- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480435927
作品紹介・あらすじ
時間は有限だから「古いパラダイムで書かれた本」は捨てよう!「今、読むべき本」が浮かび上がる驚きの読書術。文庫版書下しを付加。解説 吉川浩満
感想・レビュー・書評
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歯ごたえがあり過ぎて噛み切れない。ようやく嚥下しても消化できない。知的欲求が深く、広く満たされる本。読まなくても良いというより、今必要なパラダイムに触れる事が重要で、上書き更新される前の価値観は優先度が低いという事。
カニッツァの三角形という錯視図形がある。三角形そのものを描くのではなく、パックマンが三匹口を開けたような配置で、その空白部にまるで三角形があるかのように錯視させる。これに対し、純粋意識がどうとかいうが、単に人間の脳が進化論、生物学的に、その空白部に意味付けをしているに過ぎない。この話は本著にも引用されるが(橘玲は学者ではなく、論文の紹介、オムニバスをしているだけだ)、本著の構成にとっては示唆的。つまり、不要な本を消去する事により見えてくるパラダイム。誤ったパラダイムに限らず、実際、1を聞いて10が分かる経験論的ショートカットにおいて2や3は不要。世の中、同義反復が多い。
面白い話、勉強になる挿話多数。私が最も好きな話を編集して引用する。
ー 80年代思想家はロックスターみたいなものだった。しかし日本ではなかなか翻訳がなかったので、何が凄いのか誰も知らなかった。とある思想書が日本語で読めると言うことで当時の文系学生の間で事件になったリゾームという雑誌。それを読んでもう何が書いてあるのかさっぱりわからなかった。こうしたムーブが急速に廃れていく。そのきっかけは、物理学者アラン・ソーカルによる一つの論文だ。ソーカルはずっとポストモダンの思想家が物理学や数学の専門用語を濫用することが不満だった。文系の知識人が使う科学的な概念や述語がほとんどデタラメだからだ。そこでソーカルは、そのでたらめを適当につなぎ合わせて論文ぽく仕立て、最も権威があるとされた思想誌に投稿。すると、そのインチキな論文が掲載されてしまった。これにより、実は誰もが論文の内容を全く理解していなかったことが明るみになった。
今でもこうした事は良くある。本読みとして、肝に銘じておきたい錯視だ。
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借りたもの。
「読まなくていい本」を選別するために、知の最前線……知識や論争を挙げ、「複雑系」「進化論」「ゲーム理論」「脳科学」「功利主義」の5つの分野を取り上げ解説したもの。
昨今のグローバリズムで求められる分野についてを解説。
現代版リベラルアーツみたいなもの?だった。そういう点では、池上彰『おとなの教養』( https://booklog.jp/item/1/4140884312 )に通じるものがあった。
章の最後にその分野に関するブックリストがある。
世界が二元論ではない。
哲学的な内容が科学で説明される、線引きが曖昧になっていることが伝わってくる。
中には近現代で発表当時は革新的だったが失敗?に終わった?今となっては疑似科学になってしまったような古典からの言及まで。まるで施川ユウキ『バーナード嬢曰く』( https://booklog.jp/item/1/4758063710 )的な?
ポストモダンの限界。ドゥールズ、ガタリ『リゾーム』(『千のプラトー』https://booklog.jp/item/1/4309463428 )からのアラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン『「知」の欺瞞』( https://booklog.jp/item/1/4006002610 )の件は、まぁ、確かに言葉遊び(知的曲芸)か。哲学はゴミという話か……
複雑な世界が小世界の相似系の組織化(フラクタル)からカオス理論
ダーウィンの進化論をより発展させ、ヒトが進化の頂点ではなく、多様な可能性の1つに過ぎない。当時のヨーロッパにおいて衝撃的な発見。
社会生物学という分野の発展。男女の愛の違い、生殖戦略が異なり“利害関係”が一致しないこと。
…この辺りもよく分かっていない事が多いなとしみじみ思う。
ゲーム理論の話は、ビジネス、マーケティングにも関わる話なので興味深かったのだが、人間の判断は非合理であること、統計学とビッグデータの的確な解析の必要性を理解するにとどまる。
脳科学分野に関しては、意識の問題に取り組める哲学という分野が死んだ(神は死んだ?)とする潮流を取り上げる。
脳自体のブラックボックスぶり…脳の錯覚(勝手に情報を補う)、トラウマ理論で巻き起こった災厄――記憶の改ざん――についての紹介や、フロイトのエディプスコンプレックスはデタラメである(本質ではな)なぜなら近親相姦を避けるウェスターマーク効果なるものがあること。
人間には認知的不協和があり、新しい理論を受け容れる事への抵抗がある。
自由意思の幻…
どの分野も大まかな流れを掴めるが、いささか専門性に欠けるのと、全体的に批判精神(それまでの流れをひっくり返すこと)に終始している印象も受けた。 -
勉強になる本が紹介されてる本。実際に紹介されている本を読むと面白かった。ただし、難しい本も多いので、入門として紹介されている本から読むのがおすすめ。順番に読んでます。
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興味がない分野への導入書といった内容の書物。平易な文章なので難しい内容でもすんなり読めます。
ただし、「平易」に書こうとしすぎて少々暴力的表現が目立ちます。あんまり、いい気分はしません。
あと、著者自身が理解できない分野には「無意識」とか「複雑」と言う曖昧な言葉で逃げる癖があるようです。
アマゾンレビューに「ギガバイトからキロバイトになっててグッと圧縮されててわかりやすい」とありましたが、いわゆる不可逆圧縮されてますし、ところどころ著者の独自解釈や主張が織り交ぜられてます。出展は紹介されてますので、そちらを読まれてはいかがでしょうか。
また本書以外にも導入書や叢書的立場の本はあるので、そちらの方が有用でしょう。
そういった意味で本書こそ「読む必要のない本」かもしれません。
少なくとも私はそう感じました。 -
読まないといけない(=読みたい)本があまりにも多すぎるこの頃。どうしたらいいのだろうと思っていたら図書館でたまたま見つけました。「なるほど!読まなくていい本を決めればいいのか!」目から鱗です。
これまでの知識の集積によって,世界の捉え方は格段に変化してきています。たとえば,天動説の時代に書かれた知識は,現代(地動説の時代)を適切に捉えられないわけで,現代を捉えるにはそれを捉えるために適切な知識が必要なわけです。
そういった「最先端な」知識を紹介しようと試みたのが本書です。「なるほど,ここにアクセスすればいいのだな」と唸らせられました。「読まなくてもいい本」を通して「読むべき本」を教えてくれる面白い本でした。解説の吉川浩満氏が書いていますが,「読まなくてもいい本」をさんざん読んできたからこそ,著者は「読まなくてもいい本」を選別できており,著者の優しさ溢れる一冊です。
しかし,「読むべき本」にもっとアクセスしなければと思わせられた一方,ひねくれ者の私は「読まなくてもいい本」もしっかりおさえながら「読むべき本」をおさえなければと思ってしまい...結局は読まないといけない本がただ多くなるという...。悲しいやら嬉しいやら。
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橘さんの本は好きで、よく読んでます。その博識ぶりから察するに、橘さん自身もものすごい読書家なのではないかと思います。そんな橘さんが、『現代の知を語るならこれくらいは知ってなきゃダメ』という内容を整理し、それらを学ぶために最良の書籍のリストを作ってくれました。内容は完全に『読むべき本』の読書案内です。タイトル後半部分の、『知の最前線を5日間で探検する』の方が内容をよく表しており、まさにこの書籍は知的探検のための最良の指南書です。本文中に、『古いパラダイムでできている知識をどれほど学んでも、なんの意味もない』と書いてあり、古い知識のいくつかが紹介されていますが、それらも歴史として学べばさらに自分の教養の引き出しが多くなると思います。ただ、膨大な知識体系を300ページの本1冊でまとめようという野心的な書ですので、やはり説明は簡素ですし、橘さんの私見も多分に入っていますので、やはりこの本を読んで終わりにするのではなく、紹介されている多くの本にチャレンジしてみるべきだと思います。 何にしても、おススメの本です。
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《フロイトは重度のコカイン中毒で、精神分析で有名になってからも実際の患者をほとんど診たことがなく、たとえ診察してもその診断は間違っていて病気はまったく治らなかった》(p.244)
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これから先の未来を見通してみたい。だが、モヤモヤするなぁ。とそんな気分の時に知り手にした書籍。世界はミクロマクロの中でトレードオフされゲーム理論で修練する。そう言うお話でしょ。と事軽く論破してくれた様子が小気味良い◎タイトルの程は論の後に出典形式で参考書籍を列挙し態を保つが、それはどうでも良く。心はシュミレーションマシンで有るのワンセンテンスで十分だ(^^)あぁ気持ち良い晴れ渡る。美味しい読書体験完了
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非常に面白い本です。
数百年にわたって前提としてきた知の集大成が、今まさに再構築されようとしていると言うことがわかります。
ここ数十年での進化論の発達により、大きく様相が変わってきています。
端的に以下の文章が本書の内容を示しています。
遺伝学、脳科学、進化心理学、行動ゲーム理論、行動経済学、統計学、ビッグデータ、複雑系などの新しい〝知〟は、進化論を土台としてひとつに融合し、ニューロンから意識(こころ)、個人から社会・経済へと至るすべての領域で巨大な「知のパラダイム転換」を引き起こしている。