という、はなし (ちくま文庫 よ 18-4)

著者 :
  • 筑摩書房
3.92
  • (50)
  • (65)
  • (48)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 943
感想 : 87
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434098

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • フジモトマサルのエスプリの利いた味わい深い絵は、大人のためのものだ。その絵に吉田篤弘が挟文したもの。クロネコに始まっていろいろな動物が人間のようにふるまっている絵は、いくら見ても見飽きないぐらい、凄くいい。どうしてこんなに惹かれるのだろうというぐらい、いい。「夜行列車」「背中の声」「読者への回復」「灯台にて」など24の文章は、訳が分かるような分からないような、意味深のようでいみがないような、ふわふわと漂っているようなもので、絵にあっていると言えばあっているようなものである。平和だなあ。

  • 吉田篤弘さん初読み。フジモトマサルさんの絵が見たくて購入。吉田さんの静かで温かみある文章とフジモトさんのクールなのに可愛らしい絵がとても合ってる。絵がお題なのも珍しい。『夜行列車にて』と『影の休日』は絵もタイトルも文も全て大好き。

  • イラストレーターのフジモトマサルさんが描いた読書の風景に、吉田篤弘さんが物語をつけたというもの。
    24編のショートショートだ。
    フジモトマサルさんのイラストがとにかく可愛らしい。
    動物たちが本を読んでいる。
    ライオン、豚、パンダ、猫…。
    それらの可愛らしい物語に、
    背中を押されたり、ちょっとした視点のイタズラを仕掛けられたり、本が読みたくなったり。

    フジモトマサルさんの「あとがきのまえがき」、
    吉田篤弘さんの「あとがきのあとがき」までも楽しい。
    そして「文庫版のためのあとがき」も充実していて、ファンとしては嬉しいところ。

    好きだったのは、「読者への回復」。
    本を置き去りにし、ネットに山ほど時間をかけていないか?
    そのことに気づいた時、"言葉がむなしく空まわりし、ふいに砂漠の真ん中で、ひからびた水筒をひっくり返しているような渇望におそわれる。"
    でも大丈夫。
    ひとたび本を読めば、"そのときの本の、なんと優しいことか。"
    "活字の点滴"を打ってもらえばいいのだ。
    条件はたった一つ。

    「「読者」であること。
    肩書きはそれだけでいい。」


    もう一話。
    先日村上春樹氏の『街とその不確かな壁』を読み終えたばかりの私には、リンクしているようでならなかった、「影の休日」。

    「もし、わたくしが〈影〉であることを辞めてしまったら、人々がどうなるのか、わたくしはよく知っています。〈影〉をなくした者は実体を失ってしまうのです。これがこの世の〈あたりまえ〉というものです。」

    「〈影〉は〈陽〉があってのもの。ひとがあってこそのものです。」

    • mihiroさん
      傍らに珈琲を。さ〜ん、こんばんは(^^)/
      吉田さん読まれてる〜笑笑
      わ、この作品知らなかったです(*ºㅿº* )
      イラストも可愛くて和むし...
      傍らに珈琲を。さ〜ん、こんばんは(^^)/
      吉田さん読まれてる〜笑笑
      わ、この作品知らなかったです(*ºㅿº* )
      イラストも可愛くて和むし、抜粋の文章にもハッとさせられますね〜!
      これ寝る前に毎日ちょこちょこ読むのにいいかも\♡︎/
      図書館予約してみよ〜♪

      2023/12/19
    • 傍らに珈琲を。さん
      mihiroさん、こんばんは~!

      つられちゃった(///∇///)デヘヘ
      ここにね、吉田さんの本が数冊積んであるんです。。。最近吉田作品...
      mihiroさん、こんばんは~!

      つられちゃった(///∇///)デヘヘ
      ここにね、吉田さんの本が数冊積んであるんです。。。最近吉田作品から離れていたので、久々に戻ってみました♪

      寝る前のちょこちょこ読みにピッタリだと思います!
      不思議な大人絵本って感じ。
      楽しんでくださぁ~い♪
      2023/12/19
  • レビューを拝見して、知った本です。

    そこに、本を読む人がいました。
    想像力をかきたてられ、本を読む楽しさ、何で本を読むのかが、じわじわと染みこんでくる本でした。

    「読書の情景」というテーマで、フジモトマサルさんが筑摩書房のPR誌「ちくま」の表紙に二年間掲載されたイラストレーションに吉田篤弘さんが文章を書いたそうです。
    結果は珍答、迷答ばかりと吉田さんは「あとがきのあとがき」でおっしゃっていますが、とんでもない名解答ばかりで、読書の楽しみが味わえました。

    吉田篤弘さんの作品は、初めて読みましたが、他の作品も読んでみたいと、思わされました。

  • 筑摩書房のPR雑誌「ちくま」の表紙として二年間掲載されたフジモトマサルさんのイラストに吉田篤弘さんが短い文章で情景を描く。
    イラストのテーマはすべて「読書の風景」なので、必然的に読書をしているとき、文章を書いているときの思いが描かれることになり、うんうん、とうなずきながら読んだ。

    フジモトマサルさんの絵は初めて見たのだが、輪郭がはっきりしてしっかり描き込まれているけれど決してうるさいわけではなく、物語がぽっと浮かんでくるような余白がある。
    登場人物はすべて動物たちで、芝生に寝っ転がったり、プールで浮き輪に乗ってぷかぷかしていたり、台所の片隅だったり、みな思い思いのシチュエーションで本を読んでいる。
    そんな絵に吉田篤弘さんが文章をつけるのだが、絵が届くのがだいたい締め切り1週間前くらいで(「あとはよろしく。」と一言だけ添えられているそうな)、そこから2~3日、早ければ1日で文章を書かなければならなかったそうなので、ずいぶん大変だっただろう。そのせいか、たまに「時間切れかな?」と思わせるものもあるが、かわいらしい動物たちの絵とちょっとファンタジックなストーリーが融合して、双方の魅力が倍増されているように感じた。

    フジモトマサルさんは本書の文庫版刊行前に亡くなられたそうで、続編が見られないのが残念だ。

  • 読書をめぐる小さな絵物語集。
    フジモトマサルさんの絵に合わせて
    吉田篤弘さんが書いた24本の短編集。

    イラストには「読書の情景」という
    通しテーマがあるので、読むことや書くことに
    まつわるお話が多かったですが、
    シチュエーションや視点が様々で、
    飽きることなく楽しめました。

    物語なのか、エッセイなのか
    どちらとも取れる文章が、
    現実と物語の境にいるようでよかった。

    “居残り日録”や、”影の休日”が好きだった。

    失った何かを懐かしむような、
    なんとも言えない気持ちになる物語もあり
    味わい深い一冊でした。

  • 筑摩書房のPR誌に掲載された、フジモトマサル氏の「読書の情景」をテーマとしたイラストを描きあげたあと吉田篤弘氏が文章を添える挿絵ならぬ挿文バトン形式の大作。読書に関しての様々な視点からの物語、本に対する想いがつまっている。イラストを見てショートストーリーを読んで、なるほど!と思いまたイラストをじっくり見る。「何ひとつ変わらない空」「影の休日」「日曜日の終わりに」「恋の発見」が特に良かった。
    フジモトさんと吉田さんはプライベートでも仲良しで食事をしたり作ったりと親交があった様子。
    同じように短歌を作ったら楽しそうだけど苦しそうとも思った。

    • fukayanegiさん
      ベルガモットさん、こんばんは。

      この本、吉田さんとフジモトさんのコラボ作品だったのですね!
      存在は知っていましたが、ちゃんと認識できていま...
      ベルガモットさん、こんばんは。

      この本、吉田さんとフジモトさんのコラボ作品だったのですね!
      存在は知っていましたが、ちゃんと認識できていませんでした。

      フジモトさんといえば穂村党にはにょっ記ですよね。
      ほんのり繋がりのある選書に、こちらの本も読みたい、にょっ記で止まってしまっていたあちらも続編のにょにょっ記を読みたい思いを掻き立てられましたー。

      イラストはじまりの短歌、おもしろそうですねw
      かなり枠が限定されるので、相当難しそうですけど。
      2023/01/29
    • ☆ベルガモット☆さん
      fukayanegiさん、コメントありがとうございます!
      吉田さんの次の本を図書館で探していたら、表紙がフジモトさんで気になったので読んで...
      fukayanegiさん、コメントありがとうございます!
      吉田さんの次の本を図書館で探していたら、表紙がフジモトさんで気になったので読んでみました。

      穂村党(!、良いネーミング♡)だとそうそう、にょっ記ですな~
      フジモトさんと穂村さんが打ち合わせでどんなお話していたんだろうって覗きたくなります。

      fukayanegiさんが以前レビューされた『せんとてん』を今借りました♪
      2023/01/29
    • fukayanegiさん
      ベルガモットさん、おはようございます。

      『せんとてん』借りられたのですね!
      懐かしい。
      絵がかわいいんですよね。
      あれもたくさん息子に読ま...
      ベルガモットさん、おはようございます。

      『せんとてん』借りられたのですね!
      懐かしい。
      絵がかわいいんですよね。
      あれもたくさん息子に読まされたな〜。

      レビュー楽しみにしてます!
      2023/01/30
  • フジモトマサルさんが本を読んでいる情景のイラストを描き、吉田篤弘さんがそのイラストに文章を付けるという制作過程を先に知りました。
    そういうわけで、まず絵をじっくりと眺めてから、どんな話が湧いて出てくるのかを楽しみながら読むことに!

    全部で24編、一つ読み終わる毎にもう一度イラストを見直してみる。
    作家さんの「見たものから何かを感じ取る能力」って凄いと改めて思う。
    妄想と言ってしまえばそれまでだが、自分なんかはただ視界に入れているだけで妄想も湧いてこない。

    どの話も何とも言えない、のほほんとした感じが漂っていて心地良い。
    日常のちょっとしたことで、誰もが考えたことがありそうなことをうまく表現してくれている。
    吉田篤弘さんの作品は初めてでしたが、ファンになりそうです。
    大人版ヨシタケシンスケといったところでしょうか?

    この本もどなたかのレビューがきっかけで手にしたのですが、ブクログのおかげで読みたい本が増えてしまって困ります。

  •  どういう本かよく知らずに、フジモトマサルさんの本だからという理由で手に取った。あとがきによると、筑摩書房のPR誌『ちくま』の連載の書籍化とのことだが、これがなんと、「読書の情景」というテーマでフジモトマサルさんの描いた絵に対して、吉田篤弘さんが挿絵ならぬ「挿文」
    を書くという企画。
     なるほど、だから絵の動物たちみんな本読んでたのか。文も、本の話題が多かったのか。それでいて、エッセイ風の文章もあれば、どっぷり空想ものな文章もあって、(安野光雅ばりの)ルール不明の様相を呈していたのか。最後に得心。先に絵があっての文だったと知った上で絵と文を読み返すと、また違う味わいが感じられてなお良し。

     以下、備忘メモ。

     好きな話。
    「虎の巻」虎山先生から虎野先生に送られた虎の巻。
    「眠くない」わかるわー、一日の終わりのマイ・プレシャス、読書時間を迎えたら眠くなるというね。
    「日曜日の終わりに」憂鬱なんだけど、何かをひとつ終えたような、それゆえに小さく一歩、前へ踏み出したような。って、そんな前向きになかなか実際思えないけど、そう言ってもらいたかった。

     好きな絵。
    「待ち時間」うさぎが石橋で本を読んでいる。
    「地上の教え」バク?が木漏れ日の中で寝そべって本を読んでいる。
    「希有な才能」イタチ?が駅のホームで本を。
    「日曜日の終わりに」シマリス???が台所で。

    • akikobbさん
      111108さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      そう言われて私も(まだ返却前だったので)もう一度開いてみました。11110...
      111108さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      そう言われて私も(まだ返却前だったので)もう一度開いてみました。111108さんがレビューで挙げられてた、『夜行列車にて』『影の休日』も良いですね。影のほうは、平凡に考えれば逆光かもしれないけど、《影》が読書しているととったところも面白いしまたこの文章の内容も優しくて、私も好きです。
      読み返せるということは、111108さんはこの本をお買い上げになったのかしら。この本が手元にあって、ふとしたときにぱらっと開けるの、いいなと思ってしまいました。
      2023/08/07
    • 111108さん
      akikobbさん、お返事ありがとうございます♪

      そうなんです!フジモトマサルさんが大好きで買っちゃいました♡
      この文庫本のサイズといい、...
      akikobbさん、お返事ありがとうございます♪

      そうなんです!フジモトマサルさんが大好きで買っちゃいました♡
      この文庫本のサイズといい、一話の長さといい、ちょっと読み返すのに最適です。
      そして今「眠くない」の狐の気持ちです‥
      2023/08/07
    • akikobbさん
      111108さん
      私は「眠くない」通り過ぎて、ごーごー寝ていたと思われます笑
      111108さん
      私は「眠くない」通り過ぎて、ごーごー寝ていたと思われます笑
      2023/08/08
  • 読書を強く勧められたわけではないのに、なぜか本が読みたくなる不思議な本です。
    フジモトマサルさんの絵も、無言で何かを語っているような、なんともいえないほんわかした空気が漂っていて、吉田さんのたわいない文章によく似合ってます。
    行きつけの灯台なんてほんとにあったら楽しそうだな。

全87件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作、装丁の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂とぼく』『雲と鉛筆』 (いずれもちくまプリマー新書)、『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫)、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『モナリザの背中』(中公文庫)など著書多数。

「2022年 『物語のあるところ 月舟町ダイアローグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉田篤弘の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
エラ・フランシス...
森見 登美彦
皆川 博子
平野 啓一郎
夏目漱石
アントニオ・G・...
辻村 深月
恩田 陸
宮下奈都
小川 洋子
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×