- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480439277
作品紹介・あらすじ
連載二十周年を超え、いよいよ快調なキシモトさんの不条理日常エッセイ「ネにもつタイプ」第3弾を文庫化。ボーナストラックとして単行本未収録回を大量増補。加えて文庫版あとがきを付す。奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールドが読めるのはちくま文庫(と『ちくま』)だけ!
感想・レビュー・書評
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筑摩書房 ひみつのしつもん 岸本佐知子 著
https://www.chikumashobo.co.jp/special/kishimoto_sachiko/
単行本
筑摩書房 ひみつのしつもん / 岸本 佐知子 著
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815477/
ひみつのしつもん 岸本 佐知子(本文) - 筑摩書房 | 版元ドットコム
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480439277 -
このところ忙しくて、隙間時間にさっと読めるものを……と選んだエッセイ集、面白かったです
連載エッセイの文庫第三弾、ということですが、私はこの本が初めまして
サラッと淡々とした語り口なんですけど、連続で読むと想像以上にどっしりと重いというか、脳を使うような濃厚さがあります
本当に数話読んでちょうどいいような読後感
でも、一話一話を読んだ限りではそんな風には感じないんですよね
なんでしょうこの感覚、不思議です
自身をぐうたらのダメ人間として描いてらっしゃるのですけど、それが営業的なビジネスぐうたらでなくて、本当に自然なノリのナチュラルぐうたらとして描かれているので、嫌悪感なく親近感と共に読み進める事が出来ました -
『単行本『ひみつのしつもん』刊行から、気づくともう四年が経っており、今回もこうして文庫にしていただき、とてもうれしい。文庫化に際しては、単行本未収録だったもののなかから十一本を選んで増量した』―『文庫版あとがき』
本は単行本の形が好きなので、岸本さんのエッセイ集は全て単行本で所有している。そして、基本的に単行本に持っているものは文庫化されても買い足したりはしないのだけれど、「二割増量」と聞いて手が伸びる。「気になる部分」(2000年)も「ねにもつタイプ」(2007年)も「なんらかの事情」(2012年)、そして「ひみつのしつもん」(2019年)も単行本しか持っていないのだけれど。
別に著者の言を疑う訳ではないのだけれど、目次を見比べて、確かに新たに十一本の○○(と、ここでこれを何と呼んでよいのか逡巡するが答えは出ない)が付け加えられていることを確認する(52+11=63)。文庫化されるに当たって順番を並べ替えたりする作家もいるけれど、これは律義に単行本の順番を踏襲している。そして、所々新たな○○が挿入されているという形。だからどうということではないけれど数編の「ああこれは読んだことがある」というもの以外は、読んだ記憶が曖昧なものや全くないものが入り乱れて、新しい気持ちで読み進める。因みに新たに加わったもののタイトルは『恋』『雨と洗濯』『初心万』『赤いリボン』『組織』『天井の祖母』『デパート』『サークルK』『「可愛い」のこと』『ひぎる』『センター』の十一本。
『このあいだ、心ときめくニュースを読んだ。地下鉄のトンネル内で一人の老人が捕まった。その人は三十年くらい前に切符を買って地下鉄構内に入ったあと、ずっとトンネルの中に住みついていたのだという。地下鉄職員のあいだでは、以前からトンネルに「地下鉄仙人」が住んでいるという噂がささやかれていたが、 都市伝説ではなかったのだ』―『エクストリーム物件』
岸本さんのエッセイはいつも出だしから身構えさせられる。これは本当のことなのか、それとも練りに練った構成とオチに後から付け加えられたマクラなのか。ついつい、諧謔趣味のオチを活かすために何気なさを装っていると、疑いたくなるような俄かには信じ難い話が多い。そのマクラが、時々開陳される会社員時代の思い出話、学生時代や子供の頃の思い出話から始まっていたとしても油断はならない。この稀代の自虐ネタ的話の振り方の巧みな才媛は、そんなウソ話くらい幾らでも創作できるだろう。そう思っていると『父 セリフ三選』のようなしみじみとした逸話が披露される。さすがにそんなウソまではつくまいと思いもするが、いやいや油断大敵(って別に戦っている訳ではないのだけれど)。
「ねにもつタイプ」のポップに、『よく「エッセイのくせに嘘ばかり書いてある」と言われるのですが、けっしてそのようなことはありません。全部本当に起こったことです。すくなくとも、私の頭の中では。』とあるように、世の中には本当に街角でカメレオンを背負った人に一度ならず出くわす人(川上弘美)も居るようだから、一応「本当のこと」と受け取っておくにしても、何でもないことを面白く脚色して話しているのは間違いない。そういう「面白さ」を逃さない才能が数々の少し変わった作風の作家を翻訳せしめているのは間違いがないのだから。 -
大地の歌と爆心地で大爆笑
ちょっとした空き時間に読むのに最高なんだけど面白すぎて何回電車で笑いこらえたか、、、、
初めての岸本さんエッセイ、大好きになりました -
大好きな「ちくま」の長期名物連載「ネにもつタイプ」の文庫化第3弾。毎月読んで楽しんでるけど、文庫も買ってしまう。単行本未収録回も入って文庫版あとがきもつくのでかなりおいしい。
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エッセイ、という枠に収まらない、相変わらずのぶっ飛んだ思考の過程がサイコー。ずやずや。
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[1]初めて読んだ著者ですが、愛してしまいました。破壊的で危険です。ときおり吹き出すのを止めようとして「ふひっ!」とかいう音が出てきて周りに誰もいないのにキョロキョロしたり「く、く、く、く、く、く、く」となって苦しかったり。こんなふうになったのは昔、ジェラール・ダレルの『虫とけものと家族たち』を読んで以来かなあ。
[2]ものすごい才能です。素晴らしい妄想力です。ぼくも妄想しますがなかなかここまではいけないので妄想の神様として崇めることにしました。
[3]挿絵がクラフト・エヴィング商會というのに惹かれて読み始めたのですが大当たりで初めて読んだわけなのでまだ何冊も楽しめると思うと嬉しい。
■心覚えのためのメモ
生まれようと思ったって、なかなか日本三大ドヤ街で生まれられるものではない。(p.18)
実際に行くなどもってのほかだ。(p.22)
もう手遅れだ。ボブとサムはすでに私の中に入りこみ、(p.30)
ラジオ体操第−3。(p.38)
やっぱりばれたのだ、と思う。何がかは自分でもわからないが、そう確信する。(p.40)
私とゴキブリは、連れのように並んで横断歩道を渡りきった。(p.62)
いつそ、想念を物質化できればいいのに。(p.64)
正しい「ちょうちょ結び」の習得は大事にとってある。(p.78)
桃をご神体にした桃教、というのはないのだろうか。(p.82)
「鼎」とか「凹」なんかはいかにも魅力的な間取りだし、(p.86)
私が心の底からやりたいことは、たとえば、「つるっつるすること」だ。(p.92)
おそらくもう五輪はいたるところに偏在するのにちがいない。(p.96)
しかし成長は、いったんしてしまうとその後が存外つまらない。(p.132)
そうやって一つひとつ自分をリセットしていき、まっさらな状態でもう一度成長の瞬間を味わおうという作戦だ。(p.132)
きっとこれから先も何度でも忘れるだろう。(p.134)
そしてもちろんみんな何らかの守護凡人になる。(p.144)
名前はとうしよう。「善の組織・ほほえみ」とか。(p.156)
自分から落ちたネジなのか。(p.170)
十字顔の人のそれまでの人生や、その日いちにちのことを考える。(p.174)
ボトルの中身を説明しているのではなく、説明が中身を決定するのだとしたら。(p.251)
かかとはわたしです。(p.264) -
翻訳家のエッセイ。たまたま手に取り1編読んでみて面白そうだったので読んでみた。面白いといっても爆笑というのではなく、クスッと微笑するような感じ。著者がどれだけ自分を滑稽に無様にドジに描いても、描いても知的な感じがそこはかとなく漂う。