「日本」ってどんな国? ――国際比較データで社会が見えてくる (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480684127

作品紹介・あらすじ

家族、ジェンダー、学校、友人、経済・仕事、政治・社会運動について世界各国データと比較し、日本がどんな国か考えてみよう。今までの「普通」が変わるかも!?

感想・レビュー・書評

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  • 中高生向けに我が国を徹底解剖。
    家族→ジェンダー→学校→友人(人間関係)→経済・仕事→政治・社会運動→日本と、議題の枠を広げていくことで最初から関心を寄せやすい構成となっている。「本書をきっかけに日本をより高い精度で理解しようとしていただければ…」執筆にはそのような願いが込められている。

    解剖と書いたが、ズバズバ斬り込んでいる印象に近い。
    まえがきで早速「日本は(悪い意味で)ヤバい国」とタイトル回収し、第一章では福山雅治の「家族になろうよ」で歌われる家族観が「古臭くて苦手だ」と明言している。以降も全体に渡って彼女のストロング・スタイルが睨みを利かせている感じだ。(特に自民党の不適切発言を列挙したページでは、凄まじい怨恨が伝わってきた)
    福山さんの件は「2020年の紅白でわざわざ歌う内容なのかな」と確かに思うことはあったけど、ジュニア向けだからといって自分の意見を勢いよく晒さなくても良いんじゃないか…?とたじろいでしまった汗

    しかし、というか無論、彼女の意見は決して偏見ではない。
    データから浮き彫りになった日本の問題点を中高生にも分かりやすく解説しているから、日本がちゃんと「ヤバい国」であることが立証されているし、単刀直入な意見も寧ろ的を得ている。

    データもOECDといった国際機関や内閣府の調査を引用しており、非常に信憑性が高い。2000年代の調査結果が時折紛れていたが、結果的に違和感なしだった。(それはつまり問題解決がされていないということになるが…)

    各章においても「何となく肌では感じていたが、いざグラフ化してみると愕然…」という事象が多かった。
    教育費における生徒一人当たりの政府支出はOECD加盟国平均を下回り、家計負担を強いられている。男性の無償労働(収入にならない労働。多くは家事・育児・介護が占める)時間はデータのある30ヶ国の中で最低。入社時には何一つ交渉せず、キャリアの決定権を企業側に委ねている率が一番高い。
    最後のキャリアについては、「メンバーシップ雇用」が元凶だと著者は語っている。「入社する=メンバーになる」という認識で、職務・労働時間・勤務場所は会社に従ってもらう我が国特有(特異?)の形態なんだとか。

    他にも色々あるけど、(上記を含む)全体を通して言えるのは、国民が「そういうものだ」と開き直っているところにある。それは主観だろうと信じたいけど、残念ながらそれをよく表したグラフが存在する。
    妻の平均家事分担率とそれに対する不公平感を数値化した図だが、分担率が34ヶ国中最高値であるのに対し不公平感が恐ろしい程低いのだ。
    2000年代のデータから改善が見られないのも、こうした開き直りが蝕んでいるからでは?

    本書はジュニア向けらしく、今一度周囲の環境を見つめ直し行動する勇気を持って欲しいといったメッセージで締め括られている。自分は自ずと今までの生き方を見つめ直していた。彼女のストロング・スタイルは効果覿面だったようだ。

  • とっても面白かった。統計データの国際比較をもとに、日本がいったいどんな国なのか分析している。統計分析って面白いな。そういう勉強すればよかったな。

    ほぼ同時進行で読んでいた「学校がウソくさい」に書いてあった通り、国際比較データから見ても、日本の学校は異常に1クラスの人数が多い。なんとかしてくれ文科省。そして中学校の先生は世界一忙しい。(そんな現場で頑張ってきた自分をほめてあげたい笑)。
    ジェンダーの問題も日本は異常に遅れている。これは国際比較ではないが、自民党の政治家の過去の女性やセクシャルマイノリティに対する問題発言の一覧も超興味深かった。日本を腐らせ続けている古臭い考えに凝り固まった政治家たち、早く消えてくれ。
    じゃあそういう政治家を、有権者がちゃんと監視しなきゃいけないんだけど、日本の若者は投票率も低く、保守的らしい。保守的と言えるのかどうかを、さまざまな角度からのデータ分析で検証している。これも非常に興味深かった。
    日本の若者は保守的というよりは政治に非常に無関心。そして、かなり政治をあきらめている。自分も社会の役に立ちたいとは思っているが、政治を通してではなく、働いてきちんと税金を納める、などかなり消極的な方法だ。デモなどの政治活動は「過激」「迷惑」という印象をもっており、一部の極端な人がやっていること、と考えているのだ。
    学校で教員が政治的中立を保たなければならないことも、政治への無関心へとつながっている。身近な大人である教員が政治活動をしていたり、そこまでしなくても政治的な持論を披露したりすれば、賛成意見も反対意見も生まれやすくなるだろう。
    最後まで読んで、正解のない、複雑化したこの社会ではあるが、やはり民主主義を求めていくことは大事なのだと納得できた。民主主義が確立された現代(正解)に到達しているのだと考えるから矛盾が生じ、疑問が生まれてくるが、民主主義とは有権者が不断の努力をして、求め、守り続けるものなのだ。
    いろいろと納得でき、とても面白かった!

  • 様々な国際データに基づいて日本という国が世界と比べてどういう順位か、日本という国はどうなのかをジェンダー、学校教育、経済、政治の観点から考察している。2021年出版なので少し古いが、世界から見た日本の立場は変わらない。かさらに格差は拡がっているかもしれないと思う。
    問題点は明らかになってきているものの、なかなか改善まではいかない。
    最後の文章には
    nobody's free until everybody's free.
    すべての人が自由にならない限り、誰も自由にならない。
    という、アメリカで1960年代から70年代にかけて、人種差別に立ち向かう公民権運動で活躍したファニー·ルー·ハマーさんの言葉を上げている。
    あきらめないで、自分にできることを考えてやっていかなくちゃいけないと感じた。

  • 日本という国のリアルな姿を国際比較データを用いて丹念に問い直す本著。中高生にもわかる平易な文章で書かれており、たいへん読みやすかった。

    「家族」や「ジェンダー」の章で、日本の厳しい現実を示すデータが出てくることはある程度想定していたが、「学校」の章における、高校入試が行われるのは先進国では特異であるという指摘や、進学する高校でその後の進路が大きく左右され、かつ生徒の家族背景にも高校間で明確な格差があるという指摘には驚いた。昨今よく指摘されていることではあるが、学歴は本人の努力の成果とは言えないことがよくわかる。

    また全章を通して、データから、日本人の自己効力感の低さや、家族や仕事への満足度の低さ、将来への諦め、他者への冷酷さ、所属する企業や政府にへつらう権威主義の強さが窺われ、つらい気持ちになった。しかし、著者も述べているとおり、まずはひどい現実にきちんと正面から向き合い、あきらめることなく取り組んでいくほかはない。日本を、自分を、手放してはならない。

  • (メモ)高度経済成長での圧倒的な成長を支えたのは、家族内分業、家族的企業であったがそれが時代遅れになっている。労働意欲の低下、学業への主体的意欲の無さや、貧困の連鎖、自己効力感の低下、、、日本に漂う閉塞感。宮台真司は「終わりなき日常を生きろ」と述べるにとどまっているような現実。
    本書では海外データに基づき比較する事で著者なりの政策的な解決策のヒントを示している。

  • かなりわかりやすくかかれていた。データを基に、変な国日本を証明している。福山雅治の「家族になろうよ」が、古臭い家族観や男女のステレオタイプにまみれている、、、という指摘にハッとした。いい曲だと感じている人が多い日本ではないか、、。図書館で借りたが、購入したい一冊である。

  • 世帯の主な働き主、多くの場合は夫であり父である男性、を企業組織に抱え込んでもらい、賃金などを長期に渡って保障してもらえれば、政府が本来責任を担うべき福祉などへの支出を節約できたからです、

    このような明快な言い方で、いろいろおかしくて相当やばい日本、日本政府、自民党をバサバサと。日本に居心地が良いという人の気が知れないけど本当に居心地悪さをデータと本田さんのバッサリざっくり率直な物言い、分析で斬ってくださるので気持ち良い、そして徒労感、不安。
    先のような理由でとても簡単な選択制夫婦別姓という選択さえできないんだよ。

    一つ一つのテーマとデータが絡み合い次の項目に繋がる。時代がつながる。そして分断される様子が若い人向けにわかりやすくしかし断固たる本田さん目線で貫かれていて頼もしく手元にいつも置いておきたい一冊となった。若い世代の方が手に取り選挙に行ったり日本では当たり前みたいに思わされてるけど本当はすごくおかしいことに気づいて声をあげたりできるようになれたら素晴らしいと思うし、若くもない自分たちがダンマリしてきた責任をひしひしと感じこれからでも自分たちを解放し未来を作れるような行動を取れたらと切に思う。本田さんの熱い言葉を忘れずに耳を澄まし目を凝らし今目の前にある現実は当たり前のことではなく、変えるべきことは変えて行こうと、そーゆー当たり前の感覚を広げていこう。

  • はやく変わってほしい…

  • 中高生〜大学新入生あたり(ヤングアダルト)を読者層と想定しているため、かなり読みやすい。
    日本政府や国際機関が発表している調査結果をもとに、日本という国が他の国と比較してどういった傾向や社会状況にあるかを客観的な数値によって把握することを目指した内容。
    「日本はこういう国」「日本人は○○」などの通説や一般化、ステレオタイプを国際社会との数値比較によって覆し、日本における「これが普通」を数値によって否定する。明快でロジカルなぶん説得力がある。
    日本社会をすこしでもよりよいものにしたいのなら、まずは日本社会が国際社会と比べていかに「やばい」のかを知る必要がある。前進するためにはまず足元の反省から。

  • ビデオニュースで本田由紀氏がでていて、前のめりで語っていたので久々に彼女の本を読むことにした。  以前は教育分野の本を読んだ気がするのだけど、そこにも教育に軸足を置きながらも社会を見つめていた著書だった気がする。
     ちくまプリマー新書からですところがいい。私も迷わず手にとった、これなら私にもすらすら読めるだろうと思ったから。果たして予想どおり、予想どおり読みやすいのだけど、表やグラフが多く、その読み込みが少し複雑なものがあったり、指摘されている部分が日本への苦言にとどまらず、自分にもグサグサと突き刺さってくるのでその辺りではすらすらとはいかず、読み淀んでしまった。
     兎に角、“日本”を知りたければ世界の中にいったん映し出して眺めないとその歪みも、微かな輝きも見えてこないことがわかった。自分を知るときも他者に交えなければならないし、地球を外から見ると人生が変わるというのと同じ原理だ。
     
     しかしてその処方箋の部分は少ないボリュームで物足りなかったので、紹介されていた他の著書で読むことにする。

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著者プロフィール

本田 由紀(ほんだ・ゆき):東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は教育社会学。著書に『教育の職業的意義』『もじれる社会』(ちくま新書)、『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)、『社会を結びなおす』(岩波ブックレット)、『軋む社会』(河出文庫)、『多元化する「能力」と日本社会 』(NTT出版)、『「家庭教育」の隘路』(勁草書房)、『若者と仕事』(東京大学出版会)、『学校の「空気」』(岩波書店)などがある。

「2021年 『「日本」ってどんな国?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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