吉行淳之介ベスト・エッセイ (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 荻原 魚雷 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 75
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434982

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。
    吉行淳之介は初めて読みましたが、文章が軽くて明るくてするする読めました。
    時代の違いがあるので風俗や考え方は昔だなぁと思うところもあるのですが、今でもはっとするところもありました。
    「生きているのに、汚れていないつもりならば、それは鈍感である」、これはしみじみします。
    作家さんたちとの思い出も面白かったです。
    「根岸の里の侘住い」「それにつけても金のほしさよ」…俳句を読めといきなり言われた時のために覚えておきます。
    苛々することがあっても、これからは「気に入らぬ風もあろうに柳かな」と唱えればなんだか落ち着いていられそうです。

  • いい文章だなあ うまいなあ うまいこと落ちをつけるよねえ と感心しながら読んだエッセイ。

    近頃ネットの情報満載の文章ばかり読んでいたため、このうえなく癒やされ心地よかった。

    この人のエッセイは、つらつらとあちこち寄り道しながら思いつくまま書いているようでいて、実のところものすごく計算された構成になっている。

    文章作法を研究したところで、常人はこんなふうに洒落た感じに主張をユーモアでカバーしながら書くはなれ技は無理だ、と思う。

    もてたんだろうねえ
    飲む打つ買う をどこまでも上品に嗜むタイプ
    と文章からわかってしまう。

    ミソジニーなだけでなく、今日なら差別的として校閲で直されそうな表現も多々あり、そこが引っかかって読めない人もいるかもしれない。そこも含めて時代を感じる。昔はこんな男がいっぱいいたよなと。

    ベスト・エッセイなので1957年あたりから晩年までのエッセイが入っている。だけど、終生つらっとした顔をしてたんだろうと思うとおかしくなる。私にとってこの人のイメージはドラマ「あぐり」の淳ちゃんなのだが、案外あんな感じだったのかもしれない。

    印象に残ったのは、「営業方針について」。
    ーー純文学作品を書く場合に私は私の中にいる一人の読者を意識してしか、書くことができない。ーー

    だからたくさん売れないし、たくさん作品を書くこともできない。というわけで、食べていくためにはマスコミ雑誌の仕事を受けるのだと。

    ーーそういう性質の仕事が、正反対の純文学の仕事に、悪影響を与えぬようにするには、どうしたらよいか。ーー
    しかし、その点吉行は自信があるという。
    ーー昔、売らん哉式の雑誌の編集者をしていて、昼間は「どうやったら売れるか」ということばかり考え、そのための原稿もたくさん書いた。(中略)そして、夜、帰宅して、同人雑誌の原稿を書いた。そのときの体験から言って、頑固に自我を守っておれば、筆は荒れるんものではない。という信念を持っている。この場合の筆とは、文章ばかりでなく発想の基盤自体を指す。ーー

    純文学作家もこんなことを考えてるんだな、やっぱりすごいなと思うのだけど、わざわざこんなことを述べるのは、頑固に自我を守っておらねば流される ということでもあるのだろう。

    もらった本、暇つぶしに読んだら捨てようと思っていたけど、やっぱり置いとくことにした。読みが荒れたときにまた読んで癒やされよう。

  • 第11回(テーマフリー)

  • 吉行淳之介ベスト・エッセイ
    著者:吉行 淳之介
    編者:荻原 魚雷
    解説:大竹聡

    【版元】
    洗練された表現に柔軟な諧謔。「文学」「男と女」「紳士」「人物」のテーマごとに厳選した、吉行淳之介の入門書にして決定版。

    シリーズ:ちくま文庫
    定価:本体950円+税
    Cコード:0195
    整理番号:よ-17-6
    刊行日: 2018/02/06
    判型:文庫判
    ページ数:384
    ISBN:978-4-480-43498-2
    JANコード:9784480434982

    文学を必要とするのはどんな人か? 紳士の条件はロクロ首になること? 腹が立っても爆発寸前になったときにおもい浮かべる言葉とは? 多くの作家、編集者に愛され、座談の名手としても知られた人生の達人が、戦争や赤線時代の回想から、創作の秘密、性と恋愛、酒の飲み方、四畳半襖の下張「裁判」の法廷私記まで、「水のような」文章で綴ったエッセイ集。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480434982/


    【簡易目次】
    第1章 文学
    (文学を志す
    私はなぜ書くか ほか)
    第2章 男と女
    (なんのせいか
    なぜ性を書くか ほか)
    第3章 紳士
    (紳士契約について
    金の使い方に関する発想法 ほか)
    第4章 人物
    (荷風の三十分
    三島事件当日の午後 ほか)

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著者プロフィール

大正十三年(一九二四)、岡山市に生まれ、二歳のとき東京に移る。麻布中学から旧制静岡高校に入学。昭和十九年(一九四四)九月、岡山連隊に入営するが気管支喘息のため四日で帰郷。二十年東大英文科に入学。大学時代より「新思潮」「世代」等の同人となり小説を書く。大学を中退してしばらく「モダン日本」の記者となる。 二十九年に「驟雨」で第三十一回芥川賞を受賞。四十五年には『暗室』で第六回谷崎潤一郎賞を受賞する。主な作品に『娼婦の部屋』『砂の上の植物群』『星と月は天の穴』『夕暮まで』など。平成六年(一九九四)死去。

「2022年 『ネコ・ロマンチスム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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