- Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480429278
感想・レビュー・書評
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世界中に旅行・滞在してきた著者の記憶に残る食べ物たちのエッセイ。
再読。何につけても四方田犬彦の文章の巧さよ。数章つまみ読みするだけのつもりが、心地よいリズムとウェットすぎない温度のある文章にのせられて一冊読み切ってしまった。
外つ国への飽くなき好奇心とフットワークの軽さ、それを支える教養の深さ。本書の第一部では母方の家がハンパない金持ちで、食にアグレッシブな祖母と母の系譜に四方田さんも連なっていることがわかる。北朝鮮で労働者たちが食べる炊きだしを分けてもらい、その貧しさにショックを受けながら人びとの情を感じるところなどはベルばらのオスカルとロザリーを思いだしてしまった。
自分の舌に合うものを探しにいくのではなく、その土地の人がどう食べているかを観察し、すぐ倣ってみるという姿勢に惹かれる。新しい食材に出会うと頭のなかで新しいレシピを考案して、美味しそうだと思ったら市場で材料を揃えてすぐ試してしまうのもすごい。複雑な味わいも微分して再構築できる能力が、料理と文章のどちらにも活かされているのだろう。こういうの読むと料理頑張りたいと思うんだけどなー(笑)。
食の思い出は一緒に食べた人についての記憶でもある。特に須賀敦子と若桑みどりの登場に湧いた。二人ともなかなかに食い意地が張った姿を活写されているが、それがなんともチャーミングなのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
記憶に残る食事とその周辺のこと(店の人との会話、世界情勢等)が淡々とひと皿ごとに簡潔に、でも情報量盛々で書かれていて超面白い。京都旅行中に読んだのですが、去年南座のソロ打ち上げとして訪れたお店で恋に落ちたティラミス、推しの舞台を見た後に食べるか否かで味の印象少し違う(感じがした)のですが、こうしてあの期間にあった楽しい出来事たちを忘れぬよう、これからも折を見て食べに行こうと思った。
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比較文学者であり映画評論でも知られる四方田犬彦氏が書き下ろした、食文化についてのエッセイです。その重要なテーマは「人は食べる時、思い出を食べている」ということ。
この本の様々なエピソードで、“塩”が登場。著者は4歳にして大病を患い、担当医からひと月にわたって塩を摂ることを禁じられます。この時の経験から、著者は、料理の塩加減に繊細な感覚を持つようになるのです。
塩で野菜の余分な水分を取り去る“ロシア・サラダ”。塩と砂糖を用いる“出雲の梅干”。塩で生み出す独特の風味、モロッコの醗酵バター“スメン”。塩と胡椒で牛肉のうま味を堪能する“フィレンツェのビステッカ”。
著者は様々な国に滞在した経験の中から、記憶の中の“ひと皿”をたぐりよせ、想い出深い味わいを言葉で紡いでいきます。味覚という体験は一瞬一瞬で消えていきますが、料理に伴う感情の記憶は、永遠なのかもしれません。 -
タイ料理を食べたくなった。
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う〜〜む腹の減る本だった。
ウナギのゼリー寄せをありがたがって食べているのを見てぞっとしたのだけど、この人の舌のうえではどんなものでもごちそうなのか? -
この方の食べ物エッセイは初めて読んだ。昔からちゃんとした物食べてたんだなあ、と世界各地廻られてるんだなあ。おいしそうだけでなく、文化と絡んだ文章が面白く読み進めてしまった。豚は一番便利な肉だと思う。コペンハーゲンのスモーブローが食べてみたい。
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なんだか浮世離れしたオジさんが、仰々しい比喩を使いながら日記みたいな文章書いてるなぁ…というのが読み始めた頃の印象でした。なんか退屈だなぁとも。
ただ、舞台が国外に移ると俄然面白くなってきて、タガメを堪能する段になって「あ、この本はちゃんと読まなきゃダメだ」と居住まいを正して読み切りました。
食べることに対してただただ真面目に向き合う姿勢が貫かれていて、興味深く読めます。 -
日本、アジア、アフリカ、ヨーロッパ各地で出会った食にまつわるエッセイ。外食はもちろんその地ならではの食材を使った調理まで食へ直結する好奇心が溢れ出てくる。何気ないエピソードの数々が旅情を誘う。
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食べ物のエッセイというのは、読んでてほんとうに楽しい。
世界には知らない食べ物がいっぱいあるということを知った。
つい、自分でも何か作ってみようかという気持ちにもさせられた。
不思議な本だ。 -
中だるみ感はあったけれど、食への姿勢を教えてくれる良書。