」ことが指摘されていた。
    多分当時の自分は具体例にたどり着くほど経験が足りていなかったんだと、今は思う。
    振り返ると昔の自分は読解の「必勝法」を求めて失敗していたんじゃなかったかと。
    代ゼミの酒井先生や出口さんの参考書を求めては難解な文章を理解できず、挫折をしていたものだった。

    この本を読んで、難しい本の読解とは文章に人生まるごとでぶつかる営為ではないかと思った。
    だからこそ読書会を催す必然性もあるのだろう。

    外堀を埋めるばかりだが、本書の一番の肝は恐らく「部分の積み重ねで全体を理解する」と同時に「全体が部分の意味を定める」という解釈学的循環=グルグル回りにうまく入り込むと云うことだ。
    これを誤ると、2003年イラク派兵時の憲法前文の「誤読」(わざとかもしれないが)のような事態がおきてしまうのかなあと思った。

    併せて読みたい
    「サブカルチャー反戦論」 大塚英志

  • 「こっちこいよ」「頼むよ〜!一緒にやろうぜ」と哲学に誘う愛溢れる良書。
    先日『暇と退屈の論理学』に挫折したので、この解説がとても役に立った。

  • 難解な本を読むことに「必勝法」はないが、「正攻法」はある、というスタンスのもと、読解する上の指針になる着眼点を紹介している本である。文章全体が何を伝えようとしているのか。それを知るために一つ一つの章や節、文といった部分部分と全体を繰り返し読み直す(「解釈学的循環」をする)こと。そして、文章全体が伝えたいことを捉えて、その主張を表すキーセンテンスを見つけること。この二つを基本的な原理として、そのための具体的な方針が説明される構成になっている。

    読解の方法について一番印象に残っていているのは、第六章「その文章のどこが重要なのか?」という部分だ。
    有名な本を読んでも、何がすごいのかが分からない。文章の意味は分かるけど、いまいちただ読んだ、というだけな感じがする。こうしたことは、しばしば経験したことがあるけれど、この感覚をとても分かりやすく説明してくれていた。自分は、文章の意味が分かっただけで、その時代、その人が「どうしてわざわざこんなことを言うのか」が理解できてなかったのだと思う。文章を読むうえで、その文章で言いたいことを理解するだけでなくて、その言いたいことを言うのはなぜなのか、という文脈を汲み取ることは大切だと思う。

    具体例を挙げることで理解が深まる、という話も面白かった。具体例を考える方法を教えるのではなく、具体例を考えていくうえで、その良し悪しを自分で判断する基準を説明しているところにも、「必勝法」でなく、「正攻法」を教えるスタンスが貫かれている。
    絶対に上手くいく方法ではなく、今自分がやっていることが、正しい方向に進んでいるのかどうかをチェックするための着眼点を説明する、という発想は、大切だと思った。

  • 難しい本を読むには、全体と部分をいったりきたりして、ぐるぐる読みをし、キーセンテンスを見つけること。
    それからメタ情報として著者の成り立ちや背景、思考についても知ってから読むと良い
    あと哲学って面白い。

  • 難しい本を読む「必勝法」はないが押さえるべき「正攻法」がある、という、変な煽りのない素直な序文に好印象。
    読書好きな人は無意識にできている読解法が丁寧に説明されており、わかりやすい言語化にスッキリした。
    キーセンテンスを掴むとか、相手の意見を理解するのは賛同するのとは違う、みたいなことって、Twitterでのすれ違い論争を見ていると意外と皆できていないよね、というポイントだと思う。

    「難しい本」のサンプルとして日本の哲学書を使っているのも面白かった。一部を紹介されて続きが気になる、というのは国語の教科書での経験を思い出す。懐かしい。

    読書法を紹介した後に読書会のススメという展開は物珍しかったが、こちらも奇をてらうことなく、素直で実直なノウハウ説明で良かった。

  • 【請求記号:019 ヤ】

  • 第100回アワヒニビブリオバトル「テーマ設定なし」で紹介された本です。ハイブリッド開催。
    2023.6.10

  • やみくもにページをめくっても、理解は深まらないから、まずは正攻法の読み方を身につけよう!キーセンテンスの見つけ方から実践的な読書会まで、これまでとは違った読書の仕方を教えます。

    目次
    1 原理編
    ・キーセンテンスを見つける
    ・文章全体の主張を捉える
    ・グルグル回りで読み解く)
    2 方法編
    ・前提と結論に腑分けする
    ・話の流れを押さえる
    ・その文章のどこが重要なのか?
    ・具体例を挙げ、深く理解する
    3 実践編
    ・ほかの人の「読み」を聞く
    ・読書会をやってみよう

    著者等紹介
    山口尚[ヤマグチショウ]
    1978年生まれ。京都大学総合人間学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在は大阪工業大学非常勤講師、京都大学非常勤講師。専門は、形而上学、心の哲学、宗教哲学、自由意志について

  • 難しい本を読むための正攻法が書かれている。

    まず、全体と部分を循環してキーセンスを見つけるのが原理となる。
    次に、前提と結論を分けて話の流れを掴む、であったり、抽象的な主張には具体例を考えて理解を深めるなど、方法論が紹介されている(前者は例えば批判するときは前提を批判するのか、前庭から結論の過程を批判するのかといった反論にも役立つ。後者は本の内容を自分の中に取り入れる作業となる)。

    最後は、上記をブラッシュアップさせるために、読書会を薦めている。

    哲学中心だが、他の本の文章を例題に、正攻法や、方法論が述べられており、理解しやすい内容になっている。

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著者プロフィール

山口 尚(やまぐち・しょう):1978年生まれ。京都大学総合人間学部卒業。同大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。専門は形而上学、心の哲学、宗教哲学、自由意志について。著書に『難しい本を読むためには』(ちくまプリマー新書)、『日本哲学の最前線』(講談社現代新書)、『人間の自由と物語の哲学』『幸福と人生の意味の哲学』(以上、トランスビュー)、『哲学トレーニングブック』(平凡社)、『クオリアの哲学と知識論証』(春秋社)など。

「2023年 『人が人を罰するということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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