アメリカを作った思想 ――五〇〇年の歴史 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
3.23
  • (2)
  • (3)
  • (5)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 170
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480510648

作品紹介・あらすじ

「新世界」に投影された諸観念が合衆国を作り、社会に根づき、そして数多の運動を生んでゆく――。アメリカ思想の五〇〇年間を通観する新しい歴史。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  本書は、アメリカを作った思想、その500年にわたる歴史を概観した通史である。
     有名なメインストリームの人物、思想ももちろん紹介されているが、黒人、宗教関係、女性、非主流の人物等の、時代時代に刻印を刻んだ思想が取り上げられている。

     本書の意義は、日本語訳書のために付された序文に端的に表されている。著者は言う、「思想史は少なくとも、私たちの時代のような御しがたくて不安定な歴史的瞬間において、私たちと過去の思想家たちとの継続的な交際を提供することができます。すなわち、私たちの広義の現在の条件をいっそう明確にしてくれたり私たちが想像さえしていなかった解決策を検討させてくれたりする言語を、私たちにもたらすかもしれない思想家たちとの交際を」。
     
     現代社会においてその巨大な存在感を有するアメリカの歴史に関心を持つ者にとって、その社会の在り方に影響する"思想Ideas"について考える参考書として、大変役に立つ一冊となると思われる。

  • 「思想史の主要な目的のひとつは、相争う複数の道徳的観点を下支えしている観念を理解することである。」って刺さった。
    分断が深刻になる現代において、論破ではなく、議論をするための重要な視点ではないか。

  • 第1章 諸帝国の世界―コンタクト以前から一七四〇年まで

    アメリカ大陸がヨーロツバに及ぼした思想的影響
    先住民とヨーロツバ人との思想的交流
    秩序なきアメリカ世界におけるピユーリタニズムの思想的秩序
    第2章 アメリカと環大西洋啓蒙―一七四一年から一八〇〇年まで
    環大西洋文芸共和国
    啓蒙された眼とその盲点
    革命的共和主義
    トマス・ペインと観念の戦争
    第3章 リパブリカンからロマンティックへ―一八〇〇年から一八五〇年まで
    メイド・イン・アメリカ
    聖書科学とリベラル・プロテスタンティズム
    メイキング・オブ・トランセンデンタリズム
    南部精神のスプリット・スクリーン
    考える女性
    第4章 思想的権威をめぐる諸抗争―一八五〇年から一八九〇年まで
    ダーウィンの『種の起源』の科学的受容
    信仰とフィンチについて
    進化論的社会思想の諸相
    ヴィクトリア朝文化とその批判者たち
    第5章 モダニズムの諸反乱―一八九〇年から一九二〇年まで
    シカゴ万博―観念の祭り
    プラグマテイズムー知識の新しい理論と「玟理」の新しい観念
    プラグマティズムから革新主義へ
    文化的多元主我の政治
    第6章 ルーツと根なし草―一九二〇年から一九四五年まで
    近代化の影
    失われた世代からアフリカン・アメリカン・ルネサンスの建設へ
    ニューディールの思想的基盤
    亡命知識人たちのアメリカへの到来
    第7章 アメリカ精神の開始―一九四五年から一九七〇年まで
    戦後における知的機会の拡大
    戦後政治解説―左、右、そして「枢要な中心」
    真正性の探求
    宗教と知識人
    第8章 普遍主義に抗して―一九六二年から一九九〇年代まで
    一九六二年、あるいはその周辺
    アメリカによるボストモダニズムの発見
    アイデンティティの政治と文化戦争
    エピローグ グローバリゼーションの時代のアメリカ再考、あるいは会話の継続

  • 2021年度第2回見計らい選定図書
    http://133.11.199.94/opac/opac_link/bibid/2003576291

  • 自分の知識不足を痛感した。

  •  人文の文献を読むためには、内容そのものの他に過度に装飾的に書かれる修辞習慣にも馴染む必要があり本書もその多分に漏れない。というか訳文がすべっていないか?逆接の接続詞を「けれども」で書かれるといちいち突っかかって読みにくい。

     一部の隙なくポリティカリィコレクトであるのは言うに及ばない。初期ハーバード大学の知的所産が、学長以下に給与として与えられた黒人奴隷の労苦に依存していたことを述べるのは決して忘れないし、ジェファーソンと同時期に女性が行った知的生産を取りこぼしてはいけないのである。また黒人が建国以来一貫して知的生産活動を行なってきたことを言い残しなどしてはキャリアが危ない。現代アメリカのリベラルな大学教授としては当然である。名前からしてドイツ系だが。
     それはともかく、反基礎付け主義なるものがあり、人権観念そのものを脅かしていることが本書のクライマックスとなっていた。これはトマスクーン科学革命の構造に端を発する思想であり、普遍主義を否定するものであるという。反基礎付け主義を受け入れるならば、人権もまた普遍的ではないということになり、アメリカの正義は消えてなくなる、という問題意識があるらしい。
     しかし、歴史的に見ればそれはそうじゃないだろうか。アメリカでも日本でもどこでも人権は政治的闘争によって獲得されたものであり、向後の闘争の回避のために擁護されるべき権利が妥結され守られることになったわけである。主張されざる権利が擁護されることはない。

  • 133.9||Ra

全9件中 1 - 9件を表示

ジェニファー・ラトナー=ローゼンハーゲンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×