決定版 切り裂きジャック (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480430946

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  • 作家・評論家であり、
    日本随一の「リッパロロジスト(切り裂きジャック研究家)」
    と呼ばれる著者の旧著を増補・改題した「決定版」。
    19世紀末ロンドンを恐怖の渦に巻き込んで姿を消した
    連続娼婦惨殺犯・切り裂きジャックとは何者だったのか、
    一連の事件の詳細と、
    背景となったヴィクトリア朝文化について、綿密に考証。

    もっと大勢を殺していたのかと、勝手に思い込んでいたが、
    同一人物の犯行とすれば確かに大量殺人だけれども、
    実は意外に小人数だった、にもかかわらず、
    尋常でない手口からセンセーションを巻き起こし、
    噂に尾鰭が付いて「怪物ジャック」像が独り歩きしてしまった模様。

    捜査が進展しなかった要因の一つとして、
    日本の刑事ドラマなどでもお馴染みの光景だが、
    ロンドン警視庁(スコットランド・ヤード)とロンドン市警察の
    連携が上手く行かなかった点が挙げられている。

    また、事件当時、
    既にホームズ・シリーズを執筆していたコナン・ドイルが、
    このネタを取り上げなかったことについては、
    自作を実際の犯罪をモデルにした際物として扱われたくない、
    との想いがあったからでは……と推測している。

    タイトルに冠された「決定版」という言葉の真の意味は、
    あとがきまできちんと読めばハッキリする(笑)。

  • 切り裂きジャックが題材になった昔のドラマや映画、舞台の詳細な説明はいらなかったが、それ以外は、構成はうまいし文章は読みやすいし、単なる説明の羅列ではなく、ヴィクトリア朝時代の雰囲気も醸し出されて、興味が薄れることなく読み進められた。

  • 仁賀先生が目指したのは、凡庸かつ俗物感たっぷりな「解説」に代表されるジャック・ザ・ッパーを安易に伝説扱いすることを徹底的に破壊することだったのではないか。事件から125年目の現代のロンドンに、もはや当時の面影はない。事件当時の写真やイラスト、数々の資料や証言から浮かび上がるのは、「無名」の殺人鬼と、その物語に群がる「無名」のわたし(たち)だ。時代背景やディティールがいくら変わろうとも、「無名」の殺人鬼とそれを物語として消費する大衆は変わらない。そこには、伝説もロマンも糞もない。狂人と野次馬だけが声をあげるのだ!ヒャッハー!

  • リッパロロジストである著者が、ノンフィクションを貫いた一冊。
    未解決事件で更に話題性がある切り裂きジャックについて、憶測やフィクションが溢れる中、日本人著作として数少ない研究書といえるでしょう。
    事件の全体像を綴ることから始まり、類似する事件、ジャックが与えた社会的影響、著者の事件現場探訪と続きます。
    信頼性の高い資料と飛躍しない現実的な推測で、著者自身もジャックの正体に可能な限り迫ります。
    「ロンドンの恐怖 切り裂きジャックとその時代」の増補版です。

  • 切り裂きジャックを扱った書籍は世界中でいくつも発行されています。
    イギリス ロンドンで起きたこの猟奇的通り魔殺人事件は、100年以上経った今でも未解決。切り裂きジャックとは、一体何者だったのか?
    本の著者は決して興味本位ではなく、史実をもとに、謎に迫っている点がこの本のポイントです

  • 19世紀末ロンドンを恐怖に陥れた連続娼婦惨殺 犯、切り裂きジャック。警察の必死の捜査にもか かわらず、犯人は捕まらず事件は迷宮入りした。 詳細な事件の経過、背景となったヴィクトリア朝 文化の爛熟と退廃、さまざまな容疑者たち…。犯 罪史上に名を残した猟奇殺人鬼「ジャック・ザ・ リッパー」の日本随一の研究家が、豊富な資料と 図版を用い、その正体に迫る。

  • 「切り裂きジャック」という名前は、それはもう色々なところで耳にするけれど、詳細については全く知らなかった。
    事件の舞台となった場所・時代背景や事件の経過、容疑者候補などがわかりやすく述べられていて、とても面白かった。

  • 日本随一のリッパロロジストが切り裂きジャックを総括。

     殺人がありふれていた当時のロンドンで猟奇的ゆえに大きく取り上げられ、噂が噂を呼び虚実入り乱れていくのが面白い。
     作者がジャックの正体を予測する際に今挙げられているような有名人ではなく名もなき人を挙げるのがとてもいい結末だと思った。

  • 私が小学生の頃に、"世界 謎の10大未解決事件"的なタイトルをつけられた、今でいうところのムック本のような怪しくも蠱惑的な書籍の中で、"秘境に消えたロックフェラー"、"メアリー・セレスト号の謎"、"消息を絶ったアメリア・イアハート"などと並び取り上げられていたこの"切り裂きジャック"の項を読み、ムー脳が著しく刺激を受けたことを、約30年経った今でも鮮烈に覚えている。

    この本自体は、当時の時代背景を含め、一連のジャックによるものとされる凄惨な殺人事件にまつわる記録を広く押さえており、日本語で書かれた資料としては読み易く価値のあるものだと思うが、肝心要の犯人像に関する考察の部分は甚だ心許ない。
    切り裂きジャックの正体については、過去100年以上に渡って膨大な数の研究者たちが膨大な数の容疑者を挙げて、侃々諤々議論し、自説を披歴し続けているわけだが、著者はそれらの1つ1つについて本書の中で反証しつつも、著者自身による推理がその批判の対象となるような矛盾をいくつも抱えており、この辺りでいささか鼻白んでしまった。
    あと、これは校正者や版元の落ち度だと思うが、ところどころ日本語として文法的におかしな言い回しがあり、それも気になった。

  • 経緯はわからないが、切り裂きジャックに取り付かれてしまった著者。もはやライフワークとなった切り裂きジャック研究の集大成。正に「決定版」。

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