一人盆踊り (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 50
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480435842

作品紹介・あらすじ

何者にもおもねらず、孤独と背中あわせの自由を生きてきたフォークシンガー・友川カズキ。生き様に裏づけられたエッセイを精選採録。 解説 加藤正人

感想・レビュー・書評

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  • そもそも「一人盆踊り」という曲は、何かに憑りつかれたようなそれでいてやけくそのような気味の悪い曲で大好きである。
    その曲名を書名に冠してあるところがまずよい。
    そして若い頃の著者の暮らしぶりというか酔いぶりや考えがわかってよい。
    最後に収録された文章は聞き書きらしく、MCやインタビューなどでお馴染み(なのか?)の著者の語り口が生かされていてよい。

    本書を読むような人は著者の歌のファンくらいのものだろうが、だから私も読了後に「無残の美」「彼が居た―そうだ!たこ八郎がいた」を聴いてしまったというか、読書中もしきりにこの2曲が聴きたくなってしまったのは、著者にとって肉の一部のようだったこの2名の死者(プラス中上健次)に関する文が目立ったからだ。
    彼らへ捧げる「一人盆踊り」というわけだったのだな、と読み終えてしみじみ。。

  • 恥ずかしながら私は友川さんのことお名前くらいしか存じ上げてなくて、今回友川さんを敬愛する義兄からこの本を借りてはじめて友川さんのことを知った。そんな友川さんのこと全然知らない私にとってもこの本はすごく面白くて一気に読んでしまった。
    弟さんの話はとても読んでて苦しかったし、森敦さん宅での話はとてもおもしろい。地蔵の話も怖いけど、とにかく興味深くどんどん読める。こんな私にもちゃんとありありと情景が浮かぶし、気持ちが持っていかれそうになる。
    そして、最後の海外でのライブについての語り下ろしまで楽しく読ませていただき、やっとこ今はじめて友川さんの動画を見るに至った。

  • 私はフォークシンガーとしての友川カズキのことはよく知らないが、彼が書いた西村賢太『暗渠の宿』の文庫解説を読んで「面白い文章を書く人だな」と思った。
    それで、『天穴の風』というエッセイ集を読んだことがある。

    本書は、友川が過去に出したエッセイ集などからのベストセレクションともいうべき一冊(文庫オリジナル)。
    新旧のエッセイと詩から精選し、巻末には語り下ろしのトークエッセイを3編付している。

    当然、『天穴の風』から選ばれた文章も一部あり、私にとっては既読だが、それはそれとして楽しく読めた。

    放浪の果てに鉄道自殺を遂げたという実弟・覚(さとる)について綴った文章が、胸にしみた。
    中上健次やたこ八郎、中島葵との思い出を綴ったエッセイもよい。
    総じて、亡くなった人のことを書くときに筆が冴えるのだ。
    《生きるということは沢山の死を否応なく味わいあびるということかもしれない》という印象的な一節もある(202ページ)。

    それ以外にも、ハッとする言葉が随所にちりばめられている。さすがは詩人である。二、三引用してみよう。

    《他人よりも何よりも自分と折り合いがつかなくてね》136ページ

    《これは持論なんですが、体力のある人から死んでいくんですよ。健康な人ほど、あっさり死ぬ。なぜなら、無理が利くから。病気がちな人、カラダが弱いって自覚してる人の方が、無理できない分だけ長持ちするのよ》338ページ

    《腰痛もそうなんですが、やはり一番の持病と言えば、貧乏ですね。これは全く自慢になりませんけども。
     貧乏はね、法定伝染病です。私見によれば》340~341ページ

  • 友川カズキという人は、とてもシャイなんじゃないかと思う。
    素面で人の前に出ると、恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない。
    だから、早々に酒を煽ってしまう。
    すると、今度はめちゃくちゃが先に立ってしまい、叫び、歌い、転げ回り、めちゃくちゃだ。

    友川カズキは、日雇いの立ちんぼであることを辞さない。
    最後は、立ちんぼ仕事で稼げばいいやと達観している部分がある。
    だから、友川カズキは、他人に阿ることをしない。
    自由に喚き、自由にバクチをやり、自由に生きる。
    友川カズキには、敵わない。

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著者プロフィール

1950年生まれ。詩人・歌手・画家・競輪愛好家・宴会師。著書に「友川カズキ歌詞集1974−2010 ユメは日々元気に死んでゆく」など。

「2015年 『友川カズキ独白録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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