- Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480428196
作品紹介・あらすじ
「名もなき草」の姿を愛情とユーモアに満ちた視線で観察した植物エッセイ。本来か弱い生き物であるはずの雑草は、さまざまな工夫により逆境をプラスに転換して、したたかに生きのびてきた。彼らの個性的な暮らしぶりを知れば知るほど、その人間くさい仕振りに驚愕し、共感する。全50種の雑草に付けられた繊細なペン画イラストも魅力。
感想・レビュー・書評
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レビューをみて、面白そうだったので。
稲垣さんはすごいなあ。
面白かった。
①スギナ(ツクシ)
地下に根茎を張り巡らせている。
原子爆弾投下後の広島で最初に緑を取り戻した
のがこのスギナ。
②タンポポ
外来タンポポ
種子小さい。在来種があれば増えない。
環境破壊によってはじめて在来種というライバルが
いなくなり、生存に成功した。
外来タンポポの花粉を在来タンポポに受粉。
雑種を作ると、1/2が外来タンポポの遺伝子になる。
その雑種にさらに外来タンポポの花粉を受粉すると
3/4。
だんだんと血を濃くしながら、在来タンポポの体を
汚染する。
外来タンポポはクローンで増える。
だから、純血の個体も残る。
在来タンポポは交雑が必要。雑種化する。
中学生の時、このタンポポ調べを授業でやった
記憶がある。
外来タンポポが増えてる!危険じゃん。
と思ったけど、そういう仕組みだったわけか。
しゃーないやん。
③シロツメクサ
小さな花を順番に咲かせていく。
それは、長い期間花を目立たせるため。
ずーっと咲いているように見える。
花に止まり、後ろ足で花びらを押し下げないと、
蜜のある所まで行けない。
力と知恵が必要。
パートナーを選んでいる。
四葉のクローバーは生長点が
傷つけられることで発生する。
ああ、植物って賢いんだなあ。
人間は・・。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どこにでも見られる
「雑草」というひとくくりに
されてしまった「彼ら」たちの
一つ一つが
生物学的な生態を
実に見事な擬人化によって
紹介されていく
読み終えた後
その一つ一つの「草花」たちが
とても親しく感じられるように
なってしまっている
そう
なんだか
親戚の甥っ子や姪っ子に抱くような
感じですね -
雑草たちの強くしたたかな生き方を、ストーリー仕立てで描いた本。
知られざる没落の歴史やサクセスストーリーは、偉人の伝記を読んでいるかのような読みごたえ!
読み終わったら、崩れかけた家屋の屋根に生えるペンペン草に、命を感じるようになる。 -
「雑草」の生存戦略の多様さを、平易な文体で伝えている。
タイトルは草花の名前に副題が添えられている。
「スミレ――野に咲く花のシティ・ライフ」のように。
この副題が本文の内容を本当によく要約している。
一般にはこういうイメージがあるけれど、実は・・・とか、名前はこのようになっているけれど、実は・・・というような語りのパターンが多い気がする。
この辺りは、面白くお話をまとめる技、と肯定的に評価するかどうか。
逆に人間社会に引き寄せて説明しすぎだと思う向きもあるかもしれない。 -
本書には、わたしたちの馴染みのある雑草たちが、多数登場してくれる。
名前をよく知ってるものから、見かけるけれど名前は知らなかった。というものまで、そして、雑草学に詳しいの著者の楽しいエッセイに三上修さんの絵がまた美しい。
知らなかった雑草たちに纏わる話が盛り沢山なのだが、記憶に残ったものをいくつか引いてみる。
オオイヌノフグリは、英名は「キャッツ・アイ」というそうである。瑠璃色の美しい小花を咲かせるきれいな花なのでこの名前は納得。しかし日本ではオオイヌノフグリ漢字で書くと大犬の陰嚢である。それまたどうしてだろうと常々思っていたが、花ではなく実が後ろから見た犬のふぐりに似てたところからその名がついたらしい。
この花の学名は「ベロニカ」。ベロニカは十字架を擔いでゴルゴダの丘に向かうイエスの顔の血や汗を拭き取った女性。その布は聖顔布と呼ばれる。オオイヌノフグリを良く見るとイエスの顔が浮かび上がってくるのだそうだ。これが命名の由来らしい。来春、花をじっと見てみよう。
シロツメクサの頁では、四葉のクローバーは生長点が傷つけられることによって発生する説があり、よく踏まれる場所で見つけやすいとか、
スギナの仲間はおよそ三億年前の石炭紀大繁栄したことがあるとか、
タンポポは在来タンポポと外来タンポポがあるが、外来タンポポの勢力拡大甚だしく在来タンポポに危機が訪れている。外来タンポポはクローン種子で増えるので交雑しなければならない在来タンポポは増殖に負けてしまうらしい。
曼珠沙華の頁は、特に学ぶことがたくさんあった。
「葉見ず花見ず」と呼ばれるように曼珠沙華が咲いているときには、葉は一葉もなく、真っ直ぐに伸びる茎のみである。
大阪の天王寺公園を歌人さんたちと歩いている時、曼珠沙華の葉を教えていただいた。
思えば、曼珠沙華は彼岸のころに、パッと咲いて、その紅に目を奪われ、「ああ、もう曼珠沙華が咲く季節になったのね」などと思ってる間にいつのまにやら姿を消して、その後のことは知らずじまいで・・・
水仙や韮に似た葉っぱだったように記憶している。
曼珠沙華は種子を作れず球根の分根のみで増えていくそうで、日本の曼珠沙華はほとんど同一クローンらしいです。だから、あんなにも一斉に曼珠沙華は咲くのですね。
曼珠沙華が田んぼの畦道や土手などに多いのは、根が牽引根といって球根を土中に潜り込ませる様に縮む性質を持ってるため、土の崩れるのを防ぐことができるそうです。モグラ避けにもなり種子で増えない曼珠沙華が全国で見られるのは、人が植えたからだそうですが、このような知惠を持って昔の人は曼珠沙華とつきあってきたのですね。
よく知られるように、曼珠沙華は別名を多く持つ花です。死人花、幽霊花なんてもいわれます。
墓地にもよく見られたりもするのですが、球根が毒を持ってるために埋葬した遺体を守る意図があったのではないかと想像されている。
しかし、遠い昔、曼珠沙華の球根は食用されていたそうで、曼珠沙華を全国に植えた一番の理由はそれらしいです。毒は水にさらすと簡単に取り除けるそうです。
曼珠沙華の花の魅力だけでなく土中の球根にまで思いを馳せてみる愉しみ・・・ -
雑草の生態。
西洋タンポポの持つクローン力の話は面白い。
名前結構知ってるなとなって草花と遊んだ幼少期を思い出す。 -
雑草を見る目が一変します!
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最近雑草栽培にはまっていたら妻が買ってくれた。
雑草に対する愛情に満ちていて素晴らしい。姉妹編の「身近な虫たち・・・」も読んでみたい。
藁ぶき屋根は小作農の材料、茅ぶき屋根は豪農の材料、昔の農村には必ず萱場があったなどトリビアがいっぱい。 -
暖かい季節になると、庭仕事を増やしてくれる鬱陶しい雑草…であるが、この本に書かれている身近な雑草の生き方を見ていると、雑草が実に工夫に満ちた、面白い存在たちであると感じられてくる。環境、外敵から身を守り生存競争に勝ち抜くために雑草が仕組む工夫の数々にうならされ、興味深く読むことができる。特に印象深いのはオナモミの中身の二つの種子の話。その二つの違い、工夫に驚いた。
自分の知らない小さな世界でこんなにもおもしろい、工夫、生き方がある世界があるのか、と驚かされる。